インバウンドビジネスを成功させるには?インバウンド成功事例6選

年々増え続ける訪日外国人観光客(インバウンド)では、企業や自治体から多くの注目を集めています。

インバウンドビジネスには、多くの業界にビジネスチャンスがあります。

しかし、「インバウンドを取り込みたいけど、何をしたらいいのか分からない」という方も多いと思います。

今回は、インバウンドビジネスの説明からインバウンドビジネスを成功させるポイントやインバウンドビジネスを成功させた企業・自治体の事例までご紹介します。

ぜひ、参考にしてみてください。

インバウンドビジネスとは

インバウンド

インバウンド(Inbound)とは、外国人が訪れてくる旅行のこと。日本へのインバウンドを訪日外国人旅行または訪日旅行という。これに対し、自国から外国へ出かける旅行をアウトバウンド(Outbound)または海外旅行という。

引用元:JTB総合研究所(https://www.tourism.jp/tourism-database/glossary/inbound/

インバウンドビジネスとは、日本へ観光に訪れた外国人をターゲットにビジネス展開することを指します。

そのため、多岐にわたる業種・業界に影響を与え、チャンスを生み出しています。

インバウンドビジネスが注目されている理由

政府は、「観光ビジョン実現プログラム2019」を策定し、2020年には訪日外国人観光客数4,000万人、2030年には6,000万人とすると目標を掲げました。

実際、観光庁の”訪日外国人消費動向調査”によると、2019年1月-9月には3兆6,189億円と年々増加傾向にあります。

また、2020年に開催予定の東京オリンピックも追い風になっており、観光庁の”過去のオリンピック・パラリンピックにおける観光の状況”では、スペイン(1992)やオーストラリア(2000)、ギリシャ(2004)、中国(2008)、英国(2012)など、オリンピック・パラリンピック開催決定後は 開催国のインバウンド需要が長期間にわたって喚起される傾向があります。

そのため、オリンピック後もインバウンド市場は伸び続けることが予想されます。

インバウンドビジネスには、大きなビジネスチャンスがある領域であると言えるでしょう。

インバウンドビジネスの種類

インバウンドビジネスを取り込むには、まずインバウンドビジネスの種類を知りましょう。

インバウンドビジネスは大きく2種類に分類することができます。

  1. 訪日外国人観光客をターゲットにしたオフラインビシネス
  2. エンドユーザー(消費者)が外国人となるオンラインビジネス

1.訪日外国人観光客をターゲットにしたオフラインビシネス

1つ目は、誰もが訪日外国人観光客に自身の商品やサービスを提供することを思い浮かべると思います。

オフラインで直接外国人に商品やサービスを提供するため、ホテルや旅館などの宿泊施設やショッピングモールなどの商業施設、飲食店、さらには交通機関など様々な業界からインバウンドビジネスに参入することで収益拡大が期待できます。

2.エンドユーザー(消費者)が外国人となるオンラインビジネス

2つ目は、エンドユーザー(消費者)が外国人となるパターンです。

これは、旅行で訪れた外国人に直接商品やサービスを提供できなくても、オンラインでエンドユーザー(消費者)を外国人にターゲットにして提供することです。

例えば、外国人向けのウェブサイトやアプリを展開していたり、メーカーがECコマースを利用して外国人向けの商品を提供するなどもインバウンドビジネスに含まれます。

インバウンドビジネスで成功するためのポイント

様々な業種・業界にインバウンドビジネスの参入価値があることがお分かり頂けたと思います。

でも実際に「インバウンドビジネスを取り込みたいけど、何から始めたらいいの?」という方も多いと思います。

インバウンドビジネスを取り込むためには以下のポイントを確認してみましょう。

ポイント1.SNSの活用
ポイント2.Webメディアの活用
ポイント3.多言語対応
ポイント4.決済サービスの導入
ポイント5.フリーWiFiの設置
ポイント6.動画コンテンツ制作

ポイント1.SNSの活用

インバウンドビジネスを成功させるには、SNSの活用はとても重要なポイントの一つです。

実際に、観光庁の”訪日外国人の消費動向”では、出発前に得た旅行情報源として、「個人のブログ」(31.2%)に次いで「SNS」(21.4%)があげられています。

出典元:観光庁「訪日外国人の消費動向」(http://www.mlit.go.jp/common/001230775.pdf

そのため、SNSで自身の商品やサービスをPRし、外国人の方に「行ってみたい」「使ってみたい・やってみたい」と思ってもらうことが重要です。

主要なSNSとしては、

  1. Facebook
  2. Twitter
  3. Instagram

上記3つが利用されています。

それぞれのSNSの特徴を理解し、ターゲットに合ったSNSを活用していきましょう。

参考までにSNSを活用した事例をご紹介します。

事例1.高知県観光コンベンション協会

高知県観光コンベンション協会では、海外向けにFacebookページを開設し、わずか3ヶ月でファン数10,000人突破を果たしています。

出典:Visit Kochi Japan Facebook公式アカウント(https://www.facebook.com/visitkochijapan

自社のWebサイトと差別化をするために、Facebookでは旬な情報をタイムリーに発信しています。

Webサイトでは伝えきれない短所となる部分を補い、Facebookページで獲得したファンをWebサイトへ誘導する動線を構築しています。

事例2.ANA

出典:ANA Instagram公式アカウント(https://www.instagram.com/ana.japan/

ANAでは、インバウンドに特化したInstagramアカウントを開設しています。

2019年11月現在では約29万人のフォロワーを獲得し、主に古き良き日本の風景を投稿し、外国人の方が日本に行きたくなるような写真が多く掲載されています。

出典:ANA Instagram公式アカウント(https://www.instagram.com/ana.japan/

紹介文も全て英語で書かれており、外国人の方が見やすいよう工夫されています。

ポイント2.Webメディアの活用

SNSを活用することも重要なポイントですが、Webメディアを活用することも成功するために重要なポイントの一つです。

先ほどの観光庁の”訪日外国人の消費動向”では、出発前に得た旅行情報源として、「個人のブログ」(31.2%)が1位でした。

まだまだ多くの外国人がWebメディアを活用していることが分かります。

自社でメディアを開設している方は自社メディアを活用して商品やサービスをPRすることができますが、メディアを持っていない方も多いかと思います。

メディアを持っていない場合は、インバウンドメディアに自社の商品やサービスを宣伝してもらうことも一つの手です。

いくつかインバウンドに特化したメディアをご紹介しますので、参考にしてみてください。

  • MATCHA
  • Japan-guide.com
  • Time Out Tokyo
  • Tokyo Otaku Mode
  • ZEKKEI Japan

MATCHA

出典:MATCHA(https://matcha-jp.com/jp/

MATCHAは、訪日外国人に向けて日本のおすすめ観光スポットやグルメ、ショッピング、宿泊情報などを発信しているメディアです。

日本語・英語・中国語(繁体字・簡体字)・韓国語・タイ語・インドネシア語・ベトナム語、スペイン語、そして外国人にも読みやすい日本語(やさしい日本語)の10言語に対応しています。

情報は47都道府県に幅広く対応しており、メジャーな観光スポットのみならず、少しニッチな地方の紹介記事もあります。

Japan-guide.com

出典:Japan-guide.com(https://www.japan-guide.com/

Japan-guide.comは、最大手のインバウンドメディアの一つです。1996年より開設しており、インバウンドメディアのなかでも老舗なメディアです。

外国人ライターを起用していることから、外国人観光客目線での記事が多く、非常に実用的なものが多いのが特徴です。

Time Out Tokyo

出典:Time Out Tokyo(https://www.timeout.jp/tokyo/ja

Time Out Tokyoは、1968年にロンドンで創刊されたシティガイドです。

地域密着型のシティガイドでありながら、世界108都市39カ国(12言語)に幅広く国内外に発信しています。

日本の優れた ヒト・モノ・コト・コンテンツ・サービスを取り上げ、メディアとして一番重要な記事の質には定評があり、英国出版協会主催、『PPA AWARDS』のインタナショナル・コンシューマー・メディア・ブランドを2010年、2011年、2013年、2014年と4度受賞しています。

Tokyo Otaku Mode

出典:Tokyo Otaku Mode(https://ja.otakumode.com/

Tokyo Otaku Modeは、日本が誇るアニメや漫画、ゲーム、音楽、ファッションなどサブカルチャーを世界に発信しています。

特徴として、メディア発信のみならずEC事業を展開しており、さまざまな作品とコラボレートしたオリジナル商品を開発するメーカーでもあります。

ZEKKEI Japan

出典:ZEKKEI Japan(https://jp.zekkeijapan.com/

ZEKKEI Japanはプロカメラマンが撮影した写真を通して、日本の絶景スポットを世界へ発信しているメディアです。

Facebookページでは、130万「いいね!」を獲得し、台湾・タイなどを中心に、東アジア・東南アジア地域などからも多くの支持を得ています。

ポイント3.多言語対応

訪日外国人観光客にPRするには、多言語化は必須項目です。

外国人の多くは、インターネットを用いて情報収集を行います。いかに自社の商品やサービスが優れていたとしても、自社メディアが日本語しか対応していないのに商品やサービスを提供するのは非常に困難といえます。

対応言語は多いに越したことはありませんが、ターゲットになる国が明確な場合は、ターゲット国の言語だけでも対応するようにしましょう。

ポイント4.決済サービスの導入

キャッシュレスニーズが高まっている現在では、クレジット決済などの決済サービスを充実させることもポイントの一つです。

観光庁の”訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート結果”では、外国人観光客が旅行中に困ったこととして、「クレジット/デビットカードの利用(13.6%)」があげられています。

特に中国・韓国・香港・アメリカからの訪日外国人観光客は数も多く、それぞれの国でのカードの利用率は日本の2〜3倍となっています。

カード決済が慣れ親しんでいる人たちにとって、決済サービスの導入は消費行動を促す重要なポイントです。

抑えておくべき、カードブランドは以下の通りです。

  • VISA
  • MasterCard
  • American Express
  • DISCOVER
  • Diners Club
  • JCB
  • 中国銀聯(Union Pay)

カードに対応するには、カード会社と直接契約を結んで加盟店になるか、カード決済代行業者に依頼する方法があります。

ポイント5.フリーWiFiの設置

店舗型のビジネスを経営している方は、WiFiの有無は重要なポイントの一つです。

なかでも宿泊施設では、WiFiの有無で予約率に大きく影響すると言っても過言ではありません。

実際に、観光庁「訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート結果」https://www.mlit.go.jp/common/001171594.pdfによると、外国人観光客が旅行中に困ったこととして、”無料の公衆無線LAN環境(46.6%)”と圧倒的に多くなっています。

日本は他国と比べるとWiFiスポットも少なく、インターネット回線が使用できないと、地図で目的地を検索することも調べ物をすることもできないため、WiFiの有無の重要性が高いかが分かります。

ポイント6.動画コンテンツ制作

近年、YouTuberという職業が生まれ、PR方法の一つとして動画コンテンツが注目を浴びています。

インバウンドに動画が適している理由として、

  • 文字情報よりも圧倒的に多くの情報を届けられる
  • SNSと相性が良く拡散されやすい
  • 訪日前に観光の疑似体験ができる

などがあります。

動画コンテンツでインバウンド向けに制作された事例をご紹介します。

事例1.医療プラットフォーム「UrDoc(ユアドク)」

出典:Crevo(クレボ)制作実績(https://crevo.jp/projects/1886

外国人の視聴を想定した、多言語医療相談サービスの紹介動画です。

UrDoc(ユアドク)は、海外旅行中の突然の体調不良や怪我をアプリ一つで母国語の医師に相談できるというサービスです。

視聴者が実際の利用シーンを想像しやすいように、キャラクター一人一人の表情の細かさもこだわって制作されています。

事例2.福岡PARCO「らーめん二男坊編」

出典:Crevo(クレボ)制作実績(https://crevo.jp/projects/743

こちらも外国人の視聴を想定した、「福岡PARCO」に店舗を構える「らーめん二男坊」を取り上げたインバウンド用プロモーション動画です。

職人のキレのある動きや、和太鼓を使うことで日本を感じられるような演出で品質の高さも訴求されています。

短い尺の映像でも、最後に筆文字で大きく「RAMEN」「ENJOY JAPANESE FOOD」「at PARCO」という文字を全面で見せることで外国人にも印象に残る表現に仕上がっています。

インバウンドビジネスを成功させている企業3選

マツモトキヨシ(ドラッグストア)

出典:マツモトキヨシ公式HP(https://www.matsukiyo.co.jp/store/online

マツモトキヨシは大手ドラッグストアの一つです。

マツモトキヨシはドラッグストアの中でも、中国などの訪日外国人観光客から認知度が高いお店として有名です。

理由としては、早い段階でインバウンド対策を行っていたからです。主なインバウンド対策は以下の通りです。

主なインバウンド対策
  • 免税店舗の増加
  • 店舗でのフリーWi-Fiサービスの提供
  • 中国のクレジットカードである銀聯(ギンレン)カードの取り扱い開始
  • 中国の代表的SNSである微信(ウィーチャット)を活用したクーポンの配信

そうした取り組みが奏功して、マツモトキヨシのプライベートブランド化粧品は中国などからの旅行者にとって魅力的な土産物などとして認知されています。

セブンイレブン(コンビニエンスストア)

出典:セブンイレブン公式HP(https://www.sej.co.jp/i/products/thisweek/

セブンイレブンは大手コンビニエンスストアの一つです。

各コンビニがインバウンド対策に力を入れており、なかでもセブンイレブンは他のコンビニとは少し違ったインバウンド向けのサービスを展開しています。

主なインバウンド対策
  • 訪日外国人観光客が免税手続きをスピーディーにできる「免税サービス」
  • 電子決済の導入
  • 多言語対応
  • 民泊の鍵の受け渡しサービス「フロントデスク24」
  • シェアサイクル実施

セブンイレブンでは、ITアウトソーシングのトランスコスモスと提携し、専用のコールセンターを設置し、英語や中国語などを同時通訳できるサービスも提供しています。

JTBとセブンイレブンが提携しスタートした「フロントデスク24」では、民泊利用の利便性を高めるため、店舗にチェックイン機を設置し、24時間365日常時チェックインが可能になる他、鍵の受け渡しができるサービスを提供するなど、様々なインバウンド対策が行われています。

高島屋(百貨店)

出典:高島屋グループ センチュリーアンドカンパニー(https://www.century-and.co.jp/info/facility/detail/?seq=15

高島屋は、大手百貨店一つです。

高島屋では、中国の訪日外国人を中心にインバウンド対策を行い、年々売り上げを伸ばしている企業です。

主なインバウンド対策
  • 「Alipay(アリペイ)」や「WeChatペイ」といった電子決済の導入
  • NTTドコモによるメールの配信
  • 中国大手の「Ctrip」という旅行会社との提携
  • 免税カウンターの拡張・免税手続き簡便化

企業だけでなく、自治体もインバウンド対策を行っている

インバウンド対策は企業のみならず、地域のPRや、観光業の活性化を目的に地方の自治体
も力を入れています。

楽天が運営している楽天トラベルでは、「2018年インバウンド人気上昇都道府県ランキング(集計日: 2019年1月21日(月))」が発表されています。

以下は、前年同期比の伸び率のランキング結果です。

 順位 都道府県名 前年同期比
1位 鳥取県 +189.6%
2位 福島県 +184.6%
3位 岩手県 +139.4%

1位:鳥取県

出典:TABIPPO(https://tabippo.net/tottori-superbview/

鳥取県は、前年も3位にランクインし、年々外国人観光客からの人気を得ているエリアです。

鳥取県は、クールジャパンの代表とも言える、「名探偵コナン」や「ゲゲゲの鬼太郎」の聖地として、多くの外国人から親しまれています。

主なインバウンド対策
  • 多言語での観光情報の提供
  • PR動画の制作

多言語対応には力を入れ、鳥取の公式HPでは鳥取の観光地・食の魅力を6ヶ国語(英語・韓国語・中国語(簡体字・繁体字)・ロシア語・タイ語)で紹介していたり、宿泊施設や観光施設におけるトイレのマナーに係るトラブル防止のためのピクトグラム(トイレの使い方)がインターネットでも紹介されています。

また、島根県出雲市が制作したインバウンド向け観光PR動画「Izumo, Japan 4K (Ultra HD) – 出雲」では、動画の公開を開始してから、およそ2週間という短期間で550万回もの視聴回数となり、注目を浴びました。

2位:福島県

出典:朝日新聞デジタル(http://www.asahi.com/travel/bridge/TKY201006240248.html

福島県は、前年はランキング圏外でしたが、躍進の2位にまで昇り詰めています。

福島県の会津地域と新潟県を結ぶJR只見線は、秘境を巡る風景の美しさから「世界で最もロマンティックな鉄道」として中国や台湾、タイなどのSNS上で話題になりました。

主なインバウンド対策
  • 多国籍のスタッフを積極的に採用し、多言語対応
  • インフルエンサー・SNSの活用による情報の発信・拡散
  • 外国人に人気の都内の飲食店やスイーツ店等と連携

3位:岩手県

出典:世界の世界遺産(https://xn--u9jt60gba2011b1fac0289b.com/364/

岩手県に訪れる外国人観光客は半数以上が台湾人というデータがあり、台湾人に大人気のエリアです。

主なインバウンド対策
  • フリーWiFiの整備
  • 多言語コールセンターの設置
  • 多言語案内板の整備
  • Facebook、weibo(中国)などによるSNS発信
  • PR動画の制作

世界文化遺産にも登録されている「中尊寺金色堂」や「毛越寺」など日本の風情を感じられるスポットが多いことも人気の理由の一つです。

幅広い業界でインバウンドビジネスのチャンスはある

以上、インバウンドビジネスについてご紹介しました。

年々、訪日外国人観光客が増え続け、2020年に開催する東京オリンピックを目処に企業や自治体が様々なインバウンド対策を行っています。

幅広い業界にインバウンドを取り込むチャンスがあります。

今回、ご紹介した成功させるためのポイントや成功事例を参考に自身のビジネスに取り込める方法があれば実践してみてはいかがでしょうか。

ぜひ、インバウンドビジネスにチャレンジしてみてください。