コロナによる影響と訪日外国人の意識|インバンド事業で今やるべき対策

2020年は突如感染が拡大した新型コロナウイルスの影響によって、世界各国で仕事や日常生活に急激な変化が起こりました。今後新型コロナ感染症は完全に無くなっていくのか、ウィズコロナとして新しい生活様式を過ごしていかなければならないのか答えは誰にも分からないものです。

こうした状況の中、特にインバウンド関連事業者は会社継続のために、これまでのやり方ではなく固定観念を捨てた斬新と言えるような新たな取り組みをすることが重要となっています。入国緩和がされた後や徐々に旅行者数が回復してきた際に向けて

  • どのような感染対策をとっていかなければならないのか
  • 新たな感染症対策のためにできることは何か
  • 他社と差別化を図り集客をするためには何をすればいいのか

という点について紹介していきます。事業戦略のお役に立てていただければ嬉しいです。

インバウンド事業者が受けているコロナの影響とは

日本はこれまで東日本大震災、米国同時多発テロ、ITバブル崩壊、リーマンショックなど、災害や事件などによってインバウンド業界に大きな影響がありました。しかし新型コロナウイルス感染症はこれまでの影響よりも遥かに大きく、順調に増加してきた訪日外国人観光客数3,188万から99.9%減となり、オリンピック・パラリンピックの延期にもなるほど大損失となっています。

まずは新型コロナウイルスの影響でインバウンド関連事業者はどのような影響を受けたのかについて紹介していきます。

インバウンド事業者は「どれほど」「どのような」影響を受けているのか

新型コロナウイルスが世界的に感染拡大し訪日外国人観光客の受入制限を行ったことから、2019年と比べ2020年の訪日外国人観光客は99.9%の減少となっています。

訪日外国人客に関わっている事業者は飲食店や宿泊施設、旅行会社、交通機関だけではありません。インバウンド事業者へ派遣する人材業やコンサルタント会社など間接的に関わってきた事業者も含めると、数多くの事業者が存在します。それらを含めたインバウンド関連事業者の約95%は新型コロナウイルスの影響で、前年同月比の売上が落ち込んでいるのが分かっています。

訪日外国人観光客が減少したことで「店舗・サービス利用者数の減少」「売上の減少」「イベントやセミナーの出展中止」「WebやSNSなどでのプロモーションの中止」「インバウンド対策費用の削減」「人材採用中止や失業」「インバウンド関連事業の一時停止、廃業」などの大きな影響を受けています。

インバウンド事業者がとっているコロナ対策とは

ほとんどの事業者が「コロナはいつ終息するのか」「日本国内と海外での感染者状況」「マーケットの動向調査」などの情報収集をしつつ、これまでの業務をできる限りテレワークに切り替えながら感染症対策を行っていることが多いでしょう。

潤沢な予算がある事業者はアフターコロナに向けたインバンド集客のため、多言語対応、キャッシュレスの導入、WebやSNSでのプロモーション発信などの受入整備を整えています。しかしほとんどの事業者の場合は売上や利益を確保することが難しいことから、事業計画や目標数値の見直し、支援金・給付金・融資などで資金を調達して事業を継続している事業者が多くいます。それでも継続が厳しい場合には、事業の凍結や廃業せざるを得ない事業者も多くいます。

「アフターコロナ」で訪日外国人の行動予測


新型コロナウイルスと共存していくウィズコロナやアフターコロナでは、訪日外国人観光客はどのように戻っていくのでしょうか。また訪日外国人観光客は今後どのような行動をとっていくのか、データから行動を予測していきます。

「これまで」の訪日外国人観光客の行動

観光庁の資料によると、2019年の訪日外国人観光客数は3,188万2千人を越え、過去最多を記録しました。訪日外国人観光客数が多い国・地域は、1位中国、2位韓国、3位台湾、4位香港となり、5位以下にもタイやシンガポールなどアジアの多くがランクインしています。

東アジア4ヵ国・地域はリピーターの割合が高く、中国は40%、韓国65%、台湾80%、香港83%となり、台湾や香港のヘビーユーザー(10回以上)は2割程度を占めています。旅行消費額(総額)は4兆8,135億円、観光客1人当たりの旅行支出は158,531円とインバウンド業界に大きな利益を生み出していたことが分かります。

参考:観光庁「平成29年訪日外国人消費動向調査」

コロナ禍で訪日旅行への意識や需要

訪日外国人客数が上位の国と地域すべてで、「新型コロナウイルスの終息後、訪日したい」と考えている人が多く、中でもリピート率が高かった台湾と香港の訪日意欲は高い傾向にあります。

また現在は訪日旅行ができないため、日本製品を購入できるECサイトが人気です。日本製品の購入率は「感染前と頻度は変わらず購入している人」「旅行ができず自宅で過ごす時間が増えたため、購入回数や購入額が増えた人」と消費欲が高いです。一方で収入の減少や感染の心配もあり「購入を控えている人」「購入していない人」と生活が変わった人も多くいます。

「アフターコロナ」で訪日外国人の行動予測

訪日外国人眼光客が集まる場所は新型コロナウイルス以前に東京や大阪などの都市部よりも、地方都市への人気が高まってきました。この背景には2014年頃に日本製品を大量に購入する「爆買い」志向の「モノ消費」から、日本の文化や歴史などを体験する「コト消費」へと変化していったためです。

新型コロナウイルスが世界で拡大した今でも、訪日旅行への希望者は多くいます。感染症を防ぐこと以外にも、「地方都市へ行く」「自然や文化に触れ合う」「アウトドア」のキーワードで旅行計画を立てる人が多くなると予想されます。

「コロナ対策」や「今後の集客」のために今やるべき7つの対策


今後、新型コロナウイルス感染者数が減っていき、入国緩和も行われていけば、以前と同じように多くの外国人観光客が日本を訪れるはずです。インバウンド関連事業者はこれまで「日々の業務に追われて、インバウンドを受入れる環境整備を行う時間が無かった方」「そもそもインバウンド客に対して、どのような対応をしていいのか分からなかった方」も多いのではないでしょうか。

そんな方のために今からできるインバウンド対策とコロナ対策を7つ紹介していきます。じっくり検討、実行できるこの時期を使って、集客や売上に繋がる効果的な対策をとっていきましょう。

対策①多言語対応

英語、中国語、韓国語などの多言語対応を行うことです。訪日外国人観光客が旅行中に最も困ったことは「観光案内や地図など、多言語表示の少なさ・分かりにくさ」「施設や飲食店スタッフとコミュニケーションがとれない」など言語に関する悩みです。

しかし訪日外国人観光客全ての言語をカバーするには無理があり、またその分の翻訳をするとなれば膨大な金額が必要となります。そのためまずは英語での表記をおすすめします。母国語が第一言語でなかった場合はスピーキングができなくとも、英語表記があればなんとなく意味が伝わることが多いものです。もしくは訪日者数上位の中国・台湾・香港で使用されている中国語や、自社で集客したい国・地域の言語で翻訳するのも良いでしょう。

コロナ禍で外国語をオンラインで学習するサービスが爆発的に増えたことから、自社で多言語が話せる人材を育成する期間に充てることも大切です。特に訪日外国人観光客と直接関わる接客業ではコミュニケーションが必要となり、伝わる言語でのおもてなしは口コミなどから多くのお客様を呼び込むことに繋がります。

「中国語の種類について詳しく知りたい方」は、下記の記事をぜひご覧ください。
▶台湾人の公用語は何語?親日家だから日本語が話せるって本当?

「オンラインだけで接客英会話を学習したい方」は、下記の記事もぜひご覧ください。
▶インバウンドには英語が必須!【接客業向け】オンライン英会話会社6選

対策②キャッシュレス対応

出典:一般社団法人キャッシュレス推進協議会「キャッシュレスロードマップ2020」

現金決済だけでなく、クレジットカードやモバイル決済などのキャッシュレス対応を行うことです。日本と比べ、世界ではキャッシュレスの普及率が高まっています。上記のグラフを見ると、最もキャッシュレス決済の普及率が高い国は韓国(97.7%)、次に中国(70.2%)、カナダ(62.1%)、オーストラリア(59.9%)、イギリス(56.1%)、シンガポール(53.3%)の順となっています。日本は韓国の約4分の1である21.4%と低いのが分かります。

クレジットカード、デビットカード、モバイル決済(QRコード)、電子マネーなどキャッシュレスで使われる方法は国によって異なりますが、いずれも現金を持ち歩かない生活が普及しています。日本では2025年までにキャッシュレス決済率40%を目指していますが、まだまだキャッシュレス対応を行っている店舗が少なく、現金主義の人が多いのが現状です。訪日外国人にとって現金での日本円は扱いなれていないことや、普段の生活のようにキャッシュレス化されていないことで旅行中ストレスとなってしまいます。

キャッシュレス対応を行うことで「処理時間も手早く済み、ストレスの緩和」「日本円への両替の手間が少なくなる」「スマートフォンをかざすだけのタッチ決済や、QRコードの読み込みの非接触決済で感染症リスクを減らす」などメリットがたくさんあります。

対策③地域観光情報の発信

アフターコロナの集客につなげるため、自社商品・サービス、観光スポットなどの情報をインターネットやSNSで発信していくことです。コロナ禍で海外旅行ができなくなった今ですが、日本の観光地や美味しい食べ物などあらゆる情報を求めている外国人は多くいます。旅行先を決める際にはテレビ、新聞、旅行雑誌などのマスメディアでの情報収集が人気です。しかしいつでも・どこでも・自分の趣味情報をピンポイントで検索できることから、Webサイト、ブログ、SNSアプリでの情報収集が当たり前の時代になってきています。

SNSには写真共有サービスの「Instagram」、動画共有サービス「YouTube」、ショート動画共有サービス「TikTok」、実名で登録しリアルの知り合いとネット上でつながる「Facebook」など数多く存在します。インターネット上へ情報を発信する際には旅行メディアや旅行ブログなどがあり、インフルエンサーやKOLに宣伝してもらうことで注目度は高くなります。予算やターゲット属性に合わせて、さまざまな魅力情報を発信していきましょう。

対策④清潔度や衛生安全レベル状況を発信

自社で行っている新型コロナウイルス感染症対策方法を、インターネット上やSNSで発信していくことです。新型コロナウイルス感染症の流行前と後では、日本に対する印象が「変わらない」と答える国が多い中で、「悪くなった」と答えている国があります。それは流行初期段階で受入体制や支援行動、母国と比較してウイルスの抑え込みや終息が遅れた際に印象が悪くなってしまったようです。

入国規制が緩和され、また多くの訪日外国人観光客を迎え入れるときまで、現在店舗や施設では「どのような感染症対策を行っているのか」など衛生安全レベルを発信していくことが大切です。感染症対策をしっかり行っていると理解してもらえれば、旅行先の候補地として選ばれることができるでしょう。

対策⑤混雑状況を発信

自社サイトやアプリ、SNSなどで店舗や施設の混雑状況を発信していくことです。誰しもがわざわざ混雑しているところに行きたいと考える人は少なく、日本人・外国人ともに同じです。日本人であれば祝日やイベントによって、混雑状況をある程度把握することができることもありますが、海外からの旅行者の場合は「どの時期に・どの時間帯が混雑するのか」分かりません。それらの情報を事前に知ることができれば、旅行の計画に役立てることができます。さらに当日の混雑状況をリアルタイムで知ることで、その日の旅行計画や行動がとりやすくなります。

混雑状況の発信はテーマパーク、温泉施設、ブッフェレストランなど、ある程度大きなお店や施設で活躍しやすいのが特徴です。混雑状況が見える化されることで「お客様の来店が分散できること」「待ち時間を減らせてストレスの軽減」「平日や夕方など集客が難しかった時間帯での集客率アップ」「働くスタッフ側としては、お客様に余裕をもっておもてなしができる」などのメリットがあります。

対策⑥オンラインで販売する

テーマパークや美術館など施設のチケット、宿泊施設、飲食店、免税店商品などオンラインで購入できるようにすることです。施設や店舗でのオンラインチケットの販売は一般的に行われている手法ですが、このコロナ禍の中スムーズにチケットを購入し、スタッフと接触する回数を減らせば、感染リスクを軽減することができます。

その他の取り組みとして「旅行中に欲しい商品が品切れにならないよう、インターネットで事前予約できるサイト」や、「前売り予約をすることで割引、非売品のおまけ付き、飲食店であれば一品無料サービス」ということもできるでしょう。コロナ禍で集客や売上確保が難しい今は、宿泊施設や飲食店で「未来のチケット」として前売り予約販売をすることや、クラウドファンディングを活用して資金調達するというやり方も増えてきています。

対策⑦ECサイトでの販売から、実店舗への集客につなげる

ECサイトに力を入れ、アフターコロナで実店舗へ集客につなげることです。新型コロナウイルス発生以前は、訪日外国人がお土産などで日本製品を購入し、使用感が良かったものや、口コミサイトで評判が良い商品をECサイトで購入する流れが一般的でした。しかし新型コロナウイルス感染症によって訪日旅行ができなくなってしまった今、ECサイトにインバウンド需要が移行してきています。そのためECサイトをうまく使ってプロモーションをかけ、入国規制が緩和された際の集客につなげることが可能です。

日本人だけでなく海外でも「日本限定」「地域限定」「数量限定」など、限られたものに人気があります。ECサイトで商品を販売する際には人気商品を並べ、実店舗では限定商品を販売することで特別感をだすことができます。

「業種別でインバウンド向けのコロナ対策方法を知りたい方」は、下記の記事もぜひご覧ください。
【日本・世界】コロナウイルス現在の状況|業種別の感染症対策まとめ

デジタルを駆使して、新たな取り組みを行っていきましょう

この記事では「感染対策方法」や「他社と差別化を図り、集客に繋げていく方法」について紹介しました。訪日外国人観光客だけでなく国内旅行者にとっても、タビ前・タビ中に「どのような情報が知りたいのか」「どうすれば満足度を上げ、リピーターへと繋がるのか」感がることが大切です。

またモノやサービスが溢れかえっている世の中、店舗やサイトを構えていれば売れる時代ではありません。アフターコロナ・ウィズコロナ時代では「新たな顧客を獲得するため」「ストレスが少なく、スムーズな訪日旅行を過ごしてもらうため」にも、デジタルを駆使していくことも重要となっていきます。

今一度アフターコロナに向けてどのような対策やプロモーションをとっていくべきなのか、じっくりと考えていきましょう。