訪日外国人観光客が増加する中、デパートやショッピングモールなどで「Tax-Free Shop」のロゴをよく見かけるようになりました。これらの店は空港などに従来からある「Duty-Free Shop」とはどう違うのでしょうか。今回はタックスフリーとデューティーフリーの違いや、観光客に関わる税金のこと、免税にするための条件や手続き、「Tax-Free Shop」になるにはどうしたらいいかなどの情報を盛り込んで紹介します。
1.タックスフリーとは?
外国人観光客が急速に増えてきて、タックスフリーとよく耳にするようになりました。タックスというのは税金の意味ですが、何の税金のことなのか、何が免除されるのかについてまずは説明します。
1-1.タックスフリーの意味
タックスフリーとは消費税が免除になるというシステムのことを言います。ただし、免税してもらうためには、いくつかの条件をクリアし、手続きを取る必要があります。
その詳細は後の項目で説明します。
1-2.デューティーフリーとの違い
では、デューティーフリーとの違いは何なのでしょうか。デューティーフリーは空港内に見
かける免税店に見ますが、これは消費税を含めた関税が免除されるというシステムのことで
す。消費税の他に酒税、たばこ税などの関税全てです。
2.訪日外国人観光客に関わる税金とは
訪日外国人観光客に関わる主に4つの税金について見てみましょう。
2-1.消費税
消費税とは物を購入したり、サービスの提供を受けたりする時に発生する税金です。日本で
は現在8%の消費税がかかります。訪日外国人観光客も同様に課税される税金で、手続きを
取ることにより返金されます。
2-2.酒税
酒税はアルコールが1%以上のものに課される税金です。お酒の販売価格にすでに含まれて
おり、外国人観光客がお酒を買ったり飲んだりした時に課税されます。課税金額はお酒の種
類やそのアルコール分によって変わってきますが、1キロリットルあたり20,000円〜
960,000円になります。
2-3.入湯税
入湯税は温泉を利用した人に課される税金です。これは入浴料や宿泊施設の宿泊代に含まれています。
入湯税は地方税の1つなので、金額は場所によって異なりますが、おおよそ1人150円ほどになります。
ただし、入湯税は免税の対象になっていません。
2-4.関税
関税は輸入関税とも言われ、国境を越える物に課される税金です。日本にある輸入品にはこの関税がかかっており、輸入品は売価の中にこの関税も含んでいます。
訪日外国人が日本で外国製の物を買ったときにもこの関税が含まれてしまいます。
ただし、デューティーフリーのお店で購入すれば、この税金を除いた金額で売ってもらえます。
品物やどこの製品なのかによって金額に違いはありますが、おおよそ5%〜20%ほどになります。
3.タックスフリー・デューティーフリーで買い物するには
タックスフリー・デューティーフリーで買い物するにはどうしたらいいのでしょうか。
3-1.免税の条件
では、免税になる条件や、その手続きについて見てみましょう。
3-1-1.対象の店舗で買い物する
税務署から「輸出物品販売場(免税店)」の許可を受けた店で買い物をすることが大前提になります。
近年、この免税店が増えていますので、その詳細については後述しますが、Tax-Free Shopのロゴがある店や、空港内のDUTY-FREEの店舗がそれになります。
3-1-2.非居住者が対象
免税は、外国人観光客等の非居住者が対象となっているシステムです。非居住者とは具体的に言うと、日本に入国してから6ヶ月未満の外国人、もしくは海外に居住する日本人が一時的に帰国し、その期間が6ヶ月未満の者を言います。パスポートに入境日を示すスタンプが押されていない場合は免税手続きを取ることができませんので、入国時には必ずスタンプを押してもらうようにしてください。
また、日本で仕事をしている場合は免税にはなりません。
3-1-3.対象商品
一般物品と消耗品に分けられ、消耗品は国外に持ち出してから使うことが免税の条件になります。そのため、消耗品は開封すると開封したとわかるシールのついた専用袋に梱包されます。
3-1-4.購入物の金額
税対象物の購入最低金額は1店舗同一日で5000円以上が免税になります。
また、一般物品と消耗品は合算することができないので、どちらか一方だけで5000円以上でないと免税にはなりません。
3-2.免税の手続き
次に免税の手続きについて見てみましょう。
3-2-1.店舗で行う手続き
まずは、購入者本人のパスポートを提示し、氏名・国籍・生年月日・在留資格・入境年月日・パスポート番号の確認を受けます。
次に購入品情報が記載された「輸出免税物品購入記録票」を店舗で作成してもらい、それをパスポート(査証欄)に貼付してもらいます。出国時に税関が回収するので、取り外さないようにしてください。無くしてしまうと免税になりませんので注意してください。
その後、「一般物品は国外に持ち出すこと」、「消耗品は使用せず、購入から30日以内に国外に持ち出すこと」、「出国時に不携帯の場合、消費税の追徴を受けること」を約束する誓約書にサインします。
最後に清算し、消費税を免税された金額を払い商品を受け取ります。
3-2-2.空港での手続き
税関で先ほどの「購入記録票」を提出します。
係員がパスポートと一緒に「購入記録票」を確認してくれます。
この時にパスポートに添付された「購入記録票」が回収されます。
3-3.免税店の種類
近年急増している免税店ですが、いくつかの種類がありますので、それを紹介します。
3-3-1.市中免税店
市中でよく見かけるTax-Free Shopのロゴがある店がこのタイプの免税店です。
消費税のみを免税してくれます。
ユニクロやビックカメラ、ヤマダ電機、ドン・キホーテ、マツモトキヨシ、イオンなどのショッピングセンター、アウトレットモール、百貨店などTax-Free Shopのロゴがあるお店です。
3-3-2.空港型免税店
空港内のDUTY FREE SHOPがこれで、消費税の他にも関税、酒税、たばこ税を免税にしてくれるお店です。出国手続き後の空港内出国エリアは、すでに出国後になるので、制度上日本の国外という理由から日本の税金が課されないので、DUTY FREEになります。
日本の場合、空港型免税店は国際空港の出国エリアにしかありません。
3-3-3.空港型市中免税店
近年登場したのが空港型市中免税店です。
これは、市中にいながら、空港型免税店と同様の免税を受けることができるお店です。
銀座三越内にある「Japan Duty Free GINZA」と福岡の「FUKUOKA DUTY FREE TENJIN」、ロッテ免税店銀座、新宿高島屋免税店など、続々オープンしています。
ここを利用するにはパスポートと国際線搭乗券(1ヶ月前〜前日までに搭乗する者)が必要になります。ということは、
訪日外国人観光客だけでなく、これから海外へ行く予定の日本人も利用することができるわけです。ここで購入した商品は出発当日に空港で受け取ることになります。
3-3-4.沖縄型特定免税店
1998年にできた沖縄振興特別措置法によって作られたタイプの免税店です。ここでは関税のみが免税になり、消費税は免税されません。そのため輸入品を安く購入することができるお店になります。
ここを利用するには、購入時に沖縄発の日本のどこかへの搭乗券が必要になります。
また、商品は空港での受け取りになります。このタイプのお店は現在、Tギャラリア沖縄 by DFSのみになります。
4.免税店になるには
インバウンド対策で免税店になることを検討されている方への情報です。免税店になった場合のメリット・デメリット、どのような手続きをしたらいいのかなどを紹介します。
4-1.免税店になるには
免税販売を行うためには、店舗の場所を管轄している税務署に申請をします。一般型消費税
免税店(タックスフリー店)の場合、申請には以下の書類が必要になります。
- 1.許可を受けようとする販売場の見取図
- 2.社内の免税販売マニュアル
- 3.申請者の事業内容が分かるもの(会社案内、ホームページ掲載情報があればホーム
ページアドレス) - 4.許可を受けようとする販売場の取扱商品(主なもの)が分かるもの(一覧表など)
<出典>観光庁:消費税免税店サイト「免税店になるには」
税務署では申請する事業者が税金を滞納をしていないかや訪日外国人の利用しやすい場所にお店があるか、また免税販売手続に必要なスタッフの数が揃っているか、手続きに必要な設備があるかなどをチェックします。
4-2.メリット
2014年10月の消費税免税制度改正で、消耗品である菓子類やその他食料品、飲料、酒、たばこ、化粧品、香水などが免税品目に追加されました。改正前と改正後を比べると、免税実施率や免税を受けた物品の1人当たりの購入額は格段に上がっています。
また、2014年のデータでは、観光客の4分の1は免税手続きを行っています。
消費税8%分なので、観光客も当然免税を受けられる店舗を優先的に使用します。
そのため免税店になることは外国人観光客を得るためには強力なポイントになります。
また、免税手続きをするには5000円以上の購入額が必要になるので、購入客単価も上がります。
4-2.デメリット
免税店になると、免税のルールを外国人観光客に説明し、理解してもらう必要があります。
「免税手続きの多言語説明シート」というものがありますが、説明するにはある程度時間がかかりますので、店舗スタッフの数を増やす必要があるかもしれません。また、免税書類の作成や消耗品の場合は開封できないよう、商品梱包のための専用の設備や梱包材などを用意しなければなりません。
4-3.免税手続きシステムの導入
店舗側の免税手続きのシステムを簡単にできるツールを紹介します。
4-3-1.J-Tax Freeシステム
J-Tax Freeシステムは旅行会社のJTBとクレジットカード会社JCBの合弁会社が作ったシステムで、デパートやドラッグストアーなどで広く使用されています。パソコンもしくはWindowsタブレットやiPadとプリンターがあればすぐに導入することができるので、比較的ハードルが低いシステムです。
4-3-2.免税書類作成システム「ぴっとぱっと」
データシステム株式会社が作ったぴっとぱっとは外国語音声アシスト機能があり、パスポートの読み込みから言語を判断し、英語か中国語もしくは韓国語で免税手続きについてをお客様に案内してくれます。
4-3-3.免税書類作成アプリ「OneMinute」
「OneMinute」は、レシート情報やパスポート情報をタブレットのカメラで読み込 み、書類作成からレシート発行まで約30秒で完了するシステムです。発行されたレシートにお客様からサインをもらえば手続きが完了するので、お客様をお待たせることもなく、接客時間も短くなるので、店舗側のメリットもあります。また、タブレットとプリンターがあれば使えるシステムなので、小さい店舗でも置き場所に困
らず利用しやすくなっています。
4-3-4.免税書類作成システム「あっと免税」
「あっと免税」は、WindowsパソコンもしくはAndroidタブレットがあれば使うことができるシステムで、中国人観光客の利用率が高いモバイル決済の「WeChat Pay」と連動させることもできます。
まとめ
今回はタックスフリーについて紹介しました。街中でもよく見かけるようになったタックスフリーショップは外国人観光客にとても人気です。
しかし、従来から空港内にあるデューティーフリーとは違うのでしょうか。タックスとは何の税金なのでしょう。ということで、タックスフリーの意味からデューティーフリーとの違い、免税になるための条件、免税店の種類、免税の手続き、免税店になることのメリット・デメリット、免税のシステムなどについて紹介しました。
インバウンド対策としてタックスフリーは重要な要素になると思われるので、タックスフリー店になるかどうか検討されている方は参考にしてみてください。