中国で話題沸騰のライブコマース!市場規模やインバウンドへの活用事例

いま中国のオンラインショッピングにおいて、注目を集めているのが「ライブコマース」です。これは生放送で動画を配信し、商品の購入につなげるというEコマースの新しい形態です。ライブコマースの市場規模は年々拡大傾向にあります。インターネットを通した商品の販売を行う上では、これらのトレンドをうまくキャッチアップしていく必要があるでしょう。日本でも、訪日中国人を対象としたEコマース「越境EC」において、ライブ配信などを活用する企業や観光地も増えているようです。

しかしライブコマースについて、あまり知識がないという方も多いでしょう。そこでこの記事では、中国のライブコマースの現状や基本的な知識、インバウンド対策としたのライブコマースについて、詳しく解説します。

ライブコマースとは何か?

まずはライブコマースとは何か、正確に理解しましょう。ライブコマースとは、ECサイトに動画の生配信を組み合わせた、最先端のEコマースの形です。Eコマースとは電子商取引を意味する言葉であり、おおまかに言えば「インターネット上での買い物」と表現できます。

ライブ動画を配信するのは、インターネット・SNS上で大きな影響力を持つ「インフルエンサー」と呼ばれる人たちです。中国では、KOL(Key Opinion Leader)や網紅(ワンホン)と称されることもあります。

一見テレビショッピングに近いように思えますが、根本的な違いがあります。それは、双方向のコミュニケーションを実現しているという点にあります。ライブコマースは、視聴者はコメントなどを通して、配信者とリアルタイムにやり取りできる点が特徴的です。これにより、視聴者は商品について深く理解してから購入することができるようになるのです。また、自身が応援しているインフルエンサーと直接やり取りすることで、ライブ感・臨場感を味わうことができる点も魅力的です。

「双方向にやり取りができる」「ワンクリックで決済が完了する」といったインターネットの強みを存分に活かした商品販売の形なのです。

世界的にライブコマースがトレンドとなっている背景には、動画配信アプリの台頭が挙げられます。YouTubeやInstagram、中国ではタオバオライブやTikTokが、若者を中心に爆発的に人気を高めています。もはやテレビと同等かそれ以上に、動画配信アプリは、人々の生活に浸透していると言えるでしょう。

ライブコマースの分類

ライブコマースは、「インフルエンサーが商品を紹介する」という形態が一般的です。ブランドや販売店がインフルエンサーとコラボレーションし、フォロワー層へ向けて商品をプロモーションします。またブランド自体が配信のアカウントを持ち、定期的に商品を紹介することもあります。

多くのフォロワーを抱えているインフルエンサーは、自身でブランドをプロデュースして、その商品を紹介することもあります。

中国のライブコマース市場

中国ライブコマースの現状を紹介します。中国ではさまざまなアプリがライブコマースに活用されていますが、なかでも代表的なのが「タオバオライブ」です。世界的なIT企業アリババグループが出資したECサービス「タオバオ(淘宝)」がベースとなったサービスであり、ECサイト運営とライブ配信を同一のプラットフォームから行うことができます。

タオバオライブは、一般的な動画配信サイトと異なり、ECサイトがベースとなっているため、ユーザーも商品を購入することを軸にサイトを訪れます。そのため、ユーザーの購買意欲が高く、売上に直結するという点が特徴的です。

2018年には、タオバオライブの配信による販売額は1000億元を超えたと報告されています。さらに販売額は前年比の400%増加と、目覚ましい勢いで市場が拡大していることが分かるでしょう。タオバオライブの配信は、ファッションやコスメの分野を中心に広まっており、いまや1日に6万件以上の配信が行われています。2018年時点で年間取引額が1億元を超えたインフルエンサーは80人以上も存在します。

タオバオに限らず、TikTok(抖音)やKwai(快手)などの動画配信アプリが、ライブコマース市場への事業展開を行っています。

なぜライブコマースは人気なのか?

中国でライブコマースが人気な理由の一つに、信頼性が担保できるという点が挙げられます。中国では、マスメディアや従来の広告に対する国民の信頼はあまり高くありません。そのため、商品のレビューやインターネット上の口コミ、友人・知人の評価などが、商品購入の参考となります。

ライブコマースの配信は基本的に生放送となるので、編集がされることはありません。またインフルエンサーは、日々の活動を通してフォロワーとの信頼関係を築けているため、発言や評価を信用してもらいやすくなっています。消費者側の心理としては、「自分が支援・応援しているインフルエンサーが紹介している商品だから」と安心して商品を購入できるのです。

ライブコマースのメリット・デメリット

ライブコマースのメリット・デメリットを紹介します。

ライブコマースのメリット

ブランド側のメリットとしては、より多くのユーザーにリーチできる点が挙げられます。視聴者はインフルエンサーのファンが中心なので、信頼関係が構築されています。そのため購入につなげやすくなるのです。応援している人が紹介している商品を買いたいというファン心理も、購入に拍車をかけると考えられます。

購入者側のメリットとしては、商品についてその場で質問できる点が挙げられます。疑問点はすぐ解消できますし、ファッションアイテムの素材やサイズ感、コーディネートについてなど、気軽なコメントのやり取りを行うことができます。まるで店員と会話しながら買い物をする感覚で、ネットショッピングが可能になるのです。

ライブコマースのデメリット

ライブコマースのデメリットとしては、一定以上の成果を上げるためには、大きな影響力が必要という点が挙げられるでしょう。インフルエンサーには、商品の魅力を的確に伝達するトーク力・プレゼンテーション能力が必須となります。また在庫のバランス調整など、オンラインショッピングならではの課題も残っています。

日本のインバウンドにおけるライブコマースの現状

日本にもライブコマースのトレンドは広がっています。特にライブコマースが普及している中国に向けて、日本の商品をPRする試みもなされています。

日本を訪れる外国人の数は、2012年以降、年々増加しています。そのなかでも最も多いのが、中国からの訪日客です。日本の家電や医薬品を大量に購入する「爆買い」も、訪日中国人の増加とともに、話題となりました。

中国人は日本へ訪問するだけでなく、日本の商品をインターネットで購入しています。その理由としては、日本製品のクオリティの高さが挙げられるでしょう。特にコスメなどライブコマースと相性のよい商品は、中国のインフルエンサーを起用したマーケティングも行われています。例えばミキモト コスメティックスは、中国のインフルエンサーを起用したライブコマースを実施し、ハンドクリームや保湿美白パウダーの商品PRを行いました。およそ1時間程度の配信でしたが、視聴者数は20万人以上に達し、150万円もの売上を上げたそうです。

ライブコマースは動画を活用するプロモーションの形であるため、観光地のPRも期待できます。特に日本は四季折々の風景が魅力であるため、中国のインフルエンサーとコラボレーションした動画などで、観光地を宣伝するというやり方も普及していくでしょう。

動画トレンドを取り入れて、積極的な情報発信を行いましょう

この記事では、中国のライブコマース事情について解説しました。ライブコマースはメリットも大きく、スマートフォン時代に合った商品宣伝のやり方と言えます。一方で、生放送であるという点や、一定以上の影響力やインフルエンサー自身のスキルに左右されるという点はネックとなるかもしれません。動画やライブ配信を通したマーケティングを行う際には、実績のある専門の企業に代行するなど、リスクを抑えて施策を実施するとよいでしょう。