遂に3000万人突破!?日本の訪日外国人推移とその理由を徹底分析

訪日外国人の推移 はじめに訪日外国人が、過去にどのような推移をたどって来ているのかについて見ていきます。まずは年ごと、月ごと(2018年)の訪日外国人の推移から、その全体像を把握しましょう。次にその詳細として、都道府県ごとにどれくらい訪日外国人が滞在したか、そしてその訪日外国人はどこから来た人たちが多いのかを紹介していきます。

年・月別 訪日外国人

まずは、年度別の訪日外国人の推移から、長期的な動きを把握しましょう。また、一年の中でも訪日外国人数には波があります。どのような波が一年のうちでみられるかを、月別の訪日外国人の推移のグラフから考えていきます。

年度別の訪日外国人のグラフ(2008-2018)

グラフ1は、日本に観光目的で来た訪日外国人の推移を表しています。リーマンショックなどで世界中で海外旅行者が激減した2009年、そして東日本大震災のあった2011年を除くと、順調にその数を伸ばしていることが容易に見てとれるでしょう。 グラフ1:訪日外国人(総数)の年度別推移 特に近年その伸びは著しく、2011から2015訪日外国人数の成長率は世界最速であり(マッキンゼーによる調査)、その後も数を伸ばし続けています。 Can inbound tourism fuel Japan’s economic growth? https://www.mckinsey.com/industries/travel-transport-and-logistics/our-insights/can-inbound-tourism-fuel-japans-economic-growth

2018年の月別訪日外国人のグラフ(2017年との比較)

年々訪日外国人の数が増加していることが分かりましたが、一年の中で在日外国人の推移はどのようになっているのでしょうか?次のグラフでは、過去三年間に関して、月別の訪日外国人の推移を見ていきましょう。 グラフ2:月別の訪日外国人の推移(2018年度) 共通点としては、どの年も一年を通して訪日外国人の推移に、ある程度の波がある点が挙げられるでしょう。いずれの年も4月、7月、10月、12月では訪日外国人が増加傾向にあります。一方、そのピークの後の5月、9月、11月、1月は、訪日外国人の数が落ち込みがちなのがわかります。いずれの場合も、直近のピークから20〜30万人もしくはそれ以上の減少がみられ、一年の中でも訪日外国人の数の波がある傾向が伺えます。 このように、いずれの年もおおよそ同じような傾向が見られますが、2018年は9月に数にして40万人以上という、顕著な減少がみられました(この理由に関しては後述)。2018年9月ほどの減少ではありませんが、2017年の2月も、他の年よりも明らかな減少がみられます。一年の中で、ある程度は決まったパターンがありそうですが、年によって増減の程度にも波があるということが言えそうです。

訪問先・宿泊地別 訪日外国人

次に、訪日外国人が、実際にどこに訪れているかを紹介します。

都道府県別訪問率

まずは、都道府県別の訪問率を見てみましょう。次のグラフは、2017年に訪日外国人がよく訪れていた15の都道府県に関して、どれくらいの割合で訪日外国人が訪れていたかを表しています。 グラフ3:都道府県別 訪日外国人の訪問率 どちらの年も40%以上の訪日外国人が訪れている東京都が訪問率でトップで、2017年は大阪、千葉、そして京都が続いています。この三府県が、2013年と比べると訪問率が伸びています。 一方で、それ以下の都道府県に関しては、沖縄、奈良、静岡を除くと、2017年は同程度の訪問率、もしくは減少していることが分かります。 つまり、訪日外国人の訪問は、特定の地域(特に大都市圏)で増加が見られるものの、その他の地域との偏りがある状態なのです。 出典:国土交通省観光庁「訪日外国人消費動向調査」http://www.mlit.go.jp/common/001226298.xls

訪日外国人延べ宿泊数のグラフ

訪問率の次に、訪日外国人の延べ宿泊数に関しても紹介します。先程の訪問率は日帰りの訪問も含んだ数字でしたが、次のグラフでは、日帰りの旅行客は含まれません。それぞれの都道府県で宿泊した訪日外国人の数の総数を示します。 グラフ4:都道府県別 訪日外国人延べ宿泊者数 出典:国土交通省観光庁「宿泊旅行統計調査」 http://www.mlit.go.jp/common/001247521.xlsx 2017年一年での訪日外国人延べ宿泊数は、7969万人泊でした。ここでも、先述の訪問率と同様に、特定の地域に訪日外国人が集中していることが分かります。東京都、大阪府、北海道で全体の約50%を占めているのが現状です。 尚、2016年と比較して、伸び率が高かったのは、大分(67.7%)福島(65.2%)青森(62.5%)の3県でした。

国籍・出身地別の訪日外国人

次に、日本を訪れる外国人は、どこの国・地域から来るのかを見ていきます。 グラフ5:国籍(出身地)別 訪日外国人延べ宿泊数(2017年) ここで顕著なのは、全体の7割以上を、東アジアの4国で占めていることでしょう。 中でも中国は単体でおよそ四分の一を占めており、その存在感は圧倒的です。また5位以下も、タイ、シンガポール、インドネシア、マレーシアと、比較的近隣にある東南アジアの国が多くランクインしており、これらのアジア圏の国だけで、全体の約75%になります。 他にトップ10に入っているのは、アメリカ(6.7%)、オーストラリア(2.5%)、イギリス(1.5%)という英語圏の国々でした。 前年と比べた際の伸び率は、韓国(前年比42.4%増)、ロシア(同36.3%増)、インドネシア(同27.6%増)が目立ちます。後述にあるように、特にロシアは、ビザの条件緩和の恩恵もあって増加率上昇に繋がった可能性もあります。 出典:国土交通省観光庁「宿泊旅行統計調査」 http://www.mlit.go.jp/common/001247521.xlsx

訪日外国人の推移の背景

さて、これまで見てきたように、訪日外国人の推移は全体的には、順調に増加傾向にあると言えるでしょう。しかし、なぜこのような訪日外国人はこのような推移を見せているのでしょうか?ここからはその理由や背景に関して、分析していきたいと思います。

訪日外国人の推移に関して、その増加要因とは?

まずは、訪日外国人がここまで増加している要因を探っていきたいと思います。大きく分けて、政府主導の政策など国内で起きている関連要因と、それ以外の外的要因が考えられます。

内的要因

内的要因で一番大きく、そして効果を発揮していると考えられるのが、政府主導の「観光立国」樹立を目指した一連の政策です。 日本は、2003年に「ビジット・ジャパン」と銘打ち、観光立国に向けて新たな第一歩を踏み出しました。その後、2015年には新たに「観光ビジョン」が策定され、「世界が訪れたくなる日本」を目指し、民間企業も積極的に巻き込んだ改革に取り組んでいます。訪日外国人旅行者の目標も、来る2020年までに4000万人、そして2030年までには6000万人で今の二倍と、これまでと同じかそれ以上の成長率を見込んだ目標設定をしています。 この目標達成に向けて行われている改革の中には、既に結果を出している施策もあります。2018年の政府からの発表によると、特に以下の政策は、訪日外国人観光客の増大と、その消費活動の活発化に効果的だったという見方を示しています。
  • ビザの発行条件の緩和
  • 免税制度の拡充
  • 出入国管理体制の充実
  • 航空ネットワークの拡大
出典:国土交通省観光庁「明日の日本を支える観光ビジョン」 概要 http://www.mlit.go.jp/common/001126601.pdf 例えば、ビザの緩和では、「ビジット・ジャパン」の事業重点国としていた国のうち、ビザの発給が厳しかった5カ国(中国、フィリピン、ベトナム、インド、ロシア)へのビザを発給しやすくしました。 この結果、中国からの観光客は100万人以上増え、2017年から2018年にかけてロシアの訪日外国人の増加も顕著なものになりました。2015年と2017年の国・地域ごとの訪日外国人数を比較した場合、ベトナム(40%増)、フィリピン(37%増)、ロシア(30%増)、中国(32%増)、インド(7%増)と、いずれも増加しています。

外的要因

次に国内だけではなく、国外の事情も含め、増加の要因を考えてみましょう。 まず訪日外国人の推移で関連することの中で注目すべきは、全世界で海外旅行者数を楽しむ人の数でしょう。この数が増えれば増えるほど、潜在的な日本への旅行客も増えると考えられます。結論から言うと、全世界的にも海外旅行を楽しむ人が増大しており、そのマーケットは拡大し続けてると言えるでしょう。 グラフ6: 国際観光客の推移 引用:Tourism Highlights 2018 Edition https://www.e-unwto.org/doi/pdf/10.18111/9789284419876 (日本語訳は当方により追加) グラフ6は全世界で海外旅行をした人の総数を示すグラフです。1990年には4億人強だった海外旅行者は、2017年には13億人を突破し、わずか27年で3倍以上になりました。 その変化も、グラフ7から分かるように、ここ10年は、リーマンショックの煽りを受けた2009年を除き、4%前後の水準での成長率を記録しており、2017年に至っては一年で7%(8600万人増)増加すると予測されています。 グラフ7: 国際観光客数の変化 引用:Tourism Highlights 2018 Edition https://www.e-unwto.org/doi/pdf/10.18111/9789284419876 (日本語訳は当方により追加) 国際観光機関による2018年版のレポートでは、今後も前向きな成長が見られると指摘されています。2010から2020にかけての平均の伸び率は3.8%と予測されており、全世界的に観光業のマーケットは当面の間は成長を続けると考えられるでしょう。

そのほか外的要因

全世界レベルでの海外旅行客数の増加は、訪日外国人の増加の後押しになる可能性が高いですが、他にもその推移を押し上げる要因として考えられることがあります。その一例として、経済的な要因が挙げられます。 例えば、2015年発行のマッキンゼーによる日本の観光業のレポートでは、日本の観光業に関して、円安であることが大きな追い風になり得ることが指摘されています。日本に興味関心があっても、日本旅行が高いという感覚を持つ人も少なくないため、その経済的な心配事を緩和してくれる円安の状況が、そういった潜在的な観光客の後押しになる可能性があるそうです。 The Future of Japan’s Tourism: Path for Sustainable Growth towards 2020 https://www.mckinsey.com/~/media/mckinsey/industries/travel%20transport%20and%20logistics/our%20insights/can%20inbound%20tourism%20fuel%20japans%20economic%20growth/the%20future%20of%20japans%20tourism%20full%20report.ashx

減少要因

さて、次に見ていくのは、訪日外国人が減少する背景には何があるのかどいうことです。前述にあるような増加要因が打ち消されてしまうことで、減少に転じる可能性は高いです。世界的に国際観光客が減少することや、円高などの経済状況などが考えられますが、それ以外には、どのような要因が考えられるでしょうか。具体的に2018年の例から考えていきます。

2018年の場合

上のグラフにある通り、2018年の前半は2017年からの成長の加速度をそのまま引き継いで、訪日外国人の推移も順調な滑り出しを見せていました。2017年に落ち込んだ2月も、そこまでの減少を見せることなく、続く春の観光シーズンまでその勢いは続いています。 しかし、そのまま夏も順調にいくかと思いきや、例年訪日外国人のピークとなる7月もそこまで伸びず、むしろ9月に向かって急激に減少しています。この背景にあったのは、度重なる自然災害でした。 2018年は多くの自然災害に見舞われる一年になりましたが、観光業界においては、7月の西日本豪雨と9月の北海道胆振東部地震が大きかったと言えるでしょう。この2つの災害により、関西国際空港と新千歳空港という、日本の玄関とも言える空港が閉鎖してしまったためです。これにより、全体的な訪日外国人の落ち込みに繋がってしまったのです。 関西国際空港閉鎖による影響は甚大でした。政府によるとうけいによれば、今や韓国、中国、台湾、香港からの訪日外国人の3割前後は、関西国際空港から入国しています。訪日外国人の7割以上を占めるこの4カ国からの入国が制限されてしまうことで、全体としても2割の訪日外国人の来日の機会を失ってしまうことになりました。 政府統計の総合窓口「出入国管理統計 / 出入(帰)国者数」 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00250011&tstat=000001012480&cycle=7&year=20170&month=0&tclass1=000001012481&stat_infid=000031724894 このように、事前に予期できない自然災害により、訪日外国人が減少する可能性を常に孕んでいると考えられます。 一方、自然災害以外でも減少の要因として指摘できるものがあります。例えばJTB研究所のレポートでは、日本に寄港するクルーズの本数の減少が、2018年の後半の成長率の足止めになったという指摘がありましたが、自然災害による減少に比較すると、その減少の幅は限定的でした。 データで見る訪日インバウンド市場トレンド https://www.tourism.jp/news/2019/02/inbound-market-trend-2019/

潜在的な減少要因:訪日中国人の減少

潜在的な減少要因としては、訪日中国人の減少が挙げられます。 現在の訪日外国人に占める訪日中国人の割合は2018年で24.1%にのぼるため、訪日中国人の減少は訪日外国人全体の減少にも繋がりかねません。このように一国に依存度を高めてしまうことにはリスクがあると言えるでしょう。 実際に韓国では、2017年、中国人観光客の減少が、訪韓外国人の減少を招きました。 2016年までの韓国への海外旅行客の状況は、現在の日本と似ており、その7割を周辺4カ国が占めていました。その中でも特に中国人観光客の割合は高く、2016年には700万人弱(全体の46.8%)が中国本土からの旅行客でした。 しかし、2017年、訪韓外国人が前年比で22.7%(約400万人)も減少してしまい、全体の訪韓外国人も1700万人台から、1300万人台まで落ち込みました。2017年3月から始まった減少傾向は2018年2月まで続き、2018年も2016年以前の観光客数までには戻っていません。これは、中国人観光客の激減によるものだと考えられています。 具体的には引き金になったのは、中国政府による韓国の観光業への制限措置でした。 韓国のTHAADというミサイル配置に対抗し、中国人による韓国へのグループ旅行に制限をかけたのです。 South Korea tourism hit by China ban https://www.bbc.com/news/business-40565119 現状、日本による中国人観光客への依存度は、2016年の韓国には及びませんが、今後一国への依存度が高まるにつれ、同様のリスクが生じる可能性も高まることは、意識すべきことでしょう。

地方の訪日外国人

さて、これまでは、日本全体の訪日外国人の推移を見てきましたが、今度はより細かく各都道府県や地域ごとに見た訪日外国人の実情を紹介していきます。 まずは、現在の三大都市圏とそれ以外の地域における訪日外国人の滞在に関するデータを見ていきましょう。 グラフ8:訪日外国人延べ宿泊数 出典:国土交通省観光庁「宿泊旅行統計調査」 http://www.mlit.go.jp/common/001247521.xlsx このグラフで見てとれるように、大都市圏のみならず、それ以外の地域でも訪日外国人の滞在は増加していることが分かります。一方で、半数以上が大都市圏に集中していることも事実であり、その差が縮まっていることはありません。 マッキンゼーの2015年のレポートでも、訪日外国人の分布の不均衡さが指摘されています。訪日外国人の宿泊日数に関して、2015年は全体の48%が東京都、大阪府、京都府に集中していました。そして、訪日外国人の三分の二が上位10%の政令指定都市に宿泊しています。他の国と比較しても、この集中度は高いと結論づけています。 現在も引き続き、同様の傾向が見られると言えるでしょう。グラフ4でも示されているように、2017年も特定の県に宿泊日数が集中しています。トップスリーが、東京都、大阪府、そして京都に入れ替わり北海道となりましたが、この三都道府で全体の49%を占めています。 加えて同レポートでは、訪日外国人が地方を訪問した際も、彼らの地方での一日あたりの消費額は平均で30%少ないという報告もありました。これは6000億円分の収入の機会を逃してしまっていることになります。 しかしこでは、発想を転換すると、それだけの規模の潜在的なマーケットが、大都市圏以外では眠っているとも考えられます。 では一体、どのような施策を行えば、その潜在的なマーケットに手が届くようになるのでしょうか。同レポートでは、日本の多くの観光地は、その認知度の低さが問題だと指摘しています。 特に西欧人は、日本の観光名所に対しての認知度は低くても、その詳細や魅力を知ることで興味を持つことが示されています。 日本にある観光地36箇所の認知度調査では、富士山(53%)、沖縄(29%)、京都(22%)がトップスリーに入ったものの、それ以下は上位10箇所に入るものでも、全て10%を切ってしまい(鎌倉(9%)、知床国立公園(4%)、奈良(7%)、奥入瀬渓流(1%)等)、非常に認知度が低いものでした。 しかし、それぞれの観光資源についての説明を受けると、それぞれの観光地に魅力を感じ、訪れてみたいと買いとする人の平均は29%まで上昇しました。 例えば、鎌倉を知っていると答えた西欧人はわずか9%でしたが、鎌倉の歴史文化や、東京からの交通の便の良さを説明すると、回答者の42%が、鎌倉に訪れるための日本旅行に価値があると答えるようになりました。 同様に、認知度がわずか1%しかなかった奥入瀬渓流でも、東京からわずか4時間で行けること、原生林の中を美しい渓流が流れていることを説明すると、35%の回答者が魅力的な観光地だと答えたのです。 これは、認知度不足を補うことで、大都市でなくても訪日外国人の増加が期待できる観光地があることを示唆しています。 The Future of Japan’s Tourism: Path for Sustainable Growth towards 2020 https://www.mckinsey.com/~/media/mckinsey/industries/travel%20transport%20and%20logistics/our%20insights/can%20inbound%20tourism%20fuel%20japans%20economic%20growth/the%20future%20of%20japans%20tourism%20full%20report.ashx 実際に、ヨーロッパの国の中には、(イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン)地方も訪れている人が近年増加しています。 グラフ9:国籍・地域別 訪日外国人による地方訪問率の推移 このグラフは、旅行者一人が、地方部(東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都、兵庫以外の道県)を何箇所訪れたかを示します。100%を超えると、在日外国人一人あたりで平均して、一箇所以上の地方部を訪れたことを表します。 訪日外国人全体で言えば、100%を下回っており、地方部以外の都市圏に訪日外国人が集中しているように思えますが、2016年の数字で見ると、イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、スペインは、いずれも110%を超えており、一人あたり一箇所以上地方の方にも足を伸ばしているということです。 また、2012年と比べた場合、2016年の地方訪問率を伸ばしている国や地域が多いですが、イギリスは23%、ドイツは30%、フランスは15%、それぞれ伸びています。イタリアとスペインに関しては比較対象がないのですが、それでもこれらのヨーロッパ五カ国の推移から考えると、地方の観光地のポテンシャルの高さは否定はできないでしょう。

国としても地方を伸ばしたい

「観光ビジョン」でも地方に滞在する訪日外国人を増やそうという流れが見られます。三大都市圏以外の地方部の外国人述べ宿泊者数を3倍近くにしたいという、目標が掲げられています。 観光ビジョンでは3つの柱が掲げられていますが、そのうちの1つ目が「観光資源の魅力を極め、地方創生の礎に」です。 これは、元々ある観光資源の魅力を活かし地方を活性することを目指すものです。文化財や国立公園を広く観光客に開いたものに改善していくことや、美しい街並みづくりを目指す「景観計画」、そして農村や漁村の人々との交流を行う「農泊」の推進などが含まれます。 2本目の柱は、「観光産業を革新し、国際競争力を高め、我が国の基幹産業に」というスローガンが掲げられています。魅力あふれる観光資源を、更に有効活用するための手法を導入することで、訪日外国人の増加を目指すものです。 60年以上続く観光関連の規制の緩和や、世界基準の発想による経営を取り入れることで、国の基幹産業として確立できることを目指しています。 例えば、世界水準のDMO(Destination Management / Marketing Organisation)の導入が目指されています、これは観光地に関するマーケティングやブランディングを、戦略的に推進していくための専門機関です。この導入をすることは、先述の観光地の認知不足の解消に繋がっていくでしょう。 最後の柱は「すべての旅行者が、ストレスなく快適に観光を満喫できる環境に」ということで、観光に関するインフラの改善を目指します。これは、交通の便が物を言うであろう、地方の観光には欠かせない視点です。公共交通利用環境や通信状況の改善、キャッシュフリーが達成されることで、より訪日外国人が快適に観光を楽しめるようにしたいというものです。 このように、実際に効果が出るまでには時間がかかる施策も含まれているものの、国家として地方の観光業を後押しする施策が目白押しな状況なのが分かります。 「明日の日本を支える観光ビジョン」施策集 http://www.mlit.go.jp/common/001126604.pdf 地方の訪日外国人の絶対数自体はまだ小さいのが現状ですが、その推移は増加傾向にあります。訪日外国人の潜在的なマーケットを意識し、それに似合った施策やサービスの提供を行うことで、より大きなマーケットになれるポテンシャルを孕んでいると考えられます。

訪日外国人にまつわる予測

さて、訪日外国人の推移とその現状を、全国レベル、そして地域レベルで詳細に見てきましたが、次に気になるのは、これからの話です。訪日外国人の推移は、今後どう変化していくと考えられるでしょうか?

予想がしにくい観光市場

日本の観光産業の先行きは、自然災害等の影響を受けやすいため、予想がしにくい産業とも言えます。 外国人向け日本観光情報サイト「ジャパンガイド」を1996年から運営しているステファン・シャウエッカー氏(ジャパンガイド株式会社 代表取締役社長、兼「ビジットジャパン大使」)は、2011年の東日本大震災の際に、観光産業の不安定さを実感したと言います。そして、近隣の国がより大きな影響を受けやすかったということです。 地震、台風などの自然災害に見舞われることも多い日本。訪日外国人に関して近隣の4カ国からの割合が高い今の状況は、そういった予期せぬ事態が生じた場合、より大きな打撃を被ってしまうということが考えられるかもしれません。 「2030年観光の未来需要予測研究」 http://jrc.jalan.net/wp-content/uploads/2018/05/researches061.pdf

それでも、しばらくの間は増大傾向が予想できるだろう

それでも、全体的にはしばらくの間、前向きな訪日外国人の推移が見られる確立はとても高いと言えます。それは、世界的な海外旅行客の増加や、国による積極的な観光関連の政策が、訪日外国人増加を牽引し続けられる可能性が高いためです。

潜在的なリピーターの存在

いくら世界中で海外旅行客が増加していたとしても、日本に訪れなければ日本の観光業は盛り上がりません。また、国の政策がいくら推し進められたとしても、実現までに時間を要するものや、実際の効果がまだ見えないものもあります。 こうした中、日本の訪日外国人の増加に欠かせないのは、リピーターを増やすことです。 グラフ10:日本の観光地魅力度調査より 引用:インバウンド観光は日本の経済成長の原動力になり得るのか(一部改変) https://www.mckinsey.com/industries/travel-transport-and-logistics/our-insights/can-inbound-tourism-fuel-japans-economic-growth/ja-jp このグラフは、中国、タイ、アメリカ、オーストラリア、イギリスの人を調査対象とし、観光地としての日本をどれくらいの人が知っているか、旅行を検討しているか、実際に訪問しているか、再訪したいか調べたものです。 アメリカ、オーストラリア、イギリスでは、旅行を検討から実際に行動を移す人の減少率が著しく、訪日経験がある人は全体の3割程度にと留まっていますが、そのうちの8割前後もの人が再訪を検討していることが分かります。中国、タイでも、同様に、一度訪問した人が再訪を検討する確率は80%を超えており、いずれも平均よりも高い数字です。 この調査から、訪れるまでのハードルの高さは感じられるものの、一度訪れた訪日外国人は、比較的リピーターになりやすいと考えられるでしょう。このようなリピーターを地道に増やしていくことで、より確実に訪日外国人の増やせるでしょう。

公表されている予測値

JTB研究所は、2019年の年間訪日外国人を3550万人(前年比13.8%)と予測しています。これは2018年よりも431万人の増加です。 自然災害・関西空港の閉鎖により伸び率が伸び悩んだ2018年でしたが、そこで落ち込んだ反動で伸びる可能性が高いと見ているためです。 データで見る訪日インバウンド市場トレンド https://www.tourism.jp/news/2019/02/inbound-market-trend-2019/ また、政府が4000万人の目標を掲げている2020年に関しては、矢野経済研究所が3,679万人という試算を出しています。 インバウンドマーケットの実態と今後の予測 https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/1632 そして、2030年は6045万人が宿泊するという推測をじゃらんリサーチセンターは発表しています。 「2030年観光の未来需要予測研究」 http://jrc.jalan.net/wp-content/uploads/2018/05/researches061.pdf もちろん、以上は推測値に過ぎませんが、少なくとも2030年までの訪日外国人の推移は順調なものになる可能性が高いと言えそうです。

まとめ

2003年にビジット・ジャパンの名の下、観光立国の樹立を目指してきた日本は、2018年に年間3000万人を達成してきました。訪日外国人の推移からも分かるように、近年、類まれなるスピードの成長率を見せています。 その背景には、「ビジット・ジャパン」「観光ビジョン」など官民一体で訪日外国人を促進しようという国の動きが大きな役割を果たしていると考えられます。加えて、世界的な海外旅行者の増加や、中国人をはじめとする東アジア4国からの観光客の増加が、現在の好調な訪日外国人の推移を牽引してきました。 しかし、2011年の東日本大震災や2018年の西日本豪雨のような自然災害が、訪日外国人の減少につながっていることも、データから読み取れます。また、訪日外国人は、その7割が東アジア4国に依るところも大きいことも、政治・経済・社会的情勢などによっては、不安要素になり得るでしょう。 一方、地方での訪日外国人の推移を振り返ってみると、絶対数はまだ限られたものですが、その数は着実に増加しています。そのため、国としても地方の訪日外国人を更に増すべく施策を打ち立てています。こういった観光地では、認知度の低さや、交通の便の悪さなどが問題ではあります。しかし国を挙げて世界水準のDMOの導入や、インフラ整備を進めようとしている動きがあるため、これらの要素がうまくいけば、地方の訪日外国人が更に増加していく可能性も十分にあり得ます。 以上のような観点から、若干の不安要素はありながらも、訪日外国人の推移は、しばらくの間は前向きに考えられる可能性が高いと考えられるでしょう。]]>