インバウンドの回復によって外国人富裕層の訪日旅行者が増加しています。
日本の消費拡大のカギを握っていることから、日本全国で富裕層をターゲットにした高級ホテルや高級飲食店などが続々とオープンしています。
賃金や物価が上がらないこと、円安の影響も重なり、“外国人”にとって安いニッポンは大人気の旅行先です。
しかし、“外国人富裕層”にとっては価値の高い体験や経験ができる場所が少なく、十分に満足できないと言われています。
そこで今回は、
- 外国人富裕層は訪日旅行でどういったことを求めているのか
- そもそも外国人富裕層とはどのレベルのことを指しているのか
- 外国人富裕層を集客するために必要なこと
富裕層向けの高額商品やサービスが増加
インバウンドが急速に回復しはじめ、日本の経済を大きく手助けしているのが、お金に糸目をつけない外国人富裕層です。
1泊10万円以上の高級客室に連泊し、宿泊や飲食など1回の訪日旅行で1000万円を使う人も珍しくありません。
そんな超富裕層をターゲットにした外資系ホテルブランドの日本初進出やラグジュアリー旅館など、2023年・2024年に続々と開業を予定しています。
例えば、以下の外資系高級ホテルが話題となっています。
- 「ベルスター東京(BELLUSTAR TOKYO)」
新宿歌舞伎町に2023年5月19日にオープン
1泊1室:約8万円台~、約280平方メートルのスイートルームでは1泊300万円~ - 「ブルガリ ホテル東京(BULGARI HOTEL TOKYO)」
東京駅前に2023年4月4日にオープン
1泊1室:約25万円~、約400平方メートルのスイートルームでは1泊400万円~
富裕層向けの超高級ホテルの開業は東京・京都・大阪といった大都市だけに限りません。長崎・広島・鹿児島・北海道・岩手など地方主要都市からリゾート地まで幅広く出店が相次いでいます。
寿司やすき焼きといった飲食店、美容整形・エステ・美容室といった美を追求したお店なども、高額な商品やサービスを提供するお店が増えています。
超富裕層にとって「価値を感じれば金額は気にしない」「予算は考えていない」という声があがり、値段よりも最高級の体験を求めて日本での旅行を満喫しているようです。
超富裕層旅行者とは
そもそも、超富裕旅行者とはどういったことを言うのでしょうか。
日本政府観光局(JNTO)では「富裕層旅行者(高付加価値旅行者)」とは、
「訪日旅行1回あたりの総消費額が1人100万円以上の旅行者」
と定義しています。そして、高付加価値旅行者は次の2つに分類されています。
1度の訪日旅行で総消費額100万円以上/人を消費する場合は「ラグジュアリー層」、総消費額300万円以上/人なら「ハイエンド層」と呼びます。
※総消費額=航空便などの代金を除く着地での消費額の合計のことを指します。
高付加価値旅行者が旅行に求める価値
一人あたりの訪日旅行1回あたり総消費額100万円以上を消費するのが高付加価値旅行者と定義しますが、「単に高額消費をすること」ではないというのがポイントです。
一般的に外国人旅行者が旅先で求めているものは「異文化に触れる」「おいしい食べ物を食べる」「美しい自然や景色を見る」などがあげられます。
一方、高付加価値旅行者はこういったニーズ以外にも、「旅行する意味」をより強く求めている傾向にあります。
そして、その旅行する意味の中には「利己的な視点」と「利他的な視点」があります。具体的にどういったことなのでしょうか。
■利己的な視点
利己的な視点では「旅行することで学べる」「人生の資産につながるようなつながり」「自分の内面が高まると感じる特別な体験・経験をする」といったことに期待しています。
- これまでいになかったような革新的なものか
- 自身/同行者が成長できるか
- 知りたいことが知れるか/学びがあるか
- 自身/同行者の体や心の調子が整うか、リラックスできるか
■利他的な視点
一方、利他的な視点では「訪問先の環境改善」「社会・文化の発展に寄与する」ことも重視しています。
- 地球環境に配慮しているか、訪問地に悪影響を及ばさないか
- 訪問地の理解が深まるか、訪問地の規範を犯すものでないか
- 訪問地の環境の改善や、社会・文化の発展に寄与するか
高付加価値旅行者が求めているものの共通点
高付加価値旅行者は日ごろから慈善活動や社会への興味関心が高く、旅行先においても「自然との関わり」「歴史・文化の成り立ち」「地域の人々の取り組み」などを深く知るなど積極的に取り組んでいる傾向にあります。
そのため、人それぞれの「旅行する意味」を持って訪問先や消費行動をとっているようです。
受け入れ側の課題
日本には多くの外国人観光客が楽しめる場所・コンテンツはたくさんあるため、海外旅行先上位に入るほど人気です。
しかし、超富裕層である高付加価値旅行者を十分に満足させられるような宿泊施設や観光コンテンツが不足しているので、受け入れ環境の整備が課題となっています。
また、新型コロナウイルス感染症の影響で一度離れてしまった多くの観光業に関わる人材を、再度確保することも必要不可欠です。
とはいえ、高付加価値旅行者向けに商品・サービスを提供することにより、収益は観光資源である自然や文化等の維持・発展への使用につながり、収益率の高まりから賃金改善にも期待できるでしょう。
高付加価値旅行者を集客するために必要不可欠なこと
高付加価値旅行者にとって魅力的なコンテンツを作ることはもちろん、より多くの高付加価値旅行者に情報を届ける、いわゆる流通にのせることが重要です。
いくら素晴らしい商品・サービスを作っても、消費者・利用者に情報が届かなければ宝の持ち腐れになってしまいます。
そのため、海外旅行社向けに紹介・手配できる人と深くつながり、送客しなければなりません。具体的には以下の流れが必要です。
- 魅力的なコンテンツを作り
- 海外向けの動画やSNS、ウェブサイトなどを制作し
- 高付加価値旅行者自身へ向けて発信し
- 興味を持ってもらい
- どうすれば体験、経験ができるかの手配方法を提示する
までを徹底的に行わなければ、興味だけ与えられても機会損失につながってしまいます。
特に、日本になじみが薄い欧米豪等の高付加価値旅行者にとっては、旅行会社を通じて訪日旅行を手配するケースが高いです。
そういったことから、プライベートのサービスや特別手配にも柔軟にでき、訪日旅行に明るい地元にある旅行会社の協力が必要不可欠です。
つまり、魅力的なコンテンツ作りとともに、流通・販路をセットで考えることが重要ということになります。
まとめ
今回は、地域や日本の経済を支える「富裕層旅行者(高付加価値旅行者)」について詳しく紹介しました。
一般的な人の感覚では高額な旅費と感じていても、世界の超富裕層にとっては「最高級の体験ができれば金額の上限はない」という人もいるほど、超富裕層に向けた商品・サービスが今求められています。
日本には魅力的な文化・観光資源がたくさん存在し、ホスピタリティーがあふれ仕事ができる人が多いこと、最低限の施設まで整っています。
海外富裕層をターゲットにするためにはまず、彼らのニーズ、特性の把握、誘致するための仕組みづくりを考えていくことが大切となるでしょう。