インバウンド消費のうち、大部分を占めているのが宿泊費用です。訪日外国人の数が年々増加していることや、2020年の東京オリンピック開催などの影響もあり、宿泊業界のニーズは今後もさらに高まっていくと考えられるでしょう。
旅館やホテルの業務は、集客や客室管理など多岐に渡ります。これらの業務を大幅に改善するシステムとして注目を集めているのが、「サイトコントローラー」です。宿泊施設の規模を問わず導入でき、ダブルブッキングなどのトラブルを事前に回避するといったメリットがあります。
とはいえ、サイトコントローラーはさまざまな種類があるため、どれを導入すればよいか分からないという方も多いでしょう。そこでこの記事では、そもそもサイトコントローラーとは何かを解説し、おすすめのサイトコントローラーシステムを7つ紹介します。
「旅館やホテルの業務を、今以上にスムーズに実施したい」と考えている宿泊施設運営者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
そもそもサイトコントローラーとは一体何か?
サイトコントローラーとは、宿泊施設運営者が利用する情報管理システムです。そもそも宿泊施設を探す旅行者の多くは、宿泊予約サービスを活用し、情報収集や予約を行います。宿泊客を集めるためには、まず多くの人の目に触れる必要があります。
そこで施設側は、宿泊予約サービスに情報を掲載することで、認知の拡大や集客を図っているのです。見込み顧客にアピールする上では、すでに多くの利用者が存在する宿泊予約サービスのプラットフォーム上で、マーケティングを行うことが重要です。たくさんのサイトへ情報を掲載すれば、その分集客を見込めるでしょう。
ところが、国内の宿泊予約サービスにはさまざまな種類があります。有名なサイトでいえば、「じゃらん」や「楽天トラベル」、「るるぶ」「一休.com」などが挙げられます。これらのサイトごとの管理画面で予約管理や料金設定を行うとなると、多大な労力を要します。
さらに国外の顧客を対象としている場合には、「Expedia」「Booking.com」など海外向けサービスでも、同様の作業をしなければなりません。
またサイトごとに宿泊施設の運営者が管理を行う場合、手間がかかるだけでなく、さまざまなトラブルを発生させる原因となります。例えば、複数のユーザーがほぼ同時刻にそれぞれ別のサイトにアクセスし、予約を行ってしまった場合、ダブルブッキングとなってしまう恐れがあるでしょう。
サイトコントローラーを利用することで、複数の宿泊予約サービスの情報管理を、一つのシステム上から行えるようになります。繁忙期における人員ミスやトラブルを回避したり、機会損失を最小限に抑えたりすることができるでしょう。生産性が向上し、収益アップも期待できます。
サイトコントローラーでできること
サイトコントローラーでは、具体的に以下のような機能が利用できます。
- カレンダーを使い、日にちごとの料金を柔軟に設定する
- 繁忙シーズンによって料金設定を変更する
- 予約状況を確認する
- 予約者の情報やチェックインの日時、宿泊プランを管理する
- データを分析する
またシステムによっては、PMSとの連携が可能なものもあります。PMSとは、「Property Management System 」の略称で、宿泊業務におけるさまざまなタスクをサポートするシステムです。具体的には、部屋割りや清掃の管理、売上の集計などを行います。
宿泊施設の規模を問わず利用できる
大規模な旅館やホテルでは、所有する部屋の数も膨大になるため、特に繁忙期は管理が難しくなるでしょう。提携するサービスも多岐に渡ります。サイトコントローラーで管理を自動化することで、スムーズな業務の遂行が可能になります。
しかし、サイトコントローラーは、大規模の施設だけに向けたものではありません。小規模な旅館でも、複数のサービスと連携することで、流入経路を確保できるという利点があります。集客アップにつなげる施策として、サイトコントローラーの導入は有効であると言えるでしょう。
サイトコントローラーを利用する4つのメリット
サイトコントローラーを導入するメリットについて解説します。
宿泊施設の収益アップを見込める
宿泊施設にとって空き部屋は大きな機会損失となります。空き部屋を回避する解決策としては、料金の値下げが一般的ですが、価格が下がれば、その分収益も少なくなるというジレンマが存在します。
サイトコントローラーの導入により、複数の宿泊予約サイトからの集客が見込めるようになります。一定以上の集客が実現すれば、むやみに客室単価を下げる必要もなくなります。空き部屋の状況とシーズンに合わせた柔軟な価格設定が可能になるので、結果として収益の向上につながるでしょう。
宿泊施設の運営者の作業効率アップを見込める
サイトコントローラーの導入により、予約管理の手間を最小限にすることが可能になります。人件費の削減や業務の効率化を実現できるでしょう。サイトから予約が実行された場合、ただちに他のサイトからの予約をストップする機能があるため、予約が重複してしまうといったトラブルをなくすことができます。
またサイトコントローラーは、クラウド型ウェブアプリケーションの形態をとっています。システムを利用する際、専用の端末やソフトウェアは必要ありません。インターネット環境が用意できれば、複数のパソコンやタブレット端末からアクセスが可能になります。そしてアプリケーション上のデータは、リアルタイムで更新されます。
このため、管理者が複数人いる場合でも、それぞれの所有する端末からログインして、操作を行うことが可能になります。作業が重複してしまうといった事態は発生しません。
データに基づいた改善ができる
宿泊施設の運営でもっとも難しいのが、価格設定です。旅行シーズンによって料金は変動しますし、一定以上の収益を上げるためには、部屋の稼働率を考慮しながら、料金を調整していかなければなりません。
サイトコントローラーの導入によって、稼働率や価格設定が適正かどうか、データとして取得できるようになります。このデータを活用することで、ファクトベースで新たなマーケティングプランを立案したり、価格変更を行うことができるようになるのです。
民泊のニーズにも対応している
近年、新たな宿泊体験として注目されているのが、民泊です。個人間で部屋の貸し借りを行うものであり、民泊仲介サービスAirbnbは、600万件を超える空き部屋を掲載するほどにまで拡大しています。
Airbnbの利用には、一般的な宿泊予約サイトといくつか異なる点があります。例えば、貸し手と借り手が事前にチャットを用いてやり取りをしたり、ホスピタリティやサービスの内容を評価するシステムが存在する、などが挙げられます。サイトコントローラーの中には、民泊のニーズに対応したサービス内容のものも存在します。
おすすめのサイトコントローラー7選を紹介
おすすめのサイトコントローラーを7つ紹介します。
サービス名 | 運営会社 | 特徴 | こんな宿泊施設におすすめ | 費用 |
TEMAIRAZU(手間いらず) | 比較.com株式会社 | 長い運営実績がある | 大手サービスを利用したいと考えている方 | 初期費用:50,000円
利用料:9,900円~/月 |
TLリンカーン | 株式会社シーナッツ | 手厚いサポート体制 | 初めてサイトコントローラーを利用する方 | 導入費用:100,000円
利用料:15,000円~/月 |
ねっぱん! | 株式会社クリップス | 多機能である点 | 宿泊施設運営の効率を上げたい方 | 導入費用:50,000円
利用料(5室以下):5,000円/月 |
らく通with | JR鉄道情報システム株式会社 | 徹底したセキュリティ体制 | 安心してシステムを利用したい方 | 導入費用:無料
利用料:19,440円/月 |
ルームマネージャー | 有限会社ペン・システム | リアルタイムの情報更新 | 低コストでサイトコントローラーを利用したい方 | 導入費用:30,000円
利用料:3,000円/月 |
民泊ダッシュボード | メトロエンジン株式会社 | 民泊のニーズに対応 | 小規模の宿泊施設運営者 | 導入費用:無料
月額1,980円/一部屋 |
AirHost PMS | 合同会社エアホスト | 外部機能との連携が可能 | 民泊の業務効率を上げたいこと | 導入費用:無料
利用料(1~3部屋):6,000/月 |
TEMAIRAZU(手間いらず)
出典:https://www.temairazu.com/TEMAIRAZU(手間いらず)は、比較.com株式会社が運営するサイトコントローラーです。最大の特徴は連携サイトの数にあります。TEMAIRAZUが連携を行っているサイトは、国内外で100以上あり、国内最大規模のサイトコントローラーであると言えるでしょう。
さらにTEMAIRAZUは国内ではじめてAirbnbと提携を行ったサービスでもあります。サービスの提供は、2002年とかなり早い段階から行っており、世界最大手の宿泊予約サイトBooking.comが公式に推奨しているなど、長い歴史と実績、信頼性のあるサービスです。
TEMAIRAZUは、他のサイトコントローラーにはないユニークなサービスをいくつも提供しています。例えば、洋菓子の通販サイト「Cake.jp」とのコラボを行い、お祝いプランを新たに作成しました。ユーザーが申し込みをしたプランに応じて、ケーキなどの商品を自動で注文する仕組みを構築したのです。提携している商品は多岐に渡り、ケーキだけでなく花束やお酒などにも対応しています。非日常を演出したいという顧客のニーズに応える人気サービスとなっているようです。
TLリンカーン
TLリンカーンは、徹底したサポートが魅力のサイトコントローラーです。サポートセンターは365日稼働しており、不明点などを電話や対面で解決することができます。FQAサイトも充実しており、はじめてサイトコントローラーを利用するという宿泊業者には最適であると言えるでしょう。施設からの要望を受けて、新たな機能追加などを行った実績もあります。
利便性の高さも大きな特徴です。TLリンカーンでは10種類を超える種類のデータを集計する機能を搭載しており、宿泊プランごとの統計結果なども分析することができます。シンプルで分かりやすいインターフェイスを搭載しているため、操作自体も難しくありません。旅行会社(JTBや日本旅行など)とネット販売(楽天トラベルなど)を、同じ管理画面で管理できるという点も魅力です。
ねっぱん!
「ねっぱん!」は、業界最大級の導入実績を誇るサイトコントローラーです。2018年時点でおよそ8,000以上の宿泊施設が利用しています。独自の便利な機能を搭載しているのも特徴的です。
例えば、事前連絡なしで顧客が現れない、いわゆる「ノーショー」を未然に防ぐために、クレジットカードのチェックやキャンセルが発生した場合はシステムが自動で料金を回収するなどの機能が用意されています。またサンクスメールの自動配信など、顧客へのホスピタリティも重視しているようです。
利用の際の注意点としては、利用料金です。従来までは導入費用やランニングコストが無料で利用できていましたが、2019年7月以降は、有料でのサービス提供となっています。
らく通with
らく通withは、堅牢なセキュリティが魅力のサイトコントローラーです。運営企業は、JR鉄道情報システム株式会社であり、みどりの窓口などの大規模システムの開発経験に基づく技術が活用されています。
管理画面もシンプルで直感的な操作が可能となっており、空室や予約の管理が分かりやすく把握できるデザインとなっています。サポート体制も万全で、365日年中無休で対応しています。
ルームマネージャー
ルームマネージャーは、有限会社ペン・システムが運営するサイトコントローラーです。空室の管理に特化した独自のシステムにより、徹底したリアルタイム更新が実現しています。ダブルブッキングなどのトラブルも回避できるでしょう。
宿泊予約サイトからのメールを分析して、それぞれのサイトの情報を直ちに更新する機能も用意されています。月額3,000円と低価格で利用できる点も魅力の一つです。
民泊ダッシュボード
民泊ダッシュボードは、民泊事業者を対象としたサイトコントローラーです。個人や小規模の宿泊施設、マンスリー物件などに対応しており、Airbnbとの連携も可能です。
チャットメッセージの自動送信や料金設定などさまざまな機能が搭載されており、必要な機能だけを利用することもできます。IoTを活用したスマートロックなどにも対応しており、先進的なサービスであると言えるでしょう。
一部屋あたりおよそ2,000円から利用でき、無料トライアル期間も用意されています。導入の前に、試しに使ってみたいという方にもおすすめです。
AirHost PMS
AirHost PMSは、株式会社エアホストが提供する民泊向けのサイトコントローラーです。予約サイトに合わせて価格を柔軟に調整するなどの機能が用意されています。
また鍵の受け渡しをスムーズに実現するシステム「KEY STATION」とのAPI連携も可能となっており、民泊事業における業務の大幅な効率化が期待できます。
サイトコントローラーを利用して、効率的な旅館運営を行いましょう
この記事では、おすすめのサイトコントローラーについて解説しました。サイトコントローラーの導入にはコストがかかりますが、柔軟な料金設定が可能になったり、あらかじめ想定されるトラブルを避けられたりと、メリットも多く、費用対効果の高いシステムであると言えるでしょう。それぞれ機能や特徴に違いがあるため、運営施設に必要な機能は何かを明確にして、比較検討を行うことをおすすめします。