今さら聞けない「中国・台湾・香港」の違い!日本との関係も徹底解説

突然ですが「中国・台湾・香港」の違いを話すことはできますか?学校教育で身につけた基礎知識やニュースなどで何となく現在の情報を得ることはあると思いますが、どのような歴史をたどり今の「中国・台湾・香港」が出来たのか理解できていない人も多いのではないでしょうか。

そこで今回は「中国・台湾・香港」の「基本情報、歴史、言語、通貨、政治」などについて徹底解説していきます。記事の後半には、それぞれの国と日本の関係も合わせてご紹介していきます。

知識ゼロでも理解できるようまとめているので、インバウンド集客するための情報や戦略に役立てていきましょう。

中国・台湾・香港の【基本情報】

まずは中国・台湾・香港それぞれの、面積・首都・人口など基本情報について紹介していきます。

中国の基本情報

正式国名:中華人民共和国
英語名称:People’s Republic of China
面積:約960万平方キロメートル(日本の約26倍)
首都:北京市(ぺきんし)
人口:約14億3,378万人(2019年時点)
民族:92%が漢族、8%はその他の少数民族

台湾の基本情報

正式国名:中華民国(台湾)
英語名称:Republic of China(Taiwan)
面積:約3万6千平方キロメートル(九州よりやや小さい)
首都:台北市(たいぺいし)
人口:約2,377万人(2019年時点)
民族:約98%が漢民族、約2%は台湾原住民

香港の基本情報

正式国名:中華人民共和国香港特別行政区
英語名称:Hong Kong Special Administrative Region of the People’s Republic of China
面積:約1,106平方キロメートル(東京都の約半分)
首都:中西区(ちゅうせいく)
人口:約743万人(2019年時点)
民族:92%が華人、8%はその他

中国・台湾・香港の【歴史】

中国の歴史

中国の歴史は4000年までさかのぼることができるとても歴史ある国です。現在ではGDP(国内総生産)は世界で第2位の経済大国へと発展していますが、20世紀前半には国内外で戦争が幾度となく起きており中国は弱く貧しかったため厳しい生活を強いられてきました。そこから現在まで中国が大きく発展していったのは、孫文(そんぶん)、蒋介石(しょうかいせき)、毛沢東(もうたくとう)などを中心とした指導者たちが国を強くし貧富の差がない豊かな国にしていこうと目指していったからです。

孫文の指導によって中国国民党を結成し1912年に「中華民国」へ、共産党である毛沢東の指導によって1945年には「中華人民共和国」の建国を宣言し、今の中華人民共和国となったのはつい最近のことです。

台湾の歴史

17世紀以降にオランダの貿易拠点として占領、中国の清朝が支配、日本が植民地にするなど支配されていました。日本が統治していたのは第2次世界大戦が終わるまでの50年間もあったため、台湾人が日本語を話せる人が多いのは統治時代の日本教育があったからです。

香港の歴史

もとは中国南部の小さな漁村だった香港は、アヘン戦争後の1842年~1997年までの約150年間イギリスの植民地になり、その後香港の全領域を中国へ一括返還することとなりました。イギリスは統治していた期間は香港の地で関税をかけずに自由貿易港として整備していたことなど、中国本土とは経済や制度が全く異なっていました。

中国と香港は同じ中国ではあるものの「社会的・経済的・考え方・文化」など大きく異なるということで、香港では「一国二制度」を採用しています。そのおかげで香港経済は飛躍的に伸びていっているのです。「一国二制度」については「香港の政治」の項目で詳しく解説いたします。

中国・台湾・香港の【言語】

それぞれの言語は漢字を使用していますが、国によって伝統的で複雑な漢字の「繁体字」と、簡略化された「簡体字」の2種類を用いています。どの国でどの漢字を使用しているのか、そしてどんな言語を使用しているのか理解していきましょう。

中国語の7大方言

中国・台湾・香港それぞれどんな言語を使用しているのかについて紹介する前に、まずは中国語の7大方言について把握しておくことが必要です。

日本にも「関西弁」「東北弁」「九州弁」など各地域によって方言があるように、中国語にも方言は数多く存在します。中国語の方言が異なると「語彙、発音、文法」まで大きく変化するものも中にはあり、共通語である「普通話(プートンファ)」しか話せない人にとっては他の方言が全く理解できないほど差が出るのです。中国の方言には大きく分けて7つあります。(=7大方言)

【中国語の7大方言】
・北方語(ほっぽうご)
・呉語(ごご)
・粤語(えつご)
・閩語(びんご)
・贛語(かんご)
・湘語(しょうご)
・客家語(はっかご)

 

①北方語(ほっぽうご)
「北方語」は共通語として使われているため、中国で1番多く話されている言葉です。この共通語のことを「普通話(プートンファ)」と呼びます。テレビ番組、報道、経済、政治、学校教育など公式な場所で用いられている言葉です。

日本人の多くは、「中国の標準語=北京語」だと思っている人が多くいるのではないでしょうか。「北京語」とは首都北京で話されている方言のことで、標準語である「普通話(プートンファ)」をベースとして作られた言葉なのです。そのため中国で「北京語」と言うと、方言のことに指します。

また中国語に関連して「マンダリン」という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、これは方言のうちの1つではなく、英語で「普通話(プートンファ)」のことを意味します。補足するとよく耳にする言語の「チャイニーズ」は、普通話と方言を全て合わせた中国語という意味になります。

②呉語(ごご)
「呉語」には蘇州語(ソシュウゴ)と代表的な「上海語」が属しています。上海をメインとしたビジネス言語には、欠かすことのできない言語です。

③粤語(えつご)
「粤語」は中華圏では共通語の普通話(プートンファ)の次に多く使われている言葉です。普通話とほぼ同じ文字表記であるものの発音は全くことなるため、普通話と広東語それぞれのみしか話せない人にとっては聞き取り・理解することもできません。

④閩語(びんご)
「閩語」は閩南語(ビンナンゴ)や台湾語(タイワンゴ)とも呼ばれ、台湾の一部の地域や南部のエリアで使われています。

⑤贛語(かんご)
「贛語」は7大方言の中では一番使用する人口が少ない言語です。

⑥湘語(しょうご)
「湘語」は長沙語や湖南語とも呼ばれ、品・チベット語族の言語の1つです。

⑦客家語(はっかご)
「客家語」は広東省東部、江西省南部、福建省西部などと台湾の北西部の地域で話されている方言です。

 

このように中華圏では数多くの方言が話されています。日本語でも「標準語」「関西弁」「青森弁」「沖縄語」などがありますが、同じ国内であっても地域が異なるだけで「イントネーション、意味、単語」に違いがあり全く理解できない方言もあります。

中華圏でも同じで方言が異なれば意思疎通はできず、共通語を話すか同じ文字を用いて「文語」で意思疎通を図ることとなるのです。文字の解説については、各国の言語の項目で紹介していきます。

中国の言語

中国本土ではさまざまな方言が話されていますが、最も多いのは共通語である「普通話(プートンファ)」を標準語としています。先ほど中国の7大方言を紹介したとおり地域によって中国語の種類(方言)が異なり、第一言語に標準語「普通話(プートンファ)」、第二言語には「広東語」「上海語」「四川語」などの中国語の方言が使われています。

 

【中国で使用する文字(漢字)=簡体字(かんたいじ)】
「簡体字」は漢字を簡略化した字のことで、日本の漢字よりも画数の少ないことが特徴です。

    日本の漢字       中国の漢字(簡体字)  
广
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台湾の言語

台湾の公用語は中国語です。中国本土で話されている中国語とは少し異なり「字体(漢字)、発音、発音表記」に違いがあることから、台湾人が話す中国語のことを「台湾華語」または「国語」と呼ばれています。中国本土と若干の違いはあるものの、お互いに会話するには問題はありません。

台湾では「中国語(台湾華語)」の他に方言の「台湾語(閩南語)」や「客家語(ハッカ語)」、そして「日本語」「英語」が話されています。

「台湾語(閩南語)」は台湾の南部エリアやお年寄りが話している言語で、中国語(台湾華語)と全く異なることから若い世代や北部に住む人には話すことや理解することもできません。この台湾語(閩南語)を話せる人の中には、中国語(台湾華語)を学んでいないことから、台湾語(閩南語)しか話せない人もいます。

「客家語(ハッカ語)」は中国大陸の広東省、湖南省、福建省、江西省エリアを中心に用いられる言語で、その昔中国から台湾へ移住してきた人が使用している言葉です。

「日本語」は80代前後のお年寄りや若者を中心に、話せる人が多くいます。日本が台湾を統治していた1895年~1945年の約50年の間には日本語教育があったため、多くのお年寄りは日本語の読み書きができます。また日本のアニメ・漫画・ドラマ、文化や景色などに興味を持つ若者が、独学や高校・大学での外国語取得のために日本語の勉強を選択している人が多くいるのです。

「英語」は日本と同じく日常の生活では使うことはほぼないため、外国人が集まる地域やホテルなどで通じることが多いです。また高校や大学では外国語を学ぶことや留学へ行くことが一般的なため、若者を中心に英語を話せる人がいます。

 

【台湾で使用する文字(漢字)=繁体字(はんたいじ)】
「繁体字」は日本の漢字と同じものもありますが、伝統的な字で日本よりも画数の多く複雑なのが特徴です。香港でも同じ繁体字を使用します。

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香港の言語

香港の言語は「広東語」を標準語としており、人口の約95%が広東語の使用や理解をしています。またイギリスの植民地時代があったことや国際自由港であったことから、今もなお約54%の人が英語の使用や理解ができます。

中国と台湾では発音が少し違うだけで同じ「普通話(プートンファ)」を使用していますが、香港人は広東語がメインのため普通話を話すことや理解することができない人は2か国同士で意思疎通をとることができません。1990年代以降に多くの学校教育で普通話の授業が導入されるようになり、就職や仕事をしていく中で必要な言語となってきています。

 

【香港で使用する文字(漢字)=繁体字(はんたいじ)】
「繁体字」は日本の漢字と同じものもありますが、伝統的な字で日本よりも画数の多く複雑なのが特徴です。台湾と同じ繁体字を使用します。しかしイギリスから返還された後に、政府関係などの公式な書類などで簡体字を用いるケースも増えてきています。

    日本の漢字       香港の漢字(繁体字)  
雑誌 雜誌
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中国語翻訳で気をつけるべきこと

中国・台湾・香港で使用されている文字は漢字を使用するとお話しましたが、漢字は漢字でも全く意味の異なる場合があるということを理解しておかなければなりません。

例えば日本の漢字で「手紙」、中国語の簡体字では「手纸」と書いた場合、手紙の意味ではなくトイレットペーパーの意味になってしまうのです。このように同じ漢字でも意味が全くことなる単語のことを「同形異義語」と言い、中国語の翻訳をする際単語や文章の意味が大きく異なってしまうため注意が必要となります。

また文字には「繁体字」と「簡体字」の2種類あると紹介しましたが、中華圏の人を集客するための案内やホームページなどで翻訳をする際には、それぞれの国に適した言語を使用しているのか確認が必要です。「繁体字・簡体字・日本の漢字」が混同した単語は、ネイティブの人にとって理解しがたい内容となってしまうため注意しましょう。

中国・台湾・香港の【通貨(お金)】

中国の通貨(お金)

中国人民元(1元=約15.55円)2020年9月現在
中国の中央銀行(中国人民銀行)が発行している通貨です。

実際の人民元紙幣の単位には「元」ではなく、日本の「円」の正字である「圓」の簡体字「圆」と書かれており、英語表記の「yuán」、日本の「えん」とほぼ同じ発音になります。そのため国別通貨コード(ISO)では「CNY=Chinese yuan」となっています。

台湾の通貨(お金)

ニュー台湾ドル(1新台湾ドル=約3.62円)2020年9月現在
中華民国中央銀行が発行している通貨です。

香港の通貨(お金)

香港ドル(1香港ドル=約13.71円)2020年9月現在
香港特別行政区の法定通貨です。現地では「港幣」「港紙」と呼ばれている香港ドルは、お隣マカオでも流通しています。

中国・台湾・香港の【宗教】

中国の宗教

無宗教、道教、儒教、仏教、イスラム教、キリスト教、その他の宗教があります。無宗教と民俗信仰が全体の約74%を占めており、日本と同様で自らは無宗教者であると自覚している人が多くいます。

台湾の宗教

道教、キリスト教(プロテスタント)、仏教、キリスト教(カトリック)、一貫教、イスラム教、天理教などがあります。中国から伝わってきた道教は台湾で最も信仰されており、2011年時点で約78%を占めるほど多くの人に受け入れられています。

香港の宗教

仏教、道教、キリスト教(プロテスタント)、キリスト教(カトリック)、イスラム教、ヒンドゥー教、シーク教、ユダヤ教などがあります。イギリス統治時代があったことからキリスト教(プロテスタント・カトリック)が多く、中華系以外にも多くの国の人が住んでいるため、街には寺院・教会・モスクなどが建てられているのが特徴です。

中国・台湾・香港の【文化や風習】

中国の文化・風習

  • 中国ではモバイル決済が進化を遂げ、現金を持っている人が少なく多くのお店でキャッシュレス文化がほとんどです。
  • 一般道には清掃員が仕事をしているので、ポイ捨てが当たり前です。掃除する人の仕事のためにゴミを捨てるという認識の人もいるようです。
  • 食事では食べ散らかすことがマナーです。しかし全てのお店ではなく、高級店などの綺麗なお店では汚さずに綺麗に食べる人もいます。

台湾の文化・風習

  • 数多くの天然温泉があるため、日本同様に温泉好きが多いです。
  • 麺料理は音を立てず静かに食べるのがマナーです。
  • ホテルやレストラン内では基本的に喫煙はできません。歩きたばこをした場合には、罰金を支払うことになります。

香港の文化・風習

  • 普段の生活・人生の大きな決断の際・街全体の建造物にも風水を取り入れるほど、香港人は風水に影響しています。そのため運気を上げるパワースポットもたくさんあります。
  • ゴミのポイ捨て・喫煙禁止エリアでの喫煙に罰金が課せられます。また公共の場で唾を吐くことも罰金の対象になります。

中国・台湾・香港の【政治】

中国の政治

中国の政治は共産党による社会主義で、経済は社会主義と資本主義が混合されています。選挙はなく優秀な推薦したい人材がいる際に、共産党員がスカウトするという入党システムになっています。

台湾の政治

日本と同様民主主義で、経済は資本主義です。行政院も同じく、日本同様選挙によってえらばれます。国連への加盟が認められていないので、国際社会に関わる外交関係の舞台に参加することはできません。

香港の政治

香港は150年もの間植民地であったイギリスから中国へ返還される前に、「一国二制度(一国両制)を50年間続ける」ことを中国とイギリス間でサインを交わしました。一国二制度(一国両制)とは1つの国で社会主義・資本主義2つの制度が併存する世界でも初めてのことで、外交と防衛以外のことは香港に任せるという「高度な自治」が認められていることを言います。

香港政府、司法の独立、報道・言論・集会などの自由、独自通貨、独自パスポート、独自教育システムなどが認められています。社会主義国である中国の一部でありますがこの高度な自治が認められていることから、香港の正式名称は「中華人民共和国香港特別行政区」と言われるのです。

中国と香港は文化や習慣などが大きく異なることから、イギリス植民地時代の法制度や資本主義から徐々に中国化へ戻していくための一国二制度として50年間の期間を設けています。しかし一国二制度を無視するような中国の動きによって民主主義や表現の自由が損なわれてしまうという危機感から、これまでに数十万・数百万人を超える大規模デモが香港で起きているのです。

香港民意研究所の世論調査によると中国へ返還された1997年には「一国二制度を信じる」と答えた人は約6割いましたが、徐々に減少し2019年には約3割の人しか信じる者はいなくなっています。中国からの締め付けが強くなっていることから、一国二制度の保障を待たずに香港人の自由度はさらに減少してしまうのかもしれません。

中国・台湾・香港の【国同士+日本との関係】

中国と日本の関係

中国の輸出国は第1位アメリカに次ぎ、第2位日本への貿易相手国として重要なポジションになっています。中国からの訪日者数は世界1位で、年間959万人を超える人々が訪れています。そのためお互いに経済を発展させる大切なパートナー国となっています。

80年代は中国から日本へパンダが来たことや国交が回復した後だったため、当時の日本人約8割がアメリカよりも中国へ親しみを持つ人が多くいました。しかし大気汚染問題、天安門事件、尖閣諸島の領土問題など日中関係が悪化したことで中国への好感度が大きく下がってしまいました。日中にとって歴史的・経済的にも深く互いに大切にしたいパートナーのため、両国が経済発展への協力することや良好な関係を維持するよう取り組んでいくことが重要です。

台湾と日本の関係

国連への加盟が認められていないため、国際社会では日本を含み多くの国が直接的外交関係を築くことはできません。しかし年間数百万人の観光客が互いの国を観光すること、化粧品・家電・電子部品の輸出などの経済交流があります。

香港と日本の関係

日本人アーティストによるコンサート、日本文化である漫画・アニメ・相撲・合気道・茶道・日本舞踊などいくつもの交流があります。また互いに輸出入国相手として、電子機器・家電・ファッションなど大事な貿易相手先となっています。

三国は似ているようで、まったく異なった文化を持っている

今回は「中国・台湾・香港」の文化や言語違い、歴史、政治、日本との関係を紹介していきました。中華圏と言ってもひとくくりに語ることはできず、国や地域が異なれば文化や習慣、言語、文字(漢字)まで大きく変わるということが理解できたでしょう。

言語では地域によってさまざまな方言が使われており、また文字には2種類で表すことなど訪日外国人を集客する上で最低限覚えておくべきことと言えます。

訪日外国人客数を増加させていくためには各国の政治的要因が左右することもありますが、今回ご紹介したそれぞれの違いを理解しマーケティングやビジネス戦略をする上で役立たせていきましょう。