全国の自治体や小売店がインバウンド対策を講じる中で、特に対策が必要とされているのが中国大陸からの観光客です。訪日外国人観光客の7割以上が中国大陸からの観光客という統計があり、インバウンド対策として最重要なのは、アジア圏へのアプローチなのです。
そんな中で注目されているのが、中国大手民泊予約サイトの自在家です。民泊予約サイトと言えばAirbnbが代表的ですが、自在家はどんな特徴があるのでしょうか?本記事では自在家の特徴や魅力、Airbnbとの違いについて解説します。
目次
中国大手民泊予約サイト自在家(ZIZAIKE)とは?
自在家(ZIZAIKE)は、中国大手民泊予約サイトです。母体は健雲ネットインフォメーションテクノロジー有限会社であり、自在家の他にも携帯アプリの「台湾民泊」も展開しています。自在家には「自由自在に旅行を楽しんでほしい」というコンセプトが込められています。
中国の大手民泊旅行サイトと言えば、「途家」や「住百家」などが挙げられますが、他のサービスとは違い、自在家は個人手配の自由旅行との相性が良いので、独自のルートで顧客を獲得しています。
サイト名 | 自在家(Zizaike) |
国名 | 中国 |
本社所在地 | 上海 |
設立 | 2011年 |
リスティング数(全世界) | 約50,000 |
リスティング数(日本) | 5,420件 |
リスティング数(東京) | 1,656件 |
リスティング数(大阪) | 1,624件 |
リスティング数(福岡) | 46件 |
ホスト数 | 約4000人 |
利用者数 | 200万人 |
宿泊者数 | 累計319,238人 |
都市数 | 中国大陸45都市 / 台湾21都市 / 日本40都市 |
国数 | 台湾 / 韓国 / 中国 / 日本 /アメリカ / 香港 |
ホスト手数料率 | 10% |
ゲスト手数料率 | なし |
2011年の設立当初は台湾を中心とした民泊仲介サービスを行っていましたが、韓国やアメリカ、香港などに拠点を広げると、2015年には売上が前年の倍以上となる1億元(約17億円)を突破しました。
アジア圏の物件を多く取り扱っており、日本にも徐々にサービスを展開しています。「1人で旅行を楽しみたい!」と思っている観光客に大人気のサービスです。
自在家(Zizaike)を支える3つの特徴とは?
世界でも数多くの大手旅行宿泊サイトがある中で、自在家が多くの訪日外国人から支持されている理由が気になる方も多いでしょう。
実は自在家だから実現できる魅力的な3つの特徴があるのです。
- Booking.comとの提携
- Booking.comのデメリットを改善したサービスを提供
- アジア圏のユーザーが多い
Booking.comと提携
自在家は宿泊予約サイトとして世界最大の利用実績を持つ「Booking.com」と提携をしています。これによって、自在家で掲載された物件がBooking.comでも掲載されることになるので、より多くの外国人観光客に見てもらうことが可能になりました。
Booking.comは全世界で3億人のユーザーを抱えており、その中でも日本へのインバウンドが急増していると注目されています。日本での売上は直近4年間で821%と桁違いの成長率を見せており、2020年の東京五輪があることから、更なる伸び代に期待されています。
Booking.comに店舗掲載をすると、通常の価格よりも割高な値段設定をすることが可能です。Booking.comには高級ホテルや都市部の高いホテルが掲載されているので、相対的に民泊の値段を安く見せることができるのです。
また、Booking.comの調査によると、インバウンドで日本に来る観光客のリピート率はとても高くなっており、多くの外国人観光客が同じ都市ではなく、田舎の鄙びた情緒ある温泉施設や日本の文化を感じられるような場所を好んでいることが分かっています。
つまり、都市部ではない場所で民泊サービスを展開しているオーナーと相性が良いのです。日本に可能性を見出しているBooking.comは、さらに店舗掲載数を増やしていくと語っています。
Booking.comのデメリットを改善
「Booking.comが凄いなら、初めから自在家ではなく、Booking.comに店舗掲載をすればいいのでは?」と思った方もいるでしょう。しかし、Booking.comが多くのユーザーに好まれる裏で、民泊側にはデメリットが発生しているのです。
ユーザー視点におけるBooking.comの魅力は下記の2点です。
- 現地支払い or 事前支払いを選択できる
- キャンセル料が発生しないので、急な予定変更にも対応できる
観光客を受け入れる民泊の視点で考えると全てがデメリットになってしまうのです。予約を受け付けた段階で、民泊側は人数分の部屋や食事を準備することがあります。しかし、当日になって連絡も無しにキャンセルをされると、その分のキャンセル料も取れないどころか、新規客を受け付けることもできないのです。
しかし、自在家からBooking.comに掲載された物件については自在家の支払いシステムに沿って決済が行われるようになっています。つまり、宿泊料金の支払い形式を「事前支払い」に設定しておくことが可能です。
観光客にとっては少々不便かも知れませんが、前述した通り訪日外国人観光客のリピート率は高く、土地勘や時間感覚にも慣れています。不慣れなことが原因で急な予定変更などは考えられません。万が一のことがあっても事前に宿泊料金を徴収してあるので民泊側には金銭的な損失が発生しません。自在家ではBooking.comのデメリットを解消したサイトとして注目されています。
アジア圏の集客に強い
自在家は台湾や中国を中心にサービスを展開している企業で、特にアジア圏のユーザーが多いのが特徴です。全世界で約1万人のホストが存在する中で、アジア圏が4割を占めており、その勢いはAirbnbを優に超えています。
アメリカ発信のAirbnbよりも自在家が重宝されている理由としては、単純に中国発のサービスだからです。中国ではGoogleやyahoo!などの検索エンジンは使われておらず、中国独自の検索エンジンが利用されています。
中国人が民泊サイトを検索したときに、Airbnbよりも自在家などの民泊予約サイトが表示されるようになっているのです。
自在家とAirbnbの違いは?
「訪日外国人観光客を増やしたいなら、全世界の人を対象にしているAirbnbでもよいのでは?」「民泊と言ったらAirbnbのイメージが強い!」という方も多いでしょう。
一見、同じようなサービスを展開しているように思えますが、実はAirbnbとは異なる点がたくさんあります。
ゲストに対する手数料が無料
宿泊予約サイトは基本的に「ホスト」と「ゲスト」のどちらからも手数料を徴収します。自在家と同じサービスを展開するAirbnbの手数料は下記の通りです。
- ゲスト(宿泊者)・・・宿泊料金の合計額に対して6〜12%
- ホスト(宿)・・・宿泊料金の合計額に対して3%
一方で、自在家はホストから宿泊料金の合計額に対して10%を手数料として徴収するだけで、ゲストに対しては一円も手数料が発生しません。これはゲストが手数料を払うことに違和感を抱く中国人に対しての施策だとも言われています。
「Airbnbでは手数料を払う必要があるけど、自在家では払う必要がない!とてもお得だ!」と感じるユーザーも多いことが、Airbnbよりも利用されている理由と考えられます。
民泊の視点だと、「手数料が10%も取られるのは厳しい…」と感じるはずです。しかし、前述した通り、Booking.comに掲載する場合は通常価格よりも高く設定することが可能です。
異国の文化を堪能できるのが自在家の魅力
自在家と Airbnbの大きな違いとしてはコンセプトです。Airbnbでは「暮らすように旅をする」と掲げていますが、自在家は「宿泊先の人々の働きぶり、暮らしぶりを体験することが旅の真の魅力」と語っており、その国の朝食を食べさせるなどのサービスも行っています。
日本なら日本食を提供することで、身体の芯から日本を堪能してもらうことができます。また、日本ならではの文化を体験することによって、旅が2倍も3倍も楽しめるのです。自在家ではホストとゲストの関係ではなく、人と人の繋がりを重視しています。
自在家でインバウンド対策は可能なのか?
「アジア圏から訪れるお客さんが増えてきた!」と感じているホストも多いでしょう。特に中国人は2〜3世帯で観光をする特徴があるので、自国に帰ったときに口コミが広まりやすい傾向があります。
また、政府が「2020年までに訪日外国人観光客を4000万人を目指す」と掲げていることから、インバウンド対策は必須と言われています。
訪日外国人観光客に向けて充実したサービスを展開
民泊関連事業を行っている株式会社Licciは、2015年12月より民泊事業者に向けて開発した「民泊レンタルWi-Fi」を自在家でサービス展開することを発表しました。
訪日外国人観光客にとって、通信環境はとても重要な課題になっています。通信環境が整っていないと、わざわざWi-Fi環境のある場所まで移動したり、空港でポケットWi-Fiを契約する必要がありました。
しかし、自在家や契約している「民泊レンタルWi-Fi」では、契約期間に縛りが無く、通信量に制限が無いので、多くの訪日外国人観光客を受け入れてもサービスの質を落とすことがありません。
外国人観光客の中には、通信問題やサービスの質などを理由に旅行をやめてしまう方も多いので、Wi-Fi環境を整えることはインバウンド対策の強みとなるでしょう。
個人手配の自由旅行に特化している
中国内でも「途家」や「住百家」などの大手民泊予約サイトがある中で、自在家は日本のシェアNo.1を獲得しています。
その理由としては、ライバルとなる「途家」や「住百家」などの大手民泊事業者とはターゲットとなるユーザーをズラしたことが要因として挙げられています。
- 途家・・・中国国内の民泊をしたい人がターゲット
- 住百家・・・富裕層がターゲット
- 自在家・・・個人旅行を楽しみたい人がターゲット
一見、似たようなサービスを展開していても、それぞれターゲット層が異なるので、顧客の奪い合いなどが発生しません。中国国内で宿泊するときは「途家」を使うけど、日本に観光するときは「自在家」を使うというユーザーもいます。
最近は1〜2人で旅行をするユーザーも増えており、「1人旅と言ったら自在家!」というブランディングにも成功していることから、日本へ訪れる観光客も増えていくと考えられます。
自在家は民泊事業者に最大のメリットを与える
中国大手民泊予約サイトの自在家は、世界最大の利用実績を持つ「Booking.com」と提携をしていることで、各国の観光客にアプローチをすることが可能になりました。また、民泊事業でのデメリットである当日キャンセルに対しても、自在家経由でBooking.comに登録しておけば、万が一キャンセルになっても宿泊料金は徴収することができます。
また、ゲストに対しては一切の手数料が発生しないことや、Wi-Fiサービスなどを充実させておくことで、ユーザビリティの高さが口コミを呼び、現在はAirbnbよりもシェア数を伸ばしています。
中国発の民泊予約サービスは急増していますが、自在家は一人旅を好むユーザーをターゲットにしているので、民泊事業者とはとても相性が良いのです。