WordPressで多言語サイトを作るために重要な5つのポイント

WordPressで多言語サイトを作る場合、記事の翻訳やSEO対策など考えなければならない要素が多いため、重要なポイントが分からず悩んでいませんか?

ここでは多言語サイトの作り方において、特に重要となる以下を中心に説明します。

  • 多言語サイトを作る前に知っておくべきこと
  • WordPressを使用した翻訳方法
  • 多言語サイトのSEO対策

このページを読むことによって多言語サイトについて理解が深まり、大事なポイントを踏まえた上で多言語サイトを制作できるようになるでしょう。

ポイント1:多言語サイトを作る目的を決める

多言語サイトを制作するにあたって、一番重要なのが作る目的です。大きく分けて目的は以下の2つに分かれます。

  • 日本語サイトのコンテンツを他国などに向けて翻訳する
  • ターゲットになる国に向けて新しいコンテンツを発信する

どちらを目的にするか多言語サイトを作る前にしっかり練っておかないと目標が曖昧になってしまい、中途半端な多言語サイトになってしまいますので注意が必要です。

特に企業のコンテンツなど複数人で制作する場合は多言語サイトを作る意図を共有しておかなければプロジェクトが頓挫する危険性もあることを認識しておきましょう。

ポイント2:多言語サイトを作る上で知っておくべきこと

多言語サイトを制作するにあたって、作業に当たる前に考えておかなければならないことが存在します。ここでは多言語サイトを作る上で知っておくべきポイントを説明します。

デザインは対象となる国に合わせる

あなたは海外のサイトを閲覧したとき「日本のサイトと比べてデザインがイマイチだな……」と感じたことはありませんか?その感覚は日本人独自のものではなく、ターゲットとなる国に住む人も持っている感覚です。

すでに日本語向けのデザインが施されたページがある場合は、工数を削減するためにできるだけデザインを流用したいところですが、国によって好まれる色やフォント、レイアウトなどが存在することに気をつけましょう。

対応言語の文字量でデザインが変わる可能性を考慮する

日本語サイトにある文章を翻訳する場合、気にしなければならないことが「文字量が多くなること」です。具体的には日本語より英語の方が文字量が多くなるため、SNSのTwitterは日本語だと上限が140字のところ英語では280字まで書けるようになっています。

つまり同じ情報を日本語と英語で表現しようとした場合は英語の方が長くなるわけです。例えば日本語をベースにしたデザインを英語圏をターゲットにしたページに適応しようとした場合、文字量が多くなったことによってデザインが成り立たなくなる可能性がありますので注意してください。

主流の検索エンジンは国によって異なることを理解する

日本における検索エンジンのシェアにおいて、Webトラフィック分析Webサイト「StatCounter Global Stats」が2018年10月から2019年10月にかけて追跡調査した結果では、Googleが74.11%と圧倒的に多くのシェアを獲得しています。

しかし、全ての国でGoogleがトップシェアを獲得しているわけではありません。例えば中国ではBaiduが63.4%、Sogouが20.45%と8割近く占めており、Googleは2.74%しかありません。ロシアではGoogleが51.67%でトップですが、僅差でYandexが44.89%というシェアを持っています。

日本においてSEO対策とはGoogleへの対策という認識が広まっていますが、多言語サイトではターゲットとなる国で多くのシェアを持つ検索エンジンにマッチした施策を取る必要があることを忘れないようにしなければなりません。

出典:StatCounter Global Stats-2018年10月-2019年10月 日本のシェア
https://gs.statcounter.com/search-engine-market-share/desktop/japan/出典:StatCounter Global Stats-2018年10月-2019年10月 中国のシェア
https://gs.statcounter.com/search-engine-market-share/all/china

出典:StatCounter Global Stats-2018年10月-2019年10月 ロシアのシェア
https://gs.statcounter.com/search-engine-market-share/all/russian-federation

ポイント3:多言語サイトをWordPressで実現する方法

ここからは日本で使われているCMSで80%以上のシェアを持つWordPressを使って多言語サイトを実現する方法について説明します。

翻訳をプラグインで対応するかどうか

WordPressの多言語翻訳は大きく分けて以下の2種類に分けられます。

  • プラグインを使って対応する方法
  • プラグインに使わないで対応する方法

ここでは両方のメリット・デメリットについて説明します。

プラグインで対応するメリット・デメリット・代表的なプラグイン

プラグインで対応するメリット・デメリット・代表的なプラグインは以下の通りです。

メリット
  • プラグインをインストールするだけでおおよそのことが実現可能
  • プラグインを使わない方法と比較して導入する際の工数を削減できる
  • 記事投稿を楽に多言語化できる
デメリット
  • WordPressのバージョンを更新した時に不具合が発生する可能性がある
多言語サイトを実現するための代表的なプラグイン
  • Polylang(世界で一番使われている多言語化プラグインで41か国語に対応)
  • Bogo(作者が日本人のプラグインで必要最小限の機能だけ実装)

プラグインで対応しないメリット・デメリット

プラグインで対応しないメリット・デメリットは以下の通りです。

メリット
  • プラグインに依存しないため、不用意なトラブルを避けられる
  • プラグインのバグなどトラブルを避けられる
  • 自由に作ることが可能
デメリット
  • 工数がかかる
  • WordPressに対する知識がないと難しい

楽に多言語サイトを実現したいのならプラグインの利用がおすすめ

プラグインの使用不使用にはそれぞれメリットとデメリットがありますが、誰でも実現できるという観点から見るとプラグインを利用する方法がおすすめです。

プラグインを使わない方が安定性があって自由に作れるというメリットがありますが、難易度が高くて日常的にWordPressを使用しており、かつHTMLやCSSなどサイトを構築するマークアップ言語やPHPなどプログラミング言語に精通していないと難しいという点があります。

もし、社内にサイト構築やプログラミングに詳しい人がいない状態でプラグインを使用せずに多言語サイト化を実現したい場合は、費用はかかりますがソフトウェア会社やクラウドソーシング、フリーランスエンジニア紹介サービスなどにアウトソーシングするという手段があります。

ポイント4:グローバルSEO対策

サイト運営にSEO対策は必須ですが、多言語サイトでは海外を念頭においた「グローバルSEO」が必要になります。ここではグローバルSEOについて説明します。

機械翻訳した文章をそのまま使うとGoogleからペナルティを受けてしまう

日本語ですでに作ってある記事や文章を他国の言語に翻訳したい場合、真っ先に考えられる案が機械翻訳を使用することではないでしょうか。

しかし、機械翻訳した文章をそのまま掲載することはGoogleのペナルティ対象に該当することがGoogleが発行しているウェブマスター向けガイドラインに記載されています。ペナルティを受けるとページの検索順位が下がるなどデメリットが発生するため避けなければなりません。

ただし機械翻訳したあとに編集者が見て文章を直したものに関してはペナルティの対象にはなりません。そのため、機械翻訳を利用する場合は文章の校正が重要になります。

出典:コンテンツの自動生成
https://support.google.com/webmasters/answer/2721306

翻訳はターゲットになる言語圏に知見のあるライターに任せると安心

社内に翻訳スキルが高い社員がいないようであれば、コストはかかりますがターゲットになる国で使用されている言語に精通した人材に委託する方法があります。翻訳会社でなくてもフリーランスで活躍している翻訳家はいますので、費用を抑えることが可能です。

多言語が切り替えられるリンクをつける

多言語サイトにおいて重要な要素の一つが、言語を切り替えられるリンクを設置しておくことです。ユーザーがアクセスしてきたIPアドレスで国を判断して切り替える方法もありますが、該当の国に住んでいる人=国民ではありません。

日本でも訪日外国人の方はたくさんいます。例えば日本に住むアメリカ人の方がアメリカのサイトにアクセスしたとき、IPアドレスが日本だから日本人だと判断して日本語しか表示しない仕様だったら利便性が悪く離れていくでしょう。

そのため、言語を切り替えられるリンクを設置することによって、ユーザーに優しい多言語サイトを構築できます。

また、言語切り替えリンクはヘッダーやグローバルナビなどユーザーが最初に見る位置に設置するとぱっと見でわかるためユーザビリティが向上します。フッターに設置しているサイトもありますが、ユーザーが言語切り替えリンクを探さなければならず、気づかない可能性もあるためフッターへの設置は避けるようにましょう。

なお、言語切り替えリンクは必ず文章で表しましょう。国旗を使いたくなるかもしれませんが、英語圏はアメリカ以外にもイギリスなどが存在します。日本は日本語だけで成り立っていますから「国=言語」と捉えがちですが、世界は異なるのです。

多言語サイトを作るための独自URL構造は3パターン存在する

多言語サイトを作る場合、必要になるのが日本語版とは異なる独自URLです。多言語ページで独自URLを使うことによって、検索エンジンに各国に合わせたページだと認識させることができます。

独自URLの設定は以下の3パターン存在します。

  • 国別コードトップレベルドメインを採用する(example.us)
  • サブドメインを採用する(us.example.com)
  • サブディレクトリを採用する(example.com/en)

国別コードトップレベルドメインやサブドメインの採用はSEOの観点から見ると優れていますが、ドメインに対しての知識が必要で工数もかかります。一方、サブディレクトリを採用する方法は非常に簡単で、工数をかけずに実装することが可能です。

簡単かつ時間をかけないで多言語サイトを制作したい場合はサブディレクトリを採用することをおすすめします。

サブディレクトリの設定方法

WordPressでサブディレクトリを設定する方法はターゲットにする国用のカテゴリーを作成するだけです。

例えばフランスをターゲットにしたページを作成する場合は以下のようになります。

  • カテゴリー名:フランス
  • スラッグ:fr
  • 親カテゴリー:なし

国別サブディレクトリを作成するコツは、カテゴリー名には日本語でわかりやすい名称をつけ、スラッグには対象となる国を表すusやfrなど国別コードトップレベルドメインを指定することです。

また、親カテゴリーを「なし」にすることによって「サイトのURL/スラッグ」の形を実現することができます。上記の例だと「example.com/fr」というフランス向けのサブディレクトリを作成しています。

なお、「プラグインで対応するメリット・デメリット・代表的なプラグイン」で紹介したプラグイン「Bogo」には、記事を投稿するときに自動でサブディレクトリを生成してくれる機能もあるため、自分でサブディレクトリを作る過程を省略することが可能です。

ポイント5:多言語サイトを公開するための準備


多言語サイトの記事翻訳やグローバルSEO対策が終わったら公開へ向けての準備が必要になります。

海外からアクセスできるかサーバーの設定を確認する

サーバーによっては海外からのアクセスを制限する機能が備わっています。多くはサイトの運営者が自発的に設定しなければ海外からのアクセスを制限することはありませんが、念のため確認しておくことを推奨します。

なお、アクセス制限の確認に関しては、サーバー会社によって確認手順が異なりますので契約しているサーバーのマニュアルを参照してください。

検索エンジンに多言語ページを登録する

WordPressで多言語ページを作る場合、XMLサイトマップを検索エンジンに伝えなければなりません。WordPressには自動でXMLサイトマップを作成・更新して検索エンジンに送信してくれる「Google XML Sitemaps」というプラグインがあります。

Google XML Sitemapsを使うことによって、記事を作成するごとに自動で更新したXMLサイトマップを検索エンジンに伝えてインデックスされるようにできますので、工数が大幅に削減可能です。

サイトを運営する上でプラグインを使用しない方針でないのであれば、Google XML Sitemapsをインストールすることをおすすめします。

多言語サイト制作におすすめの書籍

多言語サイト制作は日本国内向けサイト制作と比べて考慮しなければならない要素が多いため苦労します。そのため、一度は書籍を通して一通り勉強することをおすすめします。

ここでは多言語サイトを制作する上でおすすめの書籍を紹介します。

海外Webマーケティングの教科書

多言語サイトの制作や運用、注意点を網羅して説明しています。ほかにも検索エンジンを使用したマーケティングや広報、成功事例などを説明しているため、多言語サイトの制作に携わる場合、一度は読んでおきたい良書です。

海外Webマーケティングの教科書

Multilingual Experience 外国人戦略のためのWEB多言語化

インバウンドに向けた多言語化サイトの重要性や導入方法について事例を出して説明しています。2019年に発行された書籍のため、日々進歩していくWEBを媒体とした他言語戦略の最新情報を得ることが可能です。

Multilingual Experience 外国人戦略のためのWEB多言語化

多言語サイトでインバウンドのチャンスをつかむ

海外を視野に入れた際、必要不可欠となる多言語サイトについて説明した当記事の要点は以下になります。

  • 多言語サイトを制作する前に目的をしっかりさせる
  • WordPressを使用した多言語サイトはプラグインを使うと楽に実現できる
  • 翻訳作業は機械翻訳ではなく人の手で行う
  • 海外向けの独自URLはサブディレクトリを使用するとわかりやすく、工数の削減にもなる

多言語サイトはインバウンド需要が高まっている現在でチャンスをつかむために重要な要素です。そのため、多くのユーザーに見てもらえ、商品やサービスを知ってもらえる多言語サイトになるようにしっかりした内容に仕上げるように心がけましょう。