「ウェルネスツーリズム」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ウェルネスツーリズムとは心と身体の健康を目的とした旅行のことを言います。
海外では10年以上前からウェルネスツーリズムのニーズがありましたが、コロナ禍になってからはより多くの人が意識されるようになったこと、またインバウンド対策になるとして観光業界にとって回復の鍵となるとして国際的に注目されています。
この記事では
- ウェルネスツーリズムとは具体的にどういう概念なのか
- どのような事例があるのか
について紹介していきます。
健康志向ブームでウェルネスツーリズムが注目
健康志向ブームがなぜ旅行と関わってくるのでしょうか。また今ウェルネスツーリズムが注目されていることで訪日したい外国人が増加してきている理由について紹介します。
そもそもウェルネスツーリズムとは
「ウェルネスツーリズム(Wellness Tourism)」とは、旅を通じて心と体をリフレッシュし健康回復に繋げること、また地域の自然・資源に触れ合うことで健康増進を図ることを目的とした旅行のことを言います。
「ウェルネストラベル(Wellness Travel)」や「ヘルスツーリズム(Health Tourism)」とも呼ばれています。かみ砕いて言うと美容効果や癒し効果を得ることを目的とした「美容体験型旅行」のことを言います。
ウェルネスツーリズムの定義とは
ウェルネスツーリズムは大きく分けて下記3つのテーマがあげられます。
- リラクゼーション
- スポーツアクティビティ
- ヘルシーフード
テーマをさらに細かく分けると、下記の7つがあげられます。
- 健康
- 健康食
- フィットネス
- エコ&アドベンチャー
- パーソナルケア
- スピリチュアル体験
- マインドボディ
出典:国土交通省観光庁「美容体験型観光コンテンツの充実に向けたナレッジ集 」
■1.リラクゼーション
リラクゼーションには温泉、スパ、マッサージ、瞑想などがあげられます。
温泉入浴(スパ)することで戦いや病の治療を行われていたため、古代ローマ時代ではローマ帝国、日本においては戦国時代で傷兵が温泉で治療を行ったといわれています。
時代が進むにつれて温泉には傷を治したり、自然治癒力を高めるなど医学的根拠があるという検証が出たため、貴族の間で高級な施設として利用されていました。日本においては明治・大正時代、名だたる文豪が温泉宿を訪れ、日々の疲れを癒すとともに名作が誕生されたとも言われています。
そういった歴史背景から、「ウェルネスツーリズム」は「スパツーリズム(Spa Tourism)」のことであると認識している人も数多くいるようです。
■2.スポーツアクティビティ
スポーツアクティビティにはヨガ、フィットネス、ジョギング、ハイキング、ゴルフなどがあげられます。
適度な運動、つまり「Wellness(ウェルネス)=健康」は「Well-being(ウェルビーイング)=幸福」と同義語とされています。心と身体を健康にすることで、幸福度や充実した生活を実現することに繋がっていきます。
■3.ヘルシーフード
ヘルシーフードには薬膳料理、スーパーフード、ハーブ、オーガニック野菜(有機野菜)などがあげられます。
添加物を極力使用しないギルトフリー、体に溜まった老廃物を排出させるデトックスといったことで体の中から綺麗にし、心身の健康な状態へ導くことができます。
健康志向ブームとなっている理由とは
今世界中で健康志向ブームとなっていますが、どんな理由があるのでしょうか。
理由①コロナの影響で健康意識が高まっている
先ほどもお伝えした通り健康を目的とした旅は古くからありましたが、2010年頃から意識的に取り込まれるようになり、コロナ禍に入ってから世界的にウェルネスブームが加速している状況です。
その理由には新型コロナウイルスの影響があり、感染リスクを低くするために「免疫を高くすること」を意識した情報が多く飛び交うようなっているためです。
免疫を高めるためには「バランスの取れた食生活」「適度な運動」「十分な睡眠」「ストレスから解放される癒しの時間」などがあげられます。自宅で過ごす時間が増えたことによって、健康状況を見直す人も多くなったことでしょう。
そのため旅行中においても健康的な食事、ヨガ、フィットネス、ジョギング、温泉、瞑想などを行えるよう、旅先で健康的なアクティビティを求める旅行者が世界的に拡大してきています。
さらに旅先だけでなく移動中の機内食から健康食を採りたいという需要も増え始めていることから、現地の宿泊施設や飲食店だけでなく、航空会社など数多くの業界でウェルネスビジネスが拡大されはじめています。
理由②日本にはウェルネスツーリズムの素質がある
ウェルネスツーリズムにぴったりの旅先として日本が選ばれています。
そのワケは日本には季節に合わせた旬な食材を使ったヘルシーな和食文化、四季折々の自然風景、世界に誇る温泉施設が多数あることから、訪日したい外国人が増加しているというのです。
通常「旅行とは旅先の観光スポットを訪れること」を重視する人が多いですが、「心身ともに健康になること」を目的とした割合が高まってきています。
旅行という非日常を体験することに加え、健康になるためのリラクゼーション・運動・食事をとって日常から解放されることによって、リラックス効果が生まれます。そして心に余裕ができることで免疫向上や、仕事のパフォーマンスを上げることにも繋がっていくのです。
ウェルネスツーリズムの市場規模
ウェルネスツーリズムは毎年拡大傾向にあると言われていますが、世界的にみてどれだけの市場規模なのでしょうか。
出典:経済産業省「次世代ヘルスケア産業協議会 第2回新事業創出WG」(PDF)
Global Wellness Instituteは発表したデータによると、健康維持・増進に資するウェルネスツーリズム(ヘルスツーリズム)の全世界の市場規模は2012年で44兆円、2017年には1.5倍の68兆円まで拡大していることが明らかになっています。
国別に見ていくとアメリカが16.7兆円と群を抜いて高く、年間の成長率は5.8%となっています。日本はアメリカと比べて1/5程度ですが、2.9兆円、年間成長率は3.7%となっています。
今後はウェルネスツーリズムの認知度や市場規模がさらに拡大していくと予想されているため、インバウンド対策のひとつとして欠かせないものとなっていくはずです。
旅行と健康が繋げていくためのビジネスの方向性
市場規模が拡大傾向にあることは理解できたかと思いますが、どのような方向性を持って「観光✖健康」のウェルネスツーリズムを行っていけばいいのかイマイチ分からないという方も多いでしょう。
出典:経済産業省「次世代ヘルスケア産業協議会 第2回新事業創出WG」(PDF)
ウェルネスツーリズムをインバウンド対策として上手く取り入れていくためには、健康や予防に繋がるようなアクティビティの用意が必要です。
独自で企画開発するのもいいですが、本物志向が高い人をターゲットにする場合は、旅行者の満足度や信頼性をあげるために、健康や予防に対する専門家が監修することが必要となります。
そして「日本の健康長寿ブランド」として
- 海外から多くの旅行者(インバウンド)を呼び込む
- 地域資源の活用をすることで雇用創出と地域の活性化
- 海外向け(アウトバウンド)に商品やサービスを展開
ウェルネスツーリズムの事例
世界各国でウェルネスツーリズムが実施されていますが、実際にどのようなことを行っているのでしょうか。ここでは山梨県、三重県、タイの3つの事例を紹介します。
事例①山梨県大月市|大月ロハス村 雲水舎
公式サイト:大月ロハス村 雲水舎
「大月ロハス村 雲水舎(オオツキロハスムラ ウンスイシャ)」は山梨県の大自然に囲まれた純日本家屋の宿です。宿泊施設は古民家を一棟貸切って宿泊できるため気心のしれた友人や家族とウェルネス体験に集中して取り組める施設となっています。
施設内には日本庭園、檜風呂、岩盤浴が備わっており、ロハスの森で採れた山菜や椎茸などの旬な食材を使ったサプリ御膳、有機野菜を使った青汁ジュースでのプチ断食など食にもこだわっています。
また専門インストラクターによって健康とストレスレベルをチェックするコンサルティング、アクティビティに樹木に囲まれた100畳もあるウッドデッキで行う森林ヨガ、マインドフルネス、トリートメント、茶道体験、坐禅まで幅広いのが特徴です。
事例②三重県志摩市|アマネム
公式サイト:アマネム
「アマネム」は東南アジアや欧米など20ヵ国以上で展開しているラグジュアリーホテル「アマン」が運営する高級ホテルです。アマン初の温泉を取り入れたリゾートして、2016年に三重県志摩国立公園内にオープンしました。
美と健康に徹底的に取り組めるプログラムとして「アマン パーソナル ウェルネス イマージョン プログラム」が用意されています。3泊4日からのコースにはゲスト一人ひとりの健康状態や目的に合わせて、食事や運動などを滞在中のプログラムが組み込まれます。
さらに帰宅後にも健康的な生活が送れるよう、生活習慣や食生活などのアドバイスまで行ってくれる徹底ぶりです。
事例③タイ・ホワヒン|Chiva Som(チバソム)
公式サイト:Chiva Som
タイ語で「安寧の隠れ家」の意味をもつChiva Som(チバソム)は「身体・心・精神の調和」をコンセプトとした高級リゾートホテルです。
チェックインの際に専門スタッフによるメディカルチェックが行われ、心身のリフレッシュ、ストレス解消、アンチエイジング、ダイエットなど目的別に滞在スケジュールが提案されます。プログラムは伝統的なものから最新テクノロジーを採用したものまで約200種類から自分に合ったものを選べるのが特徴です。
滞在中はアルコール飲料はリクエスト者のみ、ビーチ以外での喫煙は禁止、施設内での携帯電話などの電子機器の禁止など究極のヘルスリゾートと言えるでしょう。
まとめ
ウェルネスツーリズムをインバウンド対策として行っていくためには企業努力だけでなく、地域一体となって取り組んでいくことが大切です。
事業者と自治体が連携して取り組んでいくことで相乗効果が生まれ、ヘルスツーリズムシティ、ヘルスツーリズム地域といった新造語として呼ばれるよう盛り上げていきましょう。
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