日本で夏の贈り物と言えば「お中元」ですが、この文化のきっかけとなったのは中国の「中元節」からきています。中元節は中華圏の人にとって毎年行われる大切な伝統行事です。今回は中元節を知るために、歴史・風習などについて詳しくご紹介します。
目次
中元節とは?
中元節(ちゅうげんせつ)とは旧暦7月15日(新暦8月15日)に設定された中華圏(中国・台湾・香港・シンガポールなど)の祝日です。分かりやすく言うと日本のお盆、アメリカでいうハロウィンのような日になります。
中華圏では中元節の日を旧暦の固定された日になっているため、現代使われている新暦では毎年日付が異なり、2018年は08月25日、2019年は08月15日、2020年は09月02日となっています。
中元節の歴史や由来とは?
中元節は中華圏の人にとって大切な祝日で、「三元」の1つでもあります。三元には上元節(旧暦正月15日)・中元節(旧暦7月15日)・下元節(旧暦10月15日)があり、この三元の日は竜王の孫(神様)三官大帝三人の誕生日を祝う日です。
そして中元節は地獄の帝「地官大帝」の誕生日なので、霊魂を鎮める日=死者の日として位置づけられています。そのため死者の魂や悪霊が彷徨うとされる月でもあるので、その霊を鎮めるために燈籠流しをして神を祀っていました。
日本のお盆と同じようなものと冒頭で説明しましたが、中元節では少し違うところがあります。中元節にはご先祖様が帰ってくる他に、地獄の扉が開き成仏を祈られなかった霊や悪霊たちも一緒にあの世から戻ってくるとされています。中国語では「幽霊」のことを「鬼」といい周囲をその霊がさまよう時期のため、旧暦7月を「鬼月」とも呼んでいます。
中元節はどうやって過ごすのか?風習や習慣
中元節にはどのように過ごすのでしょうか。また日本と違うところはどこなのでしょうか。
お供え
家や会社の前などにご先祖様と見ず知らずの悪霊のために、肉・魚・果物・飲み物などたくさんのご馳走を並べお供えします。
線香
線香を焚くことで霊魂が迷子にならず元へ戻れるよう祈りを捧げます。
紙のお金を燃やす
線香を焚いた後あの世で使うお金「紙銭(紙で作られたもの)」をドラム缶の中で燃やし、たくさんの霊に持って行ってあの世で困らないようにします。紙には2種類あって、金色は「ご先祖・神様用」、銀色は「悪霊」と用途が分かれています。
燈籠流し
中元節ではお墓参りをした後に灯篭に火を灯し川へ浮かべて流し、その明かりで死者達の帰る道を照らします。
贈り物
懺悔や贖罪の意味で死者たちへ贈り物をしていましたが、江戸時代からお盆にはお供え物などの贈り物をする習慣が日本にも伝わりました。そして時代の変化とともに夏の贈り物は「お中元」として、日頃お世話になっている方へ感謝の気持ちとして贈られるようになっています。
中元節のタブー
中元節の期間中はご先祖様だけでなく、地獄の門から多くの死者の霊が入ってくと考えられています。そのためおめでたい行事や大きなイベントはタブーとされており、「引っ越し・結婚・入籍・旅行」などは好ましくありません。
また悪霊がつくため「夜は出かけない・夜洗濯物を干さない・落ちているお金は拾わない」などといった日常生活にもタブーな行動が存在します。
中元節の時に台湾旅行に行ってもいい?
台湾の基隆(キールン)地区では、重要民俗国家文化財にも指定された台湾最大規模のお祭り「鶏籠中元祭」が行われます。毎年旧暦6月29日~旧暦8月1日の1ヵ月間かけて中元節を盛大に祝う祭りです。
無病息災・家内安全など1年間無事でいられるように祈願するためのお祭りには、近年台湾以外にも日本を含めた海外からも多くの観光客が参加しています。
旧暦7月14日には花火・パレード・燈籠流しが行われるので、いくつもの灯される綺麗な景色を一目見ようとさらに活気が溢れます。お祭り好き・台湾の文化を一目見たいという方は、ぜひ楽しんでみてください。
しかし夜遅い祭りのため帰宅難民が発生するほど人が溢れかえるので、宿泊ホテルはなるべく近いところや朝まで過ごせるところを探す必要があるかもしれません。
月見を楽しむ中秋節がある
中秋節は夏の伝統行事ですが、秋に行う「中秋節」も中華圏の伝統行事です。中秋節には豊作を祈って音楽を奏でたり、美しい満月を見ながら月餅を食べて楽しむ日です。中秋節についても詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてみてください。
中秋節についての記事はこちら
神様と全ての死者を祀る日である中元節
今回は日本のお盆と少し似ていて、中華圏で行われる1年に一度あの世から戻って家族に会える日中元節をご紹介しました。
中元節のときにあの世から帰ってくるご先祖様以外にも見ず知らずの霊にもご馳走をふるまい祈りをささげる台湾の文化は、東日本大震災の際に数百億円もの義援金を送ってくれた台湾人の心優しい性格と文化からきているのかもしれませんね。
中元節を見に行く機会がある際は、ぜひメッカである台湾・基隆に行って、雰囲気を味わってほしいです。