スマートフォンやデジタルデバイスの普及により、世界中どこにいてもインターネットを利用して買い物ができるようになりました。
そんな中、
「日本国内だけをターゲットにしては、成長や売上増加に期待できない」
「今後の成長を見据えて、世界相手に挑戦してみたい」
と感じている中小企業の方・個人で営んでいる方はいるのではないでしょうか。
とはいえ、
・国際的に販売する越境ECの未来はどうなっていくのか
・事業拡大の可能性がある市場なのか
と疑問に思うこともあるでしょう。
そこで今回は、越境ECの市場規模や今後の予測を、公的な調査に基づいた資料を基に徹底解説していきます。
越境ECとは
ECとは「Electronic Commerce」を略した言葉で、電子商取引の意味です。eコマースとも呼ばれています。
つまり越境ECとは、インターネット上のショッピングサイトを利用して、国内から海外の消費者へ向けて商品を販売する国際的な取引のことを指します。
越境ECサイトは多言語や多通貨に対応しているサイトを活用するので、世界中に住む消費者へ商品を販売し、認知度アップや売上アップ、リアル店舗の集客にもつなげることが可能です。
急成長している市場のため、ビジネスを大きく拡大したい企業が越境ECに注目・出店(出品)しています。
越境ECは「自社EC型」と「モール型」の2パターン
越境ECで出店する方法は
・自社でECサイトを構築する「自社EC型」
・ECモールに出店する「モール型」
の2パターンがあります。
「自社EC型」は海外のサーバーやドメインを用意し、現地言語の設定、決済、配送まで自社で行うのが基本です。
一方、「モール型」は決済や配送のシステム等が既に組まれている国際的なECモールに出店(出品)する違いがあります。
越境EC市場規模の推移(世界・国別)
結論から言うと、越境EC市場は拡大傾向にあります。では具体的にどれほどの規模なのか
・世界全体
・市場規模トップ10(国別)
・トップ2と日本との比較
の3つに分けて順番に解説していきます。
世界全体の越境EC市場規模
まず、世界全体のBtoC-EC市場規模とEC 化率に関する推移から見ていきましょう。
出典:経済産業省「令和2年度 産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」
2020年世界のBtoC-EC市場規模は、4.28兆USドル、EC化率は 18.0%と推計されています。新型コロナウイルス感染症拡大が要因となってEC需要が増加したことで、市場規模とEC化率ともに2019年から順調に右肩上がりに増加しています。
世界的に小売り分野でのEC化が引き続き拡大するとして、2024年の市場規模は6.39兆USドル、EC化率は21.8%にまで上昇すると予測されています。ECを前提とした商品販売の在り方が問われていくこととなるでしょう。
国別で見る越境EC市場規模
続いては2020年国別のBtoC-EC市場規模トップ10を表したグラフです。
第1位は中国で2兆2,970億USドル、続いて米国の7,945億USドル、英国の1,804億USドル、日本は4位で1,413億USドルとなっています。1位の中国と2位の米国との差が大きく開き、約3倍以上の差があります。
出典:経済産業省「令和2年度 産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」
日本・アメリカ・中国の越境EC市場規模
続いては市場規模第1位の中国と第2位のアメリカ、第4位の日本3か国間の市場規模を表した図です。
出典:経済産業省「令和2年度 産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」
どういったことを指しているのか、上記図をかみ砕いていきましょう。
【日本の越境EC(BtoC)】
総市場規模 (購入額) |
米国経由の 市場規模 |
中国経由の 市場規模 |
3,416億円 | 3,076億円 | 340億円 |
【米国の越境EC(BtoC)】
総市場規模 (購入額) |
日本経由の 市場規模 |
中国経由の 市場規模 |
1兆7,108億円 | 9,727億円 | 7,382億円 |
【中国の越境EC(BtoC)】
総市場規模 (購入額) |
日本経由の 市場規模 |
米国経由の 市場規模 |
4兆2,617億円 | 1兆9,499億円 | 2兆3,119億円 |
令和2年においては3ヵ国間の越境EC市場規模は増加しており、伸び率は日本が7.6%、アメリカが9.9%、中国が16.3%となっています。3か国の中で最も総市場規模(購入額)が高かった国は中国で、伸び率は日本の約3倍増となっています。
日本製品はアメリカからの1兆7,108億円、中国から4兆2,617億円と購入金額が多く、コロナ禍においても市場規模は高まっていると見受けられます。しかし、日本の消費者がアメリカや中国から購入する額は著しく少ないことが特徴です。
その理由は「言語問題」「商品・ショップ・配送の信頼性に欠ける」といったことが要因となっています。
越境EC市場規模予測と拡大の背景
下記グラフは2019 年時点の世界の越境EC 市場規模の推計値と2026 年の予測値です。
出典:経済産業省「令和2年度 産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」
2019年では7,800億USドル(約93兆6,000億円)、2026年には6.17倍の4兆8,200億USドル(約578兆円)まで拡大すると予想されています。2019年から2016年までの年平均成長率は約 30%となっています。
※2022年3月のレート120円で試算
大幅な拡大成長を予測される背景
7年間で6.17倍まで市場は伸びると予想されるのはどういった背景があるのか、「消費者目線」と「事業者目線」に分けて見ていきましょう。
【消費者目線では】
・越境ECの認知度の増加
・自国にはない商品への取得欲求
・自国よりも安価に入手できる
・商品やメーカーに対する信頼 等
【事業者目線では】
・消費者ターゲットを世界に拡大しようとする事業者の積極姿勢
・物流レベルの向上によって越境 EC が促進される 等
このように消費者目線・事業者目線においても拡大成長する要因があります。
越境ECとインバウンドの密接な関係
訪日外国人観光客数は中国人が最も多く、新型コロナウイルス感染症が拡大する以前の2019年では、年間959万人もの旅行客が日本を訪れていました。
新型コロナウイルス感染症が本格化した2020年には世界各国からの渡航制限がかかった影響で、107万人まで落ち込んだというのが見てとれます。
出典:経済産業省「令和2年度 産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」
このグラフでは分かりませんが、インバウンド市場が盛り上がると、越境ECに好影響が与えてきたということがデータで分かっています。特に訪日旅行者が最も多い中国では、インバウンドと越境ECの関係が大きく関わっていることが分かっています。
その要因として、中国人が「越境ECで商品を購入する理由」と「越境ECを利用するまでの流れ」について見ていきましょう。
中国人消費者が越境ECで商品を購入する理由
・中国内では店頭で販売されていない製品だから(44.4%)
・日本に旅行をした時に購入して気に入った製品だから(40.4%)
・ニセモノではないから(32.4%)
・価格が安いから(30.1%)
・注文してから商品が届くまでの時間が短いから(29.8%)
こういった理由を踏まえて、中国人が越境ECを利用して日本製品を購入するまでの一連の流れを見ていきましょう。
中国人消費者が越境ECを利用するまでの流れ
- 家族や知人、インフルエンサー、口コミの影響で日本を訪れる
- 日本を訪れた中国人が日本の商品を購入する(お土産)
- 中国に戻った後、越境ECを利用して日本製品をリピート購入する
- 購入商品の評判をSNSや口コミに書き込んだり、周囲に紹介する
- 訪日経験がない中国人や、訪日経験があるものの利用したことのない日本製品を見て越境ECで購入する
- 商品について見聞きした別の人が日本を訪れる
(そして1~6を繰り返す)
このような流れがあることで、越境ECでの日本製品購入率や購入額に影響されています。新型コロナウイルス感染症の影響がなければ、越境EC市場やインバウンド市場においても拡大が見込まれていたことでしょう。
とはいえ、今後渡航制限が緩和され世界各国からの移動が安易になった際は、インバウンド市場とともに越境EC市場も増加していくと予想されます。
中国の越境ECプラットフォーム(TOP3)
中国は人口も多ければ越境ECでの市場規模が著しく大きいと先ほどお伝えしましたが、その中国ではどんなプラットフォームが人気なのでしょうか。
出典:経済産業省「令和2年度 産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」
【中国の人気ランキングとシェア率】
1位:Alibaba(阿里巴巴/アリババ)50.8%
2位:JD.com(京東/ジンドン)15.9%
3位:Pinduoduo(拼多多/ピンドゥオドゥオ)13.2%
Alibabaは2019年に中国の大手ECプラットフォームの一つ「Kaola」を買収したこともあり、中国国内で半分をシェアしています。
第2位のJD.comはSNS型のECとして2015年に設立から急成長し、第3位のPinduoduoは共同購入者を募る仕組みで割安で購入できるとして徐々に人気が上がってきています。
まとめ
今回は越境ECの市場規模や今後の予測を徹底解説しました。
越境ECは急成長している市場です。とはいえ、言語・決済・物流の壁があり、さらに集客・ブランディング・マーケティング方法は日本とは大きく異なるので、海外進出したからといって簡単に成功できるわけではありません。
何が課題なのか一つずつ確実に進めていきながら、ビジネスを拡大させていきましょう。