中華圏で大切な伝統行事「中秋節」。日本では十五夜と同じく台湾でも中秋節の日には美しい満月を楽しむ他に、独特の少し変わった風習があります。台湾の人々は中秋節を大切にする歴史や尊い物語も合わせてご紹介します。
目次
中秋節とは?
中秋節は中華圏(台湾・中国・香港・ベトナムなど)の人々が毎年伝統的にお祝いする日です。日にちは旧暦の8月15日に固定されていますが新暦に直すと毎年日にちが異なり、例えば2018年は9月24日、2019年は9月13日、2019年は10月1日となります。
伝統行事を行う季節の節目となる日「節句」があり、台湾三大節句である「春節(しゅんせつ)」・「端午節(たんごせつ)」・「中秋節(ちゅうしゅうせつ)」の1つでもあります。
中秋節は日本で言うところの「十五夜」で、その日は学校も会社も休みの祝日になります。普段別々で暮らしている人もその日は家族の元へ戻り、みんなそろって食事をしてお祝いをします。
中秋節の歴史
皇帝たちが中秋節の満月の夜にその年の豊年を感謝し祝い、また次の豊作を祈ったと言われています。その儀式を兼ねた月見イベントが一般にも知れ渡り、秋の満月の夜は大きく丸い月を楽しみながら豊作・健康を願うという行事へと広く伝わりました。
中秋節の物語
十五夜をイメージすると、すすき・お団子・ウサギをイメージする人も少なくありませんが、これらのきっかけになる物語があります。諸説はいくつかありますが、その一つを紹介します。
うさぎの薬作り
ある昔中国で、ウサギ・サル・キツネが山を歩いていました。山の中で力尽き倒れたみすぼらしい姿をした老人の姿を見て、キツネは川から魚、サルは木の実を老人に与えましたが、ウサギはどんな苦労をしてもなにも渡せるものがありませんでした。
どうにかして食べさせたいと考えたウサギは「私を食べてください」と自らの身体を火の中へ入れ、その身を老人へ食料として捧げました。
その老人は実は3匹の行いを試そうとした帝釈天(タイシャクテン)という神様でした。そのうさぎを哀れみ、月の中にウサギをよみがえらせることで、みんなの手本にしたのです。そして月の仙女「嫦娥」に付き添い不老不死の薬作りを手伝わせるようにさせました。
中国では不老不死の薬を作るウサギですが、日本ではウサギが餅をついていると異なるようです。
台湾では中秋節をどう過ごす?
月見と月餅(げっぺい)
台湾では家族の繋がりやご先祖など亡くなった人を敬うことを大切にしています。丸い餅は家族円満・無病息災を象徴として、親戚・学校・会社などでお世話になった人へ月餅を贈り合い、先祖にはお供えするというのが風習です。
そして家族団欒を象徴している丸月の夜に家族・親戚・友人など集まり食卓を囲んだ後、1年間の中で最も美しく見られる月を見ながら持ち寄った月餅を仲良く食べます。
日本の月見は白くてまん丸い餅を食べることが多いですが、中秋節で食べられる餅は小麦粉生地の中に餡・クルミ・干し柿・松の実などを入れた焼き菓子です。地域やお店によって見た目や中身の材料は異なります。
伝統的な餡が入った月餅以外にも、近年ではリンゴ味・ラズベリー味・カレー味の餡が入ったものや、見た目が月餅の形をしたハーゲンダッツのアイスクリームなどさまざまな種類の月餅を楽しむことができますよ。
文旦(ぶんたん)
柑橘系の台湾の秋のフルーツである文旦を食べます。日本と台湾の文旦の種類が違い少し縦長の形をし、皮がかなり厚いので輪切りにして食べるのがおすすめです。味は甘めのグレープフルーツのような感じで、あっさりしておいしいフルーツです。
BBQ
中秋節の日にBBQをするのが近年では当たり前になりましたが、実は伝統的な文化ではないのです。きっかけは数十年前にある焼肉のタレメーカーが作った販促キャンペーンで、「中秋節に家族みんなで仲良くバーベキューをしましょう」と宣伝しました。
そこから家族や会社の仲間とBBQするのが広がり、町内で行われるBBQ大会と大きく拡大していきました。
面白いのがBBQスペースは住宅の敷地以外に、繁華街の大通り・住宅地の歩道・ビルの階段スペースなど至る所でBBQするのがよくある光景です。中秋節の時に台湾の街を歩けば、美味しそうな香りに何度も遭遇するでしょう。
中秋節に台湾旅行へ行ったら混む?
満月の丸みは家族団欒として家族みんなで過ごします。よって普段違う町で暮らしている人々もこの日に合わせて帰省するため台湾の交通機関は混みあいます。
しかしファイアードラゴンダンスや花火などのイベントが行われ、異文化を体験する貴重な時間となるはずです。せっかくの中秋節を楽しむなら、事前にその年に行われるスケジュールを確認してから旅行の計画を立ててみましょう。
また台湾のスターバックスなどいくつかのお店では、中秋節に合わせてタンブラーやマグカップなど月とうさぎなどの限定商品を販売しています。もし台湾のスターバックスで見かけたら、自分や友達へのお土産として購入するのもいいかもしれませんね。
台湾で中秋節を楽しむおすすめの場所
おすすめ月餅のお店
皇玥餅藝(Imperial Patisserie)
中からとろりと溶け出すカスタードクリームが楽しめる新感覚の月餅です。通常の月餅は甘い餡や塩漬け卵が入っていることも多く、食べなれない日本人には好まれます。もちろん通常の月餅も販売しています。
スターバックス
スタバで月餅が買えるのは驚きですが、スタバのロゴが表面に描かれ月餅のおいしい甘さを感じられます。お店で販売している香り高いコーヒーや紅茶にもぴったり合います。
太陽餅
月餅とよく似ていますが実は少し違うのが太陽餅です。月餅は本来の甘さと餡が入っていますが、太陽餅はミルク感でクリーミーな味わいが特徴です。日本人にはこちらの方が好きな人も多いようです。
焼肉ができるお店
台湾に友人や知り合いがいれば一緒にBBQに参加させてもらうのが一番いいですが、初めての旅行など右も左も分からないと体験することができません。そこで少しでも中秋節を味わってもらえるように、おすすめのお店紹介します。
台中市:星海碳烤
焼肉と海鮮が食べられ、カラオケができる焼肉屋です。夜景が綺麗に見える場所なので、食後に月見をしながら月餅を楽しむことができます。
台北市:乾杯 中山店
焼肉屋と居酒屋を合わせたようなお店は、明るく活気があふれています。価格はリーズナブルで、若者に人気のお店です。
台北市:紅花鐵板焼101
焼肉ではありませんが本格的ステーキを味わえるお店です。場所はあの有名なビル台北101にあり、肉厚のステーキとシーフードを楽しむことができます。
夏の行事「中元節(お中元)」
中秋節は秋の伝統行事ですが、夏に行う「中元節」も大切な伝統行事です。中元節には日本のお盆のような行事で、神様へのお供えが現代へと変わり現代のお中元という風習になったきっかけでもあります。中元節について詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてみてください。
中元節についての記事はこちら
家族を大切に思う台湾人の心も月餅のようにまん丸い
台湾での中秋節は、月見をする行事からBBQを楽しむ方がメインになってきていますが、それでも月餅は必ず食べ家族そろって仲良く過ごすという文化はしっかり残っています。
伝統的な行いと時代とともに変化していく行い両方を大切にしながら、家族や仲のいい友人と集まり楽しい夜を過ごしたいものです。
中秋節の日に台湾旅行へ行った際には、月餅や期間限定の中秋節グッズを見つけてお土産にするのも面白いと思います。