日本国内で既にネットショップを行っている方や実店舗からネットショップに展開をしていきたい方の中には、海外展開いわゆる越境ECに興味を持っている方も多いのではないでしょうか。
とはいえ
・越境ECを始めるにはハードルが高いイメージ
・越境ECの利点や欠点は何か知らない
・そもそも何から始めていいか分からない
という疑問を持つ方も多いはず。
そこで今回は、越境ECを始めようとしている方や関心がある方に向けて、「越境ECのメリットやデメリット」「越境ECで販売を開始する流れや注意点」を解説します。
越境ECとは
まず簡単に越境ECとは何かについて紹介します。そもそもECとは「Electronic Commerce」を略した言葉で、電子商取引の意味です。「eコマース」とも呼ばれており、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。
つまり、越境ECはインターネット上のショッピングサイトを利用して、国内から海外の消費者へ向けて商品を販売する国際的な取引のことを言います。
日本国内だけでなく海外の消費者をターゲットにできるので、新たな顧客開拓によって売上増加に期待できます。越境ECは大きく拡大している市場として、日本企業を含め各国の企業が出店(出品)・注目を浴びているビジネスです。
その他、越境ECの魅力については「越境ECのメリット」の項目で詳しく紹介します。
越境ECの市場規模推移と予測
続いては市場規模について解説していきます。次のグラフは世界のBtoC越境ECの市場規模推移を表したものです。
2019年の市場規模は3.34兆USドル、EC化率は13.6%と推計されています。2024年には6.39兆USドル、EC化率は21.8%、EC市場規模全体では6年で約2倍増加するすると予測されています。
越境ECの市場規模で圧倒的1位を獲得しているのが中国、続いてアメリカ、イギリス、日本、韓国の順になっています。(参考:記事末に記載)日本の場合海外から購入する額より、海外から購入される額の方が圧倒的に多いのが特徴です。
▼越境ECの市場規模についてもっと知りたい方は下記記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
越境ECを始めるメリット
越境ECを始めるメリットは下記4つがあげられます。
- 世界各国からの新規顧客を取り込める
- 低コストで海外進出できる
- 経済成長国を選択できる
- 競合が少ない市場を狙える
①世界各国からの新規顧客を取り込める
越境ECの最大のメリットは海外に住むユーザーまで商圏を広げることができます。スマートフォンやインターネットの普及によって、世界中どの国にいても24時間いつでも販売可能です。
日本はインターネットを利用する10代~50代の人口が減少傾向にあり、日本国内において新規顧客を獲得するのは厳しくなってきています。しかし、海外に対象をあてることによって市場規模は当然広がるので、より多くのユーザーを取り込むこんでいくことができます。
また、ネットショッピングを行う頻度や金額が高い国をターゲットにすることで、売上向上にも期待できるでしょう。
②低コストで海外進出できる
インターネットを利用した越境ECであれば、実店舗と比べて費用とリスクを抑えた海外展開が可能です。
海外で実店舗を持つとなると、テナント費用や土地の購入、内装、仕入れ、人件費、運営費といった店舗運営コストが莫大にかかってしまうのが一般的です。そのため、個人や中小企業が海外に店舗を持つということは容易ではありません。
もちろん越境ECをはじめるにあたり、サイトの運営費やサーバー代、配送手配、問い合わせなど人件費が必要となりますが、実店舗を出すことと比べると時間や費用、リスクを抑えられることが多いです。
③経済成長国を選択できる
経済成長している国やEC市場が著しく伸びている国に進出することで、ビジネス拡大に期待できます。先述したように日本は人口が減少しているだけでなく、経済的な衰退から日本国内だけでビジネスを拡大していくにはよっぽどの戦略が必要です。
しかし、越境ECの市場規模が大きい中国やアメリカ、インターネット普及率が伸び続けている東南アジアといったように、拡大している市場を選択できるので、売上拡大の期待値は高いと言えるでしょう。
④競合が少ない市場を狙える
日本と海外では競合率が異なるので、競合が少ないところをうまく見つけて出店(出品)することができれば、シェアの独占や売上アップが可能です。
越境ECは自宅にいながら海外用品を手軽に購入できる便利なツールです。自分では運びにくいものやサイズが大きい商品、店舗ではなかなか手に入りにくいものなど、海外ユーザーの悩みを解決できる商品を選定できるかが成功のポイントです。
越境ECを始めるデメリット
越境ECを始めるデメリットは下記4つがあげられます。
- 言語・文化・国民性の違いへの対応
- 配送や関税の知識
- ECモールや輸送での規制
- 決済方法の複雑さと為替変動のリスク
①言語・文化・国民性の違いへの対応
国が異なれば言語や文化、国民性の違いがあるので、正しく理解し対応する必要があります。
特に商品説明・配送日数といった表記や問い合わせサポート窓口での言動がスマートではない場合、信頼を失い購入ページから離脱してしまうこともあります。そのため外国語対応のスタッフを雇用したり、翻訳サービスを利用する必要があるでしょう。
また、文化や国民性によって色やデザイン、嗜好、金銭感覚は異なります。国民の好みに合わせてローカライズ(現地化)した商品づくりや売り方に変えていくことも大切です。
②配送や関税の知識
海外配送手段の確保と日本国内にはない関税の知識が必要です。日本から都度発送する場合は1回あたりの輸送コストが高くなり、複雑な関税手続きを行う必要があります。
海外現地に倉庫を用意し現地から直接発送する場合は、倉庫管理費用や梱包作業の人件費や在庫リスクを考えなければなりません。コストだけでなく最適な配達日数や安全性が確保できる配送サービスを選ぶことも重要です。
また、商品によって関税率が異なることや、通関にはどういった手続きを行い費用がかかるのかといった知識を身につけなければなりません。法律によって要件が変化することもあるので、常に情報を把握し臨機応変に対応していくことが必要となります。
③ECモールや輸送での規制
ECモール上では販売規制がなかったとしても、輸出入で規制がかかるものがあります。反対に、輸出入での規則がなくても、ECモールでの規制がかかることもあるでしょう。
商品によっては事前の申請や許可を求められることもあるため、販売したい商品が進出国・ECモールで販売できるのか商品ごとに確認が必要です。
④決済方法の複雑さと為替変動のリスク
国によって異なる決済方法と為替変動リスクといったように、売上・利益に関わることを考えなければなりません。
まず決済についてですが、クレジットカード、電子マネー、コンビニ払い、着払い、代金引換といったように、進出国に合わせた決済方法を導入していく必要があります。
次に為替変動のリスクです。進出時には為替レートがよくても、ずっと良い状態が続くとは限りません。そのため、為替リスクを念頭に置いて仕入れや値付けを行わなければ、赤字になってしまこともあるでしょう。
越境ECで販売を開始するまでの流れと注意点
ここまで、越境ECの簡単な基礎知識とメリット・デメリットをお伝えしてきました。それでは、越境ECを始める方法として基本的な流れを5つのステップに分けて紹介していきます。
まず何から準備していけばいいのか、どういった点に気を付けていくべきなのか一つずつ確認していきましょう。
- ターゲット国を選定する
- 商品を選定する
- 出店(出品)方法を決定する
- 決済方法を決定する
- 配送方法を決定する
ステップ1.ターゲット国を選定する
海外進出で最も重要なのは、どの国・地域をターゲットに販売するかしっかり市場調査を行い、選定することが必要です。進出する国・地域のめどをたてていない方は、まず市場全体を把握していくと良いでしょう。
下記のグラフは世界のEC市場ランキングを表したものです。
市場規模が最も大きい中国、第2位のアメリカといった上位を狙っていくことで売上拡大に期待できますが、競合が多く価格競争になってしまうことがあります。
一方、日本よりも市場規模は小さいものの物理的に距離が近く親日国の韓国や台湾から始めてみる、あるいはインターネットユーザーの普及率が上がり続けている東南アジアを狙うといったように、国・地域の特徴を見つけていきましょう。
ステップ2.商品を選定する
進出する国・地域が決まったら「自社が取り扱う商品やジャンルが売れそうなのか」「輸出入の観点から販売可能な商品なのか」市場調査を行います。
先述したように、国によって文化や国民性が違うので、色やデザイン、嗜好、金銭感覚、嗜好は大きく異なります。進出国でどのようなものが購入されているのか把握してから商品選定を行っていきます。
越境EC市場全体で見ると「生活家電・AV 機器・PC・周辺機器等」が最も購入されており、次いで「衣類・服装雑貨等」、「食品、飲料、酒類」、「生活雑貨、家具、インテリア」、「書籍、映像・音楽ソフト」の順になっています。
中国を例に比較していくと、最も購入されているのが「化粧品、美容関連製品( 40.6%)」、次いで「トイレタリー(38.2%)」、「健康商品(35.8%)」、「食品・飲料(32.1%)」という順になっています。
このように国別によって購入される商品に差があるので、進出する国でどういったものが購入されているのか、国民の好みに合わせた商品を新たに作っていくべきなのか等リサーチを行いましょう。
また、現地の法律やモールの規則に引っ掛からないか、商品ごとに確認する必要があります。特に中国の場合は頻繁に法律や規則が改訂されるため、現在の状況と改定予定状況を合わせて把握しておきましょう。
ステップ3.出店(出品)方法を決める
ECサイトの出店方法の決定します。越境ECで出店(出品)する方法は大きく2パターンに分けられます。
①自社でECサイトを構築する「自社EC型」
「自社EC型」は海外のサーバーやドメインの用意、現地言語の設定、決済、配送まで自社で全て行う方法です。サーバー代、ドメイン代、システム構築費用が掛かります。
②ECモールに出店する「モール型」
「モール型」は決済や配送等のシステムがすでに組まれている国際的に販売可能なECモールに出店(出品)する方法です。基本的に、利用するモールの利用料がかかります。
どちらが適切な手段か、予算やブランディング方法等に合わせて検討しましょう。
ステップ4.出店(出品)方法を決定する
国によってはクレジットカードを持っていない人が多い、電子マネーが盛んといったように特徴があるので、販売国に合わせた決済方法を選択します。
世界中に配送することを検討している場合は、クレジットカード決済を基本に、ターゲット国・地域の人に好まれる方法を導入するといいかもしれません。
また、クレジットカード決済の場合は購入された国の通貨取引になるのか、日本円で取引されるのか確認しておきましょう。
ステップ5.配送方法を決定する
どういった方法で消費者に商品を届けるのか、配送方法を決定します。消費者に届ける方法は主に3つの方法があります。
①EMS等で日本から直接届ける
②海外現地に物流拠点を設置し届ける
③海外配送代行サービスを利用して届ける
どこから配送するかによって配送料やお届けまでのスピード(所要日数)が異なります。配送コストが低い業者はユーザーにとってメリットとなりますが、その業者が商品の取り扱いに乱雑な場合、後にクレームがあったりブランドの信用が下がってしまうことも考えて検討しましょう。
まとめ
今回は越境ECを始めようとしている方や関心がある方に向けて、「越境ECのメリットやデメリット」「越境ECで販売を開始する流れや注意点」を解説しました。
越境ECは日本国内で販売するより市場調査や決定事項が多くハードルが高いと思われがちですが、世界中に自社の商品を販売できるので顧客開拓や売上拡大に期待できます。
また、翻訳や決済サービスといった部分的にサポートしてくれるサービスもあれば、全面的なサポートを行っている企業もあります。越境ECを始めるにあたり、自社でどういったサポートが必要となるのか確認しながら、海外進出を進めてみてはいかがでしょうか。
参考・出典:経済産業省「令和2年度 産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」