日本食文化を海外へ伝える「食かけるプライズ」とは?SDGsや食品ロス課題も意識

訪日外国人がやってみたいこと上位に入るのは「日本の食文化に触れること」です。

世界では「日本食=ヘルシー」というイメージが浸透しており、健康を意識する人が増加したことで各国での日本食レストランが目立つようになってきました。

とはいえ、知られている日本食といえば寿司、ラーメン、天ぷら、すき焼きのような代表的なものが中心となっています。

日本で食を提供している人々にとっては
・他にももっとおいしいものがあるのにな…
・世界中にもっと日本食を広げていきたい
と考えている方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、日本の食文化を世界へ広げることにつながなる、農林水産省が開催しているプロジェクトについて解説していきます。

記事の前半ではプロジェクトで受賞されたユニークな事例を紹介します。プロジェクトに参加したい方だけでなく、自社の新たな料理やサービス展開に役立つきっかけにもなるはずです。

また、記事の後半にはプロジェクトの参加方法まで紹介しているので、興味のある方はぜひ最後までご覧ください。

訪日外国人に日本の食文化を広げる「食かけるプロジェクト」

出典:農林水産省「食かけるプロジェクト」

食×〇〇体験の「食かけるプロジェクト」

農林水産省が開催している「食かけるプロジェクト」は、訪日中に食に関わる体験をした外国人が、帰国後も本国にいながら日本の食体験ができるような環境整備を図ったプロジェクトです。

「食と〇〇」のように、食×「芸術」「文化・歴史」「農泊」「健康・スポーツ」「イノベーション」といった異分野を掛け合わせた体験をすることで日本食の関心を高め、日本産農林水産物・食品の輸出拡大につなげていくことを目的にした取組みです。

魅力的な食体験が世界に発信できる「食かけるプライズ」

食かるプロジェクトの一環として、日本各地の食と異分野を掛け合わせた魅力的な体験事例を表彰する「食かけるプライズ」。

初めて開催された2020年には日本全国から225件の応募・15の表彰事例、翌年2021年には175件の応募・15の表彰事例がありました。2022年も引き続きプロジェクトが開催されています。

食かけるプライズの受賞メリット

受賞した食体験には以下の副賞を獲得できます。

  • PR動画の制作(1分程度/本)
  • 訪日外国人向け旅行商品販売サイト等における情報発信
  • 体験コンテンツを商品化するための専門化等の派遣
  • 体験商品・コンテンツに関する農林水産物・食品の輸出商品化に向けた磨き上げ、販路開拓支援及び越境ECへの掲載支援
  • 食体験の先進事例発表会での紹介
*受賞した賞の種類、体験内容によっては、上記に該当しないものもあります。
*副賞は年ごとに異なる場合がございます。

「食かけるプライズ2021」に表彰された事例

先ほどもお伝えしたように「食かけるプライズ2021」では全国から175件の応募があり、そのうち15事例が選定されました。

  1. 食かける大賞(1件)
  2. 食かける賞(10件)
  3. ネクストブレイク賞(2件)
    応募時点で商品化されていない体験事例を対象とした賞/これから羽ばたく可能性のある食体験へ贈る賞
  4. 特別賞(2件)
    「持続可能性や食の多様性への対応等社会貢献に資する食体験」を対象とした賞

「食かけるプライズ2021」の審査基準は以下のとおりです。

  1. 訪日観光客にとって魅力的な体験事例か
  2. 日本の食文化が世界へ効果的に伝えられる内容であるか
  3. 体験事例を通じて地域産品の消費(輸出)につながるか
  4. 体験事例が持続可能な取組となる内容か
  5. 訪問実績が見込める体験事例か

引用:農林水産省「日本各地での訪日中の優れた食体験を表彰!」

受賞された中から、賞ごとに一つずつピックアップして事例を紹介します。

【食かける大賞】野菜を使ったお弁当づくり体験(神奈川県)


出典:Bento Ya Cooking公式HP

食かける大賞に選ばれたのは、神奈川県Bento Ya Cookingの「野菜を使ったお弁当づくり体験」です。

世界中どの国にいても宗教等の制約なく、野菜だけで作る再現可能な和食をコンセプトに、ヴィーガン和食料理教室が英語で開催されています。

対面での料理教室以外にもオンライン料理教室で参加することも可能です。複数の料理から好みのものリクエストできるため、ニーズや海外において集められる材料に合わせて体験ができます。

【食かける賞】3日間の発酵調味料づくり体験(奈良県)


出典:Village to Table Toursの公式HP

食かける賞に選ばれたのは、奈良県Village to Table Toursの「3日間の発酵調味料づくり体験」です。

日本酒発祥の地でもある奈良県の古民家に住み込みしながら、日本食には欠かせないの発酵調味料を3日間かけて作る体験です。

3日間のコースでは麹造りから始まり、甘酒、塩麹、味噌、醤油、みりんを作り、できあがった発酵食を使って調理しますが、旅程に合わせて味噌作り1日体験のように短いコースからも選択できます。

【ネクストブレイク賞】大豆を豆腐からオカラまで食べ尽くす調理体験(神奈川県)


出典: Kamakura Bento Cooking予約サイト

ネクストブレイク賞に選ばれたのは、神奈川県Kamakura Bento Cookingの「大豆を豆腐からオカラまで食べ尽くす調理体験」です。

海外で大豆の用途は燃料や家畜の飼料として使われることが主で、食用として使われることがあまりありませんでした。しかし、近年健康を意識した食事として和食が世界的にブームとなったことで大豆を摂取することが注目され、飲み物や食事として消費される傾向が高まってきています。

Kamakura Bento Cookingでは大豆を身近に感じてもらうため、大豆を丸ごと使ったスイーツやオカラまで食べ尽くすオリジナルのレシピを紹介した調理体験を開催しています。

環境にも健康にも優しい食品として普及されている「代替肉=大豆ミート」も、これからますます注目されていくことでしょう。

【特別賞】廃棄野菜を活用したフードロス削減メニュー提供(北海道)


出典:テンザホテル&スカイスパ・札幌セントラルのプレスリリース資料

特別賞に選ばれたのは、北海道テンザホテル&スカイスパ・札幌セントラル(旧:ホテルレオパレス札幌)の「廃棄野菜を活用したフードロス削減メニュー」提供です。

味は美味しいのに不格好なため、廃棄されてしまう野菜が多くあります。「もったいない」を減らすアイディアとして、これまで廃棄されてしまっていた野菜を活用したフードロス削減メニューを、朝食ビュッフェで提供する取り組みを行っています。

SDGsの「作る責任、使う責任」を考える中で、生産者様・お客様・ホテルが一体となり、食材を捨てずに美味しく食べきることで、関わる全ての人が笑顔で過ごせる環境作りを目指しています。

受賞された全15事例

上記4つの事例を含めた、全15事例は以下の通りです。
*下記オレンジ色の箇所は、先ほど紹介した4つの事例です。

賞名 体験場所
団体名・企業名 表彰事例
食かける大賞 神奈川県  Bento Ya Cooking 野菜を使ったお弁当作り体験
食かける賞 栃木県 有形文化財ホテル 飯塚邸 農家で食べる郷土料理とおもてなし体験
群馬県 公益財団法人前橋観光コンベンション協会 上毛電気鉄道で巡る発酵食品づくり体験
東京都 Wakalture Experience うどん作りと書道体験
神奈川県 わしょクック株式会社 オンライン「キャラ弁」教室
新潟県 十日町市教育委員会文化スポーツ部文化財課 縄文生活体験と火焔型土器鍋料理体験
岐阜県 馬瀬総合観光株式会社 馬瀬川伝統鮎漁法火ぶり漁と鮎料理体験
岐阜県 みたけ華ずしの会 みたけ華ずし作り体験と中山道ぶらり散策
三重県 まるてん有限会社 鰹節の歴史と製法見学と土鍋ご飯体験
京都府・
東京都
BOJ 株式会社 伊根の水産物調理と日本酒ペアリング体験
奈良県 Village to Table Tours 3日間の発酵調味料づくり体験
ネクスト
ブレイク賞
神奈川県 鎌倉BENTO COOKING 大豆を豆腐からオカラまで食べ尽くす調理体験
京都府・
東京都
株式会社ワントリップ 発酵食品づくり見学と調理体験
特別賞 北海道 テンザホテル&スカイスパ・札幌セン
トラル
廃棄野菜を活用したフードロス削減メニュー提供
京都府 MATA TABI 地元木材で作るぐい飲みで日本酒飲み比べ体験

 

過去の事例

食かけるプライズで受賞された過去の事例の一部はこちらです。

  • 信州の食と雪国体験ができる「レストランかまくら村」(長野県)
  • 農作業を手伝ったり農家のお母さんときりたんぽ鍋を作る「ほっこり農泊」(秋田県)
  • 隊養殖場にダイブして海中から鯛の回遊を見る「鯛になる鯛験」

このようにとてもユニークな組み合わせの食体験が受賞されていました。

「食かけるプライズ」に応募する方法

ここまで事例を見てきて、「インバウンドを盛り上げていきたい」「私たちも世界に食×文化を届けたい」と感じている方もいるのではないでしょうか。

「食かけるプライズ」は素晴らしいアイデアを持った団体・企業を、毎年約2カ月の間募集しています。ご興味のある方はぜひ応募してみましょう。2022年のスケジュールや募集内容などを参考に、参加の計画にお役立てください。

募集期間

2022年5月20日(金曜日)~2022年7月18日(月曜日・祝日)

募集内容

  • 訪日外国人向けの事業者が提供する、これまでに商品化(販売)されている日本の食・食文化を深く知ることができる食体験。
  • 商品化(販売)を検討している事業者がファムトリップ(*)等で提供したことがある日本の食・食文化を深く知ることができる食体験。

*ファムトリップ:
観光地の誘致促進のため、ターゲットとする国の旅行事業者やインフルエンサー、メディアなどを対象に現地視察してもらうツアーのこと。

引用:農林水産省「訪日外国人に日本の食・食文化の魅力を伝える「食」体験コンテンツを大募集!」

応募方法、選考基準、スケジュールなど具体的な内容は下記よりご確認ください。
【応募HP】  農林水産省「食かけるプライズホームページ
【公式HP】  農林水産省「EAT!MEET!JAPAN」
【参考資料】農林水産省「食かけるプロジェクト概要」(PDF)
【体験動画】農林水産省「maff_channel」(YouTube)

まとめ

食を通じて日本の伝統的文化や新しい文化を取り入れたユニークな事例が数多くありました。

素晴らしいアイデアを世界に発信していくことで、日本の食文化を深く伝えていくことができるのが「食かける」の食体験です。

コロナの影響で国境の行き来が難しく落ち込んだ消費回復へ向けて、食かけるプライズの参加あるいはユニークな事例を参考に、今ある魅力を最大限に広げていってはいかがでしょうか。

参考:農林水産省「食かけるプロジェクト」

グランピング施設に外国人観光客を!平日稼働で売上・集客アップの対策を解説

2021.12.25

滞在型観光と体験型観光とは?観光客が求めるご当地体験で地方活性化

2021.11.03

予習旅になるオンラインツアーとは?家で体験できる新旅行業界に手応え

2021.07.16