インバウンド対策の重要な要素の一つに「翻訳」があります。海外から訪れる外国人に、国内の観光を楽しんでもらうためには、案内板やメニューの表示を多言語対応することが求められます。従来であれば英語翻訳が主流でした。しかし近年の訪日外国人の内訳を見ると圧倒的にアジア圏からの旅行者が多くなっていることから、中国語や韓国語での表記のニーズが高まっています。
訪日外国人の消費=インバウンド消費を拡大する上で、翻訳は欠かせない要素です。この記事では、インバウンド対策として翻訳対応を行いたいと考えている企業や店舗に向けて、翻訳代行サービスの選び方や、おすすめのサービスについて詳しく解説します。
「多言語対応しなければならないと考えているが、どのように手をつけてよいか分からない」という方は、ぜひ参考にしてください。
目次
訪日観光客の増加に伴い、重要性を増してきた「翻訳」
日本を訪れる観光客の数は、年々増加傾向にあります。日本政府観光局(JNTO)の調査によると、2011年時点では621万人だった訪日観光客は、2018年時点で3119万人にまで増えていることが分かります。7年間、訪日観光客の数は常に増加の一途をたどってきました。
さらに2020年には、東京オリンピック・パラリンピックを控えています。政府は2020年までに訪日観光客の数を4000万人にまで増やすという目標を掲げています。
海外からの旅行者は日本の交通機関を利用して移動し、宿泊施設に滞在します。そして国内の飲食店を巡りお土産を買い、レジャーなどを楽しみます。大勢の外国人が日本を訪れることで、日本国内の消費も増加していくのです。ここにはさまざまなビジネスのチャンスが転がっていると言えるでしょう。
こういったビジネストレンドの変化がある中で、課題として挙げられるのが「言葉の壁」です。日本語は文法も独特で難しく、かつ日本国内でしか使われていない言語であるため、訪日外国人にとって理解しづらいという側面があります。
「日本語が分からない・通じない」ことは、さまざまなシーンで足かせとなります。いくつか例を挙げてみましょう。
日本国内の特に都市部では、路面電車やバス、地下鉄などの交通網が張り巡らされています。これらは非常に複雑な構造となっています。日本人でも乗り換えに苦労することもあるのです。言語が分からない外国人にとっては、観光地から観光地に移動するだけでも困難を極めることでしょう。
また、日本には古くからの慣習や文化があります。例えば観光地として人気の「銭湯」では、入浴方法やマナーなどが細かく取り決められていることがあります。たいていは注意書きがされていますが、この注意書きが読めないことで、思わぬトラブルにつながってしまうことも考えられます。
このように、訪日外国人が旅行を楽しむ上で、言語の壁という課題を解決する必要があるのです。
スマートフォンの翻訳機能では不十分
テクノロジーの発達により、Google翻訳などで、単純なレベルの翻訳は可能になりました。しかし、これらの機能・アプリを使った翻訳は、あくまで単語の意味を直訳する形となるため、細かいニュアンスや正確や意味がすべて伝わるわけではありません。
「おもてなし」としての翻訳
訪日観光客の増加に伴い、翻訳は重要性を増しています。多くの旅行者を迎え入れる姿勢として「おもてなし」というワードも流行しました。おもてなしに欠かせないのが、コミュニケーションです。訪日外国人がトラブルなく、スムーズに観光を楽しむためには、適切な情報・意思の疎通がなにより大切です。
実際に、観光庁が実施した「訪日外国人旅行者の受入環境整備における国内の多言語対応に関するアンケート調査」の、「外国人が旅行中に困ったこと」という項目の中で、もっとも多かったのが、「スタッフとのコミュニケーションがとれない」でした。回答者のじつに3割が、スタッフとのコミュニケーションの難しさを感じていたようです。
そこで日本の企業や飲食店では、積極的に翻訳対応を行うというインバウンド対策に力を入れ始めています。例えば、メニュー表記を、日本語だけでなく英語や中国語にする飲食店も増えています。外国人に安心して日本食を楽しんでもらえますし、注文時のストレスフルなやり取りも削減することができます。また観光地の案内表示も、多言語対応している事例を目にすることが増えました。
観光スポットでは、疑問点がすぐに解消できるかどうかによって、旅行客の満足度は左右されます。近年では、語学力のあるスタッフを雇用したり、音声翻訳サービスを活用するなどの工夫を凝らしている観光施設も増えているようです。
ピクトグラムの活用も効果的
ピクトグラムとは、情報や注意喚起を視覚的に表現したものです。非常用出口のマークや、トイレの男女識別のマークなどが具体例として挙げられます。ピクトグラムは人が直感的に理解できるようにデザインされていますので、国籍問わず情報を伝えやすいでしょう。
ピクトグラムは飲食店のメニューでも活用できます。海外では宗教上の理由から、口にできない食材などがありますが、それらが使われているかどうかなどもピクトグラムで表現が可能になります。
翻訳代行サービスの選び方
インバウンド対策として翻訳を行う上では、英語に翻訳するだけでは十分とは言えません。特に日本はアジア圏からの観光客が多いため、中国語や韓国語のニーズも高いでしょう。しかし、さまざまな国の言葉に翻訳するのは容易なことではありません。
そこで利用をおすすめするのが、翻訳の代行サービスです。これは、実績を重ねた翻訳家が、訪日外国人向けに正しく情報が伝わるよう、文章を翻訳するというもの。インバウンドの拡大とともに、需要が急増しています。
とはいえ、翻訳代行サービスであれば、どれを選んでもよいというわけではありません。翻訳の精度や納品までのスピード感など、サービスによってさまざまです。そこでこの項目では、翻訳代行サービスを選ぶ際の基準を解説します。
翻訳家がビジネスに対して深く理解しているか
翻訳は、ただ単語の意味を訳し、文章にするだけではありません。背景や文脈を正しく理解して、適切な言い回しに変換していく作業が必要となってくるのです。そのため翻訳家自身が、そのビジネス自体を深く理解しているかどうかが、鍵となります。
また文章の読みやすさやニュアンスも、ビジネスによって違ってくるでしょう。専門用語を正しく訳すためには、言語的な知識だけではなく、対象となるビジネスに対する知識が重要となります。
翻訳家がネイティブレベルかどうか
翻訳家自身が、対象となる言語をネイティブレベルで理解しているかどうかも重要なポイントです。国の文化的な背景や国民性を把握しているかどうかで、適切な言葉選びや文体を選ぶことが可能になります。
事前のヒアリングや、アフターフォローがあるかどうか
翻訳の目的や要望など、事前にヒアリングを行ってもらえると、安心して翻訳代行を任せることができるでしょう。細かいニュアンスの違いなども、あらかじめ共有しておけば、スムーズに進みます。納品後の修正などアフターフォローが充実していると、さらに安心です。
DTPでの作業に対応しているか
DTPとは、紙媒体の原稿作成やデザイン、レイアウトなどを行うことを指します。主に飲食店のメニューやガイドブック・パンフレットの作成を行う際には、ただ翻訳をするだけではなく、翻訳後の文章を元にした冊子を作っていく必要があります。
翻訳代行サービスによっては、Illustratorなどで編集できるデータをもとに、DTPでレイアウト作業を行うオプションが用意されていることもあります。レイアウトやデザインの雰囲気を崩さずに、各言語に対応したいという場合は、このようなオプションが用意されているものを選ぶとよいでしょう。
翻訳にかかるコスト
翻訳作業にかかる費用も、サービス選定のポイントです。一般的に翻訳の料金は、一文字あたりの文字単価をもとに算出されます。相場は1文字10円程度と言われていますが、専門性や納期までの期間などによって、上下します。質の高いサービスほど、複数人でのチェックを行うなどの工程があるため、結果として料金もかかるようになります。
インバウンド向け翻訳代行サービスを提供するおすすめの企業7選
おすすめの翻訳サービスを運営する企業を紹介します。
ジャパントラベル株式会社
インバウンドにおけるさまざまなサポートを行う会社です。月間500万pvを誇るオウンドメディアの運営を行っており、訪日外国人向けのマーケティングやプロモーション、SNS運用の分野で数々の実績があります。
同社では、翻訳サービスも提供しています。英語や中国語、韓国語をはじめアジア、ヨーロッパ圏内の言語を対象としています。翻訳言語を母国語とする翻訳スタッフが作業にあたるため、ナチュラルで伝わりやすい文章ができるという魅力があります。ほかにも、パンフレット作成やウェブサイトの開発など、インバウンド向けの支援事業を行っています。
株式会社クロスランゲージ
「プロフェッショナル翻訳サービス」を提供している 株式会社クロスランゲージ。品質管理にこだわった翻訳が魅力の企業です。25年以上の豊富な実績や、マニュアルから特許、医療分野までをカバーする取扱分野の広さも大きな魅力です。
ゴーウェル株式会社
ゴーウェル株式会社が提供する「オフショア翻訳事業」は、東南アジア圏向けの翻訳を強みとしています。タイ語、ミャンマー語、インドネシア語、ベトナム語、マレー語に対応しています。翻訳を行うのは、現地のネイティブスタッフ。事前に入念なヒアリングをした上で、作業が行われるので、安心して委託することができるでしょう。
Xtra株式会社
Xtra株式会社が提供する「コンシェルジュ翻訳」は、専属のコンシェルジュ(コーディネーター)による手厚いサポートが魅力の翻訳サービスです。案件ごとにチームを編成して対応するという点も魅力的で、クオリティの高い翻訳が実現します。対応言語は58ヶ国語と、メジャーな言語からマイナーな言語まで、柔軟に対応可能となります。
株式会社InterBiz
株式会社InterBizの「YAKUSURU」は、低コストかつスピーディな対応が魅力の翻訳サービスです。翻訳単価は1文字5円からと、かなりリーズナブルに設定されています。納品までのスケジュールも柔軟に対応が可能となっています。サービスのリピート率は89%と、高い満足度を得ており、翻訳経験が3年以上のハイレベルな翻訳者が専属で翻訳にあたっています。
クリムゾンインタラクティブ・ジャパン
医療分野などを中心に翻訳サービスを提供する企業です。同社のサービス「インバウンド翻訳」では、ハイクオリティな翻訳が実現します。最大の特徴は、世界中の翻訳者をオンラインでつなげ、案件に適任の翻訳者を探し出すコネクションにあります。また各国の文化にマッチした翻訳=トランスクリエーションの実績も魅力です。
ブレインウッズ株式会社
観光関連の翻訳や通訳を専門とする企業です。訪日観光客の多い地域の言語をカバーしており、翻訳や通訳、映像字幕、DTPなど、さまざまな分野に対応しています。地方自治体がインバウンド向けに作成したアニメーション動画の、字幕作成などの実績も多数あり、翻訳サービスの国際基準「ISO17100」に基づいた品質管理の高さも魅力です。
翻訳によって、日本の魅力をさらに伝えることができる
この記事では、インバウンド向けの翻訳サービスについて解説しました。訪日観光客に対する「おもてなし」において、言葉の課題を解決し、スムーズなコミュニケーションを実現することは欠かせません。2020年に向けて案内板やメニュー、注意書きなどの翻訳を行い、準備しておくとよいでしょう。
ただし、商品や観光地をプロモーションするのであれば、翻訳だけでは十分とは言えません。積極的な情報発信によって、認知を拡大するプロセスが必要になってくるのです。商品やサービスを、訪日外国人に十分に周知できていないという場合は、まずはマーケティング会社などを活用し、認知を拡大する施策を行いましょう。