AIでインバウンドはどう変わる?訪日外国人の9割が使う生成AIと観光の変化をわかりやすく解説

ChatGPTやGeminiのような生成AIが身近になり、旅行の計画や旅先での過ごし方も変わり始めています。日本を訪れる外国人旅行者のあいだでも、AIに旅程を作ってもらったり、旅先でメニューや案内を翻訳したりする使い方が広がっています。

この記事では、訪日外国人がどれくらいAIを使っているのか、どんな場面で使っているのか、そして日本の観光地やお店、私たちの身の回りにどんな変化が起きているのかを、調査データをもとにわかりやすく紹介します。

この記事のポイント

  • 2026年の調査では、5カ国の訪日経験者の9割以上が日本旅行中に生成AIを利用
  • AIの提案で予定になかった場所やお店を追加した人は約3割
  • 観光地やお店でも、多言語対応や問い合わせ対応にAIを使う動きが広がっている
  • 一方で、AIの情報は間違っていることもあるため、公式情報での確認が欠かせない

1.訪日外国人はどれくらいAIを使っている?

1-1.旅行中の生成AI利用率は9割超

博報堂クロスバウンド・ビジネス・ラボが2026年3月〜6月に行った「5カ国インバウンド顧客購買意識調査2026」では、1年以内に日本を旅行した20歳以上の人に、旅行中の生成AIの利用を聞いています。結果は次のとおりで、どの国でも9割を超えました。

国 日本旅行中の生成AI利用率
タイ 99.5%
インド 98.5%
中国 95.6%
アメリカ 94.2%
韓国 92.7%

出典:博報堂「5カ国インバウンド顧客購買意識調査2026」(インターネット調査、各国200〜258人)

使われているAIは国によって違い、中国では中国のAIサービス「豆包(Doubao)」を使った人が66.0%でした。日本ではあまりなじみのないAIが、訪日客の旅を支えているということです。

1-2.旅行の計画にもAIが使われている

旅行の前の計画段階でもAIは使われています。インタセクト・コミュニケーションズが2026年1月に中国在住者を対象に行った調査では、2026年の春節(旧正月)に日本を訪れる予定の429人のうち、90.4%が旅行計画に生成AIやAIアシスタントを利用したと答えました。最も多かった使い方は「穴場・隠れ家スポットの検索」(52.3%)です。

1-3.わずか1年あまりで大きく変化

一方、2024年12月に東京・浅草の体験施設が外国人旅行者159人に聞いた調査では、旅行計画にAIツールを使った人は6%にとどまっていました。調査の方法や対象が違うため単純には比べられませんが、旅行でのAI利用がこの1年あまりで急速に広がったことがうかがえます。

2.旅行者はAIをどんな場面で使っている?

2-1.旅の前:旅程づくりや穴場探し

行きたい場所や日数、好みを伝えると、AIが旅程の案を作ってくれます。ガイドブックに載っていない「穴場」や、自分の趣味に合ったお店を探すのにも使われています。検索で一つずつ調べる代わりに、AIと会話しながら旅を組み立てるスタイルが広がっています。

2-2.旅の途中:翻訳や「その場の相談」

旅先では、メニューや看板の翻訳、店員さんとの会話、交通機関の乗り方の確認など、困ったときの相談相手としてAIが使われます。博報堂の調査では、旅行中のAIの提案によって予定になかった場所・お店・体験を追加した人が31.3%、検討する商品やブランドが変わった人が20.0%いました。AIが旅の行き先や買い物を左右する「旅の相棒」になりつつあります。

3.日本の観光地やお店はどう変わる?

3-1.国も観光でのAI活用を後押し

観光庁は2024年度に全国6地域で生成AIの活用を実証し、その結果を2025年3月に「観光地・観光産業の生成AIの効果的な活用に向けて」としてまとめました。19の活用例すべてで作業時間の削減が確認されています。活用例として挙げられているのは、たとえば次のようなものです。

  • 旅行者向け:多言語での情報提供、24時間の問い合わせ対応、趣味に合わせた旅行プランや混雑に応じた周遊ルートの提案
  • 宿やお店向け:外国語での問い合わせ対応、メール文の作成、予約データをもとにした需要予測
  • 観光地向け:アンケートや口コミの分析、国ごとのニーズに合わせたPR案づくり

3-2.多言語対応の手間が大きく減る

静岡県熱海市では、生成AIで観光情報を多言語に訳し、いったん日本語に戻して内容を確かめたうえで、ネイティブ話者がチェックする方法が試されました。また、旅行情報サイト「じゃらん」の調査研究機関が熱海市で行った実証実験では、生成AIを使うことでマーケティング分析の工数が15分の1、翻訳作業が12分の1になったと発表されています。

人手が足りない地方の観光地や小さなお店でも、外国語での案内や情報発信がしやすくなると期待されています。

4.AIで生まれる課題と注意点

4-1.AIの情報は間違っていることがある

生成AIは、もっともらしい文章で間違った情報を答えることがあります(「ハルシネーション」と呼ばれます)。観光庁の資料でも、実在しない施設や、実際には移動できないルートを答える可能性があるとして、人による確認が必要だとしています。営業時間や料金、交通手段などは、必ず公式サイトで確認しましょう。

4-2.定番の情報に偏りやすい

博報堂の調査では、AIを使った訪日客が感じた課題として「定番や観光客向けの情報に偏っていた」(27.9%)、「情報の信頼性を判断しにくかった」(25.7%)が挙がっています。AIのおすすめだけに頼ると、多くの人が同じ場所に集まってしまうことも考えられます。

4-3.観光地にとっては「AIに正しく紹介されること」が大切に

旅行者がAIに「おすすめの場所」を聞くようになると、観光地やお店の情報が古かったり間違っていたりすれば、AIも間違ったまま紹介してしまいます。公式サイトで最新の情報を多言語で発信しておくことが、これまで以上に大切になっています。

5.私たちの生活にはどんな影響がある?

5-1.街で外国人に話しかけられても、AIが手助け

道を聞かれたときや、お店で外国人のお客さんに対応するとき、スマートフォンの翻訳アプリやAIを使えば、外国語が得意でなくても会話ができる場面が増えています。お互いにスマートフォンを見せ合いながら話すのも、今では珍しくありません。

5-2.日本人の海外旅行でもAIが使える

反対に、私たちが海外旅行をするときにも、旅程づくりや翻訳にAIを活用できます。ただし、旅先でAIや翻訳アプリを使うにはインターネット接続が必要です。電波が弱い場所に備えて、オフラインで使える翻訳の準備や、現地で使える通信手段の確保をしておくと安心です。

まとめ

2026年の調査では、日本を訪れる外国人旅行者の9割以上が旅行中に生成AIを使っており、AIの提案で行き先や買い物を変える人も少なくありません。観光地やお店でも、多言語対応や問い合わせ対応にAIを使う動きが広がっています。

一方で、AIの情報には間違いや偏りもあります。旅行者は公式情報で確かめること、観光地やお店は正しい情報を発信し続けることが、AI時代のインバウンドでますます大切になりそうです。

参考:
博報堂「5カ国インバウンド顧客購買意識調査2026」
訪日ラボ「訪日中国人観光客、9割が春節の旅行計画でAIを活用」
AIsmiley「外国人旅行者の7割が旅行計画にGoogleなどを利用。AIツールを使用した割合は6%にとどまる」
観光庁「観光地・観光産業の生成AIの効果的な活用に向けて」(PDF)
観光庁「観光地・観光産業の生成AIの適切な活用に向けて(案)」(PDF)
訪日ラボ「じゃらん、生成AIを活用した実証実験を実施」