全てを激変させたコロナ|世界各国の経済状況と2021年経済の見通しとは

新型コロナウイルスで深刻な影響を受けている多くの人々は、「いつまでこの先の見えない苦しい状況が続くのか」「今世界ではどのような状況になっているのか」と不安に思う方も多いでしょう。そこでこの記事では

  • コロナによって世界・日本の経済状況はどのようになっているのか
  • 今後どのような見通しなのか

について解説していきます。

【2020年】世界的に感染拡大した新型コロナ

2019年12月に中国武漢市で最初の新型コロナウイルス感染者が発生してから一年がたち、2021年時点で世界の感染者数は累計9000万人を超えました。中国以外で最初の症例が報告されたのは2020年の1月ですが、実はもっと前から感染が広がっていた可能性があるようです。

調査結果によるとアメリカで献血した検体から新型コロナウイルスの抗体が発見、フランスでは原因不明の肺炎症、イタリアや日本の山梨県では排水の中からウイルスが検出されていたと報告されています。そのため現在発表されている9,000万人を大きく超えている可能性もあるのです。

そんな新型コロナウイルスは2020年に世界各国で爆発的な感染の拡大がおこり、経済・社会・生活全てにおいて180度変わってしまいました。世界ではこれまでエボラ出血熱(エボラウイルス感染症)やMERS(MERSコロナウイルス感染症)などの感染症の発生、東日本大震災、リーマンショック、米国同時多発テロなど、「天災」「金融」「戦争」「税制」「通貨」によって経済的危機を経験してきました。

しかし新型コロナウイルスはこれまでのものとは比べ物にならないほど、全世界の景色を大きく変化させてしまいました。

【2020年】日本の社会経済状況

新型コロナウイルス感染症の影響により、日本の経済状況がどのように変化したのか「給付金・補助金・助成金の支援」「失業者の推移」「生活保護の状況」「自殺者数の推移」の4つの項目に分けて解説していきます。

緊急事態宣言

2020年は世界各国・地域で都市閉鎖であるロックダウンが導入されていましたが、日本ではそこまで厳しい措置はされていません。その代わり下記のような緊急事態宣言措置がとられています。

  • 飲食店など営業時間の短縮
  • 日中を含めた不要不急の外出・移動の自粛
  • イベントは最大収容率50%以下に制限
  • 感染リスクの高い部活動の制限
  • 在宅勤務(テレワーク)を推進し、出勤する場合は7割削減する など

参考:政府の発表を元に作成

給付金・補助金・助成金の支援

日本には359万の会社があると言われていますが、そのほとんどの会社・業界で売上が立たず、借金を背負ったり廃業する企業も多くありました。日本政府は企業を支えるための政策として「持続型給付金」や「小学校休業等対応助成金」を、個人向けには「傷病手当(全国健康保険協会 )」や「小学校等の臨時休業に対応する保護者支援」などの給付金・補助金・助成金の支援を行っています。

しかし事業者であれば店舗や事務所、従業員の給料など毎月費用がかかり、個人であれば家賃や食費などの生活費がかかります。いくらそれらの支援を受けられたとしても、以前までの生活のように元に戻すことができないのが今の現実です。仕事が激変してしまった人は、もちろん給料を受け取ることができません。また仕事はあるものの小さな子供を抱える親にとっては預ける施設の対応制限によって仕事を休まざるを得ないため、収入が減少してしまった人も多くいます。

失業者の推移


参考:厚生労働省「生活保護の被保護者調査(令和2年4月分概数)の結果」

新型コロナウイルスが発生してから勤め先や事業の都合による離職者数は45万人ににも及び、前年同月と比べると22万人も増加したことになります。男女差で見ると、女性よりも男性の失業率が0.7ポイント高くなっています。勤務先の社員寮に住んでいた人の中には解雇を突然言い渡された次の日に退去命令が出させ、仕事と住居を同時に失った人もいます。コロナ禍では新しい職探しが難しいことから、このタイミングでの失業は心身的・精神的にも大きなダメージを与えてしまうのです。

そして「失業によって家賃が払えず、助成金や特例貸付制度を活用するも生活が苦しい」「実家に帰る交通費がない」といった悩みから、路上生活をせざるを得ない人も多くいます。

生活保護の状況


出典:公益社団法人日本医師会「コロナ禍における今日の社会経済状況」

生活保護受給者は2020年4月時点で2,059,536人、被保護世帯数は1,634,584世帯となっています。被保険世帯の内訳を見ていくと、高齢者世帯は906,273世帯、母子世帯76,678世帯、障害者世帯203,457世帯、傷病者世帯199,283世帯、その他の世帯241,650世帯です。過去三年間の同月前年比を見てみると、毎年1%程度減少傾向にあります。

コロナ感染者が増えた2020年分の結果はまだ全て発表されていませんが、2020年9月のデータではコロナ禍で失業者が増加したのにもかかわらず、生活保護受給者が増加していないというのが驚きです。

自殺者数の推移


出典:公益社団法人日本医師会「コロナ禍における今日の社会経済状況」

新型コロナウイルス感染症が感染拡大し、6月の緊急事態宣言が発令されてから、働き盛りの若者・女性・子供の自殺者数が前年同月比で増加しています。2020年10月時点で新型コロナウイルス感染症による死者数を上回ったのです。その要因は大きく分けて「①雇用」「②人間関係」「③暮らし」「④有名人の自殺報道による連鎖自殺」の4つが大きく影響しています。

■1つ目は「雇用」です。
失業者が1%増えると自殺者数が1,000人~2,000人増えると言われています。今日本では正社員にこだわらず、非正規で働く人や自営業など働き方が多様化している時代です。パートタイム・アルバイト・派遣社員など非正規労働者は飲食店・宿泊施設・小売業・福祉といった業種の割合が高くなっています。

非正規雇用は責任軽い・自由度が高いといったメリットがありますが、その反面正社員よりも収入が低く雇用保障が少ないのがデメリットです。コロナの影響によって失業した人の割合は、「非正規雇用」の「女性」が7割を占めています。非正規雇用や自営業はボーナスがないだけでなく収入も低いので、貯金額も必然的に少なくなってしまいます。

■2つ目は「人間関係」です。
人間関係の傷つき方は男女で大きく異なります。男性の場合「仕事など外の人間関係によってストレスに感じる人が多い」のに比べ、女性は「友人・恋人・家族などの身近な人との人間関係でストレスに感じる人が多い」傾向があります。外出自粛や緊急事態宣言によって「外で仕事ができない」「同僚と飲みに行けない」「友人とお茶やランチに行けない」などストレス発散する機会が奪われてしまっています。ストレス発散の相手は家族や恋人など近い関係には打ち明けづらくため込んでしまうため、精神的・肉体的に苦しんでしまう人が多くいるのです。

■3つ目は「暮らし」です。
人間関係と似ているところがありますが、感染症対策のため自宅で過ごす時間が増えたため、虐待・育児放棄(ネグレクト)・夫婦不和・DVが高まっています。これまでは家族以外に職場の同僚や友人と息抜きすることや、子供は学校で勉強や遊びを思いっきりすることができました。しかし保育所や託児所、介護施設など預かる施設の受入停止によって、最終的に家事・育児・介護の負担がのしかかっています。

■4つ目は「有名人の自殺報道による連鎖自殺」です。
テレビなどのメディアで大きく取り上げられる有名人の自殺報道により、連鎖的に増えてしまう自殺(ウェルテル効果)が増えています。厚生労働省の資料によると、とある有名人の報道があった日を含めた10日間で、自殺者は200人にも及びました。

このようにコロナによる影響が長期化すればするほど心身的・精神的にもストレスレベルは増加してしまうため、ワクチン接種やメンタルヘルスケアなど早急な対策が求められています。

【2020年】世界各国の経済状況

続いては「世界全体」「アメリカ」「中国」「アジア」の4つに分け、世界各国の経済危機の状況を見ていきましょう。

貿易の急速な縮小「世界経済」

雇用や所得環境の悪化で経済を回すことが難しく、世界経済は大幅な落ち込みを見せています。旅行・買い物・仕事など人の動きに制限がかかれば物の需要も減少し、世界各国の貿易に大きな影響を与えました。貿易に限らず金融市場や不動産市場といった大規模なお金の流れも停滞したため、経済危機となっています。

失業者が爆増した「米国経済」

米国は2020年3月後半時点での感染者数は85,000人を超え、ニューヨークやカリフォルニアなどの主要都市でロックダウンが導入されました。そのため雇用だけでなく消費活動や生産活動に制限がかかり、企業の廃業や失業者が増加していきました。2020年4月時点で失業率は14.7%、失業保険申請者は1週間で200万件を超え、失業保険受給総数は4,000万件の失業保険が申請されるほど雇用情勢が一気に悪化されたのです。GDP成長率は2020年1月~3月期の前期比年率で、マイナス 5.0%の低下となっています。

コロナ禍でも唯一GDPプラスした「中国経済」

新型コロナウイルスの震源地である中国は、2020年の初めから深刻な影響が見られましたが、ロックダウンなど素早い封じ込めをしたことで、7月頃の感染者は一時終息しました。そして在宅勤務が増えたことによる「パソコン関連部品」、感染対策のための「マスクやフェイスシールド」、「医療機器」、テイクアウトやデリバリーによる「プラスチック」需要などで製造業は特に高い伸びを見せていました。その結果GDP成長率は2020年7月~9月期の前期比年率でプラス4.9%になるほど、世界に先駆けてマイナス成長を回避させたのです。

二極化が強まる「アジア経済」

台湾や韓国では素早く徹底した感染対策で封じ込めに成功している国もあれば、感染爆発によってロックダウンした国と二極化しています。新興国や途上国では医療体制や衛生環境問題が深刻となり、感染拡大傾向にあります。観光に依存しているタイやカンボジア、海外からの送金受取りに依存しているフィリピンのように、海外からの影響を受けやすい国のGDPはマイナス成長が目立っています。

【2021年】日本経済の見通し

日本の経済財政運営は2021年以降どうなっていくのでしょうか。新型コロナ第3波が到来した2021年1月現在の日本は、感染力が高いと言われる変異種の対策もとっていくことが必要となっています。終息に向かうとされる有効なワクチン接種や治療薬は、2020年の12月からアメリカやイギリスなど各国で開始されました。日本でのワクチン接種や治療薬が一般化するには承認の準備や手続きに時間がかかるため、供給されるまではもう少し先と言われています。

2021年内にワクチン接種が普及すれば経済は穏やかな回復を見せ、GDP成長率はプラス2.9%、2022年にはプラス4%を超える見通しです。そしてコロナ発生前のような回復は2023年であると予想されています。

メンタルケアの課題を見直し、対策をとっていこう

この記事では「世界と日本の経済状況」や「今後の見通し」について紹介しました。ワクチン接種が世界各国で普及し、人の移動ができるようになれば、コロナ発生前と同じような生活ができることを期待されます。しかし先が見えない今、苦しい現実に耐えることが多くなり、メンタルヘルスケアがさらに重要となっています。失業者のケアだけでなく、人との接触が欠かせない保育・医療・介護などの現場で働く労働者の精神的・身体的なケアも今後の大きな課題となっていくでしょう。