台湾人は親日家で知られ、日本に対する好意が強く感じられる国です。そのため海外旅行先と言えば日本旅行が人気で、家族や友人に自慢するほどステータスが高いものとなっています。さらに年に何度も訪れるほど、訪日外国人の中でも世界一リピーター率の高いことが特徴です。年間489万人、国民の5人に1人が日本旅行に来ている計算となります。
台湾のイメージは「親日家が多い」「物価が安い」「台湾グルメが美味しい」などがあるため、日本人の旅行先としても非常に人気です。実際に物価が安い台湾ですが、日本旅行に何度も訪れるほど月収・年収が高いのか気になりますよね。
そこでこの記事では「台湾の平均月収・年収」「訪日旅行者数のデータ」「年収が低くても訪日旅行ができる理由」について解説していきます。
訪日台湾人をターゲットにしているお店や自治体など、インバウンド対策をしている方はぜひ参考にしてみてください。
台湾人の平均月収・平均年収
まずは台湾人の平均月収・年収・中央値がどれほどなのか、日本の賃金と比べながら順番に見ていきましょう。
*台湾元は2020年8月現在「1台湾元=3.5円」で計算
*ボーナスなし、税金等引かず額面で計算
*データ調査:日本は2015年度、台湾は2018年度分
*台湾の通貨は「新台湾ドル/NT$」ですが以下「元」と表記
台湾人の「平均月収」
内訳 | 台湾元 | 日本円換算 |
【日本】の平均月収 | - | 30万円 |
【台湾】の平均月収 | 4万9千元 | 約17万5千円 |
・若年層、大卒初任給 | 2万8千元 | 約10万円 |
・管理職クラス | 6万8千元 | 約23万8千円 |
・社長クラス | 18万9千元 | 約66万1千円 |
月に5万元(約17万5千円)を貰っている人は約30%しかおらず、残り70%の人は5万元を満たしていません。大卒初任給、若年層、飲食業やレジスタッフなどの一部の業種では、低収入によって平均的な数値より低く約10万円ほどです。月収10万元(約35万円)を超える高所得者は全体の8%程度で、2011年32万人から2015年には39万人と増加しています。
台湾人の「平均年収」
内訳 | 台湾元 | 日本円換算 |
【日本】の平均年収 | - | 420万円 |
・男性 | - | 521万円 |
・女性 | - | 276万円 |
・正規 | - | 485万円 |
・非正規 | - | 171万円 |
【台湾】の平均年収 | 54万7千元 | 約200万円 |
・若年層、大卒初任給 | 33万6千元 | 約120万円 |
・管理職クラス | 82万元 | 約287万円 |
・社長クラス | 227万元 | 約795万円 |
台湾も都市部であれば年収は高くなるものの、若年層・パートタイム・飲食業などの一部の業種・スキルや学歴が無い人は賃金水準が低めです。一方で高所得者なのは製造業やエンジニアなどの専門分野は、都市部を離れた場所であっても高額になる傾向があります。日本の平均年収は420万円で、台湾は200万円なので、約2倍以上も収入の差があるのです。
台湾人の「月収中央値」
平均月収で計算した場合、一般庶民の実感から離れた結果になることがあります。そのため一般庶民の実感値に近い中央値を用いてご紹介します。対象は全年齢の男/女、正規/非正規雇用を含みます。
内訳 | 台湾元 | 日本円換算 |
【日本】の月収中央値 | - | 29万円 |
・男性 | - | 35万円 |
・女性 | - | 23万円 |
・正規 | - | 35万円 |
・非正規 | - | 12万円 |
【台湾】の月収中央値 | 3万9千元 | 約13万6千円 |
・男性 | 4万2千元 | 約14万7千円 |
・女性 | 3万6千元 | 約12万6千円 |
日本の場合、男女の年収格差が非常に顕著になっていますが、台湾は日本ほど格差のないことが分かります。台湾の労働に関して男女平等で、日本よりも進んでいます。女性が社会で働く環境が整い女性管理職も多いため、給料は男性を越す方も珍しくありません。また託児所が充実しているので、日中子供は預けて共働きする夫婦が多いのも特徴です。
出典:〔日本〕国税庁「平成27年分民間給与実態統計調査」
https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2016/minkan/index.htm
出典:〔台湾〕行政院「本院新聞」
https://www.ey.gov.tw/Page/9277F759E41CCD91/c2f04ce5-ed2a-46b9-9374-3c5c098e7282
台湾人には訪日旅行が大人気
台湾人の海外旅行先と言えば日本旅行が大人気です。台湾の人口は2,400万人なので、国民の5人に1人が日本を訪れている計算です。具体的に年間どれほどの台湾人が日本を訪れ、旅行毎にどれほど消費しているのかも紹介していきます。
訪日外国人旅行者の市場規模
出典:JNTO
https://statistics.jnto.go.jp/
JNTO(日本政府観光局)の調査によると、2019年に訪日外国人客で最も多かったのが「中国(954万人)」、次に「韓国(558万人)」、そして「台湾(489万人)」の順です。4位にもインドなどのアジアがランクインし、全体の7割ほどがアジアを占めています。
訪日台湾人客数の推移
出典:JNTO「訪日旅行データハンドブック2019年」
https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/jnto_databook_2019.pdf
訪日台湾人客数は毎年右肩上がりで拡大しています。JNTO(日本政府観光局)の調査によると、2009年の訪日台湾人客数は102.4万人、2018年には475.7万人の約4.7倍にも成長しています。
世界一リピート率が高い
出典:観光庁「平成29年訪日外国人消費動向調査」
https://www.mlit.go.jp/common/001230647.pdf
訪日外国人は中国、韓国に続き第3位の台湾でありながら、世界一訪日リピート率の高いことが特徴です。その数訪日者の2割が初めて訪日する人、8割がリピーターとなっています。そのうち訪日2~5回目51%、6~9回目13%、10回目以上は15%と他の国に比べて訪日回数がとても多いです。訪日者数1位の中国と比べると初めて訪れる人60%、リピーター40%と台湾の推移と真逆になっているのが分かります。
台湾人の訪日消費額
出典:観光庁「2019年の訪日外国人旅行消費額」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/content/001335741.pdf
上記表は外国人が訪日した際に、1人当たりどれほど支出したかを表しています。台湾は1回の訪日旅行で買物代(4万1千円)、宿泊費(3万2千円)、飲食費(2万6千円)、交通費(1万3千円)の順で高くなり、総額11万8千円支出していることが分かります。全国籍・地域の平均では15万9千円なので台湾はそれを下回りますが、平均月収・年収が低い割に旅費に多く費やしていると言えるでしょう。
台湾人の年収が低くても訪日旅行できる6つの理由
日本の約半分の収入でありながら日本への旅行を多く経験している台湾人は、どのような生活習慣があって海外旅行費に費やすことができるのでしょうか。台湾人が何度も海外旅行(日本旅行)に行くことができる理由を6つ紹介していきます。
訪日旅行できる理由①未婚率の高さ
台湾の未婚率の高さは、訪日旅行に関係しています。台湾人女性1000万3千人(2013 年時点で15歳以上)のうち、325万6千人が未婚者となっており、未婚率は32.5%と上昇傾向にあるのです。未婚率が上昇する原因は「理想の相手に出会っていない(57%)」「安定した仕事と収入(40%)」「夫婦とその家族での家事分担や出産計画などの共通認識を持つ(15%)」「経済的要素(13%)」となっています。
未婚であれば個人や両親などのみにお金を使えること、そして旅行計画も立てやすいことが大きな理由となっているのです。
訪日旅行できる理由②家族や恋人との同居
台湾人は家族や親戚とのつながりをとても重要視する国民性です。そのため未婚や結婚後でも家族と同居し、一人暮らしをしている場合は週末や祝日などの休暇は家族や親戚が集まり同じ時間を過ごすために帰省することも当たり前です。
また恋人との結婚前の同棲が多いことや女性の社会進出が進んでいることから、結婚後でも共働きし家賃・光熱費・食費などの生活費を家族みんなで折半できます。子供が出来ても子どもは両親に預け、夫婦はその分稼いでくることも多いのです。
訪日旅行できる理由③手軽な屋台文化、酒・たばこはしない
台湾屋台の特徴はリーズナブル、早朝から深夜まで営業、食事系からスイーツ系までバリエーションが豊富です。台湾は外食文化が強いため特に一人暮らしをする独身者や学生は、毎食3回とも外で食事をすることは珍しくありません。家族と同居している場合でも、お惣菜を購入する感覚で手軽に食卓に並べることができます。
また仕事終わりに会社の上司・同僚や友人と集まり、日本の居酒屋のように食事とお酒を一緒に楽しむ習慣がありません。誕生日やお正月などのお祝い事がある際には、家族・親戚そろってみんなで楽しむのが一般的です。これはバイク移動が当たり前なことや、世界一お酒に弱い体質であることも要因となっています。タバコを吸う人も少ないため、これらの飲食文化によって日本人のように外食費・飲み代・たばこ代にかけることは少ないのです。
訪日旅行できる理由④日本製品の限定品に弱い
現在台湾では越境ECなどインターネットを利用して日本製品がいつ・どこでも購入することができますが、実際に日本で商品を購入したい人は多くいます。台湾人は日本人と同様に「限定」という言葉に弱いです。「期間限定」「地域限定」「日本限定」「限定色」など日本国内でしか手に入らない物は人気が高く、訪日するきっかけにもなっています。
訪日旅行できる理由⑤貯蓄率の高さ
台湾家計の貯蓄率は1970年代には月給の10%、1993年の高度経済成長期には過去最高の30%、現在は25%まで低下したもののそれでも貯蓄率は高いです。貯蓄理由には「海外旅行」「退職後の生活」「投資」のためが多く挙げられています。購買欲も高いので欲しいものは消費し、そのためには貯金をするといったループが生まれているのです。
訪日旅行できる理由⑥固定費が安い
インフラ環境が圧倒的に整い、交通費や保険料といった固定費を抑えやすいです。通信料は賃貸物件や街中には無料の無線Wi-Fiが多く飛び、スマートフォンであれば月に2,000円代ほどです。バスであれば無料で乗ることができ、固定費は大きな負担となりません。
年収が低いからこそ、メリハリある生活で豊かに暮らす
この記事では「台湾の平均月収・年収」と「リピートするほど訪日旅行ができる理由」について紹介してきました。台湾の平均月収は約17万円、月収中央値は約13万円、年収は約200万円と日本の約半分にも満たしていません。
しかし家族や恋人との同居率が高く、公共の乗り物や通信費などが安く、お酒やタバコなどに費用をかけないことから月の固定費を抑えることができます。そして将来や海外旅行のために貯蓄する人が多いのです。台湾人は普段の生活は控えめですが、旅行や欲しいモノがあればパーッと使うように、メリハリのある国民性と言えます。
台湾人の心に響くような「限定商品」や「日本の文化」など魅力を大いにアピールして、たくさんの台湾人を迎えていきましょう。