新型コロナウイルスの影響で停滞した業界&これから伸びる業界とは

新型コロナウイルスによって、日本国内・世界中でさまざまな業界が大きな影響を受けました。自分がいる業界や関わる業界の状況は把握していても、経済全体としては把握していないという方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は新型コロナウイルスの影響で、世の中の業界はどう変化していったのか、「大きく落ち込んだ業界」「大きく伸びた業界」「アフターコロナで伸び続ける業界」の3つに焦点をおいて解説していきます。

コロナの影響で大きく落ち込んだ業界

飲食業界

緊急事態宣言の再発令が繰り返し行われたことによって、不要不急の外出・帰省・旅行を極力控えるようアナウンスがされていました。飲食店の営業時間短縮、酒類の提供禁止、店内での飲食が難しいことによって事業縮小や閉店が続いている状態となっています。

帝国データバンクのデータによると、飲食店の会社が倒産した件数は2020年で715件にものぼります。飲食店に関わる飲食料品の卸売業や小売業も同じく前年同月と比較しても大幅に落ち込み、飲食業界全体で業績の悪化が目立ってしまいました。

一方で店内中心の飲食サービスをテイクアウトやデリバリーサービスに切り替えた企業や、これまでテイクアウトやデリバリーサービスが主力としてきた店舗では業績が大きく伸びています。コロナ禍によりおうち時間(STAY HOME)を充実させるため一流シェフが厳選するこだわりの食材をデリバリーして、家族みんなで料理をするという新しい形態のデリバリーも誕生しました。

旅行・宿泊業界

旅行・宿泊・航空業界でも緊急事態宣言やロックダウンが発令された影響により、外出・移動に制限がかかり大きなダメージを受けました。特に人件費や固定費が大きくかかってしまう航空業界では、世界各国で経営破綻する企業が相次いでいます。

訪日外国人者数はここ10年間で順調に増加し、2019年には3,188万人もの人が日本を訪れていました。しかし水際対策のためほとんどの国と地域から入国することに厳しい制限がかかったことによって、翌年2020年にはわずか412万人にとどまりました。

停滞した日本経済の再始動を図るために開始されたGoToトラベルでは、宿泊代金が最大50%オフになるなど非常にオトクな内容が用意されていましたが、感染者拡大に伴い全国一斉に一時停止となってしまっています。

国内外からの観光客がストップしてしまったことをきっかけに、旅行代理店や観光バス会社などの旅行関連会社はオンラインツアーを行う企業が増加しました。オンラインツアーはZoomなどの動画配信サービスを利用して観光スポットを紹介するだけでなく、美術館や博物館等の建物やショッピングといったことも外出せず自宅から楽しめるのが魅力です。

リアルな観光ではその土地の空気感や匂い、音など五感を刺激して楽しむのが旅行の醍醐味と言えます。しかしオンラインツアーであれば移動や人と接触することなく国内旅行・海外旅行へ手軽に行けることから、「予習旅」という新しい旅行スタイルが話題となっています。

娯楽サービス業界

遊園地、テーマパーク、映画館、劇場、興行団(ライブハウス、スポーツイベント、寄席)、パチンコなどの娯楽サービスは一時期、完全に営業ができない状態となっていました。特に密になりやすい室内での娯楽はイベントの中止や延期を余儀なくされ、緊急事態宣言が解除された後でも人数制限がかかったことによって大幅な売上減少へと繋がってしまっています。

小売業界

時短営業や不要不急の外出を控えるようになってから、実店舗で営業する店舗は厳しい状況となっています。例えばリモートワークが主軸となってからは衣類やスーツなどのアパレル用品を購入する人が減り、マスクの着用が一般的になったことでメイクをする回数が減ってしまいました。

アパレルやメイクコスメを販売する百貨店の場合は全体の8割が赤字となったことによって、地方だけでなく都心部にある主要駅前の立地でさえも閉店に追い込まれてしまいました。

コロナの影響で大きく伸びた業界

医療・衛生・製薬業界

医療・衛生・新薬業界は大きな伸びを見せています。マスクや消毒液、ハンドソープなどはドラッグストアや薬局などで一般的に販売されているものですが、供給が追い付かず製造会社に直接連絡し購入したり、通常の数倍~数十倍で転売されたりという状態が続いていました。

現在では供給が追い付き価格も安定するようになりましたが、感染対策のため衛生用品の需要は引き続き高まったままと言えるでしょう。

IT・Web業界

IT・Web関連業界はこれまでも伸びていた業界ではありましたが、コロナ禍によってオンライン飲み会、オンラインスクール、オンラインミーティングなど「オンライン〇〇」のようにインターネット上のコミュニケーションが話題となりました。Zoomやチャットなどのサービスを利用すれば、人との接触・密・外出せずに人と関わることができます。

また実店舗を持っていた企業はECサイト販売に切り替えるため、WebサイトやECサイトを新しく構築しているケースも多く見受けられました。

今後はSNSを利用した広告収益モデルやコンテンツ課金モデルなど、どの業界においてもデジタル・Webマーケティングは欠かせないものとして、さらに需要は増していくことでしょう。

電子系製造業界

巣ごもり需要によって自宅で快適に過ごすためのゲーム機や電化製品の需要が集中的に高まりました。外出自粛によって自炊する人が増加し、冷蔵庫や電子レンジ、炊飯器などの白物家電、リモートワークやオンライン授業によってパソコンやヘッドセット、プリンターなど家庭内で利用するPC周辺機器の需要も大きく伸びています。

また自宅にいる時間が増えたことで、ホームベーカリーやコーヒーマシン、電気圧力鍋など生活を充実させるために電化製品を購入する人が多くいました。

EC業界

EC(Electronic Commerce)業界は電子上の取引として、外出先・自宅からでも24時間好きな時にアクセスすることができるのが魅力です。コロナ禍で生活様式が変化してから、在宅勤務やおうち時間で過ごすためのPC関連機器や調理家電の買い替え需要が躊躇に上昇しました。

コロナ以前においてもECサイト利用者は増加傾向にありました。しかしこれまでECサイトを使って来なかった人がコロナ禍を機に利用し始め、利便性の高さから利用者数・利用頻度・発注量ともにさらに増加してきています。

物流・倉庫業界

物流・倉庫業界においてもEC業界の盛り上がりが影響しています。飲食のデリバリーではUber Eatsや出前館、家電や日用品はAmazonや楽天市場などの物流需要が爆発的に伸びました。商品を注文・購入する人が増加したということもありますが、コロナの影響により職を失った人は手軽に仕事ができるとして、自転車やバイクなどで商品を届ける配達員の仕事も人気となっています。

アフターコロナでも伸び続ける業界

医療・衛生・製薬業界

アルコールやマスクなどの感染症対策グッズは消耗品なため、パンデミックピーク時の売れ行きではありませんが、引き続きリピーターは多いと言えます。このような商品は極端に傷むものではないため、新型コロナウイルス以外の別な感染症対策や防災用品として備えておく人は多いでしょう。

物流業界

これまでも大きな伸びを見せてきましたが、コロナ禍によって更なる盛り上がりを見せているのが物流業界です。物流業界は若手人材の獲得が難しく、人材不足問題が深刻化していますが、感染症対策のためにも重要なものとなっているのが「置き配」です。

置き配とは非対面で荷物の受取りができる仕組みのもので、宅配ボックスが無い家庭に宅配ボックスの代理として機能する「簡易型宅配ボックス」や、自宅のドアノブにかける「吊り下げ式簡易宅配ボックス」を設置することで解決することができます。

置き配は歳配達をしなくてもいいのでドライバーの負担が軽減され、利用者にとっては接触せずに受け取れるメリットがありますが、その分盗難や破損を心配する人が多くいます。

専用の置き配ボックスや袋を購入することで、置き配専用の保険に加入できるサービスもリリースされはじめ、利便性から今後も伸びていく業界となるでしょう。

IT・Web業界

コロナの影響でさらに伸びたIT・Web業界ですが、アフターコロナにおいても業績が伸び続けていくと予想されます。ソーシャルディスタンスや密を避けるためにリモートワークが一般化しましたが、そのことによって会社に出社しなくても仕事を継続することができると言った証明にもなりました。

その結果インターネットを介したサービスを使う人々が急激に増加、インフラの増強、都心から地方へ移住する人の増加などの理由で各家庭・各社においてもIT化が強まった年と言えます。

またIoT、AI(人工知能)、VR、仮想通貨がさらなる進化を遂げると、構築するためのシステムやサービスも必要となっていきます。特にAIやVRはどの産業にも関わってくるため、IT・Web関連の人材需要はさらに加速していくことでしょう。

まとめ

新型コロナウイルスによってほとんどの業界は大きな影響を受けました。その結果閉店や倒産するほど厳しい経済状況が続いています。一方でITやWeb系など一部の業界では爆発的に伸びていた企業もあり、二極化が目立っていました。

苦しい時代を生き残っていくためには畑違いの業界にも目を向けて、良いものは吸収・チャレンジすることで進化し続けていきましょう。