人材不足で外国人労働者を受け入れ検討中!大まかな知識や現状を解説

現在日本では人材不足によって労働人材はもちろん、部下を管理したり教育する人材、後継者までも不足している状態となっています。少子高齢化によって人材不足が続いているわけですが、将来的にはもっと人手不足となり、特に力仕事などの体力がある仕事を行っている業種は厳しい状態が続くと予想されます。

そこで重要となってくるのが外国人労働者です。海外から若者や能力がある人を集めることで、これまでの人材不足による悩みが解消されます。

しかし「海外の言葉を話せないため、コミュニケーションがとれない」「受け入れる方法が分からない」といったことで受け入れができない方も少なくありません。

そこで今回は外国人労働者を雇用しようか検討している方へ向けて「日本国内の外国人労働者受け入れ状況」「外国人労働者を受け入れるメリット・デメリット」などについて紹介していきます。

そもそも外国人労働者とは


外国人労働者と一言で言っても、在留資格の種類が細かく分かれています。具体的にどういうものなのかみていきましょう。

外国人労働者とは

そもそも「外国人労働者」とは他国から労働者を受け入れた際に日本側からみたときの呼称で、英語では「Foreign worker」と呼ばれています。もしくは「移住労働者(Migrant worker)」とも言います。

在留資格によっては制限された労働時間、1年以内の短期間、家族と移住して長期間働くことができるものなどさまざまです。どのような在留資格があり、どのような制限があるのか次の項目で紹介していきます。

外国人労働者の種類

日本国内において就労できる外国人は、大きく分けて5つあります。
 1.身分に基づく在留資格
 2.資格外活動
 3.技能実習
 4.専門的・技術的分野の在留資格
 5.特定活動

平成30年(2018年)の外国人労働者数は全体で140万人です。その中で最も多い割合から詳細をみていきましょう。


出典:厚生労働省「平成30年(2018)10月末時点の外国人雇用状況の届出状況まとめ」

■1.身分に基づく在留資格(約49.5万人)

「身分に基づく在留資格」とは日本人や外国人永住者の配偶者がいる場合、永住者、定住者のことです。全体の約34%(約49.5万人)を占めています。活動に制限がないので、職種や単純労働を行うことが可能です。

■2.資格外活動(約34.3万人)

「資格外活動」は留学生のアルバイトのことです。就労時間は1週間で28時間まで、夏休みや冬休みの長期休み期間に限り1日8時間、週に40時間までと制限があります。また外国人がアルバイトを行いたい場合は、資格外活動許可を受けていることが必要となります。

■3.技能実習(約30.8万人)

「技能実習」は日本で高い技術や知識を培い、母国である開発途上地域へそれらを広めることで経済発展となり、国際貢献を目的とした制度です。技能実習生は技術を学ぶことを目的としているため、労働者というより研修生のような存在ですが賃金の支払いは必要です。2017年11月に技能実習法が施行されたことによって、最大滞在期間が3年から5年まで可能となっています。

■4.専門的・技術的分野の在留資格(約27.6万人)

「専門的・技術的分野の在留資格」は「高度人材」とも呼ばれており、専門的な技術を持つ人で、全11分野に分類されます。技術の向上やグローバル化を目的とした在留資格です。

専門的・技術的分野の在留資格の中にいくつかの在留資格に分かれています。例えば在留資格「技術」であれば職種はシステムエンジニア、「人文知識」は営業や経理、「国際業務」は通訳や翻訳、「法律・会計業務」は弁護士や会計士、「医療」は医師や歯科医・看護師などがあります。

■5.特定活動(約3.5万人)

「特定活動」とはワーキングホリデー、インターシップ、外交官等の家事使用人などで滞在している人です。在留期間は3ヶ月から最長5年あります。日本食やアニメーション製作などのクールジャパン関連の職種が、新たに追加されることが検討されており、その他の職種も今後増加していくと予想されます。

外国人労働者の受け入れ拡大の背景

外国人雇用を行っている企業は、毎年増加し続けていますが、その理由としては少子高齢化に伴い、人材不足が深刻しているためです。日本の人口は2010年1億2,806万人をピークに、2015年は1億2,709万人となっています。生産年齢人口(15歳~64歳)は1995年の8,590万人をピークに減少が続き、2010年では8,103万人、2015年は7,629万人と少子高齢化であることが下記グラフで分かります。

人口推移と少子高齢化の傾向は、増加よりも減少の方がスピードが早く進むとし、2050年の人口は1億人をきると予想され、それに伴い生産年齢人口は総人口の50%ほどにしかならない計算です。

採用担当者の方や企業の方は求人採用を行っていると、求職者の数や若者の数が年々減少してきたなと感じる方も多くなってきていると思います。実際の経験に加え、下記のグラフを見ても日本人の労働者数だけでは足りず、外国人労働者を採用することがさらに増していくとされます。そしてどの企業でも外国人の雇用するのが当たり前の時代へと突入してきているのです。
出典:総務省「平成29年版 情報通信白書|期待される労働市場の底上げ」

外国人労働者の受け入れ状況


外国人労働者はどれほど日本で受け入れられているのでしょうか。労働者数や国籍、年齢など詳しく見ていきましょう。

こちらの項目は全て下記の資料から抽出したものです。
出典:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和元年 10 月末現在)

参考:「外国人雇用状況」の届出状況【概要版】(令和元年 10 月末現在)

外国人労働者数の推移

厚生労働省の資料によると令和1年(2019 年)10月時点の日本で就労している外国人労働者数は165万8,804人、事業所数は242,608 か所です。2009年と比べると外国人労働者数と事業所数ともに、約3倍も増加していることが分かります。特に2014年から外国人労働者数の割合が高まっており、今後もさらに増加していくと予想されます。

在留資格別に見ると「身分に基づく在留資格」は約53.2万人と最も多いです。次に「技能実習」が約38.4万人、「資格外活動者」が約37.3万人、「専門的・技術的分野の在留資格」は約32.9万人、「特定活動」は4.1万人となっています。その中でも「技能実習」は前年比24.5%の増加、「専門的・技術的分野の在留資格」は前年比18.9%増加と、目立った増加傾向であることが確認できます。

外国人労働者の国籍別比率

国籍別に見てみると最も多いのが「香港等を含めた中国」が418,327人(全体の25.2%)、次に「ベトナム」401,326人(24.2%)とほぼ同等の割合です。次に「フィリピン」179,685人(10.8%)、「ネパール」91,770人(5.5%)の順となっています。全体の約75%程度でアジア諸国が占めており、その他にブラジルやオーストラリア/ニュージーランドとなっています。その中でも増加率が最も高いのが「ベトナム」で前年比26.7%、次に「インドネシア」23.4%、「ネパール」12.5%の順になっています。

外国人労働者の就労地域

都道府県別に外国人労働者の割合をみると、最も多い地域が「東京」29.3%、次いで「愛知」 10.6%、「大阪」 6.4%の順となっています。外国人雇用事業者数も「東京」26.6%、「愛知」8%、「大阪」7.3%と同じ順位となっています。

外国人労働者の事業所規模別

事業所規模別の割合をみると「30人未満規模」は145,000か所で、全体の59.8%を占めています。次に「30~99人規模」で44,384か所(18.3%)、「100~499人規模」では27,530か所(11.3%)となっています。つまり全体的に少ない規模の会社の方が、外国人労働者を雇用しているということになります。

外国人労働者を雇用している業種

外国人労働者の産業別にみると、最も多いのが「製造業」483,278人で全体の29.1%を占めています。次に労働者派遣業を含む「サービス業」が266,503人(16.1%)、「卸売業・小売業」212,528人(12.8%)、「宿泊業、飲食サービス業」206,544人(12.5%)の順になっています。

外国人労働者を受け入れるメリット


外国人労働者を受入れようか検討している企業にとって気になる一つとして、どのようなメリットがあるのかということではないでしょうか。メリットは具体的にどのようなものがあるのかみていきましょう。

メリット①人材不足の解消と若い人材の確保

最も大きなメリットと言えるのは人材不足の解消です。
先述したように、今日日本では少子高齢化社会の影響で若年層労働者数は減少し、多くの業種・職種で大きな人材不足に悩まされています。少子高齢化社会は加速しているため、人材の確保は難しくなっていくばかりです。そのため外国人労働者の雇用は、会社の維持・存続には欠かせない人材と言えるでしょう。特に若い人材を必要としている業種にとっては、人手不足問題の解決策として注目が集まっています。

メリット②集まりにくい職種・業界でも人材が集まりやすい

日本人の働き手が集まりにくい職種や業界で、外国人労働者の求職者が集まりやすいことです。
日本国内で人材を採用しようとしたときに、特に地方や3K(きつい・汚い・危険)と呼ばれる仕事は、人材が集まりにくいのが深刻な問題となっていました。

しかし2019年に改正出入国管理法が施行されたことで、人材不足が目立つ「医療・福祉業界」「運送・流通業界」「建設・建築業界」「IT業界」において、少しずつ解消傾向にあります。その理由は職種はこだわらず、日本で働きたいという高いモチベーションで仕事を探す人が多いことから、働きたい職種が日本人とは異なるためです。

しかしこれは新しい在留資格のため、在留資格を持つ人材や業種が限られているため、まだまだ少ないのが現状ですが、今後新たな業種が追加されていくと予想されます。

メリット③優秀な人材の確保

労働意欲が高く、若くて優秀な人材を確保できることです。
日本人労働者の場合は優秀な人材は他社からも声がかかることが多いため、中小企業は大手企業に先を越されてしまうのが現状です。外国人労働者は在留資格の種類や就労する職種などによっては、日本語の読み書きレベルや技術の要件に大きな差はありますが、専門的な技術や知識を持った優秀な人材が多くいます。

特に日本はIT人材不足に悩まされていますが、習得が難しいと言われる日本語を覚え、母国から出てまで働きたい・もっと成長したいという意識と技術力がが高い人材が採用するケースが増加しています。技術を持っ外国人人材を採用することで、企業の業績や売上アップにも繋がっていきます。

メリット④新しいアイデアや技術の創出

日本とは異なる文化・習慣・価値観などが入り混じることで、これまで気づくことがなかった問題点や課題を発見したり、斬新なアイデアを生み出すことができる可能性があります。さまざまな課題やアイデアを創出ことで強い刺激になるだけでなく、社内が活性化していくことで企業技術の向上にも繋がっていけるでしょう。

メリット⑤インバウンド対応や海外進出の足掛かりになる

多言語を話せる外国人人材は、売上や会社の業績アップに期待することができます。
外国人労働者の中には母国語と日本語、その他の言語も含めると、3~4か国語程度の言語を話せる多言語話者も少なくありません。複数の言語の読み書きができることによって、接客や通訳・翻訳、現地調査、社内グローバル化の教育などを行うことができます。

そうすることでインバウンドなど新規事業への参入し新たな市場を開拓することや、海外進出を検討している場合は外国人顧客とのコミュニケーションが円滑にできるなどが可能です。日本国内での少子高齢化が進む中、労働人材だけでなく海外顧客も同時に確保していくことが、会社存続の鍵となっていくでしょう。

外国人労働者を受け入れるデメリット


外国人労働者を雇用することで、メリットだけではありません。デメリットもしっかり理解しておくことで、事業計画を立てる際やトラブル回避に役立てることができます。

デメリット①煩雑な手続き

最も大きなデメリットと言えるのが手続きで、企業にとっては高いハードルと言えます。
外国人労働者を受け入れるには就労ビザを取得する必要があり、煩雑な手続きに加え、就労ビザを取得するために1~3ヶ月程度の期間がかかります。雇用する外国人(国)によっては特別な手続きや申請書類を追加することもあるため、取得期間が長くなることもあるでしょう。

また就労できる在留資格を持たない人材を雇用してしまったり、資格以外の就労をさせた場合には罰則の対象となるので、在留資格・期間・就労内容・手続きの内容などを自社でのチェック、管理することを怠らないようにしなければなりません。また雇用時や更新時には就労ビザ代行サービス、行政書士、弁護士などの専門の機関に依頼することが重要となります。

デメリット②コミュニケーションがとりづらい

国が異なれば言語、習慣、文化も大きく異なるので、その違いからコミュニケーションがとれないことです。
在留資格によっては日本語レベルの要件が高く設定されているため、日常生活や一緒に仕事をする上で円滑に進められる人もいますが、中には片言しか話せない人や全く話せない人もいます。

また日本人同士であれば「空気を読む」や「阿吽の呼吸」のように話さずとも意思の疎通ができることがあります。しかし外国人労働者の場合は「この仕事はなぜ必要なのか」「どのようにしなければいけないのか」「何をしたら駄目なのか」のように具体的にはっきり伝える必要があります。

これは日本の文化を押し付けることではなく、雇用した外国人の習慣、文化、宗教、タブーにおいてまで十分に理解した上で教育を行っていくことで、互いの信頼関係を築くことができると言えるでしょう。

デメリット③語学や仕事の研修期間の延期

先述したようにコミュニケーションがうまくとれないことで、語学や仕事の研修時間が長引いてしまうことです。
業務を円滑に行っていくためには、意思疎通ができること、高い技術、企業ごとのやり方などが必要です。例えば接客業の場合は、丁寧な言葉使いや立ち振る舞い、身だしなみ、気遣い・心遣いのサービス精神など、海外からみて過剰と言われるおもてなしが当たり前となっています。

企業はが外国人労働者にどれだけのことを求めるのか、外国人労働者はどこまでそれを理解し実施できるのか、価値観や文化が異なる外国人材への細やかな研修を行うことが大切です。

デメリット④仕事に対する価値観の違い

日本と海外では働き方や仕事に対する価値観は大きく異なることです。
例えば日本の場合は世界的にみると労働時間が長く、残業を行うことは当たり前です。一方で海外では仕事とプライベートをはっきりと分けていることが多いため、たとえ仕事が終わっていなくても定時で帰るのはよくあることです。また人間関係の淡泊な付き合い方から、仕事終わりに同僚や上司と夜遅くまで飲みに行くこともあまりないでしょう。

このような労働時間内での働き方や業務終了後の付き合い方に至るまで、価値観が異なるということ理解しなければ、良好な関係を築くことができないだけでなく、労働者の離職にも繋がってしまうので注意が必要です。

デメリット⑤生活のサポートが必要

言語や文化の違いにより、生活のサポートが必要なことです。
日本人を採用する場合は仕事以外の生活をサポートすることはほとんどありませんが、外国人労働者の場合はたとえ日本語が読めたとしても、専門用語や文化的背景などを全て理解できません。そのため休日や仕事以外の時間を使って、外国人目線の生活サポートを行ったり、言語が分からない海外での生活からメンタルサポートなども重要となっていきます。

外国人労働者をしっかりサポートする担当者を付けるということは、その分の労力や人件費がかかるという点を考えておくことが大切です。

まとめ

今回は「外国人労働者を受け入れるメリット・デメリット」「日本での受け入れ状況」について紹介しました。日本の人材不足の解消を握っているのは外国人労働者です。言語や文化が異なればプラスになることもマイナスになることもあります。

プラスになるためにはどのような理解が必要なのか、マイナスに働かないためには何をしていかなければならないのか、会社を存続していくために今一度戦略を立てていきましょう。