横丁といえば
・店内や座席が狭い
・赤ちょうちんが飾られている
・隣通しのお店もひしめき合っている建物
・仕事帰りの中年男性が賑わっている場所
というイメージを持つ人は多いのではないでしょうか。
しかし、近年では若い世代や女性、外国人観光客の姿も多くみられ、哀愁漂う飲み屋街のイメージが大きく変わりつつあります。
特に外国人観光客からの人気が高く、日本を訪れたら体験したい場所のひとつとして注目を集めています。
そこで今回は日本でもブームになっており、外国人観光客が足を運ぶようになってきた横丁の魅力について詳しく解説していきます。
- 小さな店舗でなるべくリスクを抑えながら出店したい
- 今経営している横丁(居酒屋)で外国人観光客を集客していきたい
- 若者も外国人観光客も集まるような町おこしがしたい
- 外国人観光客の集客・対策方法を知りたい
とお考えの方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
横丁は2種類ある
まず横丁の種類についてお話しします。横丁は大きく分けて「横丁」と「ネオ横丁」の2タイプがあるのはご存じですか? 具体的にどんなタイプなのか紹介していきます。
横丁とは
表通りから一本入った路地裏や、ガード下に広がる飲み屋街「横丁」。昭和の香り漂う雰囲気と、数坪ほどの小さな飲食店には焼き鳥やモツ煮などのいい匂いと、賑やかな笑い声が広がっています。
仕事帰りのサラリーマンや年配の方が多く、若者や横丁に慣れていない人からすると、ちょっと入りにくいような雰囲気があります。
ネオ横丁とは
一方、「ネオ横丁」はノスタルジックな演出をしつつも、スタイリッシュな料理やサービスを提供する施設型タイプの横丁です。
1つの施設(フロア)にお店が立ち並んでいるので、天候を気にせずはしご酒を堪能できるのが魅力です。出店されているお店や料理、立地など若者も入りやすい雰囲気なので、幅広い層の方が一緒に楽しめます。
そんなネオ横丁ですが、東京都渋谷区恵比寿にある商店街の跡地に建てられた「恵比寿横丁」が先駆けとなり、東京を中心に若者も気軽に楽しめる現代の横丁が続々登場しています。
訪日外国人が横丁に惹かれる理由とは
横丁もネオ横丁も基本的に店が狭く、客席の距離が近いことが特徴です。
そういった物理的な状況があることでシャイな日本人でもコミュニケーションが取りやすくなるため、横丁を訪れた外国人は新たな出会いにつながったり、旅の情報を手に入れることができます。
また、横丁は小皿料理をつまみながらはしご酒ができるので、お手頃価格で日本文化に触れられることも人気の理由となっています。
昭和の懐かしさを存分に感じられる東京の「横丁」
タイムスリップしたかのような昭和レトロな雰囲気がたまらない、東京にある人気の横丁を5つ紹介します。
外国人からの知名度が最も高い「新宿ゴールデン街」
新宿駅東口側、日本一の歓楽街歌舞伎町1丁目にある横丁が「新宿ゴールデン街」。訪日外国人が東京に行ったら訪れたいスポットのランキング上位に入るほど人気のエリアです。
新宿ゴールデン街は木造長屋の2階建て、4坪(約13平方メートル)前後の狭い店舗が約200店も立ち並んでいます。
2016年4月12日に新宿ゴールデン街のまねき通りの一部から火災が発生したことで、店舗兼住宅など3棟、およそ300平方メートルが焼けました。しかし全ての店が修復・元の営業が維持され、これまでの長い歴史が引き継がれています。
赤ちょうちんのレトロな光景が写真映えする「思い出横丁」
新宿駅西口側にある「思い出横丁」は、戦後から続く昭和レトロな名店街です。俗称「ションベン横丁」や「やきとり横丁」とも呼ばれています。
戦後直後の焼け野原に露天商のマーケットとして営業されていましたが、今では焼き鳥やモツ焼きを中心としたお店が約60店舗ほど広がっています。
赤ちょうちんがかけられた昔ながらの光景は、旅の思い出として写真を撮っていく外国人を多く見かけます。
都会のど真ん中だけタイムスリップした「のんべい横丁」
多くの若者が集まり東京の最先端である渋谷。そんな渋谷の一画だけだけ時代が取り残されたような昭和レトロを感じるのが「のんべい横丁」です。昭和25年に作られたという古い歴史があり、3坪ほどの小さなお店が40店舗近く軒を連ねています。
昭和の居酒屋らしい焼き鳥やおでんといった定番料理を提供するお店もあれば、ビストロやバーといった新しい形態のお店も出店されています。そのため、サラリーマンや年配の男性だけでなく、若い男女も利用するようになってきました。
海外のガイドブックにも載る「有楽町ガード下」
新橋~有楽町駅間の高架下に位置する「有楽町ガード下」は、仕事帰りの会社員が集う場所として人気です。近年では昭和感溢れるお店だけでなくおしゃれな料理を提供するお店も増えたことから、若い世代も多く集まってきています。
赤ちょうちんで昭和の雰囲気も感じられつつ、電車の線路下という場所で飲める非日常的な雰囲気が珍しいと、海外のガイドブックで紹介されたり、散策ツアーにもなっているほど外国人に人気のスポットです。
昼から地元民と観光客が触れ合える「ホッピー通り」
浅草寺境内の西側にある「ホッピー通り」は軒先にテーブルと椅子が並べられ、昔懐かしい昭和の雰囲気を感じられる飲み屋通りです。
80mほど続いているお店は牛すじやもつ煮などの煮込み料理が定番なことから、俗称「煮込み通り」とも呼ばれています。浅草を訪れる観光客と地元の人が混じり合い、昼間からお酒を楽しめる賑やかな場所です。
おしゃれな料理と画期的なサービス・イベントを行う東京の「ネオ横丁」
冒頭でもお伝えしたように料理やお店の雰囲気がおしゃれなネオ横丁は、若者や女性からの人気が高いです。東京を中心に続々と登場しているネオ横丁を厳選して3つご紹介します。
祭りをとことん堪能できる「食と祭りの殿堂 浅草横町」
日本のハレ文化と食文化を体験しながら飲食も同時に楽しめる酒場「食と祭りの殿堂 浅草横町」。2022年7月1日(金)オープンしたばかりの浅草の新スポットです。
酒場らしくちょうちんや色とりどりの看板など装飾されているほか、お祭りの賑やかな雰囲気も楽しめます。
一般的な横丁との違いでもあるのがイベントです。平日は大道芸人が飲みの場を盛り上げ、週末には盆踊りや阿波踊り、よさこいといった舞いが繰り広げられます。横丁内で着物のレンタルもできるので、祭り気分もさらにヒートアップすることでしょう。
店ごとの異なるコンセプトを楽しめる「渋谷横丁」
食とエンタメの融合施設として2020年8月にオープンした「渋谷横丁」は、20ほどの店舗が全長100mに軒を連ねるグルメストリートです。全国のご当地グルメと料理に合わせたご当地のお酒が、渋谷の一角で堪能できます。
各店舗の内装は駄菓子屋や銭湯といったコンセプトが決められており、それにちなんだ器やグラスで提供されるので、写真映えするスポットにもなっています。
他にもマジックショーや流しのギター、ダンス、アニメなどのイベントが日替わりで開催され、いつ行っても楽しめるようなイベントが用意されているのも魅力です。
料理もサービスもハイセンスの塊「虎の門横丁」
官公庁や一流ホテル、有名オフィスビルが立ち並ぶ町虎ノ門に2020年6月オープンした「虎の門横丁」。予約の取れない名店が多く出店しており、虎ノ門エリアらしい落ち着いた大人の雰囲気の中、ちょい飲み・はしご酒をしながら名店の料理を堪能できます。
LINEを利用した「テイクアウト用モバイルオーダー」「混雑状況の把握」「順番待ち」など、利便性が高いシステムを導入しているのもネオ横丁らしいハイセンスさを感じられます。
訪日外国人の集客につなげるための対策
日本人にとって当たり前のルールでも、日本をよく知らない外国人にとって、居酒屋のルールや日本食の食べ方など分からないことだらけです。
そのため、これから訪日外国人を集客したいと考えている方は、外国人に理解してもらうための仕組みづくりが大切です。具体的にどんなことをするべきなのか紹介していきます。
・使用している食材や施設の案内表示
・横丁ならではのルールの案内
・SNSでの発信
①多言語メニューの用意
外国人観光客を受け入れるためには、まず多言語でのメニュー表作成が必要です。
日本人ならばメニューを見ただけでどんな料理なのかある程度想像がつきますが、外国人の多くは予測不可能です。そのためメニューには写真も添えておきましょう。
横丁は店内が狭いことが多いため、デジタルメニューでの案内がおすすめです。デジタルメニューであれば多言語表記をワンタッチで切り替えられ、多言語を話せる人材を用意しなくてもインバウンド客に対応することが可能です。
また、食べ方・作り方が難しいお好み焼きやもんじゃ焼きなどは、写真や動画を使って説明することで、理解を高めることができるためデジタルメニューは重要と言えます。
②使用している食材や施設の案内表示
メニューを見ただけでどんな食材が使われているのか案内をすることです。
訪れる人の中にはアレルギーを持っていたり、宗教の関係上食べられない食材がある方も多くいます。そのため、文章や食材ピクトグラム(絵単語)を記載し、できるだけ分かりやすく説明することで安心感につながります。
また、トイレや非常口など施設の共有スペースにも、案内表示を忘れないようにしましょう。特にトイレは国籍問わず利用者が一定数いるので、流しボタンの案内やきれいに使ってもらうための案内なども記載すると良いでしょう。
③横丁ならではのルールの案内
横丁や居酒屋ならではの特別なルールや、日本の文化を説明することです。例えば以下があげられます。
・飲み物を先に頼んでからゆっくり料理を選ぶ
・飲食の持ち込み禁止(あるいは別料金)
・チップを渡す必要がない
特に、お通しの場合は注文していなくても料理を提供し、料金を加算するのが一般的です。そういった居酒屋のルールや、お店独自のローカルルールを事前に説明することでトラブル回避につながります。
④SNSでの発信
SNSを利用してお店や地域の魅力を発信していくことです。
旅先の情報収集にはテレビや新聞、雑誌、ガイドブック、友人・知人から聞く、口コミサイト、Webサイトなどがあげられますが、近年ではSNSを活用する人が増えてきています。旅行者がSNSを使って情報収集するタイミングは、「旅行前・旅行中・旅行後」の3つのポイントです。
そのためSNSの機能、利用者の属性、特徴などに合わせて使い分けることが需要です。例えば以下のように使い分けることができます。
Instagram、TikTok、YouTube
・高い拡散力を狙いたいコンテンツにはTwitter
・広告を使ってターゲティングするには
Facebook など
⑤キャッシュレス決済の導入
クレジットカードやデビットカード、モバイル決済などのキャッシュレス決済を導入することです。キャッシュレス決済を導入することで、訪日外国人客と店舗運営側の双方でメリットが生まれます。
・自国でもよく使っている決済方法が日本国内で利用できて便利
・円に両替する必要がないので、現金が少なくても楽しめる
【店舗運営側のメリット】
・レジ現金残高確認作業の手間が削減される
・現金以外の利用者を獲得でき、
結果的に売上や単価アップにつながる
日本のキャッシュレス決済比率は2011年で14.1%、2021年では32.5%と約2倍も増加しているものの、世界水準で見るとまだまだ低いのが現状です。他店と差別化を図るためにも、導入を検討するとよいでしょう。
まとめ
世代も国も超えて一緒に楽しめる、横丁の魅力について解説しました。
横丁は会社員の中年男性が集まる場所から、若い世代や女性同士、外国人までもが気軽に飲食できる、レトロでおしゃれな酒場として人気が高まってきています。
今回は東京にある人気の横丁をピックアップしましたが、近年の旅行スタイルは「都市部」より「地方部」が注目されています。
だからこそ、都心部だけでなく地方部においても横丁・居酒屋の魅力をどんどん発信していくことで、新たな層の獲得につなげていきましょう。