新型コロナウイルスの影響で外国人観光客数は途絶えているものの、一部の国・地域では感染者数が減り、海外旅行を検討している人も徐々に増えてきています。コロナが収束に向かい世界各国での移動が自由になっていても、安全な旅の需要は続くと予想されます。
コロナ禍で注目を集めているのが、豪華で手軽なキャンプができる「グランピング」。日本の四季や自然、地域ならではの食材、文化体験が楽しめるとして、都市部よりも地方部、ホテルよりもキャンプ場といったように旅行先に変化が生まれています。
そこで今回は、グランピング施設を既に運営している方や新規参入したい方向けに
- 平日対策や売上アップに繋げるために、インバウンド客に注目するべき理由
- インバウンド客を受入れるための対策方法
についてご紹介します。
「一般的なキャンプ施設運営をされている方」や「今ある土地をどうにか活用したいという方」は、一部グランピング施設へのリノベーションを検討してはいかがでしょうか。
グランピング施設といっても、タイプによってはイニシャルコストを抑えて開業することが可能です。現在、キャンプ場運用している方もそうではない方も、この記事をぜひ参考にしてください。
そもそもグランピングとは
Glamping(グランピング)とは、「華やかな・優雅な・魅力的な=Glamorous(グラマラス)」と、「野外生活=Camping(キャンピング)」を掛け合わせた造語です。ではキャンプとグランピングの違いはなんなのでしょうか。
キャンプの場合はテントや寝袋、火起こし、食材の用意・調理、後片付けまで全て自分たちで用意するものです。一方、グランピングの場合は、施設側がキャンプ用品一式や食材の用意を行うのが一般的で、調理から後片付けまで行ってくれるサービスもあります。
わざわざテントや寝袋、バーベキュー用品、食材などを購入し持参しなくても豪華なキャンプを楽しめる、つまり「手ぶらでいけるキャンプ」として近年注目されています。
至れり尽くせりのグランピングですが、キャンプに慣れていない人にとって
- テントの中の虫が気になる
- 就寝中に快適な温度や慣れない寝袋で、しっかり寝られないかもしれない
- お風呂に入れないのは嫌だ
- 真っ暗な外は怖い
- 悪天候の時はどうやって楽しめばいいのか分からない
しかし宿泊はさまざまな種類があるので、季節やシーン、一緒に行く人に合わせて快適に過ごすことができます。下記が主なグランピング施設のタイプです。
- テントタイプ
(寝袋) - ドーム型テントタイプ
(ベッドやソファ、ハンモック) - トレーラーハウス/キャンピングカータイプ
(キッチン、バストイレ、リビング、ベッド、エアコン) - コテージ/ヴィラ/キャビンタイプ
(キッチン、バス、トイレ、リビング、ベッド、デッキ、テレビ、エアコン、暖炉) など
※施設によって施設の設備やサービス内容は異なります。
このように宿泊設備が選べると、仲間同士・カップル・家族連れ・ペット同伴でも楽しめるのが魅力です。
キャンプ場に外国人観光客を集客すべき理由
グランピング施設の活気を上げていくためには、日本人だけでなく訪日外国人をターゲットにするべきと言えます。では外国人観光客をターゲットにする理由は何なのでしょうか。
- 平日もフル稼働させる
- 連泊利用で売上アップ
- 都市部より地方部の需要が増加
- キャンプ初心者でも楽しめる
一つずつ順番に解説していきます。
外国人集客すべき理由①平日もフル稼働させる
グランピング施設運営側の最も多くの悩みと言えば、平日の集客についてです。
仕事や学校の休みは土日や祝日に設けられていることが多いため、平日に旅行や趣味、娯楽を楽しめる人は「シニア」「未就学児を持つ親」が一般的です。
しかし、グランピング施設を訪れる人の割合は働き盛りの20代~50代の層が大半を占めるため、どうしても平日はガラガラという状態が続いてしまいます。反対に土日や長期休暇の時期は人手不足になるほど、人材管理が難しいこともあるでしょう。
訪日外国人旅行者であれば、日本人の旅行者に比べて行動スケジュールに比較的余裕があるので、平日の集客が狙えます。
外国人集客すべき理由②連泊利用で売上アップ
連泊利用客を獲得して、売上アップやオペレーション効率のアップに繋げる方法です。
観光庁が発表したデータによると、訪日外国人全体の平均滞在日数は8.8泊となっています。6日間以内の短期滞在者が過半数を占めますが、14日間以上の長期滞在者も多いのが特徴です。長期滞在の国ランキングは下記のとおりです。
1位 :ベトナム 36.1泊
2位 :フィリピン 20.9泊
3位 :ロシア 18.8泊
4位 :フランス 17.1泊
5位 :インド 16.5泊
6位 :ドイツ 14.1泊
7位 :スペイン 13.3泊
8位 :オーストラリア 12.9泊
9位 :イタリア 12.7泊
10位:アメリカ 12.4泊
滞在日数が多いことも理由となりますが、一つの地域や宿泊施設に長く滞在して、地域のことをより深く知る旅行スタイルが増加しています。そのため、連泊利用の訪日観光客を狙うことが可能です。
外国人集客すべき理由③都市部より地方部の需要が増加
東京や大阪、福岡といった都市部より、自然を感じられるような地方部への訪日旅行者が増加していることです。
地方宿泊者増加の理由は下記があげられます。
- 自然や景勝地観光需要が増加
- モノの購入より体験への価値が増加
- ウェルネスツーリズムの増加
- 三密回避ができる
「日本食を食べること」
「自然や景勝地観光」
「ショッピング」
「日本の歴史・伝統文化体験」
が上位に入っています。
そのため地方では
- 日本らしい四季を感じながら「地元の食材を堪能」
- 地方でしかできない「ご当地体験」
- 心と体をリフレッシュする健康増進旅の「ウェルネスツーリズム」
新型コロナウイルスが流行して以降、人口密度が少なくプライベート空間が楽しめるとして、三密回避となるアウトドアアクティビティがより注目を加速させています。
▼ご当地体験やウェルネスツーリズムについて詳しい記事がありますので、ぜひこちらも参考にしてください。
外国人集客すべき理由④キャンプ初心者でも楽しめる
冒頭でお伝えしたように、グランピングはキャンプ用品の設置や食材の準備まで行ってくれるため、初心者や手ぶらで来ても気軽にキャンプできるのがメリットです。
キャンプ用品に必要な荷物は持参せず、リゾートに行くような感覚で贅沢なキャンプが楽しめるので、海外旅行者にとっても魅力となります。また、十分な快適さがありながら、ホテル泊とはちょっと違った楽しみ方ができるのも人気の理由です。
グランピング施設の訪日観光客対策5選
ターゲットが日本人と外国人では、整備やサービス内容を変えなくてはなりません。どういったことを行っていけばいいのか、対策方法を5つ紹介します。
- 共有スペースには多言語で案内表示する
- 無料Wi-Fi環境の整備
- キャッシュレス決済の対応
- 遊びや体験アクティビティを提供
- 自社サイトやSNSで宣伝する
対策①共有スペースには多言語で案内表示する
英語や中国語、韓国語などの多言語での案内表示(誘導表示)や、円滑なコミュニケーションがとれる人材を確保することが大切です。文字だけでなく図記号のピクトグラム(絵文字)で、視覚的に分かりやすくするのもおすすめです。
観光庁が発表した「訪日旅行者が旅行中に困ったこと」というアンケートでは、「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」「施設等のスタッフとのコミュニケーションがとれない」ことが上位となっています。
出典:観光庁「訪日外国人旅行者の国内における受入環境整備に関するアンケート」
グランピングに滞在する際は食べる、体験する、宿泊するといった時間を過ごします。キッチンやトイレ、シャワーなどプライベートで使用できるスペースであれば問題ないですが、共有スペースを利用する場合はトラブルに繋がりがちです。
例えばシャワーの利用には予約が必要だった、生活習慣の違いから利用者のマナーが悪いなど、タブーやルールを分からず行動してしまうこともあります。そのため、それぞれの国の人が理解できるような案内表示が必要となります。
対策②無料Wi-Fi環境の整備
スマートフォンやパソコンなどが接続できるよう、Wi-Fiの整備が大切です。
訪日外国人の通信手段として利用されるのは「国際ローミング」「プリペイドSIM」「モバイルWi-Fiルーター」「無料公衆無線LAN」等があげられます。その中で、最も多く利用されているのは無料公衆無線LANです。
現代ではメッセージや電話の通信はもちろん、旅行の風景や飲食の様子をSNSやYouTube、ブログへ投稿するなどインターネットは生活に欠かせないものです。旅行中でも仕事のやりとりをしたい方にとっては、Wi-Fi接続が出来るかどうかで、旅行先を決める方もいるでしょう。
対策③キャッシュレス決済の対応
現金を使わないキャッシュレス決済を導入することです。
キャッシュレス決済とは「クレジットカード」「デビットカード」「電子マネー(プリペイドカード)」「モバイルウォレット(QRコード)」があげられます。
日本国内においてのキャッシュレス決済状況は2016年時点で19.9%ですが、韓国(96.4%)、イギリス(68.6%)、中国(65.8%)、オーストラリア(58.2%)、カナダ(56.3%)のように他国では普及率が高いのが特徴です。
キャッシュレス決済を導入することでグランピング施設側・利用客の双方でメリットがあります。
- レジ現金残高確認作業の手間が削減
- 消費者の需要を掴むことで、売上アップ
- データを活用してマーケティングができる
- 慣れない日本円を数えることや両替、ATMから引き出し管理しなくてもいい
- 支払い時の時間短縮
- 消費履歴による家計簿管理が楽
経済産業省が発表したデータでは訪日外国人の約7割が、クレジットカードなどのキャッシュレス決済が利用できるなら、「もっと多くのお金を使った(おそらくを含む)」と回答している人が全体の37%もいます。
つまり売上アップに繋がる可能性があることから、キャッシュレス決済の導入は非常に重要と言えます。
対策④遊びや体験アクティビティを提供
野外でバーベキューをするという一般的なキャンプ施設を提供するだけでなく、日本ならでは/その土地ならではの体験アクティビティを提供することです。
連泊で滞在する人は特に、「グランピング+α」があると非常に充実した時間を過ごせるはずです。
茶道、書道、陶芸、着物・浴衣、和菓子、藍染め、座禅
地元の食材や郷土料理を作る家庭料理教室、山・海・川などの自然の中で行うヨガ、いちご狩り、野菜の収穫、ホタル鑑賞
ハイキング、サイクリング、森林浴、釣り、川遊び、カヤック、雪遊び
アスレチック、巨大迷路、乗馬
▼訪日外国人向けの体験アクティビティはどういったものを提供すればいいのか悩んでいる方や、コト消費戦略について具体的に知りたい方は下記の記事をご覧ください。
対策⑤自社サイトやSNSで宣伝する
自社サイトやSNSを活用して、海外向けに情報を発信することです。
どういったサービスをどんな料金で提供しているのか、どんな体験ができるのかなど、多言語で発信することで、海外からの旅行者を集客しやすくなります。特にSNSは拡散機能や検索機能、独自のアルゴリズムでおすすめに表示させてくれるなど、自社サイトよりも見つけてもらいやすいのが特徴です。
また、SNSには旅行客とコミュニケーションをとったり、日本らしい季節・食・イベント情報などを宣伝することで、リピーターに繋がるチャンスもあるでしょう。
▼海外向けのSNS発信について詳しく知りたい方は下記の記事もご覧ください。
まとめ
今回は、グランピング施設には日本人だけでなく訪日外国人観光客を集客することで、平日も安定的な売上や効率化アップが可能となることについて解説しました。
外国人観光客を受入れるためには、多言語での案内やコミュニケーションがとれる人材の配置が必要です。まずは翻訳サイトやアプリなどを使って、訪日外国人に向けて情報を発信してみるのがいいかもしれません。
また、多言語が話せる人材は日本人だけでなく、「日本食を食べること」外国人人材も視野に入れることで、人材不足を解消することが可能となります。
このように選択肢や可能性を広げて、需要が高まっているキャンプ業界の波に乗っていきましょう。