コロナウイルスの影響で2020年4月からのインバウンド客数は99%減が続いています。世界では各国でワクチン接種が始まり徐々に抑え込めている地域もあれば、変異ウイルスによって大きく拡大傾向にある地域もあります。
一方で2019年までの訪日外国人旅行者の数は拡大傾向にあり、コロナ収束後のインバウンド市場も回復が見込まれます。
しかし企業はコロナ収束を見据えて
- 今できるインバウンド対策はどうしたらいいのか
- コロナ禍で越境ECが注目を浴びていると聞き始めたいが、
どの国・地域・エリアを狙えばいいものなのか分からない - そもそも越境ECはどのサイトを使っていいのか分からない
という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は「コロナ収束後を見込んだ準備は具体的に何をするべきか」という点について紹介していきます。インバウンド市場が回復するまでの現状を準備期間ととらえ、コロナ収束後に好スタートが切れるよう今からアクションを起こしていきましょう。
コロナ収束後を見込んだ3つの事前準備
コロナ拡大前の2019年まででは、インバウンド市場は順調に拡大していました。コロナが発生しなければさらなる市場の拡大や大きな伸びを見せていたはずです。
現状、世の中では何が起きているのか把握することに加え、将来的にどのような経済状況となっていくのか未来予測し、それに合わせて準備していくことが大切です。そうすることによって訪日外国人客が増えた際にスタートダッシュすることができます。コロナ収束後にインバウンド客を逃さないようにするため、3つの事前準備について紹介していきます。
事前準備①市場の調査・分析・戦略設計
事前準備としてまず1つ目に大事なことは「市場の調査・分析・戦略設計」を行うことです。インバウンド市場で戦っていくためには現状の把握、これまでのデータを見ると今後どんなことが予想されるのか、そしてどのようにしてマーケティングを行っていくのか戦略設計が大切です。
事前準備②SNSを育てる
2つ目は「企業SNSアカウントを育てる」ことです。これまでお店・施設・商品・サービスの情報を顧客に情報や広告を発信する際、テレビや雑誌などのマスメディアや自社のホームページなどが一般的でした。しかし現代では個人だけに限らず企業がSNSアカウントを持って発信することで、新規顧客や売上アップ、知名度アップに繋げることが可能です。
またインスタグラマーやユーチューバーといったインフルエンサーを起用したマーケティングは、企業にとって大きな影響を与えることができます。既に数十万人、数百万人、数千万人とフォロワーがいるインフルエンサーには、考え方や活動に共感するファンがついています。インフルエンサーのフォロワーと自社に合うターゲット層が合致することで新しいファンを獲得できるだけでなく、購買意欲を高めるメリットがあります。
事前準備③越境ECを始める
3つ目は「越境ECを始める」ことです。越境ECを始める理由は下記のようなものがあげられます。
- コロナ禍でリアル店舗での売上や集客をたてることが難しい
- ステイホームやロックダウンが続く中、
オンラインショッピングやオンラインサービスの需要が高まっている - 訪日旅行から帰国後にリピート購入したい
越境ECの開設をおすすめする大きな理由としては、第一にコロナ拡大前のような売上を戻していくことです。当たり前ですが売上がなければ店舗の管理費や従業員の給料といった出費はまかなうことができないので、企業は何かしら変化や新しい挑戦をしていく必要があります。
一部の地域や国では感染拡大を抑制に成功したところもありますが、多くのでは国・地域では変異ウイルスも重なり感染拡大と戦っていることが多いでしょう。そのため非接触や非対面を行わないオンラインでの需要が高まり、前例にはない新しいサービスが続々と登場しています。
訪日旅行した際に購入し気に入った商品だから、自国からリピート購入したいという声は多いです。日用品やコスメ類は消耗品なため、自国からでもスマートフォンを使って購入できる越境ECは人気が高いのです。
押さえておくべき国・地域とは
コロナ収束後を見込んで、どんな国・地域を押さえておくべきなのでしょうか。結論から言うと「中国、台湾、韓国、香港」の東アジア4地域を押さえておくべきです。中でも中国旅行者は経済に大きな影響を与えると言っても過言ではありません。それは一体なぜなのかデータに基づいて解説していきます。
国・地域別の「訪日客数」と「消費額」の内訳
出典:JNTO(日本政府観光局)「日本の観光統計データ(2019年)」
JNTO(日本政府観光局)のデータによると2019年の訪日客数は3,188万人で、訪日者が最も多い国・地域は「中国:959万人」「韓国:558万人」「台湾:489万人」「香港:229万人」の順に多いのが分かります。中国、台湾、韓国、香港の4地域では全体の7割を占めています。
次に訪日外国人の消費額と構成比のグラフをみていきましょう。観光庁のデータによるとインバウンド市場における消費額は、2013年では1兆4,167億円、2019年では4兆8,135億円と約3.4倍に成長しています。消費額の内訳でも中国、台湾、韓国、香港の4地域が上位に入り、全体の6割を占めています。
訪日者数と消費額の推移はやや鈍化しているものの成長は見せており、インバウンドは今後の日本経済を支える大きなきっかけとなっています。
出典:観光庁「2019年の訪日外国人旅行消費額」より作成
続いて、上記は主要地域における1人あたりの旅行消費額と費用内訳です。主要4地域における1人当たりの訪日旅行消費額では中国、香港、台湾、韓国の順番に高くなっています。中国の旅行消費額も約21万円と非常に高く、そのうち買い物代金が約10万円と他の地域より2倍近く金額に差があることが分かります。
爆買いブームと言われた2015年と2019年の買い物代金を比べると、約16万円から約10万円(約40%)に減少しているものの、他の地域と比べると依然として非常に高い数値となっており、今後も大きな市場であると見込まれています。
外国人の訪日旅行意向
下記のグラフは「新型コロナ終息後に観光旅行したい国・地域」として「アジア居住者」と「欧米豪居住者」にアンケートをとった結果です。
出典:日本交通公社「DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査 (2020年度 新型コロナ影響度 特別調査)」
アジア居住者の海外旅行先として選んだ国で最も多かったのが日本(56%)、次に韓国(30%)で、その差は約2倍ほど開いているのが分かります。3位以降では台湾、タイ、シンガポールとアジアを中心とし、アジアから地理的に遠すぎないオーストラリアやニュージーランドもランクインしています。
欧米豪居住者の海外旅行先に選んでいるのは、アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリアと欧米豪エリアがランクインする中、唯一アジアで日本が2位に選ばれています。
訪日旅行者の爆買いブームが終わった3つの理由とは
先述したように中国旅行者の消費額は減少しているものの、他国と比べると圧倒的に消費水準は高くなっています。主に訪日中国人観光客が一度に商品を大量購入する行動「爆買い」が日本中で一時話題となりましたが、そもそもなぜ2015年に爆買いブームが始まり、翌年2016年には減少したのでしょうか。それには
- レート(円高元安)
- 関税率の引き上げ
- モノ消費からコト消費の変化
の3つの影響があります。ブームのきっかけとなった理由を把握しておくことで、初めの項目で紹介したコロナ収束後の事前準備として状況分析や戦略設計をする際、大いに役立てることができます。
理由①レート(円高元安)
円高元安になったことで割安感が無くなり、買い物代金の消費が減少したことです。円安では買い物代金は高くなり、円高では買い物代金が下がります。そのため2015年では1元19円で約28万円の消費額から、2016年では1元16円で約23万円と前年比の買い物代金が大きく落ち込んでいます。
しかし円高が進行したのにも関わらず旅行者が前年比22%の増加となったのは、ビザの緩和や積極的なプロモーション活動などが要因となっています。今後のレート次第では旅行消費額が伸びると予想され、非常に魅力的なマーケットと言えます。
理由②関税率の引き上げ
2016年4月から日本での商品購入に対して関税率が大幅に引き上げられたことによって、訪日旅行で日本製品を購入するメリットが減少したことです。爆買いする大きなきっかけとなったのは、日本で購入する方が安く手に入れられたというものがありました。しかし中国政府は海外で購入した商品に対して関税を引き上げ、空港での税関検査が一気に厳しくなったことで、買い物支出を控えた旅行者が半数を占めその総額は2,000億円に至る試算となっています。
関税引き上げ前 | ➡ | 関税引き上げ後 | |
食品、飲料、書籍、新聞、映画、 ビデオ(税率20%・30%・50%に含まれない物) |
10% | 食品、飲料、書籍、新聞、娯楽用品、 おもちゃ、ゲーム機、家具、コンピューター |
15% |
デジタルカメラ、ビデオカメラ、衣類、自転車、時計、腕時計 | 20% | 釣り具、運動用品、電気製品、自転車 (税率15%・60%に含まれない物) |
30% |
高級時計、ゴルフ用品 | 30% | 酒、たばこ、装飾宝石等の高級アクセサリー、高級時計、ゴルフ用品 | 60% |
酒、たばこ、化粧品 | 50% | ー | ー |
理由③モノ消費からコト消費への変化
中国だけに限らず訪日外国人旅行者の消費ニーズが「モノ消費」から「コト消費」へと需要がシフトしたことです。例えばモノ消費であれば自分や家族・友人用のお土産や転売用として、ドラッグストア商品や家電製品が人気となっていました。
しかしレートや関税引き上げ、さらに越境ECの普及や日本企業の進出続出も重なったことによって、訪日旅行ではショッピングよりも日本の文化や四季を体験できる楽しみ方であるコト消費へと変化していったのです。その中でも「日本食を食べること」「自然・景勝地観光」「日本の日常生活体験」などが人気となっています。
国・地域別で人気の越境ECのプラットフォームを6選
越境ECサイトはBtoCやCtoC、最近ではBtoBも市場が大きくなってきています。今回はBtoCの越境ECサイトにフォーカスし、国・地域・エリア別におすすめの越境ECサイトを6つ紹介します。越境ECサイトによって強みや特徴が異なるので、自社に合った越境ECサイトを見つけてみましょう。
1.【中国】天猫国際(Tmall Global)
「天猫(テンマオ/Tmall)」は2008年からアリババグループが設立したBtoC向けのECサイトです。中国国内のEC市場では天猫が6割以上を占め、月間7億人のアクティブユーザーを持っているため、中国で知らない人はいないというほど人気で超巨大なプラットフォームです。中国だけでなく台湾や香港人の利用者も多く、世界で3番目に利用者が多いウェブサイトと言われています。
2014年には世界のブランドを取り扱えるよう越境EC版の「天猫国際(Tmall Global)」が設立されています。世界92か国、70,000以上の店舗数、5,000以上の商品カテゴリーと規模が大きいことが分かります。
天猫国際の特徴は「現地法人を作らず出店が可能なこと」「中国の小売業許可を取得することなく直接販売することが可能」なので出店のハードルが低いことがあげられます。ただし偽物や詐欺行為を取り締まるため、法人アカウントであることや営業許可書、商標登録証、販売ライセンス証明などを提出し、年会費や保証金といった手数料がかかります。
このような厳しい審査を通過しなければ販売できないことによって、偽物や非正規ルート商品を減らし、ユーザーから高い信頼があります。そういったことから中国版の楽天市場とも言われています。
天猫国際では日本製品の人気が高く、伊勢丹、三越、ユニクロ、マツモトキヨシ、ユニクロなど多くの日本企業が多く進出しています。ファッションやコスメ、美容、健康カテゴリーの売れ行きがいいことから、このようなカテゴリーを取り扱っている企業におすすめのモールです。
越境ECサイトはこちら▶https://www.tmall.hk/
2.【中国】京東全球購(JD Worldwide)
「京東(ジンドン/JD.com)」は中国のEC市場では30%のシェア率、天猫に続いて第2位の規模を誇る直販型ECサイトです。食品や家具などさまざまなカテゴリーの商品を販売していますが、元々はPC周辺機器のインターネット販売サイトでした。現在でも家電製品の売上は半数を占めるので、家電製品を取り扱っている企業におすすめのモールです。
2015年に京東の越境ECサイト「京東全球購(JD Worldwide)」が設立されました。海外に法人がある海外企業のみが出店できるサイトで、日本製品の販売に力を入れようと日本製品専用サイト「日本館」がオープンされ、数多くの日本企業が進出しています。
京東全球購の特徴は「天猫国際と比べると、初期費用を大幅に抑えることができること」「中国で第1位のシェア率を誇るSNS、Wechat(微信)で商品の問い合わせができること」「中国国内でも知名度が低い商品でも、ブランディング力を高めていくことができること」です。
また「ヤマトホールディングスの傘下で国際物流サービスを手掛ける、ヤマトグローバルロジスティクスジャパンとの提携している」ことによって、出店や出品のサポートや、注文からお届けまで最短4日の海外スピード輸送が可能なのもメリットです。
越境ECサイトはこちら▶https://www.jd.hk/
3.【台湾】PChome
「PChome(ピーシーホーム)」は170万点以上の商品を取り扱う、台湾最大のECサイトです。台湾では親日家が多いため、日本の化粧品、スキンケア、食品など人気が高いです。
PChomeの特徴は「自社倉庫を構えているため、最大で24時間以内の配送、18時までの注文を行うことで翌日の12時には届くスピード配送」を行っています。また「一定金額を購入することで送料無料になるため、まとめ買いするユーザーが多い」ことも人気の理由です。
越境ECサイトはこちら▶https://shopping.pchome.com.tw/
4.【香港】HKTVmall
「HKTVmall」は2017年時点の登録会員数は415万人以上、月間訪問者数は200万人以上を誇る、香港で最大級のECモールです。HKTVmallの特徴は「香港居住者向けであること」と「25歳~45歳のユーザーが70%と社会人の中でも比較的若い世代が多くを占めていること」です。また実店舗を多く持っていることから、「オンライン(ECサイト)とオフライン(実店舗)を行き来できるようなマーケティング方法が採用」されており、相乗効果を生み出しています。
越境ECサイトはこちら▶https://www.hktvmall.com/
5.【東南アジア】Shopee
「Shopee(ショッピー)」は現在シンガポール、台湾、インドネシア、マレーシア、タイ、ベトナム、フィリピンの7つのマーケットに進出している東南アジアで最大の越境ECプラットフォームです。アプリ総ダウンロード数は2億以上で5つの国のダウンロードランキングでは見事1位を獲得し、1日あたりの注文数は140万件以上と強い支持を得ています。
Shopeeの特徴は大きく4つあります。まず1つ目に「固定費や変動費などの手数料がかからないこと」です。リスクを軽減して出店できるので販売事業者は増え、自然とユーザーも集まってくる良い流れとなっています。
2つ目に「支払いオプションが多いこと」です。東南アジアでは銀行口座やクレジットカード保有者が少ないため、現金、クレジットカード、コンビニエンスストア、オンラインバンキング、Shopee専用のShopee Payなど選択が広がることで顧客が集まりやすくなります。
3つ目に「他国で同時展開できること」です。ワンクリックで複数国へ出品が可能なので、売上を上げやすくなります。
4つ目は「多言語支援サポートがあること」です。越境ECの大きな壁となるのは多言語対応ですが、Shopee側に翻訳の依頼をすることで出店や出品のハードルが下がります。また日本語対応可能なスタッフもいるため安心なのもポイントです。
越境ECサイトはこちら▶https://shopee.com/
6.【東南アジア】Lazada
「Lazada(ラザダ)」も東南アジアでナンバー2のシェア率を誇る越境ECサイトです。元々はドイツのベンチャー企業が2011年に設立しましたが、2016年に天猫を運営するアリババグループが買収したことで傘下に入りました。現在はインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの6カ国で展開し、2030年には3億人のユーザーを抱えることを目標に大きく成長し続けています。
Lazadaの特徴は大きく4つあり、Amazonのような仕組みを多く持っていることです。まず1つ目は「商品が固有のIDで管理しているので、同じ商品であれば出品登録が容易であり、ユーザーにとっても検索しやすいこと」です。2つ目は「代金の回収や売上振込、クレーム対応までLazada側が行っているため、売上をしっかり確保し面倒な手間を省くことが可能」です。
3つ目は「フルフィルメント by Amazon(通称FBA)のように出品した商品をLazada倉庫へ配送し、商品が購入されたらLazada側が迅速に梱包と配送」を行っています。4つ目は「一度の商品登録を行うことで、展開している6ヵ国での同時販売が可能」となります。同時掲載に加え、SNSとの連携も行うことで、より多くのユーザーへリーチし売上アップに期待できます。
越境ECサイトはこちら▶http://www.lazada.com/
まとめ
この記事では「コロナ収束後を見込んだ準備は具体的に何をするべきか」という点について紹介しました。今はコロナ収束後を見据えて、インバウンド市場の回復への準備期間という大事な時期です。コロナ収束後にインバウンド市場が盛り上がりとともに、越境EC市場の拡大も引き続き大きくなっていくと予想されます。越境ECで出店することで今から自社の知名度アップ、新規ファンを掴み、市場シェアの獲得を目指していきましょう。