コロナ禍で加速のDXとは?デジタル活用の非接触・非対面ツールを紹介

近年、インターネットやテレビ、書籍などで「デジタルトランスフォーメーション(DX)」ということを頻繁に耳にするようになりました。デジタルトランスフォーメーションは簡単に言うと、デジタル技術を活用していくことで生活を豊かに、ビジネスでの効率や利益向上のために改革を行っていくことを言います。

しかしデジタルトランスフォーメーションの導入に多額のコストがかかってしまうことや、IT技術に詳しくない企業にとっては優先順位が低く、導入している企業は多くはありません。ならびにコロナ禍の中、ビジネスで生き残っていくためにはデジタル導入が欠かせない状況となっているのも確かです。

そこでこの記事では

  • 「デジタルトランスフォーメーションとはそもそも何なのか」
  • 「デジタル活用するツールはどんなものあるのか」

という疑問に答えていきます。実際にどのようなツールがあるのか知ることによって、自社で導入するべきことが明確になるだけでなく、デジタル化を推進する国や自治体の補助金・助成金制度についても調べやすくなります。コロナ禍で厳しい状況を乗り越えていくための参考にしていただければ幸いです。

コロナ禍で強化が必要な「デジタルトランスフォーメーション(DX)」


デジタルトランスフォーメーション(DX)はデジタルに詳しくない人にとってはITやWeb業界のみが必要なことと思われがちですが、実は飲食店、工場、建築、農業などあらゆる業界で必要不可欠なツールとなっています。そして新型コロナウイルスが拡大し収束が長引けば長引くほど、今後の感染対策に備えていくためにも、新たな改革やIT技術の導入はより欠かせないものとなっているのです。

それではデジタルトランスフォーメーション(DX)とはどういったものなのか、企業が導入するメリットも合わせて紹介していきます。

デジタルトランスフォーメーション(DX)とは

「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を直訳すると「デジタル変換」の意味を持ちます。言い換えると「これまでの価値観や前例を覆すような先駆的なデジタル技術をビジネスモデルで展開することで、コストの削減や働き方改革、人々の暮らしがより豊かにしていく」という概念です。

なおデジタルトランスフォーメーション(DX)の英語表記は「Digital Transformation」で、「Trans」は「横切って・超えて・他の側へ」という意味があることから、その意味をアルファベット1文字で表した「X」と省略する英語圏からきていることから「DX」と略されています。なお「DT」と略す言葉はプログラミング用語と同じになってしまうため、「DX」が用いられています。

デジタルトランスフォーメーション(DX)の定義

「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の定義は、経済産業省では以下のように定義しています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術とを活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」

引用:経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」

企業はこれまでのビジネスのやり方から脱却し、デジタル技術を新たに採用しつつ、これまでにはない価値を生み出すことが求められます。「デジタルトランスフォーメーション(DX)」はネットとリアルでつながりを向上させていくことによって人々の生活をより良い方向へ変化させていく経済・社会システムのことを指します。

出典:総務省「デジタルトランスフォーメーション」

企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を展開するメリットと問題

デジタルトランスフォーメーションが進展することによって、消費者側は「安心・安全な社会や生活」を実現することが可能です。一方で企業にとってのメリットは「生産性の向上」「利益の向上」「顧客維持率の向上」「コスト削減」などが期待できます。

デジタルトランスフォーメーションの取組みを行わずこれまで通りにビジネスを行っていけば、企業の存続や事業の継続自体がままならない時代がやってくることから、自社のためにもお客様のためにも必要なことなのです。

ただしデジタルトランスフォーメーションが本格的に展開していく中で問題となるのがITの人材不足です。ITの人材不足が加速すると保守運用が出来ず、サイバーセキュリティやシステムトラブルリスクが高まることで「2025年以降、最大で年間12兆円の経済損失が生じる可能性がある」として警鐘を鳴らしています。これは別称「2025年の壁」とも呼ばれています。

コロナ禍でデジタルトランスフォーメーション(DX)需要が加速

新型コロナウイルスによってデジタルトランスフォーメーション(DX)需要が加速しています。2019年頃から大手企業を中心にDX導入が増え始めましたが、中小企業の場合はデジタル知識が浅いことや多くの投資額が必要なことの課題によって優先順位の低いものとなっていました。しかしコロナ禍で人と会うことが避けられるようになった結果、デジタル化はどんな企業にとっても欠かせない重要なものになってきたのです。

非接触・非対面ツールの種類


コロナ禍ではデジタルトランスフォーメーション(DX)を活用した「非接触」「非対面」というのが大きなテーマとなり、次なる感染対策を実施していくためにもアフターコロナでその重要さは増していくと言えます。それでは感染症対策のために今急激に需要が増加している「非接触・非対面のツール」や「DXツール」は具体的にどのようなものがあるのか見ていきましょう。

手指消毒

店内で手指消毒ができるように、入り口やレジ付近などにアルコール消毒を設置しているお店が一般的になってきました。しかし「多くの人が使うアルコールボトルを触りたくない」と感じる方もいます。その場合に足でペダルを踏むタイプのものや、手をかざすだけで自動噴射される非接触タイプのものがあります。

セルフオーダーシステム

セルフオーダーシステムは購入・注文したいものをお客様自身が注文するシステムのことです。具体的には牛丼屋やラーメン店にある食券、居酒屋や回転寿司店の座席にあるタッチパネルで注文するものがセルフオーダーシステムとなります。

さらに自分のスマートフォンでお店が用意したQRコードを読み込み、メニューの表示、注文、定員の呼び出し、会計依頼までが可能で、店員との接触をなるべく抑えたシステムもあります。また多言語対応可能なシステムであれば多言語を話せるスタッフを採用しなくても、インバウンド接客に役立てることも可能です。

キャッシュレス決済端末

クレジット決済やモバイル決済などのキャッシュレス決済端末の利用です。コロナ禍で不特定多数の人が触る現金の受け渡しに強く不安を感じる人が多くいます。キャッシュレス決済端末の利用は接触回数を少なくすることができますが、クレジットカードのようにカードを店員に渡し暗証番号を入力するのでは意味がありません。

そのためスマートフォンやICカードなどの電子マネーを端末にかざすだけで決済ができるタッチ決済の導入がおすすめです。ただしカード会社が設定している上限額を超えた場合は、サインや暗証番号の入力などが必要になる場合もあります。

キャッシュレス決済はコロナ禍の非接触対策だけでなく、決済処理時間の短縮によって待ち時間が減ることでのストレス軽減や、お店側は現金管理をする手間や現金紛失を無くせるメリットもあります。また訪日外国人観光客数が最も多い中国と2番目に多い韓国のキャッシュレス決済率は70%以上と高いため、キャッシュレス決済を導入することで集客するきっかけづくり、売上増加、リピート来店につなげることができることから欠かせないツールとなっています。

セルフレジ

スーパーマーケットやコンビニエンスストア、外食大手チェーン店、大手アパレル店などで導入が増加しているのがセルフレジです。名前だけは聞いたことがある、実際に見たことはあるが使ったことがないという人も多いのではないでしょうか。セルフレジは専用レジで商品バーコードを自分でスキャンし、現金やクレジットカードなどの支払い、袋詰めまで全て消費者自身が行うものです。

セルフレジには大きく分けて「フルセルフレジ(無人レジ)」と「セミセルフレジ」の2種類があります。「フルセルフレジ」は商品の「スキャン・精算・袋詰めまで全て消費者が対応するため、レジ業務を行う人件費の削減や深刻な人手不足の解消、レジの混雑回避、衛生面の強化につながります。「セミセルフレジ」は商品のスキャンは店員が行い、精算と袋詰めは消費者が行うのでレジ待ちによるストレス解消、万引きや精算忘れの不正行為や違算対策、レジ管理業務の簡略化ができるメリットがあります。

無人フロント

顧客を出迎える従業員を配置しない無人フロントです。宿泊施設や娯楽施設などにおいて、エントランスやフロントで顧客を出迎え、チェックイン・チェックアウトの業務を行うことは一般的です。スタッフと非接触になることによって顧客とスタッフの双方で安全を確保することや、人件費の削減につなげることができます。

インバウンド客へは多言語表示で対応し、遠方からのリモートを行うことで予約者本人の確認、パスポート情報の確認が行えます。キーナンバーであれば鍵の受渡や返却が不要、決済はキャッシュレスの導入を行うことで非接触での応対が可能となります。

ドライブスルー

ファストフードや丼物など飲食店のドライブスルーが一般的でしたが、非接触対策としてあらゆるドライブスルーサービスが続々と登場しています。悪天候でも車から降りることなく商品やサービスを提供されるドライブスルーはコロナ発生以前からありましたが、コロナ禍によって商品の注文・代金の支払い・待ち時間・商品の受取りまで車内でできることは三密(密閉・密集・密接)を避けられるとして、さまざまな業種で注目されています。

例えばスーパーマーケット 、魚屋、八百屋、クリーニング、処方箋薬局、ATM、本屋、百貨店、眼鏡店など業種がドライブスルー方式を取り入れています。さらにマイカーに乗ったまま旅行や観光地などの体験を行えるドライブスルー・ドライブインも多数開催されています。具体的にはドライブインシアター、いちご狩り、マルシェ、サファリパーク・牧場、音楽フェス、婚活、愛車の査定など体験型イベントにまでドライブスルー形式が採用されているのが驚きです。

オンライン注文

スマートフォンやパソコンを使ってインターネット(オンライン)で商品を注文し、店舗や自宅で商品を受け取る利用方法です。新型コロナウイルスで外出自粛の要請がされたことにより仕事はリモートワーク化され、外出回数や接触時間を減らすため実店舗に足を運び商品を購入する人や外食する人が急激に減少しました。そのため企業は売上確保や集客につなげようと、オンラインでの注文サービスを展開しています。

オンラインで注文するメリットは感染症対策や自宅、職場、外出先など「どこからでも注文ができること」だけではありあません。通常の商品や新商品に加え、オプションやカスタマイズまで「自分のペースで選択ができること」や、「注文から決済までオンラインで全て完結できること」です。またオンライン注文で店舗に受取りに行く場合クレジットカードなど事前決済が済んでいれば、あとは表示された受取り時間に合わせて行くことで、「待ち時間の軽減」や「接触回数の軽減」にもつながります。

デリバリーサービス

感染症対策のための外出自粛や飲食店への来店自粛によって、料理や食材を配達するデリバリーサービスの利用者や飲食店が増加しています。「配達員に対する信頼性やトラブル」「配達料金の高さ」「配達エリアが限定されている」ことなど懸念はあるものの、コロナ禍の状況で初めて利用した人や利用頻度が増えた人も多くいます。

デリバリーサービスはスマートフォンやパソコンで手軽に注文し、自宅で待っているだけでさまざまな商品や温かい料理を受け取ることが可能です。しかしお店から距離にある飲食店の場合には料理が冷めてしまったり、麺類は伸びてしまったりするデメリットがあります。

そこで食材やレシピが一緒になったミールキットも人気です。通常、自宅で調理をする場合には献立を考えたり野菜や肉、魚などの食材を買いに行ったりする手間が必要です。しかしミールキットであればそのような悩みを解決し、自宅で有名シェフが使う厳選食材や調味料、シェフ考案のレシピがセットになっているため、一気に料理上級者に早変わりします。飲食店で直接購入することもできますが、デリバリーサービスで配達してくれるミールキットも増加傾向にあります。

冷凍食品

冷凍食品は簡単に調理ができ備蓄性に長ける食材としてメリットがありますが、廃棄ロスが出ない利便性もあります。不要不急の外出自粛や緊急事態宣言、飲食店の営業時間短縮など新しい生活様式によって外食から内食・中食へとシフトし、家庭用冷凍食品の主要が増加しています。

食品産業新聞の資料によると、冷凍調理したピザやグラタン、麺類、米飯は前年比で10%程度、冷凍農産や冷凍麺は15%程度増加しています。テレワークや休校要請によりこれまでお弁当用として販売されていた惣菜類は自宅での20%程度減少となっています。

飲食業の場合はこのコロナ禍では来店客の減少や大幅な売上の落込みによって、苦境に立たされています。消費者側は「飲食店に行きたくても行けない人」や「お店の応援や支援したいと考える人」も数多くいますが、これまでの方法では飲食店が生き残ることはできません。そのためお店で提供していた商品を冷凍販売する試みで、V字回復を見せる飲食店が大きく注目されています。

参考:食品産業新聞社「需要拡大する冷凍食品、コロナ禍での自粛生活が流れを加速」

ECサイトでの販売

実店舗のみの運営からECサイトにシフトして売上をアップさせる方法です。感染症対策のため自宅で過ごすことが当たり前となっているため、消費者は自粛疲れやストレスに悩む人が増加、飲食店や施設を運営する企業は実店舗での集客や売上を伸ばすことがなかなか難しい状況が続いています。それを解決するためにこれまでの趣味や楽しい経験を自宅で楽しめるサービスの利用率が急激に増加しています。

その一つがECサイトでの販売です。例えば外食気分を味わいたい人向けには「自宅で味わえるミールキット」、旅行気分を味わいたい人向けには「お土産や地域限定のお取り寄せセット」、新しい衣類を購入したい人向けには「アパレルECサイト」など、さまざまな業種でECサイトを用いた販売が誕生しています。

商品やサービス、ブランドなど消費者がお店を気に入ってもらえれば新規顧客・リピート顧客の獲得や売上を上げるチャンスがあり、さらにアフターコロナで実店舗へ足を運ぶきっかけにもなるでしょう。また多言語対応することで日本国内だけでなく訪日外国人へ幅広くリーチし、さらなる集客や売上アップに期待できます。

*ECサイトで商品を販売する際は、国や各自治体などへ営業許可をとる必要がある業種があります。知らずに無許可で販売すると処罰や営業停止、行政処分などになるケースがあるため注意が必要です。

デジタルトランスフォーメーションで非対面・非接触を行っている企業の実例


アフターコロナのニューノーマル時代に求められるものは、「安心して滞在時間や非日常を楽しむこと」です。そのためには非対面や非接触の感染対策に加え、これまでとは大きく異なった特別な付加価値を生みだすことが重要となります。

感染対策や高付加価値を生み出すためには高額な投資が必要な場合が多くあります。しかし企業や店舗側にとっては人件費の削減や利益率の向上、作業時間の削減、消費者側にとっては待ち時間の軽減や混雑具合の見える化などのメリットがあります。コロナ時代を生き抜いている企業はどのような努力をしているのか、2つの企業の実例を見ていきましょう。

実例①自動案内・自動会計・セルフレジ・自動土産ロッカー導入の「スシロー」


回転寿司チェーン店スシローは非対面と非接触を徹底的に行うため、「自動案内」「自動会計」「セルフレジ」「自動土産ロッカー」のシステムを導入
しています。

まず店内に入店した際にお客様自身が専用システムでチェックインすると自動で席を案内してくれる「自動案内」があります。そして飲食後に店員が皿の枚数を確認するのではなく、カメラで撮影した皿をAI(人工知能)の画像解析によって価格を計算する「自動会計」に加え、会計札(QRコード)を客自身がかざして精算する「セルフレジ」によって、入店から退店まで店員と対面することなく過ごすことができます。

また店内、電話やFAX、スマホアプリやネット予約をすることでテイクアウトの注文・受取りができる「自動土産ロッカー」もあります。注文ごとにQRコードが発行され、専用ロッカーにQRコードをかざすことで簡単に商品の受け取りが可能です。アプリやネット予約の場合は事前クレジット決済ができるだけでなく都合のいい時間に受取りができるので、店員と対面することや待たずに商品の受取ができるとして今話題となっています。

実例②衛生管理と徹した三密回避を行う「星野リゾート」


国内外に42の旅館や温泉施設を運営する星野リゾートは、2021年時点で107年を迎えた老舗の観光事業者です。星野リゾートは「三密回避」と「衛生管理」を徹底的に行うことで最高水準のコロナ対策を行っています。

「三密回避」ではチェックイン時とチェックアウト時の人混みや接触を回避するため、客室まで直接案内した後に室内でチェックインや、自動チェックイン機の導入や2メートル程度の間隔を空けた入列規制を行います。また温泉やプールの共有スペースには、スマートフォンで混雑状況や混雑予想を確認することが可能です。客室はウッドデッキや露天風呂付の客室など開放的な部屋タイプがあり、三密を生まないような設計がされています。

「衛生管理」では飛沫防止のためフロントにアクリルパネルやビニールシートなどを用いたパーテーションの設置や、抗菌コーティングしたレンタルウエアの採用、一定の湿度を保つことができる加湿器の導入で感染リスクを軽減しています。食事スペースでは不特定多数の人が触れないように自身のスマートフォンで閲覧できるQRコードメニューの採用、食器やカトラリーの高温除菌洗浄などを徹底することで安心して利用することが可能です。

DXの導入で企業存続にと繁栄へとつなげよう

この記事では「デジタルトランスフォーメーション(DX)とは何か」「非接触・非対面のデジタルツールは何か」について紹介しました。自社にはどんな改革が必要で、どんなツールを導入すればいいのか具体的にイメージできたでしょうか。

デジタルの導入にはコストや知識、IT人材などが必要となるため、導入ことが難しい場合もあるでしょう。しかしどの業界でも日々進化していく新しいテクノロジーの採用が必要不可欠な時代となり、変化しなければ生き残っていくことが難しいと言えます。業界の常識やこれまで守られ続けきた企業のやり方ばかりにこだわらず、新しいビジネスモデルを導入し進化し続けていきましょう。

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