フィリピンへ出入国は?現地のコロナ状況や予測|2021年5月最新

世界的に新型コロナウイルスが感染拡大してから、約1年が立ちました。驚異的なスピードでワクチンが完成し2020年12月から徐々に接種がスタートしていましたが、発展途上国は資金に余裕がないためワクチン調達が遅れたり、先進国が買い占めていることから供給が十分に行われないことで警鐘を鳴らしています。

アジアからのインバウンド観光客や外国人労働者が多い日本にとっては、アジア全体の感染拡大や状況悪化は日本の経済に大きな影響を与え続けてしまうこととなります。その中でも観光客や外国人労働者が増加してきているフィリピンは、顧客としても労働人材としても必要な存在となってきています。

そこで今回は「フィリピンのコロナ状況」や「今後の経済予測」について紹介していきます。日本でフィリピン人の集客を行いたい方、人材不足によりフィリピン人材を必要としている方、フィリピン現地でのビジネスを進めていたが一時ストップしてしまった方、フィリピンへ旅行・留学・移住などを検討している方はぜひお役立てください。

「世界・フィリピン・日本」のコロナ感染状況

まずは新型コロナ感染状況を「世界」「フィリピン」「日本」と比べながら見ていきましょう。

【世界】の感染者数・死亡者数、検査数

出典:Google統計情報「2021年4月29日時点のデータ」

 

  ー  感染者数 新規感染者数 回復者数 死亡者数
世界 1.5億人 849,130人 8,730万人 316万人
フィリピン 103万人 8,313人 94.2万人 17,145人
日本 58.9万人 7,914人 51.5万人 10,160人

【フィリピン】の感染者数・死亡者数、検査数


出典:Google統計情報「2021年4月29日時点のデータ」

フィリピンは2020年2月に中国・武漢からきた観光客によって、最初の感染者が発見されました。その後国民へと徐々に広がっていき2020年3月14日の一日の新規感染者数は47人2020年で最も感染者数が多かったのは8月10日で6,725人でした。約1年が経過した2021年4月30日の新規感染者数は8,313人これまでで最も新規感染者数が多かった2021年4月2日は15,298人と驚異の数字となっています。

フィリピン政府が示す検疫ステータスは「ECQ」「MECQ」「GCQ」「MGCG」の4つがあります。2020年4月末現在フィリピン国内の感染者数が急増していることからロックダウンが強化され、最も厳しいレベルの「ECQ」となっています。

2020年4月に初めてのロックダウン「ECQ」があり、日用品店以外のお店は閉店、オフィスは在宅ワークへの切り替え、公共交通機関は営業していない、外出制限により自宅からは出られないという状態が2か月ほど続きました。2021年4月も同じ「ECQ」となっていますが、昨年と比べて公共交通機関は多少やっているため、その頃と比較すると規制が緩くなっています。

【日本】の感染者数・死亡者数、検査数

出典:Google統計情報「2021年4月29日時点のデータ」

日本は2020年2月21日の一日の新規感染者数は17人、第1波のピークは2020年4月596人、第2波は2020年8月1,597人、第3波は2021年1月7,563人、第4波は現在進行中ですが4月末時点では7,914人となっています。ゴールデンウィークで旅行や帰省をすることで人の動きが増えることで、第4波はどれだけの感染者数が増えてしてしまうのか、また7月に開始されるオリンピックにどのような影響があるのか懸念されています。

「フィリピン」感染者拡大の原因


2021年月時点でフィリピンの感染者が急増していることでロックダウンが強化されていますが、なぜ感染者数が増加したのか2つの原因を解説していきます。

ひとつ目に「一日あたりの検査数が増加」したことです。
現在フィリピンでは一日当たり5万件~6万件ほど検査を行っている状況で、そのうち20%に陽性反応が出ています。若年層の数が多いためか、陽性者のうち98%の人が無症状のようです。フィリピン政府としては1日あたりの検査数は9万件を目指しているためまだ目標には達していませんが、日本は100万人に対して7万件なので、日本よりも多い検査数となっています。

ふたつ目は「マスクをせず、話をするといった気の緩み」です。
フィリピンでは第1波が2020年4月頃からロックダウンが始まり、ステータスは最も厳しい「ECQ」となっていました。「MECQ」や「GCQ」であった地域でも現在の第2波で感染者が拡大したことで、2021年4月にECQへと逆戻りしてしまっている状態です。

「世界・フィリピン・日本」のワクチン接種状況

2020年12月からアメリカやイギリスなどでは足早にワクチン接種がスタートし、2021年に入ってからは世界全体で接種が進んでいます。2021年4月末時点での「世界」「フィリピン」「日本」のワクチン接種状況はどのようになっているのでしょうか。

世界


出典:NHK特設サイト新型コロナウイルス「世界のワクチン接種状況」

2021年4月30日時点、世界185カ国・地域で新型コロナウイルスのワクチン接種を行った人は10億8,528万回を超え、最も接種している人が多い国が中国、次にアメリカ、インドの順です。世界的にみると米欧諸国ではワクチン接種を行っている割合が高く、一部の国・地域では国民全員が一度接種をし、2回目を接種し始めているところもあります。一方で経済的に余裕がない発展途上国は確保が難しいことから、ワクチンを接種するまでに時間がかかってしまうことが懸念されています。

フィリピン

4月27日時点、フィリピンで新型コロナウイルスのワクチン接種を行った人は、医療従者を中心に1,562,815人(人口比1.4%)、そのうち必要回数のワクチン接種が完了している人は246,986人(人口比0.2%)となっています。これまでに調達した302万回分のワクチンの51.7%が打たれていることとなりますが、依然として感染者数が拡大していることから、国民全体での接種を急ぐ必要があります。

日本

4月29日時点、日本で新型コロナウイルスのワクチン接種を行った人は、医療従者を中心に2,493,961人(人口比1%未満)、そのうち2回接種完了している人は995,758人となっています。2021年月末までには1億回分を確保する見通しとなっており、これは医療従事者や高齢者を中心に2回接種できる数です。

「世界・フィリピン・日本」の経済と政治的な影響


コロナが世界的に拡大したことによって、普段海外旅行へ行かない方や海外と関わることが無い人でも、経済への影響が出ていることは実感しているのではないでしょうか。経済だけでなく政治的にも大きな影響を与えているのです。具体的にどのような影響を与えているのかみていきましょう。

フィリピン

これまで順調に経済成長してきたフィリピンですが、コロナの影響で過去15年間で最も悪い失業率となっています。具体的には2020年の年間失業率は政府が発表している調査で10%程度、民間機関が発表した調査では30%となり、いずれも高いことが分かります。

男女比では男性が63%、女性が36%、年齢層では15歳~34歳の若年層が全体の65%を占めています。またGDPの約10%を占める海外で出稼ぎに出ている人=OFW(Overseas Filippino Workers)も海外渡航先で仕事を失ってしまったり、出稼ぎに行った国・地域での感染者拡大から避難するため母国へ戻ってきている人が多くいます。

そういった影響から2020年のGDPはマイナス15%以上も落ち込み、世界的に感染者の減少や移動制限措置が緩和されなければ、フィリピン経済はさらに悪化してしまうこととなるでしょう。

日本

菅総理大臣は4月末からフィリピンを訪問しドゥテルテ大統領と初の対面会談する予定でしたが、両国の感染拡大に伴い、訪問を取りやめることが決定しました。

中国

中国の製薬会社「シノバック」が開発したワクチン60万回分が中国政府からフィリピンへ無償で提供され、2021年3月1日から医療従事者を中心としてワクチン接種が開始されました。

そんな中フィリピン西部パラワン島から西に約320km離れた場所に位置するウィットサン礁(南シナ海)に、220隻もの中国漁船が停泊しているのが確認され、そのうち一部は1か月以上もとどまり続けています。両国ともに領海と主張している状態です。

フィリピンの大統領ドゥテルテ氏は「ワクチンの無償提供など恩は受けているが、領有権について揉め事や戦争、立ち去ることもノー」と述べています。中国側はワクチン外交を行ったことでウィットサン礁含め、この海域に近いところで違法な人工建造物を建てていることも、目を瞑ってほしいというのが狙いのようです。

「フィリピン・日本間」の出入国状況


ビジネス・旅行・留学・移住などフィリピンへ入国を検討している方、ご自身・ご家族・友人がフィリピンに滞在していて出国を検討している方など、フィリピンと日本間で出入国は現在どのような状況になっているのか紹介します。

フィリピンへの入国

フィリピン国籍以外の外国人が観光目的での渡航は許可されていませんが、出稼ぎなどで他国に行っていたフィリピン国籍の方が帰国する場合は入国が可能です。またフィリピン人の配偶者や子を持つ方、投資家ビザやビジネスビザを取得している方、緊急医療搬入などの場合も入国することが可能です。

入国許可が許された人が入国した場合はまずPCR検査を実施し、検査結果が出るまでは政府が指定した宿泊施設へ待機、その後陰性となれば14日間の自宅待機となります。

日本からフィリピンへの運行状況は4月は「東京(成田/羽田)、大阪、名古屋発⇒マニラ」は多数あったものの、「東京(成田)発⇒セブ」は4月17日のたった1日のみでした。5月は「成田、名古屋、福岡発⇒マニラ着」が数便運航予定となっていますが、通常と比べると多くが運休となっています。

フィリピンからの出国

フィリピンから出国することに関して規制は出ていません。4月の運行状況は通常と比べると運休している便が多くあったものの、「マニラ発⇒東京(成田/羽田)、大阪、名古屋着」の便は多く運行していました。しかし「セブ発」の便は4月17日のたった1日しかありませんでした。

フィリピンから日本への入国

国籍・出発国問わず、海外から日本へ入国する場合「出国前72時間以内の陰性証明書」の提出をしなければ、航空機への登場を拒否されます。日本へ到着した際には検疫所が確保した宿泊施設で「検査を実施」し、陰性が確認された場合でも「施設等で3日間は待機」が必要です。

入国後3日目に「再度検査」を行い陰性と判定されれば、「14日間の自宅待機」へとうつります。14日間の自宅待機中は公共交通機関の不使用、位置情報の保存、接触確認アプリの導入、自宅待機のような内容の「誓約書を検疫所に提出」が必要となります。

「フィリピン」の街や観光地など現地の状況


ロックダウンが強化されたフィリピンですが、現地はどのような状況になっているのでしょうか。現地に滞在しているから体感的に分かることを交えて紹介していきます。

街の状況

近所への外出、公共交通機関の利用、ショッピングモールでの買い物など外出時には、必ずマスクの着用が義務付けられています。マスクに加えてフェイスシールドの着用を求められる地域やお店もあります。

ショッピングモールや街の市場(野菜、果物、肉類)など大きなお店に入る際には、アルコールで手指消毒、名前・電話番号・体温を紙に記入、顔写真付きの個人情報が載ったIDカードを提示する場所もあります。これは万が一感染者が出た時に追跡できるような対策がとられています。

2020年4月にロックダウンを行ってから、映画館、バー、ナイトクラブなど一部の業種は閉店していましたが、感染者が少ない地域によっては、感染対策が十分にとられた上で営業している業種も徐々に増えてきています。

ホテル・観光地・飲食店の状況

海外から旅行者は入国できない状況になっていますが、パラワン島やボラカイ島などのリゾート地では、国内旅行者の受け入れが徐々に再開されています。感染対策の基準をクリアしたホテルのみが営業を許可されており、通常の50%~70%程度割引を行うことで集客につなげようとしています。しかし観光客はPCRの陰性結果を持参しなければいけないため観光客が増えにくいのが現状です。

観光地はこれまで外国人観光客がメインで入っていたところの多くは休業し、国内旅行者が多かったところは引き続き営業しているように見受けられます。

飲食店は基本的にテイクアウトのみの営業が認められていますが、店員の数を少なくすることで店内の飲食を許可されている場所もあります。店内で飲食できる場合は、向かい合わせにならないような椅子の配置にしたり、アクリルのパーテーションが置かれたりなどの対策がとられています。

「フィリピン」へ入国制限が解除されるのはいつなのか


フィリピンへの入国が緩和されるのは、感染者の減少とワクチン接種率が高まってからとなれば、少なくとも3ヶ月先と予想されます。しかしセブ島やボラカイ島など海外客からの観光収入をメインとしている地域、フィリピン人の海外出稼ぎ者(OFW)からの送金で経済を補ってきたため、現在の経済状況は厳しいのが現状です。

フィリピンは医療が発達していないため無理に観光客を呼ぶことは危険行為となりますが、なるべく早く経済を回していかなければ金融危機となってしまうため警戒感が強まっています。

まとめ

今回は「フィリピンのコロナ状況や今後の予測」について紹介しました。ビジネスや旅行などでフィリピンを訪れたい方、フィリピン人を旅行者や労働人材として受け入れしたい方にとって、現在の現地コロナ状況は気になっていたのではないでしょうか。日本とフィリピン両国で入国緩和がされることはまだ先となると思いますが、今できることを把握した上でしっかりと準備していきましょう。

「外国人労働者を検討し準備を始めて行きたい方」はこちらの記事もご覧ください。
人材不足で外国人労働者を受け入れ検討中!大まかな知識や現状を解説