外国人観光客に温泉が人気スポットとなっています。温泉は外国人観光客にとって満足度が高く、1度体験した人はまた体験したいと思うことが多いようです。外国人観光客にブームとなりつつある温泉について、受け入れ時の注意点と成功した温泉の事例を紹介します。
目次
外国人観光客に温泉がブーム
温泉に行くと、外国人観光客の姿を目にすることが多いです。中国語や韓国語を話すアジアからの観光客だけでなく、欧米からの外国人の姿も増えています。
これまで温泉といえば、日本ならではの文化でしたが、金髪で浴衣姿の外国人が温泉街を練り歩く姿は珍しくなくなって来ました。観光ルートに有名温泉街が組み込まれるなど、外国人観光客にとっても外せないスポットとなりつつあります。
温泉は満足度が高い
外国人観光客の間で温泉がブームになっていることは、各種統計データで見て取れます。観光庁による「訪日外国人の消費動向 訪日外国人消費動向調査結果及び分析(平成29年)」によると、「訪日前から温泉に期待していた人」は26.5%に留まりますが、「実際に体験して満足した人」は何と88.8%にものぼります。
また、「DBJ・JTBFアジア8地域・訪日外国人旅行者の意向調査(平成27年)」では、日本の観光地イメージで温泉が71%とトップとなっていました。
そんな中で、入浴経験がないケースで「ぜひ入浴したい」は35%に留まりましたが、入浴経験があるケースでは「ぜひ入浴したい」という人が77%に上り、温泉の満足度の高さが伺えます。
さらに、「体を覆うものがあれば入浴したい」という人も含めると、9割以上が入浴を望んでおり、その人気ぶりを伺い知ることができます。
外国人観光客に温泉が流行り出している理由とは
では、なぜ外国人に温泉が流行り出しているのでしょうか?メディアやインターネットなどで、さまざまな理由が推察されていますが、それらは4つに集約することができます。
その4つとは「コト消費の拡大」「観光×健康ニーズの増加」「日本ぽい」「SNSやメディアでの情報拡散」が上げられます。それぞれの内容について具体的に見て行きましょう。
コト消費の拡大
観光とは「観る(みる)」と書き、さまざまな史跡名所を観ることが従来の旅行の醍醐味でした。しかし最近はコト消費のニーズが高まっています。コト消費とは「体験」を通じて旅行を楽しみたいというニーズです。
たとえば着物の着付け、伝統工芸の製作体験、握りずし体験、町家での宿泊体験などその種類はさまざまです。外国人に人気の古都京都では、舞妓にふんした外国人観光客の姿を目にすることも増えています。
日本人旅行者にとっても体験のニーズは高いのですが、外国人観光客にとっても定番化しているのです。温泉は外湯巡りをしたり、浴衣を着たり、温泉街で買い物を楽しむなど、体験をするには最適なスポットとなっています。
「観光×健康」ニーズの増加
「観光×健康」ニーズの増加も温泉が人気となっている理由の1つです。「観光×健康」ニーズをひと言でいうと「ウェルネストラベル」です。近年観光業界の中でウェルネストラベルはキーワード化しつつあります。
たとえばヨガや座禅、精進料理など、日本にはウェルネストラベルをするための観光資源が数多く存在するため、外国人観光客のニーズに応えることができます。
そして、温泉もウェルネストラベルの典型です。温泉自体の効能や入浴中の癒しなど、ニーズにバチっとハマった観光資源なのです。
日本ぽい
よりシンプルに「日本ぽい」というところも人気の理由です。温泉は日本文化の象徴の1つでもありますので、そのイメージが「ぽい」を演出するのでしょう。
観光する際には「ぽい」という曖昧さが大切なのです。先ほど京都の例を挙げましたが、京都に来る観光客はよく「京都ぽい」と表現します。
雅な雰囲気や情緒あふれる雰囲気に対して「京都ぽい」というのです。地元民からすると全く京都の趣ではないところでも、旅行者は「京都ぽい」と表現します。
温泉が外国人観光客で賑わっていると、日本人から見ればかつての情緒と様変わりしているように思えるでしょうが、旅行者にとっては「日本ぽい」のです。
SNSやメディアでの情報拡散
SNSやメディアでの露出も人気の火付け役となっています。Instagramに温泉街を投稿する外国人観光客はよく目にしますし、ローンプラネットのようなガイドブックにも温泉が頻繁に登場します。
また、テレビなどのメディアでも紹介されるなど、外国人に対するPR効果が表れています。さらに、多言語対応の宿泊予約サイトが登場するなど、受け入れしやすい環境が整備されつつあります。
温泉で外国人観光客を受け入れる際のポイントと注意点
温泉街が外国人観光客で賑わうのは良いものの、受け入れ側が対応に迫られていることも浮き彫りとなっています。温泉で外国人観光客を受け入れる際のポイントと注意すべきことについて紹介します。
タトゥーへの対応
外国人はファッションとしてタトゥーをするため、日本人よりもタトゥーをしている人が多いです。しかし、温泉では反社会勢力対策から「入れ墨お断り」としているところが大半です。
そのため、タトゥーをしている人の対策が必要となります。たとえば、シールなどで隠したり、入浴時間をずらすなどの対策を取るところがあります。中にはタトゥーをしていてもそのまま受け入れるという温泉もあります。いずれにせよ、どこで折り合うかも踏まえた対策が必要となります。
入り方のマナー周知
入り方のマナー周知も重要です。かかり湯をして入ることや、タオルは湯船につけないないなど、マナーを知らないとトラブルを生む可能性があります。多言語の注意書き掲示や配布など、事前対策が大切です。
成功している温泉施設の事例を5つ紹介
日本人にお馴染みの全国の温泉が、近年は世界中から旅行者が集まっています。今や世界中の旅行者を魅了する温泉施設を5つ紹介します。
城崎温泉
兵庫県の城崎温泉は、たった5年間で外国人観光客が36倍に急伸しました。川沿いで外湯めぐりが楽しめることで人気の城崎温泉は、2013年ごろからインバウンド需要を見据えたプロモーションをしてきました。
英語の観光情報サイト「Visit Kinosaki」で宿泊予約がカンタンに行えるように整備したほか、欧州での観光プロモーションにも注力してきたのです。また、英語ガイドブック「ロンリープラネット」にも掲載されていることから、欧米豪からの来訪者が増加しています。
由布院温泉
由布院温泉は大分県にあり、外国人観光客にとってアクセスが良い温泉です。というのも、中国や韓国などから数時間で行ける立地であるため、気軽に温泉が楽しめるのです。
温泉街は辺鄙なところも多く、交通アクセスを把握していない外国人観光客にハードルが高いケースもありますが、由布院温泉はアクセスの良さがアドバンテージとなっています。
大分県は自ら「おんせん県」と名乗り、PR動画でインバウンド対策を行ってきました。こういった対策も人気の理由となっています。
登別温泉
登別温泉もアクセスの良い温泉であり、常に多くの旅行者で賑わっています。北海道新千歳空港からほど近く、スムーズに訪れることが可能です。
江戸時代から存在する名温として毎年「にっぽんの温泉100選・総合ランキング」で上位となっているため、日本人観光客も多いです。
飛騨高山温泉
飛騨高山温泉は、城下町である岐阜県高山にあり、今なお城下町の風情を楽しめる人気スポットです。PR動画や積極的な民間企業との協力など、早くからインバウンド対策をしてきたことが功を奏し、特に欧州からの旅行者が多いです。多言語マップやシンプルな看板など、受入環境が整備されていることも人気の理由です。
河口湖温泉
河口湖温泉は富士山の麓にあり、数多くの温泉が集まっています。東京のアクセスが良いことや、富士山と温泉を同時に楽しめることなどから、効率良く旅行ができるスポットとなっています。また、近く富士急ハイランドもあり、多様な観光が楽しめます。
多言語対応の公式ウェブサイトや、イスラム教徒専用の宿泊施設の整備など、インバウンド対策もしっかりと行っています。
今後も賑わいが予想される
温泉は外国人観光客の人気観光スポットとなりつつありますが、その裏にはコト消費の拡大やウェルネストラベルニーズの増加、各温泉施設のインバウンド対策があります。
その結果、温泉は浴衣を着た外国人で賑わうことになりました。一方で、タトゥーやマナーなど、受け入れ側の対策が急務となっている事柄もあります。文化の違いがトラブルを生まないように、今後も注意していかなければなりません。
いずれにせよ、温泉は外国人観光客にとって満足度が高いため、今後さらなる賑わいを見せて行くことでしょう。