コロナ禍の旅行トレンドに変化!ミレニアル世代の富裕層を狙う理由とは

新型コロナウイルスの影響で未だにあらゆる業界に影響が出ていますが、その中でもインバウンド事業である観光業界は集客も売上げ上げることも難しく厳しい状況が続いています。

会社存続や景気回復するため救世主となると注目されているのが、ミレニアル世代の富裕層です。富裕層は日本国内や世界各国でみても上位数%程度しかいないものの、大衆一人ひとりの消費額と比べ莫大な金額になるため、各業界は富裕層向けの商材を取り扱うような動きとなってきています。

そこで今回は観光業界に焦点を当て

  • ミレニアル世代の富裕層を狙うべき理由
  • ミレニアル世代の富裕層の価値観
  • 富裕層の観光コンテンツの具体例

について紹介していきます。

今狙うべきターゲットは「ミレニアル世代の富裕層」


コロナ禍で経済が不況の間に次の戦略を決定しなくては、生き残っていくことができません。そのために今狙うべきターゲットはミレニアル世代の富裕層と言われていますが、理由は一体何なのでしょうか。

そもそもミレニアル世代とは

まず「ミレニアル世代」とは1980年から1995年生まれの若年層のことです。
学生の頃からパソコンやインターネット使って生活してきた世代のため、別名「デジタルネイティブ世代」とも呼ばれています。年齢で言うと、2021年に26歳~41歳までの世代のことを指します。


ミレニアル世代と似ている世代なのは「Z世代」で、1996年から2015年生まれの若年層です。

幼少期からスマートフォンやSNS、動画サイトやアプリを使いこなしてきた世代なため、別名「ソーシャルネイティブ」とも言われています。年齢は2021年に6歳~25歳までの世代のことを指します。


インターネットに深く関わっている年代ですが、このように世代が分けられているのは急速に変化してきたデジタル化によるものです。

2000年代からパソコンやインターネット環境があることが一般化しだし、現在ではインターネットを使った情報検索やSNSを利用したコミュニケーションは生活の一部として当たり前となっています。

ミレニアル世代の富裕層が観光業界で注目される理由とは

高所得のミレニアル世代が旅行やファッションなど、あらゆる業界に大きな影響を与えるとして注目されています。その富裕層をターゲットにする理由は主に2つあります。

1つ目は消費額の「単価が高い」ことです。
例えば宿泊施設の料金は、庶民の場合1泊数千円~数万円のホテルを利用するのが一般的ですが、富裕層は1泊数十万円~数百万円のところを利用することが多いです。宿泊施設だけに限らず他の業界だとしても高い料金を払う分、質の良いサービスや質の良い体験ができるとして富裕層の中で高い評価を得ています。

2つ目に「富裕層」が認めたものやトレンドとなっているものが「マス層」の憧れとなるということです。
先ほどの述べたように良いサービスや体験は新しい価値観として一般化され、業界全体の消費額が引き上げられるようになるのです。例えば富裕層がSNSで日々の生活を投稿したものに対して、庶民はいいね!やコメントを多く残します。そして結婚記念日や誕生日など人生にとって特別な日に、少しでも富裕層と同じような体験をするような傾向にあります。

富裕旅行の市場規模

出典:JNTO「富裕旅行の市場規模」

上記の図は海外旅行消費額を調査した内容です。JNTOの資料によると、欧米豪5ヵ国(アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、オーストラリア)で海外旅行をした3億4,100万人のうち1%の340万人が富裕層で、全体の13%が富裕層の消費額となっています。

出典:JNTO「富裕旅行の市場規模」

市場別ではアメリカの旅行消費額が最も大きく、全体の半数を占めています。また旅行者一人当たりの消費平均単価をみると136万円となり、一般旅行者の約9倍を消費していることとなります。

ミレニアル世代富裕層の旅行トレンド

会社存続や景気回復するための救世主となるのはミレニアル世代の富裕層である理由をお伝えしましたが、その富裕層と言われる人はどういった人達のことを指すのでしょうか。ここでは「富裕層の定義」や「富裕層の価値観」について紹介していきます。

富裕層の定義とは

富裕層と一言で言っても具体的にどのくらいお金がある層なのか分からないという方もいると思います。分かりやすくグラフで紹介していきますので、まずは下記をご覧ください。

出典:株式会社野村総合研究所

純金融資産保有額の階層は
 ・超富裕層    :5億円以上
 ・富裕層     :1億以上5億未満
 ・準富裕層    :5,000万円以上1億未満
 ・アッパーマス層 :3,000万円以上5,000万円未満
 ・マス層     :3,000万円未満

上記の5段階になっています。

日本の場合実際には上記グラフのように綺麗なピラミッド型はしておらず、国民全体の80%ほどが「マス層」つまり大衆です。

そして「アッパーマス層」は13%、「準富裕層」は6%、「富裕層」は2%、「超富裕層」はわずか0.2%と、アッパーマス層以上に繰り上がるまでのハードルが高くなっています。

2005年から2019年の純金融資産保有額は全体的に増加傾向にあり、富裕層の場合は1.4倍(167兆円から236兆円)も増加しています。コロナの影響により、不安定な状況が続いていくと予想されます。

富裕旅行者の2つの志向

出典:JNTO「富裕旅行市場の分析とコンテンツづくりのポイント」

JNTOによると富裕層の旅行者の志向は大きく分けて

 ・「Classic Luxury =従来型ラグジュアリー志向」
 ・「Modern Luxury=新型ラグジュアリー志向」

の2つがあります。

志向によって好みや価値観が異なり、富裕層向けの旅行コンテンツを販売するためにはそれぞれの違いを抑える必要があります。

✅「Classic Luxury=従来型ラグジュアリー志向」は50代~60代が中心で、「富」や「権力」「地位」などの他者による承認や評価されることを重要視している価値観を持っています。
旅行においては「高い快適性」「社会的地位」「プライバシー」を求めています。

✅「Modern Luxury=新型ラグジュアリー志向」は20代~30代のミレニアルが中心で、「文化」「スタイル」「独自性」「本物」「質」など経験や自分自身が関心のあるものに重視しています。
旅行においては「本物の体験」「一生に一度の体験」「ボランツーリズム(ボランティア旅行)」のように特別な体験をすることに高額な消費を行う傾向があります。

バブル世代では車や不動産など「モノ消費」をする傾向にありましたが、そこから満足度の高い体験などの「コト消費」、そして最新はその時・その場で盛り上がりを楽しむ「トキ消費」が新しい価値観となっています。

世界全体での旅行業界は富裕層に限らず、「モノ消費→コト消費→トキ消費」へと変化しているのです。 

富裕旅行者の2つの消費性向

富裕層旅行者の消費性向には

 ・「All Luxury」
 ・「Selective Luxury」

の2つがあります。

ペルソナを設定することでより細かいサービスを提供することができるため、それぞれの消費性向を理解しましょう。

✅「All Luxury」は旅行全てにおいて高額な消費を行うことを指します。
具体的には5つ星のラグジュアリーホテル、ビジネスクラス以上の飛行機、プライベートガイド、プライベートスパ・マッサージ、ショッピングなどです。50代~60代が中心の「Classic Luxury=従来型ラグジュアリー志向」はこの傾向が強いです。


✅「Selective Luxury」は厳選したものに対して高額な消費を行うことを指します。
具体的には5つ星ホテルではなく日本ならではの高級温泉旅館に宿泊、スパ・マッサージではなくヨガと合わせて宗教の歴史も詳しいその道のプロを呼ぶなどです。

価値を見出せないものにはお金は使わず、自分が好きな物や興味があるもの、本物の体験へ徹底的にお金をかけるタイプです。20代~30代のミレニアル世代が中心の「Modern Luxury=新型ラグジュアリー志向」はこの傾向が強いです。

コロナ禍においてのミレニアル世代富裕層の旅行トレンド


新型コロナウイルスが世界的に蔓延している中でも、富裕層は旅行や荷物のパッキングで日々忙しいというデータが出ています。実際に旅行へ行く人の割合はコロナが流行する前に5回以上の旅行頻度だった人は、コロナ後に40%が旅行を予約しています。そして飛行機や宿泊においては、最も高い料金のクラスのものから予約する傾向にあります。

ミレニアル世代の富裕層がコロナ禍で旅行をする際はどのようなことを重視しているのでしょうか。富裕層の旅行トレンドをみていきましょう。

①清潔さと安全性

コロナ禍で旅行へ出かける回数が多いということは、その分感染リスクがともないます。そのため旅行中や旅行先での清潔さや安全性に重視したプランがくまれています。

例えば移動手段はプライベートジェットやプライベートカーを利用し、他の旅行客と会うことがないよう貸切や完全非接触のプライベート空間の高級ホテルに滞在します。

②旅行先で楽しく隔離

世界的にみて国や危険地域をまたぐ際には、コロナの感染を防ぐため隔離期間が必要となることが多いです。

富裕層は隔離期間も有意義な時間が過ごせるよう、島やエリア自体がプライベート空間になるような場所で隔離します。施設にはビーチ、プール、ゴルフ、スパ、乗馬など完全プライベートのものが完備されているところを利用する人が多いため、長期の滞在でも飽きることなく過ごすことができます。

③目的を持った旅行

観光地を訪れるというものではなく、今はまっている趣味に没頭するため、旅先での新しい経験をするためと言ったように、目的を持って旅行先を選ぶ人が多くなってきています。中にはボランティアや地域貢献に関心を抱く人もいます。

④環境問題に意識

環境問題を普段から意識して生活していたり、そのような事業に投資していたりするので、旅行先でも環境に配慮した場所を選ぶ人が増えてきています。

例えば宿泊施設のシーツ・タオル類のリネンや食材はオーガニック素材を使う、プラスチックゴミの削減やリサイクルしやすいような素材を採用するなどがあげられます。

⑤ウェルネスツーリズム

旅をすることで自然と触れ合い、運動、瞑想、ヘルシー食など、心と身体の健康を保つウェルネスツーリズムが注目を浴びています。

コロナ禍ではロックダウンや時短営業など行動に制限がかかってしまったり、暗いニュースばかりが飛び交っていたりしています。そんな息苦しい生活を旅をすることで免疫力を高めリフレッシュし、仕事のモチベーションアップに繋げているのです。

日本は四季によってさまざまな景色を変え、シーズンによって旬な食べ物があり、日本独特な食文化や温泉があるとして、訪れたい国として健康志向な富裕層から人気があります。

富裕層向け観光コンテンツの例


日本を含め世界では、富裕層向けの観光コンテンツがさまざまあります。具体的にどんなツアーがあるのか3つ紹介していきます。

モルディブ「島貸切ツアー」

モルディブは1,192の島々があります。その中には手つかずの無人島、宿泊施設だけはあるものの定住者はいない島などさまざまです。その島を貸切って家族や仲間だけのプライベート空間を楽しむツアーが富裕層の中で人気があります。

島、貸切にする時間、食事の有無、移動手段、宿泊の有無などによって料金は大きく異なりますが、20万円程度で借りられるリーズナブルなものもあれば、2,000万円以上するプレミアムなプランもあります。

インド「ワクチンツアー」

自国で「ワクチンの供給が追い付いていない」「医療従事者や高齢者の接種が優先されているため、これ以上待てない」といった理由で、ワクチン目当てで海外へ旅行するワクチンツアーが人気となっています。

2020年12月頃から販売しているのはインド・デリーに本社を置く旅行会社です。行先やプランはいくつもあり、目的のワクチン接種が終われば市内観光もできると言います。具体的なプランと料金は下記のようになっています。

【アメリカ行き】
・4日間の旅、ワクチン1回の接種のツアー:14万9999ルピー(約21万4千円)

【イギリス行き】
・ワクチン接種(計2回分)2往復するツアー:25万ルピー(約36万円)+ワクチン代
・22日間の滞在で2回のワクチン接種を行うツアー:45万ルピー(約65万円)+ワクチン代

その他の国ではイスラエルやロシアなど、世界各国でワクチンツアーが販売されています。

長崎県「プライベートジェット旅行」

長崎県は松坂屋名古屋店旅行センターとANAビジネスジェットが初めて企画した、プライベートジェット旅行を2021年より販売しています。「移動時の接触を減らしたい」というコロナ禍の需要に加え、「定期便がない地域」「希望の時間がなく、待ち時間が多いので移動できない」という悩みに応えられるツアーです。

例えばプライベートジェットに乗って県営名古屋空港から長崎の自然豊かな九十九島や、北海道の人気リゾートニセコなどのサンプルプランが用意されています。時期や行先をオーダーメイドで組めるのは、プライベートツアーならではと言えるでしょう。

また小さなお子様だけでなく、ペットを連れての旅行も可能なのが驚きです。ANAグループと提携しての運行することで、豊富な経験と実績、そして安心と安全なプライベート空間の旅ができます。

販売価格は1人200万円~(4人の利用時)利用できます。

ミレニアル世代の富裕層を集客するための課題


富裕層の集客することは旅行市場で注目されているものの、獲得者数はわずかであることをしっかり理解しなければなりません。先ほども述べたように、富裕層の訪日外国人旅行者数は4.9万人で、全体の1.4%とわずかです。しかし平均旅行消費額は一般市民15.3万円の9倍である136万円と高額です。

このことを念頭に置きながら、富裕層の訪日旅行者をどう獲得すればいいのでしょうか。3つの課題をあげていきます。

課題①富裕層観光コンテンツの不足

日本国内には富裕層が求める質の高い観光コンテンツが不足していることです。20代~30代のミレニアル世代は日本の「文化」「スタイル」「独自性」「本物」を体験できるところに消費する傾向にあります。都心部だけでなく地方で高級プライベートカーでの移動、宗教やベジタリアンなどに対応した食事、宿泊施設での貸切などが提供できるような建設や環境整備が必要となります。

課題②富裕層旅行者を対応するための育成

富裕層は普段から高級ホテルや高級レストランなど富裕層向けの施設へ足を運び、さまざまな体験をしています。その富裕層には質の高い接客対応が求められます。ミレニアル世代の訪日富裕層には、まず多言語対応の他に高いコミュニケーション能力が必須です。そしてその土地や文化など十分に理解し分かりやすく説明できる能力、好みや価値観に合わせて臨機応変に対応できるコンシェルジュの育成が重要となります。

訪日旅行者にとって「また訪れたい」「素晴らしいところだったから、誰かに教えたい」と感じてもらえれば、そこからまた別な富裕層が訪れてくれることにも繋がっていくのです。

課題③情報提供手段を把握する

富裕層が旅行先やプランを決定する際は、家族や友人、知り合い、富裕層向けの旅行会社からの提案が一般的です。ミレニアル世代は普段からインターネットやSNSを駆使しているため、彼らが閲覧するようなサイトやSNSでの情報発信が訪れるきっかけとなっていきます。

まとめ

富裕層に限らずこれからの観光コンテンツは、「量から質」を求める人が増えていく傾向にあります。富裕層をターゲットにするにしても、質を高めたサービスを提供するためには、潤沢な事業資金が必要となってくるはずです。

特にミレニアル世代はSNSを通じてキラキラした生活や体験に憧れを持つ人が多いため、今自社でできる範囲内で「特別な体験」や「特別な価値」を提供できるように模索していきましょう。

 

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