東京オリンピック開催により日本の経済や影響はどう変化があるのでしょうか。そしてインバウンド市場はどう変わっていくのでしょうか。観光客の思考や行動の変化を知ることで、増え続ける訪日観光客でビッグビジネスチャンスへとつなげることができるでしょう。今回は「オリンピックによる経済の効果や予想」「インバウンド対策」などをご紹介していきます。
目次
オリンピック開催に伴う経済効果の予測
みずほ総合研究所によるオリンピック開催に伴う経済効果は約30兆円になると試算されています。そのうち約2兆円は施設の設備や大会運営費などの直接効果で、残りの約28兆円は日本食需要・インフラ整備・多言語対応の付随効果が多くをしめています。
過去オリンピック開催地域でのインバウンド需要は上昇傾向
東京オリンピック後の訪日観光客は急激に減少するのではないかと、インバウンドバブルのように考える人も少なくありません。しかし1992年以降にオリンピックを開催した5か国のデータをみると、開催後10年間の推移は長期にわたり上昇している実績があります。
出典:みずほ総合研究所株式会社https://www.mlit.go.jp/common/001029815.pdf
その理由として「世界的な海外旅行ブーム」と「日本の四季や文化を体験する日本旅行への関心が高まっている」ことにあります。
初めて日本を訪れる訪日客はまずは大都市でショッピングを楽しむことにポイントをおき、次回は空気が綺麗で自然豊かな地方にも行ってみたいという地方への興味によってリピーターとなっていきます。また政治的側面でも、ビザの緩和・飛行機や船を利用したネットワークの拡大、Wi-Fiなどのライフラインインフラの整備も要因となり多くの観光客を増加させる傾向にあります。
2020年観光客の予測人数
東京オリンピック開催地として決定した2013年に、2020年の東京オリンピックまでには2,000万人を達成しようと大きく目標を抱えていました。しかしクルーズ船の上陸やアジアを中心とした訪日客により、2016年には目標を超える2,400万人という高い成長を遂げました。
とても早い段階で目標達成したことで新たなる訪日観光客数は、当初の2倍である4,000万人、消費額8兆円の目標を掲げています。
東京オリンピック開催で影響する日本の経済効果
いよいよ間近に迫ってきた東京オリンピックですが、経済効果は30兆円を超えるとも言われています。果たしてどんなところに経済効果があるのか説明していきます。
新しい雇用ニーズの高まり
オリンピックの大きな影響は競技場・宿泊施設・交通インフラなどの施設作りをする建設業や、旅行・飲食・宿泊サービスなどのサービス業界の人材需要が高まっていることです。
しかし建設業・サービス業は過重労働・低賃金の理由で人手不足が深刻化し、従業員一人一人への負担が増えるも給料は低賃金のままというのが現状です。
建築業では職人、サービス業ではおもてなしサービスを十分に提供できる従業員、それぞれの業界でマネジメントをする人材が必要です。新しい雇用のニーズが高まることと同時に「人を育てる」・「労働環境の改善」が重要になってきます。
東京だけでなく地方活性化へと繋がる
オリンピックは観光・物産など日本全体をPRする絶大な機会とも言えます。これはオリンピックの参加者や観光客が開催地以外にも訪れることから、「日本の四季を体感」・「自然遺産を堪能」する地方の魅力をアピールすることができます。
そうやって開催地の東京から地方へと、日本全国に経済効果を生む可能性が広がっていきます。
民泊・ホテル宿泊施設の需要の増加
現在東京オリンピックに出場する選手・関係者・観客に向けて建設ラッシュとなっている関東近郊エリアですが、特に何度も日本を訪れているリピート客から地方への人気が高まっています。そのことによって地方の宿泊施設不足が問題となっています。
ホテルの建設費用は莫大であることや建設人手不足と、地方空き家が増加する現代の問題には、空き家をうまく利用した民泊運営企業が新しい価値を生み出しています。
オリンピック開催に伴いインバウンドの7つの対策
訪日旅行者にとって「ストレスフリー」であることが、滞在中の満足度アップとまた行きたいと思わせるリピーター客へと繋がることとなります。
多言語対応
2017年の国別訪日観光客は、第1位に中国、続いて韓国、台湾、香港とアジアを中心としたエリアです。
2020年東京オリンピックは206の国・地域から参加が予定されていますが、人気選手を一目見ようと多くの国や地域から訪日することで、言葉の壁をどうやって乗り越えるかが重要です。
そのため道路や交通の標識、観光・サービス・注意書きの案内、放送などさまざまな言語に対応した設備環境を整えることが必要です。これは訪日外国人のためだけではなくオリンピック関係者や交通機関で働く人など、多くの日本人にも関係していく課題でもあります。
コミュニケーションツールとして音声・画像・手書き翻訳アプリや端末の導入、その他ITを使ったサービスの展開も欠かせません。
また翻訳ボランティアや多言語対応のスタッフだけでは足りないと予想されるので、外国語アレルギーである多くの日本人の手助けが必要と見込まれるでしょう。
キャッシュレス決済
日本での決済方法は「現金・クレジットカード・電子マネー」が一般的ですが、中国国内で94%のシェアを誇る「We Chat Pay(微信支付)」や「Ali Pay(支付宝)」、その他の国でも普段の生活に利用されているモバイル決済導入を追加する必要があります。
簡単に決済できることで人気のモバイル決済システムが旅先でも使えるということは、彼らにとってストレスなくスムーズに利用できることとになります。そしてシステムを利用できることが集客のきっかけづくりにも繋がるため、利用者側も設置者側にとってもメリットが大きい決済方法と言えるでしょう。
Wi-fi
日本国内で利用できる無料Wi-Fiスポットは数年前と比べ増えた印象ではありますが、まだまだ使える場所が少ないといった意見が多くの訪日旅行者から寄せられています。
オリンピック開催時にはスタジアムなどの会場の他、交通機関の空港や駅、そしてカフェやホテルなどの施設で使えるよう、2020年までに無料Wi-Fiの設備を増やし完了させる必要があります。そして接続利用を簡単にできる仕組み作りも重要となってきます。
現代ではなくてはならない存在である電波通信は生活を豊かに楽にさせるインフラだけでなく、滞在中の訪日旅行者の方にとっても大切な役割をもっています。観光地情報の検索・SNSを利用した情報発信・災害時の情報確認ができ、滞在時の満足度をあげることがリピーター確保にも繋がっていきます。
オンラインで使う翻訳アプリの利用時にも役立ちます。
宿泊先の確保
オリンピックに向けた都市部のホテル建設が進んでいますが、ここ数年急激に増え続けている訪日観光客上昇率からホテル不足になるのではと懸念されています。
現在はシティホテル・ビジネスホテル・旅館などの施設の他に、一般の方も参入できる民泊施設の増加も大きな手助けとなるでしょう。それらの宿泊施設は訪日旅行者がスムーズに予約できるような、いくつかの言語対応サービスも必要になってきます。
また宿泊施設では珍しい試みなのが、豪華客船クルーズを活用した「ホテルシップ」の検討・調整が進行していることです。現在運営する予定のクルーズ船は2つの外国船で、東京湾と横浜港での停泊となっています。
ホテルシップの導入は宿泊施設の他エンターテイメントを体験できる複合施設として楽しめ、オリンピックの一時的な需要を建築という手段ではなく移動するホテルとしての利用価値はとても高いものとなるでしょう。
交通手段
オリンピック期間は空港・ホテル・競技会場・観光地と移動する中で、鉄道・バスなどの公共交通機関やシャトルバスの利用が欠かせません。通勤通学客で混雑する朝と夜のラッシュ時にも、観光客だけでなく選手・関係者・メディアと数多くの人が利用すると予想されます。
東京都内は複雑な鉄道網になっていて、日本語を読めない話せない訪日客を対応するため鉄道内には人が溢れかえり混雑と混乱から帰宅難民者を招くことが予想されます。
タクシーや車での移動では、大会期間中多くの車が流れ込むことで大渋滞や事故のリスクも高まることとなります。
オリンピック期間中は混乱を少しでも抑えるよう、訪日観光客にも理解できる多言語対応の表記、渋滞緩和の交通マネジメントシステム導入などが鍵となるでしょう。
セキュリティの強化
オリンピックは様々な国から人が集まることによって、多くの文化が入り混じることになります。そこから文化的な衝突が生まれ、治安が悪くなることが心配されています。
そして交通・通信・電気・水道などのインフラやIoTの普及により、家庭でのトラブルも起きる可能性もあるでしょう。アカウントの乗っ取り、チケット詐欺、システム障害を発生させるなどのサイバーテロ攻撃を受けないためにも、政府や企業だけでなく一般ユーザーもセキュリティ強化と治安悪化にならないための準備が必要です。
SNSとリスティング広告の運用
世界で利用されているFacebook・Twitter・InstagramなどのSNSを運用は、情報を発信できコミュニケーションがとれる便利なツールアイテムです。
SNSの利用は旅行前や旅行中の情報収集となり体験した後には投稿するという流れから、滞在前後のアプローチをすることができます。
さらに地域の認知による広告収益や、ニーズを把握するデータ収集の役立つことができます。ターゲットやユーザーの把握、どのようなところに興味があり需要があるのか、どこに上質なサービスを提供するのかが明確にできるでしょう。
2020年の日本でのオリンピックは東京を中心とした関東圏で競技が行われますが、SNSを利用した地方の魅力を発信できるプロモーション活動が大きな経済効果に繋がる鍵となるでしょう。
今後も訪日旅行者が増え続ける理由
日本へ訪れる訪日外国人は急激に増え続けていますが、その理由はどこにあるのでしょうか。
団体旅行から個人旅行へとシフト
2012年には全体の約60%を占めていた個人旅行(FIT)ですが、2017年には約75%まで増加しています。
この要因は、観光や買い物を目的としたあらかじめプランが決められたパッケージツアーではなく、出張などのビジネスや家族や友人に会うなどのプライベートの時間を過ごすことが増えたことで旅行スタイルが変化したことが一つの理由です。
個人旅行の最大のメリットは、日本食や文化の体験・買い物などそれぞれのやりたいことを自由に選択でき、時間も気にせず過ごせることです。この自由に過ごせることが、また新たな訪れたいスポットを発見できリピーターとなっていきます。
オリンピックの際に訪れる訪日観光客はオリンピック観戦の他に、観光や買い物を一緒に楽しむ目的を持っているため幅広いニーズに対応できる個人旅行がますます増えていくことになるでしょう。
モノ消費からコト消費への移行
数年前までは爆買い流行の言葉であった「モノ消費」が人気でしたが、近年では買い物よりも体験・経験に使う「コト消費」への価値があがっています。
コト消費での一番の人気は日本食を食べることがあげられ、次に繁華街の街歩きや自然・風景を楽しむ観光も上位となっています。何度か日本を訪れたことがあるリピーターにとっては欲しい物は買い揃えてしまった現状から、グルメや街歩きの自分自身の身体で感じる特別な体験や思い出に価値を置く「精神的充足感」の需要が高まっています。
「物の豊かさ」から「心の豊かさ」に変化したのは、インバウンドに限らず国内でも伸びてきている市場です。
近年は世界的にみてもシェアリングサービスやフリマアプリの増加により、さらにモノを消費することの価値が薄まり新たなサービスを展開するコト消費市場が拡大しています。
LCCを含めた航空路線の拡大
格安で飛行機に乗れるLCC(ローコストキャリア)や、しっかりとしたサービスが行きわたるFSN(フルサービスキャリア)の航空旅客数が日本全体で年々増加している背景により、多くの訪日外国人を引き寄せる要因があります。
地方の国際空港もじわじわと人気をあげており、例えば「茨城空港」が首都圏第3の空の玄関口として近年注目されています。現在国内線・国際線合わせて1日18便の発着数で、国際便は中国・台湾・韓国の出入国外国人が中心となっています。
国際線はLCCを採用しておりFSNと比べると断然割安の航空券が手に入りますが、茨城航空は空港使用料が安いためさらに安いチケットの購入ができることになります。茨城空港から東京駅への移動は直行バスを利用して片道500円の破格の安さも、混雑と価格問題を解決する注目の空港とされています。
東京オリンピックへ参加する選手・関係者・観客のほとんどは成田空港や羽田空港を利用すると予想されますが、実は茨城空港など地方空港が混雑を避けお得に利用できることもあります。
訪日外国人の増加傾向理由を理解すると、新たなビジネスチャンスへと繋げることができる
東京オリンピックによる「経済の効果や予想」「インバウンド対策」についてご紹介していきました。オリンピック開催期間では、これまでより膨大な訪日外国人の増加が予想されます。
日本のファンを増やすきっかけづくりとして今から東京オリンピックに向けたインバウンド対策をしっかりプランニングし、オリンピック終了後もどのような変化になるのか数手先を見据えた行動が大切になります。
コト消費で体験した人はSNSを通じ世界へ発信し、さらに誰かがその発信を見て同じように発信するループが、何度も日本を訪れるリピート客へと繋がっていきます。
モノ消費からコト消費へ、そして団体旅行から個人旅行への移行変化で、新しいコンテンツ作りと環境を整えていきましょう。