滞在型観光と体験型観光とは?観光客が求めるご当地体験で地方活性化

旅行の形態は時代とともに大きく変化しています。

これまでの観光スタイルは大人数・団体で「あらゆるところへ行って・見て・食べ・買う」というものでした。しかし現代の観光スタイルは少人数・個人で「一つのところに滞在して、地域ならではのコトを体験する」ことが主流になってきています。

しかしなぜ観光客は「コト(体験)」に重点を置いているのでしょうか。

今回はコト消費である「体験型観光」の魅力と、長期滞在する旅行スタイル「滞在型観光」を解説していきます。コロナ禍で離れてしまった国内外の観光客を再び呼び寄せたい!という方はぜひ参考にしてみてください。

滞在型観光と体験型観光とは

「滞在型観光」と「体験型観光」はそれぞれどういった特徴があるのでしょうか。

滞在型観光とは

「滞在型観光」とは1ヵ所または一定の地域に滞在(宿泊)して、現地の文化や自然などに触れ合いながら楽しむ観光スタイルです。

これまでの観光スタイルと言えば、バスツアーに参加したり、レンタカーを借りたりして、複数の地域を巡るのが主流でした。

しかし現代の旅のスタイルは一定の地域に滞在することで地域住民と交流する機会が増えるだけでなく、ガイドブックには載らないような地元民のみぞ知る場所へ行って体験できるのが魅力です。

体験型観光とは

「体験型観光」とはその土地の文化や自然を肌で感じ、体験に重心をおく観光スタイルです。

観光と言えばその土地の食べものを食べて、見て、聴いてというのが主流でした。現代はそれらのことに加え、あらゆるジャンルでさまざまなコト(体験)をすることの方が観光客の価値観が高まってきています。

例えば温泉に入るだけでなく湯もみ体験をする、うどんやそばを食べるだけでなくうどん・そば打ち体験をするといったような内容があげられます。

観光客が体験型観光を求める理由

なぜ多くの観光客はコト(体験)を重要視するようになったのでしょうか。それは「高価な非日常」よりも「安価な異日常」を体験したいからです。

高級ホテルや豪華客船クルーズに宿泊する旅は非日常を味わえる分、数万円~数百万円することもざらにあります。しかし古民家に宿泊して現地の暮らしを体験する旅の方では、異日常でお手頃価格で体験することができます。

贅沢に高価な物に触れたりサービスを受けたりすることは多くの人々の憧れでもありますが、生活感覚の延長線で楽しめる旅行が新しいと注目を浴びているのです。

滞在型観光と体験型観光のメリット

これまでと観光スタイルが変わったことで「観光客」「事業者や地域」の双方にメリットがあります。具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。

観光客のメリット

観光客の消費スタイルは「モノ消費」から「コト消費(あるいはトキ消費)」へと時代は変化しています。

先ほどもお伝えしたように、モノを購入するより体験や経験をすることで
①思い出として長く残り
②興味のあることが深く知れて満足度アップ
に繋がるのが観光客のメリットです。

これはインバウンド市場だけに限らず、日本人の国内旅行市場においても、体験需要は高まってきています。

事業者のメリット

事業者のメリットはまず
①長期滞在することによる経済効果の上昇
②地域のことを深く知ってもらうことで、ファンになってもらいやすくなる
ことです。

そうすることで何度も訪問してくれるリピーター者数の増加が期待できます。

また体験型観光が主流になってきたことで、
③これまで観光資源として活用されなかったことや注目されてこなかった地域固有の資源が発掘され、新たな雇用や観光客の呼び込みに繋がる
のです。

観光客が求めるのはご当地体験

コト消費は具体的にどのようなことをすればいいのか紹介する前に、一度立ち止まって考えてもらいたいのは「自分が旅行先へ行ったら何をしたいか?」ということです。

例として韓国・台湾・アメリカに行った場合「〇〇したいか」というように考えてみましょう。

韓国へ行ったら

・サムギョプサルやサムゲタンを食べる
・エステに行く
・観光コスメを購入する
・韓国屋台を体験する
・おしゃれなカフェを巡る
・ドラマや映画の聖地を巡る
・チマチョゴリを着て伝統スポットで記念撮影

台湾に行ったら

・伝統劇を生で鑑賞する
・伝統的な建物を巡る
・ランタンフェスティバルに参加する
・足もみマッサージをうける
・台湾式シャンプーをする
・夜市で小籠包やB級グルメ、台湾デザートを堪能する
・ライトアップされた九份で屋台と映画の世界を楽しむ

アメリカに行ったら

・壮大な道をドライブする
・絶景スポットへ行く
・アメリカサイズのハンバーガーやステーキを食す
・タイムズスクエアでド派手なニューイヤーを迎える
・世界一のミュージカルをはしごする
・カジノで一攫千金を狙う

 

このように訪れた国でしかできない体験をしたいと思いませんか?日本を訪れる外国人観光客も同じで、日本でしかできない特別なコト(体験)をしたいと思っているのです。

訪日観光客が求める4テーマのコト消費

それでは訪日外国人観光客は具体的に、どのような体験を求めているのでしょうか。

「体験」と一言で言っても、体験目的は2つのタイプに分かれていることを知っておきましょう。

  1. 見る、知る、触れ合う、出会うことで心を動かす「異文化体験」
  2. スポーツやレクリエーションなどの「アクティビティ」
そしてこの体験は下記4つのテーマに分かれます。
  1. 日本の伝統文化体験
  2. サブカルチャー・ポップカルチャー体験
  3. 地元体験
  4. 自然体験
訪日外国人観光客が魅力と思っている体験について、上記4つのテーマに分けて順番に紹介していきます。

①日本の伝統文化体験

日本の伝統的文化でいかにも日本らしいと言えば「侍、忍者、城、歌舞伎、相撲、着物、舞妓、茶道、書道、陶芸、座禅、畳、和紙、温泉、日本酒、天ぷら、寿司、ラーメン」などがあげられます。

これらに体験を加えると、ただ単に食べるだけでなく築地市場巡りやマグロの解体ショーに参加する、着物を着て写真撮影や街ブラ散策という体験が人気です。

その他にも居酒屋の飲み歩きも人気です。数席しかないしかないような小さな居酒屋でのセンベロ(つまみとお酒でべろべろに酔える)体験は地元民らしいと、多くの訪日外国人が憧れをもっています。

②サブカルチャー・ポップカルチャー体験

日本の伝統的文化と非対称的であるサブカルチャー・ポップカルチャーと言えば「漫画(マンガ)、アニメ、ゲーム、コスプレ、メイド、アイドル、フィギュア」が代表的です。

漫画やアニメをきっかけに「日本語を覚えた」「好きなキャラクターのコスプレがしたい」という外国人が多くいます。海外でもアニメやゲームグッズは販売されていますが、アイテム数やイベントの数は言うまでもなく日本の方が圧倒的に多いのが事実です。

またロボットショーを鑑賞できる「ロボットレストラン」、店内内装や料理までカラフルな「KAWAII MONSTER CAFE」、ギャルメイクを施したスタッフが接客してくれる「ギャルカフェ」といった一味違った飲食店も人気です。

③地元体験

地方都市部でしかできないものと言えば「田舎暮らし(古民家)、野菜栽培、田植え、果物狩り、風鈴づくり、工場見学、居酒屋」などの地元体験です。

地元の方々と交流しながら「家庭料理」を学びたいというコンテンツも人気です。

④自然体験

自然体験とは森林、湖、革、海などの自然の中で自然を利用した体験のことです。

例えば日本を代表する絶景富士山でのハイキングだけでなく山を眺め大自然を感じながらの「グランピング、カヌー、カヤック、ハイキング」など、旅先でもアウトドアを楽しみたい旅行者が増えてきています。

また日本には四季があるので「春のお花見、夏の花火大会や祭り、秋の紅葉狩り、冬のスキーやかまくら」など、四季を感じられる体験も大人気です。

「心身の健康・免疫力を高める新しい旅ウェルネスツーリズム」も訪日外国人観光客の注目が集まっています。

人気となる体験型観光を作るために必要なこと

話題となるような体験型観光コンテンツを作るためには、「①第三者目線で観光コンテンツの組み立てる」「②SNSを駆使する」の2つのことが必要です。どういうことなのか順番に紹介していきます。

①第三者目線で観光コンテンツの組み立てる

体験型観光として地域の価値を発掘・活用していくためには、客観的に地域のことを観察することや、地域にあまり馴染みのない第三者を交えてご当地体験コンテンツを作成していくのがおすすめです。

ある特定の地域に長く住んでいると地域住民にとって当たり前なことでも、外部から見ると魅力的なものと映っていることが多々あります。

訪日観光客はリピーターとして何度も日本を訪れている人も多く、訪日回数が多ければ多いほど、定番の体験ではなく地元の人のみぞ知るスポットや体験をしたいと思っています。

②SNSを駆使する

旅行者が旅行先を調べる方法は、ガイドブック、テレビ、新聞、雑誌、知人・家族などの口コミ、そしてSNSがとても重要です。SNSはタビ前の情報収集にも使いますが、旅ナカや旅アトで撮った写真をシェアするためにも利用されています。

つまり旅行者が「素敵な景色・体験を誰かに見てほしい」「(アジアでは特に)憧れの日本旅行へ行ったことを誰かに自慢したい」「フォトジェニックな写真を撮りたい・見せたい」と思ってもらえるための工夫をすることが大切なのです。

SNSは初めて日本を訪れる方だけでなく、日本に何度も訪れたことのあるリピーターへの増加にも期待できるので、欠かせないマーケティングツールと言えます。

まとめ

今回は「体験型観光」と「滞在型観光」について詳しく解説しました。地域の魅力というものは長く住んでいる人はなかなか気づきにくいもので、発信することやサービスに繋げることが難しいものです。

これを機会にどんなコトを観光客に提供できるのか、地域に眠る資源を発掘してみてはいかがでしょうか。