近年、円安の動向が日本経済に様々な影響を与えています。その中で、注目されるのがインバウンド(外国からの訪日観光客)に対する影響です。
内外価格差の問題が議論されていた日本ですが、円安の動きと共に「安い国」「安いニッポン」と言われるようになりました。
しかし、これは一面的な見方であり、単に通貨の価値が下がっただけではありません。
そこで今回は、円安がもたらすインバウンドへの影響や、外国人にとって魅力を感じる日本の価値・魅力について詳しく探っていきます。
円安とは
まずは、円安について簡単に説明いたします。
円安は、日本円の価値が他の通貨に対して下がることを指します。
これは、日本円を外貨と比較して買いやすくなることを意味し、国内企業にとっては輸出が促進される一方で、インバウンドにとっては日本での滞在が魅力的になる可能性があります。
円安の影響度
円安は国内だけに限らず世界中にさまざまな影響を与えますが、具体的にどういった影響につながっていくのでしょうか。
①輸出産業の強化
円安は日本の輸出企業にとって有利な状況を生み出すことができます。
円安になることで海外では日本の製品が安くなることで手に取りやすくなるため、経済的に大きな割合を占めている自動車メーカーなど、海外への輸出が増加すれば企業の収益が向上し、雇用機会が増加する可能性が高まります。
景気が良くなればモノがよく売れ、需要が供給を上回り、モノの値段が上がることでインフレになるのです。賃金アップにも影響されるでしょう。
しかし、原材料の価格高騰などモノ作りの費用がかさむことでモノの値段が上がり、企業の利益が減少してしまう場合もあります。
これに伴い物価が上昇することで給与が変わらない、あるいは給与が減少することで生活が圧迫されてしまうことにもつながっていきます。
②観光業の振興
観光業界にとってはビジネスチャンスとなる可能性が高まります。
円の価値が下がっていることで、外国人にとっては安く日本旅行や日本での買い物を楽しむことができるため、「観光客数」と訪日旅行でどれだけお金を使ったかを表す「旅行消費額」が増加する傾向にあります。
さらに、外国人観光客の増加により、飲食店、宿泊施設、観光名所などで消費することで観光地の発展や地域経済に貢献し、雇用の増加にも期待できるでしょう。
③インフラ設備への投資
インバウンドを含めた観光需要が高まることで、インフラの整備や観光施設の改善に対する政府や企業の投資が期待されます。
コロナ以前の訪日旅行では東京や大阪などの大都市への訪問が人気でしたが、コロナ禍でも安心してゆっくりのんびり過ごせるなどの理由から、地方都市部の滞在が大きく注目されるようになりました。
自然や文化などの観光資源を守るための対策や、観光地や特定の地域において訪問客が集中的に増加する現象「オーバーツーリズム」への課題解決として投資対象として考えられています。
④出稼ぎ労働者
円安により、日本を離れて海外で働く日本人の若者が増加しています。
日本での所得額と比較すると2倍〜3倍アップ、貯金額で見たら10倍ほど違う人も中にはいるようです。
日本にいた頃と比べて労働時間は半分ほど短いのに、同じくらいの給料をもらっている人は、プライベートな時間を持てることも海外で働く魅力の一つとなっています。
一方で、日本で働く外国人労働者の日本離れが加速しています。
円安の影響で母国への仕送り額が4分の1ほど目減りした人や、憧れの日本で働くためにわざわざ高額な費用を使って日本語を学んだとしても、働き先がカナダやオーストラリア、韓国などの他国を選ぶ人たちが目立ってきているようです。
人材確保が難しい外食業、建設、漁業、介護などの12分野の企業にとっては、これまで以上に人材を確保することが厳しい状況となっていくでしょう。
訪日外国人にとって日本の魅力
訪日外国人にとって日本は驚きと魅力の国に見えていますが、日本という国の中で生活している日本人にとっては当たり前すぎて、日本の魅力に気づけないことが人が多いでしょう。
円安傾向がまだまだ続いていきそうな現在、訪日外国人客が増加している今だからこそ改めて日本の魅力に気づき、より伸ばして発信していくことが重要となっています。
それでは、具体的にどういった点を伸ばしていけばいいのでしょうか。
文化と伝統
日本はこれまで中国や韓国など諸外国の影響を受けながらも、和食、茶道、武道、着物、祭り、歌舞伎、落語など独自の文化や伝統が作られてきました。
古来から受け継がれてきた美しい文化と、現代の都市生活との融合が見事な国日本で、本格的な日本文化体験できるアクティビティやツアーが人気です。
食文化の多様性
寿司、刺身、ラーメン、天ぷらなど世界的に日本食ブームになっているほど高く評価されています。
食材の鮮度、調理技術や調理道具の発達、自然・四季を表現するための飾り付けや食器、栄養バランス、食感・色合い・味などのこだわりは日本ならではとも言えるでしょう。
そういったことが日本の独自性を表し、日本の食文化は多様であると世界中から注目を浴びています。
さらに、各地域の産物を上手に活用し、風土にあった食べ物として地域に根付いた郷土料理を食べられるのも、訪日旅行の楽しみの一つとなっています。
優れた技術力と革新性
日本は世界的に高い技術力を有しており、革新的な製品やサービスが数多く生まれています。
日本は世界的に高い技術力を誇り、革新的なテクノロジーやロボット工学などが発展していることから、外国の技術愛好者や研究者にとって、日本は常に新しい発見や学び舎となります。
また、テクノロジーだけが優れているだけではありません。
ものづくりに関わる人々は細かく単純な作業を続ける「忍耐力」、機械でも読み取れないような感覚を認知する「繊細な感覚」、ごまかしを行わない仕事に対する「誠実さ」があります。
そういった日本人にしかできないことがあるからこそ、世界中に通用するジャパン・クオリティとして高品質の製品を世に出し続けられているのでしょう。
美しい自然と都市の調和
日本は四季折々の美しい自然と先進的な都市が共存しています。
春夏秋冬季節の違いがはっきりしているからこそ、季節によって草花や取れる野菜の種類、景色までガラリと異なります。
気温差や天候に変化があるため旬のものを食べて季節感を味わったり、季節ごとのイベント・行事に参加して、日本ならではの風物詩をくまなく楽しむことが可能です。
自然を存分に感じられる地方部はもちろん、ビルが立ち並ぶ都市部でありながら庭園や池などの豊かな自然を感じられるスポットも人気です。
自然が作り出した美しい景色、日本人の繊細な感覚で作られた都市と自然が調和した絶景スポットは多くの外国人を引き寄せています。
おもてなしの文化
日本のおもてなしの文化「おもてなしの心」は外国人に深い印象を与えています。
おもてなしの文化は時間通りに来る電車、限られた時間の中で清掃を終える新幹線の車内、旅館での食事の配膳や布団の準備などの細やかなサービスがあげられます。
親切で丁寧なサービスや人々の気配り、細やかな接客は、日本を訪れる外国人にとって母国にはない驚くべき文化となっているようです。
まとめ
円安がもたらすインバウンドの影響は、観光業や関連産業の発展を通じて地域経済にプラスの効果をもたらすと考えられます。一方、物価が上昇しているのにも関わらず変わらない賃金によって、生活が圧迫される要因にもなっています。
円安が続けば、訪日観光客数や日本での旅行消費額もさらに増加していくと予想されます。
「安いニッポン」で終わらせないよう日本の魅力を再認識・再発見しながら世界に発信していくこと、そして人材確保を解消するための対策をしっかり練っていくことが大切となっていくことでしょう。