いまや世界各国の進出が著しいロシアのオンライン市場。日本からの参入も増えていますが、英語圏でないため、ハードルが高いと感じる人もいるのではないでしょうか。
じつはロシアのオンライン市場は要注意。Googleが検索エンジンとして世界的に圧倒的なシェアを誇るなか、ロシアでは事情が異なります。
ここではロシアの特異な検索エンジン市場の状況と、ロシアで人気の検索サイト「Yandex(ヤンデックス)」の特徴や人気の秘密に迫ります。
目次
ロシアの検索エンジンのシェア
検索エンジンとは、検索すると、知りたい記事をランキング化してWEB上に最適な順番で表示してくれるシステムです。
この検索エンジンを使ったオンライン広告と言えば、ユーザーの検索ワードなどからニーズを読み取り、表示を決定するリスティング広告(検索連動型広告)があります。
リスティング広告は検索エンジンに出稿します。
そのため多くの人が使う検索エンジンに出稿した方が、多くの人の目に触れる可能性が高くなります。
世界には数多くの種類の検索エンジンがありますが、世界で96%以上のシェアを持つのがGoogle。
世界の主な国40か国(国と地域)中、36国においてGoogleがトップシェアを誇ります。
しかもそのほとんどの国で、85%以上という高いシェアとなっています(アウンコンサルティング調査2019年7月時点)。
ところが、ロシアはGoogleが検索エンジンのトップシェアではない、数少ない国のひとつです。
GoogleとローカルサイトYandexの2強
ロシアの検索エンジンのシェアは2019年7月時点で次のようになっています。
【PC】
Yandex(YandexRU) 47・97%
Google 47・34%
【モバイル】
Yandex(YandexRU) 48・79%
Google 47・88%
数字は拮抗しているもののYandexがGoogleを押さえて首位となっています。モバイル検索は、Yandexが
この調査で初めて首位に立ちました。
(アウンコンサルティングの調査より 世界40ヵ国(国と地域)におけるPCとモバイルの主要検索エンジンシェア)
多くの国々でGoogleがほぼ独占状態であることを考えれば、これはかなりレアケースといえます。
ロシアには他にもMail.ru(メイルルー)などのローカル検索エンジンがありますが、今はYandexと
Googleの2強という状態です。
ロシア 検索エンジンのGoogleとYandexの推移
世界の検索エンジンはGoogleが席巻していますが、なぜ、ロシアではYandexが人気なのでしょうか。
まずは2社の概要と、ここに至るまでのロシアの検索エンジンの移り変わりをみてみましょう。
YandexとGoogleの概要
まずはそれぞれの概要を簡単に紹介します。
ロシアで人気のyandexの概要
Yandexは、モスクワに本社があるYandex社が運営するロシアのポータルサイトです。1997年にコンプテック・インターナショナル社によって設立され、
2000年にYandex社となりました。ロシアを中心にウクライナやカザフスタン、トルコなどロシアと周辺国をターゲットに絞ったローカルエンジンです。
世界を席巻するGoogleの概要
Googleは、1998年にアメリカで設立されました。その検索エンジンは世界中で広く利用されています。あわせて様々なインターネット関連のサービスを展開。
携帯電話やOSも手がけ、多国籍のテクノロジー大企業へと発展しています。
検索エンジンの推移 YandexとGoogleのシェア争い
Googleがロシアの検索エンジンに参入したのは2004年でした。当時のロシアはYandexほかローカルエンジンのほぼ独占状態。
2007年の時点でロシアの検索エンジンのシェアは、
トップのYandex 55%以上(他のローカル検索エンジンと合わせて計75%)
3番手のGoogle 20%弱
Googleは少しずつシェアを伸ばしますが、2014年頃ロシアでモバイルを使ったネット検索の増加により、一気に発展します。
ロシア人のモバイルユーザーのうち、75%がGoogleを検索メインとするアンドロイドを使用したため、Googleのシェアが上がっていきました。
Googleが独占禁止法違反!?
2015年、Yandexは巻き返しに出ます。
Googleは、マップやGmailの提供と引き換えに、Google検索エンジンやアプリをアンドロイド端末に入れるように、
モバイルメーカーに圧力をかけていました。
Yandexは、このGoogleの手法が独占禁止法違反に当たると、ロシア連邦反独占庁に異議を申し立てたのです。
結局YandexとGoogleは和解し、2017年8月からデフォルトの検索エンジンを自由に選べるようになりました。
Yandexのモバイルの躍進
その結果、モバイル分野ではYandexが躍進します。
モバイル検索シェア(アウンコンサルティング調べ)
2017年 4月 | 2017年2月 | |
70%弱 | 約50% | |
Yandex | 30%弱 | 約40% |
開きは縮まり、2018年にはYandexが初のスマートフォンを販売。
前述したように、2019年7月についに立場が逆転しYandexが首位に立ちました。
ただGoogleも世界の圧倒的なシェアを背景に、ロシア国内のPC検索エンジンシェアで40%台にまで躍進し、Yandexと拮抗するようになりました。
このようにGoogleとYandexはデッドヒートを繰り広げてきました。Googleの躍進は目覚ましいものがありますが、Yandex社は多角化経営することで、これに対抗しています。
今でもYandexはロシアの主要な検索エンジンです。ロシアマーケットへのアプローチには、Yandexの攻略が必要であることは間違いないでしょう。
ロシアの検索エンジンでYandexが強い3つの理由
Googleとしのぎを削ってきたYandexとはどのような会社で、何がロシア人を引き付けていたのでしょうか。ここからはYandexについて、ロシアでYandexが優勢な理由を3つのポイントから紹介していきたいと思います。
ロシアに特化したローカルエンジンサイト
Yandexが検索エンジンとしてロシア人に人気の理由は、ロシアで早くから検索エンジンを提供していたことに加え、ロシアに特化したローカルエンジンであることがあげられます。
Googleが世界各国や各地域で検索サービスを展開しているのに対し、Yandexはロシアとその周辺国のみという一部に集中してサービスしています。
検索のトップページの下には、ロシアやウクライナ、ベルラーシ、トルコなどの表記があります。周辺や旧ソ連圏をターゲットにしていることが良く分かります。
ロシアに特化しているため
1 ロシア向けに開発されたためロシア語の検索に対して精度が高く、ロシア人ユーザーに使いやすい
2 ロシアは面積が広大なため、各地方でユーザーの特質やニーズが大きく違う。Yandexは、検索ユーザーの地域性も重視。
検索表示は、ロシアの各地域で支持の高い内容が上位に表示される傾向
3 ユーザーが検索している場所(都市)によって、表示結果を変えるケースも多い
ロシア人が今何を求めているかという情報を調べる際には、最適のサイトといえるでしょう。
AIよりのYandexの検索エンジン
Yandexの検索エンジンは、Googleと同じように、独自に開発した機械学習のアルゴリズム(コンテンツをランキング化するルール)を用いて検索結果の表示順位を決定しています。そのためGoogleと同じようなSEO対策をとることが大切です。その基本は以下のような事柄です。
ユーザーファーストを意識して、検索クエリ(問い合わせ、処理要求)との関連性の高いコンテンツを作成 |
専門性があり、信頼性の高いサイトを作成 |
これに加えて
Yandexの検索エンジンは、検索のキーワードからユーザーのニーズに応じた応えを出す時に、ユーザーの問題を解決に導く、よりAIアシスタントに近い方向性を目指しているのが特徴。
そのためとくに以下を重視しているとされています。
高い検索精度 | ユーザーの地域性や検索における行動や履歴、単語間の距離も含めてユーザーのニーズを的確にとらえて検索順位を表示 |
良質コンテンツを高く評価しており、スパムなどの排除率も高い | 信頼性の要因として、会社の場合、詳細情報や価格や支払い方法、配送、返品といったサービス、顧客などのレビュー情報などがしっかり書きこまれているかどうかが重視されるようです。 |
地域性のマーケティング、検索クエリとの高い関連性、信頼性を得る良質コンテンツの作成が大切になります。
このようにロシア人向けの精度が高く、何らかの解決に導けるような検索ができるのもYandexの人気の理由でしょう。
Yandexは総合マルチメディアIT企業
Yandexは検索エンジンだけでなく、様々なネットサービスとともに、多角化経営も展開しています。
Yandexのネットサービス
Yandexは、検索エンジンにおいてはGoogleと同じく無料のメール、マップ、音楽、ビデオ、ストレージなどスマホユーザーが求めるサービスは、ほぼカバーしています。そのため不便ということはありません。
ロシア人漁師向けの「風の地図」のサービスや、国内のローカルニュースなど、きめ細かな国内情報が多いのも特徴です。
Yandexの多角化経営
Googleは、自動走行車など様々な事業を手掛ける世界的なテクノロジー企業ですが、
Yandex社もロシアを中心に、多角化経営に乗り出しています。
Yandex事業の主のものだけでも以下のようにあります。
カーシェアリング
食品配達サービス
EC事業
決済サービス
音声アシスタント「アリス」の開発
スマートフォン発売自動車市場へも進出し、自動運転車の開発にも着手。日本の自動車メーカーにも
ナビゲーションなどマルチメディアシステムを提供しています。
Yandexは、検索広告を中心に、ロシアマーケットの広告シェアの20%を獲得してきました。2018年度には広告収入以外の売り上げが20%以上に達するなど、多彩な分野でのマーケットの取り込みに成功しています。
Yandexへの信頼と親しみ
このように、Yandex社は、先進的な巨大IT企業であり、ロシア人の生活に密着した身近なサービスを提供している企業です。
検索エンジンやタクシー事業など現地のユーザーに合わせて開発されているため、ロシア人には使いやすく、彼らがYandexに信頼と親しみを寄せる理由になっています。
Yandexのリスティング広告とネット広告の今後
ロシアでのマーケットビジネスを考えるうえで、Yandexは欠かせないツールといえます。では、このYandexに、リスティング広告(検索連動型広告)を掲載することはできるのでしょうか。
リスティング広告
Yandexではリスティング広告を出すことができます。
広告を配置するのはYandex Directと呼ばれるシステムです。
この広告は、Yandexの検索結果の表示ページと、Yandexの広告ネットワークの検索パートナーサイトにも表示されます。
大まかな流れは次のようなものになります。
2入札価格(クリックした時の価格)を設定
3広告文を作製して出稿
4クリック価格はオークションによって決定。競合他社との単価や広告の質によって表示順位が決まる
5検索表示したページに「広告」として表示
6ユーザーがクリックすると初めて、料金を支払う
Yandexが提供する広告作成ツールもあり、自ら広告を作製することも可能ですが、より確かなマーケティングを求めるなら、Yandexの広告出稿を扱う会社に依頼するのも良いでしょう。
前述したようにYandexは、検索ユーザーの意図を正しく理解し、精度の高い情報を届けることに腐心しています。また、ロシアに特化して地域性も重視しているため、ターゲットも定めやすくなっています。
ロシアマーケティング成功のポイント
ロシアでは、2018年の国内のインターネット広告が、初めてテレビ広告の市場規模を上回りました。今後、インターネット広告はますます伸びると予想され、ロシアのマーケティングはインターネット広告を軸に展開されると考えられます。
これらを踏まえた上で、今後のロシアマーケティングには以下の点が必要になると思われます。
1、インターネット広告の利用
ロシアでは55歳以上のモバイル利用も増えています。今後はモバイル対応も重視
2、GoogleとYandexの両方の攻略
世界ブランドで、世界的な事や物を検索する時には便利なGoogleとローカルに特化したYandexの特徴を活かした使い分けも必要
3、地域も含めたターゲットの明確化
よりターゲットの明確化やリスティング広告のキーワード選定が重要
ネットをうまく活用することで、より需要のあるユーザーに訴求することができるはずです。
まとめ
世界的にみてもロシアは特殊なオンライン市場にあることがお分かりいただけたでしょうか。
Googleが躍進していますが、Yandexも多角化事業によりロシアのマーケットを押さえており、重要なマーケットツールであることは間違いないでしょう。
Yandexは日本語で入力しても検索できます。まずは一度どのような検索エンジンか試してみてはいかがでしょうか。