新たな働き方「ワーケーション」の魅力とは?メリットと導入課題を解説

新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに働き方改革が加速し、場所にとらわれないテレワーク(在宅勤務)が働き方の一つとして定着しています。

どこでも働けるという特徴を生かして新たな働き方・新たな過ごし方として、「ワーケーション」や「ブレジャー」が今注目されています。

企業・従業員・行政・地域にとってそれぞれ多くのメリットがあるため、日本政府が推すほどの取組となっています。

そこで今回は、「ワーケーションの基礎知識」「導入のメリット・デメリット」「導入の課題」「行き先の選ぶポイント」について分かりやすく解説していきます。

  • 会社の組織改革を実現したいと考える一般社員の方
  • ワーケーションの導入を検討している人事・教育担当者様
  • 地方活性化や旅行需要を増やしたいと願う地域・地方自治体・観光事業者の皆様

異なる立場であっても、まずはワーケーションの全体像のご理解を深めていただき、導入または受入のご検討にお役立てくださいませ。

「ワーケーション」「ブレジャー」とは

新しい旅のスタイル・新しい働き方として、「ワーケーション」や「ブレジャー」が注目を浴びています。具体的にどういったことを指すのか、それぞれ詳しく見ていきましょう。

ワーケーションとは?

ワーケーション(Workcation)とは、「ワーク(Work)=仕事」と「バケーション(Vacation)=休暇」を組み合わせた言葉です。

テレワーク(リモートワーク/在宅勤務)を活用し職場や自宅とは異なる場所でリモート業務を行いながら、余暇も楽しむ働き方です。

リゾート地や温泉地といった観光地、帰省先などで働いたり、地域の方と交流しながら課題解決に貢献し合宿を行うといった取り組み方があります。

新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに働き方改革が加速し、これまでとは異なった働き方であるテレワークと、心身の健康や生産性を両立できる働き方として、今注目されています。

ブレジャーとは?

ブレジャー(Bleisure)とは、「ビジネス(Business)=仕事」と「レジャー(Leisure)=余暇」を組み合わせた言葉です。

出張等の機会を活用し、滞在期間を延長するなどして、現地での観光や旅行といった余暇を楽しむことです。

出張先での仕事終わりにすぐに帰社しなければならないというのが日本文化ですが、欧米では出張ついでに観光も楽しむ過ごし方が一般的になってきています。

それぞれの違い

ワーケーションとブリジャーともに、仕事と休暇を組み合わせる点は共通しています。

しかし、ワーケーションは行き先や日程プランを決めてリモート業務をするのに対し、ブレジャーは出張先やスケジュールが決められている中で休暇を加えるという違いがあります。

また、従来の出張業務の前後に有給休暇を組み合わせることから、わざわざテレワーク環境や制度を整える必要がないのが魅力です。

ワーケーションのタイプ

ワーケーションには、
・休暇主体の「体験型」
・仕事主体の「業務型」
の2種類に分類されます。それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。


出典:観光庁「ワーケーション&プレジャー」

 

■タイプ①休暇型

「休暇型」は休暇が主体で、有給休暇と組み合わせながらリゾート地や観光地などに長期滞在して、テレワークを行う働き方です。

有給休暇の取得促進として福利厚生の一環として取り入れられているケースが多いことから、「福利厚生型」とも呼ばれています。

余暇を楽しみながら空き時間を活用してテレワークを行う休暇が目的となったスタイルのため、移動や宿泊にかかる費用は個人負担が前提となります。

主なアプローチ先は、個人事業主やフリーランスで2~3日程度の短期間、インバウンド向けの場合は長期間の滞在が見込まれます。

 

■タイプ②業務型

「業務型」は業務が主体で、社内メンバーでいつものオフィスを離れて通常業務やミーティング等を行う働き方です。

業務時間の前後や週末に滞在地域での休暇を楽しんだり、地域の人との交流をすることで新たな刺激を受けることを目的としています。ブレジャーもこの業務型に含まれます。

自治体・宿泊施設の企画開発、研修・会議として業務型ワーケーションを取り入れるケースが増えてきており、滞在日数・業務内容・滞在先なども企業によってさまざまなスタイルがあるのが特徴です。

主なアプローチ先は経営者や幹部層、企業の人事部門、新事業開発部門などがあげられ、滞在期間は数日~数か月と目的によって大きく差があります。

業務型には企業やワーケーション受け入れ地域のニーズに合わせて、さらに下記の3つに分類されます。

■地域課題解決型
地域関係者と交流を通じて、地域課題の解決策を共に考えるワーケーション

■合宿型

オフィスとは異なる環境で、職場のメンバーと議論を交わすワーケーション

■サテライトオフィス型
サテライトオフィスやシェアオフィスなどで業務を行うワーケーション

ワーケーションの認知度はどれほどなのか?

冒頭で新しい働き方が話題になっているとお伝えしましたが、実際どれほどの認知度があるのでしょうか。

観光庁が2020年12月〜2021年1月に行った「『新たな旅のスタイル』に関する企業向けアンケート調査」の結果を少し見ていきましょう。

テレワークを実施した経験がある人は32.2%となっています。実施経験有無に関わらず、利用者となる従業員のワーケーションに関する認知率は約8割ですが、実際にワーケーションを経験した人は4.3%とまだまだ少ないのが状況となっているようです。

ワーケーションの興味関心においては、「興味関心がある層」は28.2%で年齢が若い層が多く、さらに小さな子供がいる家庭に多い傾向です。「無関心層」は64.2%、「批判層」は7.6%となり、従業員のすべてに関心を持たれているとは言えないようです。

無関心と答えた人は、以下の理由をあげています。

・テレワークができない仕事だから(51.6%)

・休暇中や旅行中は仕事をしたくないから(36.7%)

・旅行先で仕事をしても効率が落ちそう(15.9%)

このようにネガティブな意見もあげられている中で、政府や各省庁は導入を推進しています。その理由はいったいどういう点があげられるのでしょうか。

政府や各省庁が普及の促進を行うワケとは?

従来の日本の旅行スタイルは、週末や祝日などの特定の時期に一斉に休暇取得するのが一般的のため、滞在日数が短く、時期や場所が集中しやすい傾向にあります。

現在、テレワークという場所に縛られない柔軟な働き方が世間的に多く受け入れられてることから、この十分に環境を生かすことで

・交通機関の混雑、密を回避することで感染症拡大の対策につながる

・旅行需要の分散化を進めることで観光業界を回復へつながる

などのメリットを生み出すと言われています。

そのことから、日本政府や各省庁、自治体がワーケーションやブレジャーの取組を推進し、各HPやYouTubeチャンネル等での解説動画配信、企業・受入地域の導入事例を公開するなどの活動を行っています。

ワーケーション導入のメリット・デメリット

ワーケーションは徐々に耳にするようにはなってきたものの、まだまだ社会に認知されていないため、導入や継続の良し悪しは判断が難しいこともあるでしょう。

どういったメリットがあるのか、「企業側」「従業員側」「地方自治体・地域」「関連事業者側」に分けて紹介していきます。また、続けてデメリットについても簡単に見ていきましょう。

ワーケーションを導入する「企業側」のメリット

・業務効率向上
・帰属意識の向上
・社員満足度の向上
・有給休暇の取得促進
・地域活性化への貢献
・仕事の質と品質の向上
・優秀な人材の雇用確保
・イノベーションの創出
・他企業や他業種との人脈形成や情報交換
・多様な働き環境の提供による人材流出の抑制

ワーケーションを利用する「従業員側」のメリット

・生産性の向上
・ストレス軽減
・リフレッシュ効果
・モチベーションの向上
・長期休暇の取得のしやすさ
・ワークライフバランスが充実
・働き方や働く場所の選択肢の増加
・新しい環境によるアイデアの創出
・リモートワーク(テレワーク)の促進

ワーケーションを受け入れる「地方自治体・地域」のメリット

・地域創生
・地域活性化
・平日の旅行需要創出
・関係人口と交流人口の増加と創出
・古民家や空き地、遊休施設の有効活用

ワーケーションを受け入れる「関連事業者」のメリット

・地域観光事業者への集客
・事業拡大および雇用創出
・自社のソリューション開発
・関連事業の活性化や雇用創出
・受入地域(行政)との関係性向上

ワーケーションを受け入れる「企業・従業員側」のデメリット

ワーケーションには企業、従業員、地方自治体、関連事業者それぞれに多くのメリットがあげられましたが、デメリットがあることも理解しておくことも必要です。

デメリットを把握していないと会社損失や、従業員への負担となる場合があるため注意しておきましょう。

・労働時間の管理が難しい
・適正な人事評価が難しい
・テレワーク環境の整備が必要
・セキュリティ面のリスクがある

ワーケーションのデメリットを解消する4つのポイント

ワーケーションのデメリットについても紹介しましたが、しっかり対策をとっておくことで導入失敗を防ぐことができます。

具体的にどういった対処を行えばいいのでしょうか。

①労働時間の管理が難しい
➡労働時間管理体制を整え就業規則を改訂する

会社と離れた場所での業務でも、細かい労働時間の管理は必要です。

仕事とプライベートの線引きがあいまいになってしまうことが懸念されますが、労働時間の管理体制を整えるための勤怠管理システムの導入や、出退勤の報告ルールを新たに定めることで解消可能です。

また、就業規則の改定も行うことが大切です。基本的な業務ルール、禁止事項、休暇範囲、有給休暇消化基準、企業・従業員の費用負担範囲なども合わせて取り決めておきましょう。

②適正な人事評価が難しい
➡導入後の人事評価基準を見直す

ワーケーション導入後の人事評価基準を見直す必要があります。

従来のオフィスワークと、休暇を交えた勤務では適切に評価するのは難しいため、万が一誤った評価してしまうと社員から不満が出てくる状況となってしまいます。

そのため、業務内容、成果の把握、評価基準、給与改定まで見直し、明確にする仕組みづくりを行いましょう。

③テレワーク環境の整備が必要
➡事前の下調べと準備を行う

オフィスや自宅で業務するよりパフォーマンスが下がらないよう、テレワーク環境の整備が重要です。

業務に必要な最低限のものとして、Wi-Fi環境や作業スペースの確保、社内外の人とコミュニケーションを行うチャットツールやオンライン会議ツールの導入などがあげられます。

これまで紙ベースで書類を管理、申請手続き、回覧、押印などを行ってきた場合は、滞在先でもできる方法を整備することも大切です。

どういったものを整備する必要があるのか、下調べと導入の準備を行いましょう。

④セキュリティ面のリスクがある
➡ネットワークセキュリティを強化する

宿泊先やカフェなどでのWi-Fi接続ではサイバー攻撃、パソコンやUSBなどの機器が盗まれる可能性があるため、セキュリティ強化は必要不可欠です。

滞在先や管理する情報に合わせて、情報管理におけるルール設定やセキュリティソフトの導入といった、情報漏洩防止の対策を練っておきましょう。

ワーケーションの行き先を選ぶポイントは?

ワーケーションは仕事も休暇も過ごせる場所として、行き先の選び方はとても重要です。ここでは、どういったポイントに注目して選べばいいのか紹介します。

仕事がしやすいコワーキングスペースのある地域

オフィスから離れて仕事をするとなると、仕事のインフラ、ミーティングスペース、集中できる環境などが必要となります。

コワーキングスペースであれば仕事ができるスペースとして設備がある程度整っているため、快適な仕事空間と休暇を楽しむプライベート時間を分けることが可能です。

休暇を楽しめる地域

せっかくだから休暇を満喫できるとして観光地、リゾート地、海・山、キャンプ場などの非日常で選ぶのもおすすめです。

日常では味わうことができない空間だからこそリフレッシュでき、新たなアイディアが生まれることもあるでしょう。

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アクティビティが多い場所

ヨガ、ハイキング、釣り、キャンプなど趣味ややりたいことから場所を決める方法もあります。

農山漁村地域に宿泊して地域を深く知る「農泊(のうはく)」の過ごし方も、非日常・異日常を感じながら地域活性化につなげられるとして今注目を浴びています。

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同行者のことを考えた場所

ワーケーションは一人や社内メンバーと行うイメージがあるかもしれませんが、実は家族や友人と一緒に行くことができます。

そのため、少人数で行くならリラックスできる地域へ、家族や友人と行くなら仕事のしやすい環境に加え、同行者も楽しめる場所を選択するのも良いでしょう。

受入地域・施設に企業が求めること

企業はどういったことを受入地域・施設に求めているのでしょうか。

ワーケーション導入において、企業が受入地域や施設に整備してほしいことで最も多かった回答は、「セキュリティやスピード面が確保されたWi-Fi 等の通信環境(53.4%)」となっています。

次いで「入退室管理やシュレッダーなどのセキュリティ対策(36.5%)」と、いずれも業務に関わるビジネス関連の要望でした。


出典:観光庁ワーケーション&プレジャーHP

その他の回答では、プライベート空間、商談や会議するスペース、複合機、といった「ハード面の整備」のニーズも高いことが分かっています。

自宅を離れて業務をことから、お子さまを預ける保育施設、家族が楽しめるアクティビティや体験コンテンツといった「子育て支援」もあげられ、家族同伴でワーケーションを行いたいといった需要もうかがえます。

観光関連に関する需要の合計は30.8%と全体でみると低くなっているのは、あくまでも仕事を中心に考えられているからと言えるでしょう。

 

導入にあたり「税務処理の考え方」「労災保険給付の考え方」について詳しく知りたい方は、観光庁の資料「新たな旅のスタイル_企業向けパンフレット」内の後半をご確認ください。

まとめ

今回は新しい働き方「ワーケーション」について詳しく解説しました。

職場や自宅を離れて仕事と余暇も過ごせることで、新しいアイディアが生まれたり、地域住民との新たな交流や日常にはないことから、気づき・学びにつながったりと多くの効果があります。

コロナ禍でテレワークが普及したように、ワーケーションという新しい働き方も今後広がっていくかもしれません。従業員・企業・地域の三方良しの実現に向けて、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。