コロナ禍の東京オリンピック経済効果はいかに?海外の反応が話題に

コロナ禍の中、東京オリンピック・パラリンピックが無事閉会式を迎えました。大会史上初の延期となり、異例ともいえる無観客と初めてが続いた大会でした。日本のインバウンド市場にも影響をもたらした東京オリンピックについて振り返っていきましょう。

2020年東京五輪の概要

本来の東京オリンピック・パラリンピンクは新型コロナウイルスの影響で一年越しに開催されましたが、先日無事幕が閉じました。オリンピック・パラリンピックはどういった競技があったのか、まずは概要からみていきましょう。

オリンピック競技大会の概要

旧日程 2020年7月24日(金)~8月9日(日)
新日程 2021年7月23日(金)~8月8日(日)
競技数 28競技
競技内容 陸上競技、水泳、サッカー、テニス、ボート、ホッケー、ボクシング、バレーボール、体操、バスケットボール、レスリング、セーリング、ウエイトリフティング、ハンドボール、自転車競技、卓球、馬術、フェンシング、柔道、バドミントン、射撃、近代五種、カヌー、アーチェリー、テコンドー、トライアスロン、ゴルフ、ラグビー
本来の
チケット販売数       
約780万枚

 

パラリンピック競技大会の概要

旧日程 2020年8月25日(火)~9月6日(日)
新日程 2021年8月24日(火)~9月5日(日)
競技数 22競技
競技内容 アーチェリー、陸上競技、ボッチャ、カヌー、自転車、馬術、5人制サッカー、7人制サッカー、ゴールボール、馬術、パワーリフティング、ボート、セーリング、射撃、水泳、卓球、トライアスロン、シッティングバレーボール、車椅子バスケットボール、車いすフェンシング、ウィルチェアーラグビー、車いすテニス
本来の
チケット販売数       
約230万枚

参考:国土交通省「2020年オリンピック・パラリンピック東京大会の資料」(PDF)

 

各競技会場の収容定員と上限

東京オリンピック・パラリンピックのチケットは各競技を観戦するだけのものだけではありません。高級料理やお酒を飲みながら開閉会式や試合を観戦できるチケットも用意され、価格は数十万円から100万円を超えるプレミア券まで販売されていました。

チケットの販売数はもともとオリンピックが約780万枚(学校連携観戦チケット含む)、パラリンピックが約230万枚(学校連携観戦チケット含む)販売し、当日販売や追加販売も含め全て売り切れば1,000億円のチケット収入が見込まれていました。

しかし実際には新型コロナウイルスの感染者拡大を抑制するため、無観客や収容定員に制限が課せられたことからチケット収入は97%減となり、経費だけが膨張するオリンピックとなってしまったのです。ここで一つ疑問に感じた方もいると思いますが、開会式・閉会式、競技ともに完全無観客ではなかったことです。

東京・神奈川・埼玉・千葉の1都3県の会場は「無観客」、宮城・福島・静岡の3県は「収容定員の50%か上限を1万人として観客を入れて」開催されました。茨城県の競技会場に関しては、自治体などの児童・生徒が観戦する「学校連携」といった形で観客席から応援する方もいました。

下記は主要主要競技会場の一部となりますが、最大収容定員が数万人入るところ、無観客や限定された人数のみ会場に入ったということになります。

主要競技会場 最大収容定員       
国立競技場 6万8,000人
東京アクアティクスセンター    1万5.000人
日本武道館 1万1,000人
有明テニスの森 1万9900
国立代々木競技場 1万200人
さいたまスーパーアリーナ 2万1000
横浜国際総合競技場 7万2000
横浜スタジアム 3万5,000人

参考:NHKニュース

 

2020年東京五輪の経済効果はいかに

オリンピック・パラリンピック関連では競技のチケット収入だけでなくグッズ売上や整備費などを含めると、6兆1,442億円の経済効果があったと試算されています。

しかし大手企業のCM放送や数多くのスポンサー企業の宣伝活動の縮小・停止など、東京都や国の赤字を総額で見ると、2兆3,713億と大きな損失となっています。

東京都はオリンピック期間中に過去最高の1日5,000人以上の感染者数を記録し、4度目の緊急事態宣言が発令されました。選手やオリンピック関係者、観光客も不要不急の外出をしないこと=つまり消費行動に制限がかかったことで、さらに膨大な機会損失であったと言えるでしょう。

五輪で日本の文化や技術を世界に発信

オリンピックによる経済効果は非常に少ないものでした。しかし開会式・閉会式、競技中、選手村での生活が世界に発信されたことによって、海外からの好感度や注目度は上昇したと言えます。オリンピックを通じてどのような日本文化や魅力を発信できたのかみていきましょう。

日本の魅力①等身大ガンダム


出典:オリンピック公式Twitteよりスクリーンショット 

スポーツクライミング競技が行われたお台場のダイバーシティ東京プラザでは、スポーツクライミングの選手と約20メートルある実物大のガンダムがいっしょに撮影されたものです。

この写真を投稿したオリンピックの公式Twitterには、「超かっこいい」「選手と一緒に写るってるなんて最高」という絶賛の声や、「夜はライトアップして美しいですよ」「あれは等身大のガンダムです」など日本を訪れたことがある人やガンダムについて知識がある外国人の声も多く寄せられました。

日本の魅力②選手村の餃子

出典:イローナ・マー選手のTikTokよりスクリーンショット

選手村内にあるアスリート専用の食事は1日4万8,000食が無料提供されていましたが、実に美味しいと話題となっていました。

オリンピック・パラリンピックは世界各国から約1万8,000人の選手が集まるため、パスタやピザなど世界中で食べられているもの、アジア、日本食、ベジタリアン、グルテンフリー、ハラルなど宗教や文化によって多種多様なものが用意されていました。

フルーツやスイーツも合わせるとその数700種類と豊富なメニューで、24時間好きな時に好きな分だけ食べられるのが魅力です。日本食ブースではラーメンやカレーといった定番メニューだけでなく、カマンベールチーズ揚げやたこ焼きなどのサイドメニューも人気となっていたようです。

7人制ラグビーの女子米国代表イロ―ナ・マー選手は「人生で食べた餃子の中で一番おいしく、毎日食べているわ」と笑みをこぼしています。その他の選手も餃子を含めた食事はとても気に入ったようで、TikTokやTwitterなどのSNSに投稿している姿や、美味しすぎて体重が増えてしまったという選手も中にはいました。

日本の魅力③段ボール製のベッド

出典:イスラエルのレイチェル・リンチ選手のTwitterよりスクリーンショット

選手が宿泊する部屋に設置されたベッドフレームが段ボール素材を採用していたことによって、世界中で話題となっていました。木製ではなく段ボールフレームを利用した理由は「コストを抑えること」「サステナビリティ(=持続可能性)であること」「選手のパフォーマンスを最大化させる睡眠にすること」がテーマとなっていたからです。

サステナビリティとは環境・社会・経済の3つの観点からより環境に優しい大会にするため、リサイクルできる素材を使用したことが環境への配慮へと繋がっています。ベッドフレームだけでなくマットレスに関しても羽毛ではなくポリエチレン製のため、プラスチック製品へとリサイクルできるようになっている徹底ぶりです。

また体形が違う選手達を「いかに安眠させられるか」というコンセプトをもとに、日本の総合寝具メーカー「エアウィーヴ社」が開発した新技術のマットレスを使用しています。

水泳選手のように肩幅が広く逆三角形の体型、柔道選手のように体全体に筋肉がついている体系などどんな選手の身体にフィットさせるため、硬さが異なる両面のマットレス構造になっています。

この機能性が高いベッドは成人男性3人、少なくても200kgの人が同時に飛び跳ねても大丈夫な強度となっているのが特徴です。初めて使用する選手達は段ボールベッドの上で筋トレをしたり複数人でジャンプしたりと、耐久性を証明する行動がSNSで多く発信されていました。

まとめ

東京オリンピック・パラリンピックは無事に幕は閉じたものの、日本国内での新規感染者数や重傷者数は過去最多を更新するほど厳しい状態が続いています。これほど新型コロナウイルスが世界中に広まらなければ、オリンピック効果によってインバウンド需要がかなりの勢いを増すはずでした。

オリンピック効果に頼れなかった今、どのような対策・戦略を練っていけばいいのか今一度見直してみましょう。